あれから鉄でカタナを打ちまくった。約100本くらい。カタナは成功率が低いので、2〜3割程は失敗した。が、これは経験値が入るものらしく、直ぐに850に上がった。でもこれ以上は流石に上がらなかったので、泣く泣く止めて今は銀を適当に加工しているところだ。
「……………?……、」
マジで喋れん。集中してるし、ミスったら貰える経験値が大きく落ちるからだ。というか、パーフェクトだとめっちゃ経験値が貰える。これを狙っているのだ。
「…………よしっ」
はい、完璧。失敗した時の変な音が流れなかったし、作品もおかしな出来ではない。ステータスのスキル欄を調べてみると、やはりレベルが大きく上がっていた。もうすぐ350に届く。まだ銀は沢山あるのだから、焦らずやっていこう。
と言っても、これはあくまで500にすれば鍔と鞘が作れるようになるので、ここまでしたらあとは特殊効果の厳選をするだけだ。
「よし…………っ、」
きっと職人プレイヤーもこんな気持ちなんだろう。一見して楽しくなさそうで、損をしてるように見えるが実はとても楽しいのだ。
◆◆◆◆
ガチャという音を立て、店側とこちらの作業部屋を繋ぐ扉が開かれた。奥にいるのは、アホ毛が生えた紫色の髪に赤い瞳、そして勝気な表情を浮かべた少女。そう、僕の憧れであるユウキさんだ。
初見で見た時は普通のプレイヤーだと思ったけど、めっちゃ有名人なんだねあの人って。なんか損した気分だわ。
「やっほーシルム!作業の調子はどう?上手くいってる?」
「はい、ユウキさん。順調ですよ」
後はこれを数時間かけて削り、経験値を500にしたらまた洞窟に行ってレアな鉱石を取ってくる予定だ。あぁ、楽しみで仕方ない……!
「そっか………あ、じゃあボクに何か手伝えることはある?」
「手伝えること…………じゃあ、あと少し経ったら洞窟に行くんですけど、付いてきてもらっていいですか?」
「うんっ、分かった!でも、洞窟なんてなんで行くの?」
「鍛治スキルが上がったので、レアな鉱石じゃないとレベルか上がらなくなってしまったんですよ。だからそれを探しに」
「あぁ〜なるほど……じゃあこれあげるよ」
ユウキさんがストレージから取り出したのは………黒曜石だ。それも破片ではなく塊。しかもめっちゃ沢山ある。
「え……えぇ!?く、くれるんですか……!?」
「うん?もちろん。だって僕にはもういらないし……使えるなら使って欲しいなって」
あぁ………そう言えばユウキさんの胸当てとか剣とか黒曜石出できてますもんね。なんか思い入れがあるのかも知れない。
「あ、ありがとうございます……!」
よしっ……これがあれば900くらいまでは上げられる筈……これは嬉しい誤算だ……!流石ユウキさん!
◆◆◆◆
「えっと………デカい塊は胸当てにして、破片は集めて鱗みたいな肩当てにしようかな。多分これくらいでいいはず」
黒曜石は熱に強く、他の金属と混ぜられないので防具にすることにした。まぁなんていうの?ユウキさんも使ってるし?薄くても防御力凄い高いし?そんなに重くないし?………うん。
ちょっと前に、品質がかなり高い布と皮かドロップしたので、それに接合して軽量装備にしようと思う。これくらいなら今の作成スキル(500)で十分作れるはず。
「えっと………こっちがこうで………こんな感じ?めっちゃ簡単やん。あ、裏生地もちゃんとしたの使お……これだな」
防具造りは非常に簡単だ。プレイヤーメイドだから、品質も安定しているし、特殊効果も期待出来る。所謂、エンシェント防具ってやつだ。
「えぇ〜………こうか。んでここにセット………っよし」
あまり意識はしていないが、ユウキさんのやつと同じようなところに同じようなプレートをはめ込んだ。そして、肩のプロテクターも付ける。鱗のような感じになっており、耐久値と防御力がとても高い。
「裾がこれくらいで……そではもうちょい余裕があって………」
まぁ、見た目重視ではないがコート型にした。コートにすると、防寒効果が着くことが多いのだ。僕は結構寒がりなので、ゲームの中まで寒い思いをしたくない。
「えっと、これで………よしっ!あ、フードも付けよ」
このフードはマジで意味が無い。強いていえば、被った時に顔とHR、カーソルが見えなくなる効果があるだけだ。これ、意外と有利じゃね?と思うけどmobには効果ないしデュエルの時はHPだけ見えるようになるので、そんなに強くない。
「よーっし。上防具は完璧だ。名前は………《暗灰のコート》?なんそれ厨二病?まぁこのゲームが厨二病みたいなもんか」
何はともあれ、《暗灰のコート》を作成した。防御力も軽量装備にしてはとても高く、目立つのは耐久値だ。20もあり、戦闘中に破損するのはまず無いだろう。そして特殊効果は………
「んと、『カーソル、HP非表示』『防寒』『防御力++』『追加HP』か………なんか微妙だなぁ」
防寒はコート型にすれば80%の確率で、非表示はフードを追加すれば100%付与される。そして大事なのが、ランダム付与だ。防御力系は+が1から5までつく。2は、あまりレアでは無い。まぁ、これは二段階あげることが出来なくはないからいいとして、追加HPはあまり嬉しくない。どうせなら、『HP回復ブースト』や『MP回復ブースト』、『耐久値自動回復』などが欲しかった。まぁ確率のものなので仕方無いか。
「んじゃあ………下装備も作っちゃうか」
下装備とは、その名の通りズボンだ。実はこれ、上装備が防御力の大半を占めるので下は履き心地や特殊効果を期待したい。狙いは『ダッシュ速度上昇』か『AGI上昇』かな。リーチを生かしたヒットアンドアウェイの戦法がいいと思ってる。まぁ、変なのじゃなけりゃなんでもいいけど。
「えっと、黒曜石は………まぁいっか」
足回りが重くなって移動が制限されるのは嫌なので、軽くて伸びる皮と布を使う。先程上装備で使ったのはハードレザーという、ちょっと硬い皮の素材だ。そして今からズボンに使うのは、ノーマルレザー。柔らかく加工がしやすい、比較的伸びやすい素材である。良かった捨てなくて。普通に捨てるとこだったわこれ。
「裏は手触りが良いやつ………絹でいっか」
麻でもいいんだけど、如何せん量があまりない。これで足りんかったらなんかやだ。
「サイズは勝手にやってくれるからOKとして………裾は少し短めでっと」
今はロングブーツを履いている。ズボンを被せるのはなんか嫌なのと、捲りたくないのだ。なんか耐久値減りそうやん?減らんけどね。
「…………っよし!完成だ………!」
てな感じで上下の装備が完成した。名前は『黒灰のズボン』。なんか上と似てるような感じするけど、カッコイイのでいい。因みにこれ、使ったのはレザーなのに何で色が付いてんのかというと、皮の上に防刃効果がある布素材を貼っつけているからだ。だからコートもズボンも三重構造な訳だね。コートの下は、いつものワイシャツでいいや。ちゃんと社会人の人がジャケットの下に来てるワイシャツだよ?
「よし、特殊効果は………『AGI上昇』『HP自動回復』『耐久値自動回復』。おっしゃ大当たりだ!」
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