アルヴヘイム・オンライン 紫と灰と銃   作:猫大好き好きくん

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仮想世界

大きく引きを吐く。はやる気持ちを押さえつけ、目の前の敵を観察する。次の行動を読み、どうなるか考える。どうすれば切り伏せられるのかを。

 

「やぁぁぁ!」

 

ユウキさんは剣を縦に振り下ろす。距離は約4メートル。あと1秒あれば剣は届き僕の首が落ちるだろう。でも、まだ1秒もある。

 

「っ!はぁあ!」

 

両手で軽く今持つカタナ『コテツ』の柄を握る。手首を柔らかく使い、軽く後ろに引いて溜めをつくる。そして、勢いよく刀を突き出す。

 

「っ!!」

 

ギリギリまで引き付けたお陰でユウキさんの腹に剣先が突き刺さる。ある程度ダメージは与えたが、致命傷にはなっていない。ここでトドメを刺すために、より深く剣を押し出す。

 

「ぐぅっ!よっ……と」

 

だが、バックステップで逃げられてしまった。今のは勿体ない、躊躇してしまい腕だけで押し出してしまった。体ごとずこってやってたらそのまま貫通させられたのに。あ〜あ。

 

「おぉ………今のはいい判断だね、シルム?」

 

「まぁ、ちょっと躊躇ってしまいましたが」

 

「あははっ、体ごと突き出されてたらちょっと危なかったかな〜」

 

こういう状況でも、ニコニコと笑っているユウキさん。きっと心に余裕があるんだ。僕にはない、今でも、どうやったら勝てるか考え続けている。

 

「でもね………ボクも負けたくないの」

 

今度はユウキさんが刺突攻撃を繰り出してきた。速すぎて剣先が見えない。ソードスキルも発動していないのに。

 

「くっ……はぁ!」

 

一瞬の溜の後、『絶空』を発動する。ここで心臓や顔などを攻撃すればクリティカルが入り、大きくダメージを与えられる筈。迫ってくる剣は、適当なところに貫かせておこう。

 

「はぁぁぁ!」

 

本当にユウキさんは凄い。この速度なのに、剣先を微妙に変えて角度の調整をしている。心臓部分に当てられれば一撃で倒されてしまうから、腰を捻って自分から腹をぶつけに行く。

 

「ぐぅっ!」

 

剣が腹を突いた。ノックバックはないが貫通ダメージはある。HPゲージはみるみる減っており、今にもレッドゾーンだ。だけど、これで決める!

 

「ぜやぁぁあ!」

 

最短の距離を最速で刀を振る。この軌道ならば、ユウキさんの首を跳ねられる!もっとはやく!強く振り抜け!

 

そして、ユウキさんの首に刀が当たり赤いエフェクトが出る。勝ったと思った。流石のユウキさんも、この状況はどうにも出来ないと思った。そして…………

 

『デュエル終了!勝者Yuuki!』

 

デュエルの終了を告げるシステム音声が流れる。そして、押し込んでいた手が止まる。絶空も強制終了し、刀はだらんとみっともなく垂れ下がった。

 

(負けた……か)

 

最後の方は油断していなかった。それにクリティカルも避けて腹に貫通させた。その剣はそんなに攻撃力が高いのか?いや、でもAGI補正がある速度重視の剣だったはず。

 

「あ、捩った……?」

 

「危なかったぁ……いやーいい勝負だったねシルム!」

 

「え?あ、はい………あの、最後のは…?」

 

予想だと、剣を腹の中で捩って無理矢理追加ダメージを与えたのだと思う。でなければこれほどの時間で攻撃は出来ないはずだ。

 

「ん、最後の?……あぁ!やばい負けそう!ってなって、剣を引き抜こうとしただけなんだけど……」

 

「引き抜こうとした……?」

 

「うんうん。いやー勝ててよかったぁ!」

 

あ!体内部ダメージか。体内部ダメージは、体の内側の部分にダメージを与えたら追加でめっちゃデカいボーナスが入るよってやつだ。だから、両腕を切断されて死ぬこともあるらしい。

 

「ホントにいい勝負だったよシルム!僕も後0.2秒くらい遅かったら負けてたかもだし。やっぱシルムは、刀がいいんじゃない?」

 

「あぁ〜………そうします。刀のこと、教えてくれませんか?」

 

「うんっ!もちろんだよ!」

 

◆◆◆◆

 

負けたことは気にしないで、ユウキさんのアドバイスを聞くことにした。反省するのは後でいいし、今はアドバイスを聞いた方が為になると思ったからだ。

 

「━━━━━って訳だから、刀はAGIが高い人の方が強くなるの。元々の攻撃力は斬撃武器の中ではかなり高い方だからね」

 

「ほほぉ。ではあまりSTRは高くなくていいんですか?」

 

「んまぁ、使い方によっては振り回すこともあるから、ある程度はいるかな。でもSTR全開で振り回す様なことはしなくていいよ?シルムはDEXも高いから、振り回す様なことをしなければ普通に使えると思う」

 

とはいっても、前の採掘作業のお陰でSTRがめっちゃ上がったけどね。ホントに上がったんだよね………なんあったんかな?

 

「後はソードスキルの使いどころだね。無駄打ちが一番だめ。硬直の隙は以外と大きいし、無防備になっちゃうからね。まぁそこら辺は、ダンジョンやクエストの数をこなせばいやでも身につくと思うな。大切なのは、必ず当たるって時以外はあんまり使わない方がいいこと。通常攻撃でも、クリティカルにしたり攻撃速度を上げれば大きなダメージになるから。それと、防具の間を狙うってのもあるね」

 

「ふむふむ………攻撃速度を上げるっていうのはどのように?」

 

「システムに依存しないところは、完全にプレイヤースキルになるから、どうするかは自分次第だね。まあ一応、STRとDEX、AGIを開いてやるってのもできるけど……ってかボクはSTR全開だけど」

 

ユウキさんは笑いながら言う。

 

「STRを開かせると、制御がとても難しくなるから、それを右手1本で支えるのはやっぱり難しいかな。シルムは刀だから、両手で扱えばそんなに難しくないと思う。ミソは、柄の真ん中に集めるイメージで」

 

「ほうほう………」

 

言われていることをメモ機能で書き込んでいく。タイピング学んどいてよかったぁ。

 

「っとまぁ、大事なのはこんなところかな。それじゃ、刀の熟練度を上げていくよ!」

 

 


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