ハイスクールDevil castle×Dracula   作:二痔升

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24話 九尾奪還戦~9巻終わり

さーて、どうしたものやら。

英雄派の実験は「今夜二条城でやる」んだって。今夜って何時からだよ?と思わなくも無いが…

それはともかく、問題はいつ行くか。

 

相手の要求を鵜呑み、ってのもそれは何か相手の狙いに乗ってしまうわけで…

ただ、相手が準備万端になるのを避けたいからって、例えば今二条城に行っても九尾は居るのか?

居たとしても、気に食わないから逆上して人質殺されるわけにもいかないし。

 

やっぱ安牌なのは兵藤先輩らに便乗する感じか。

その上で先回りか同行か後追いか…

 

まず同行はありえないとして、先行した場合の利点は、手札バレ防止くらいか?

ただ、それも英雄派とやらが何らかの監視装置なりで、情報収集目的だった場合は怖いし。

…あー、いや、彼らの目的は赤龍帝と堕天使総督だったな。

本人が言ってたじゃねぇか。

ほんと自意識過剰っていうか…

 

「あら、どうかしたんですか?」

 

ため息を吐いた俺に、シャワーを浴び終わったセピア…さんの見た目をした『俺』が話しかけてくる。

まぁつまるところ、惣間正二は師であるセピア・ベルモンドが英雄派とぶつかった後に戦力補充の為携帯で呼び出され、学校を早退して京都に来た、と言う設定だ。

これなら動きが似てるのも師弟だから、で済ませられるし。

 

「いや、いつものように自分のアホさ加減を再確認してしまっただけ」

「それを言うなら私なんて。

 もっと強い武器を使ってれば…」

「構成員が弱かったからなぁ。

 教育せず人材をホイホイ使い捨てにしてるトップだから、大したことないと思いこんでしまった」

 

本人が使い捨てじゃなく部下の感情を制御しきれないとかだとしても、ポンコツっぽいからって弱いとは限らないよな。

 

「今はそれよりも次ですよ」

「まぁそれはそうなんだけど」

 

自分に励まされる?ってのも、なぁ。

そもそも個体差はあれど情報共有くらいはしてるし自分同士であんま干渉する事自体が今までなかったが…外見のおかげかな?

同じ顔に言われるよりはマシ、なんだろうか。不快感はないし。

…単に相手が美人だから、かも。

 

「その次の為の武器、作って貰えました?」

「一応、要望通りベースを強化はしたけど通用するかは」

「それに関しては、聖剣の聖なるオーラとやらを解禁します。

 ちゃんと別人と思われてるみたいですから、実戦テストやれますね」

 

ありがたいことに英雄派にもアザゼルにもバレてないからな。

本当は聖魔剣のテストもしたいが、一技能を複数人で使い分けすると精度が落ちるからなぁ。

 

「んじゃ、残りはいつ行くか?ってとこか。

 個人的には、英雄派さんがお望み通り赤龍帝に来てもらって浮かれたところにバッサリ、がいいと思うんだが」

「付け加えるなら、英雄派が人質を処分しようとした時に妨害出来るように、ですね」

「じゃあ付かず離れず、ってところかな。

 ともかく、向こうが動くまでは待ちだな」

「それならまだ日も落ちてないですし、ご飯でも食べに行きません?

 私お腹空いてきちゃって」

「このホテル、ルームサービスとかは付いてないのか」

「それも考えたんですけど、そういう所の方が従業員とか多そうですしね」

「あー、それもそうか」

 

 

 

そして、食事を取り、軽く運動もしつつ夜に備える。

備える、んだが…

いつ出てくるんだ?

向こうも人質助ける雰囲気になってたよな?

やる気になってたよな?

相手の晩飯時に急襲、かと思いきやもう10時過ぎ。晩飯にも程遠い…

俺らの方が腹減ったわ。

戦闘中に吐かないように、とか思ってたのが仇になった。

っていうか、修学旅行は修学旅行でしっかり楽しんでから救出に行くかー。って感じだよな?コレ…

サーゼクスホテルとやらの中に監視飛ばす程近づくと、バレたり英雄派に間違われたりしそうで出来てないが…結界もあるし。

 

あー!もう!なんでこっちが焦らなきゃならないんだよ!

妖怪と協力態勢がどうのこうのじゃなかったのかよ!

これ、今はまだ異常が起きてないだけで実験とやらをもう始めてたらどうするんだよ!

 

「すぅー…、はぁー…」

 

落ち着け俺。

腹が減ってるからイライラするんだ。

どうせいざとなれば腹の中なんか魔力で空っぽに出来るんだ。

今から出前とか無理だし、カレーでも食お。

 

 

 

カレー食べて、二皿目に行くか二人して迷ってると、やっと動きがあった。

待ちから開放され、ウキウキで後を追おうとするが…

 

「バス…?」

 

何故かアザゼル抜きのメンバー全員で、京都駅からバスで移動しようとしている。

いや、アザゼルみたいに隠蔽して飛べば良くない?

バスの運転手ごと襲われたらどうするんだろう。

なんて思った瞬間、兵藤先輩の背中に飛びつく巫女服の子供。

あれが今回の人質の子供か。

あそこまで近づくのに気づかないとか、敵なら死んでたぞ。

 

で、どうもその九尾の子は、自分も助けに行きたいから連れてって欲しいらしい。

アホかな?

で、重要なピースが揃ったからだろう、兵藤先輩らの足元に霧が広がり…一瞬で霧が全身包み込み、包み込んだと思った瞬間には霧ごと消失してしまった。

『絶霧』って速度半端ないな。

あれなら、九尾の子供の見張りの妖怪とかも、子供に気取られず消す事も可能だろうな。

邪魔でも、アルジェントさんみたいに結界装置とかくっつけてポイしてればそのうち餓死するし。

 

「で、どうします?

 二条城から異空間に入るか、京都駅から入って二条城に向かうか」

「隠れて二条城に近づいてから異空間。

 京都駅周辺の異空間に罠があるかも」

 

『絶霧』が結界装置を即興で作れるなら封殺出来ることになる。

あるいは兵藤先輩らはもうされてる可能性もある。

 

 

 

…で、いつもの隠形セットで隠れて、エンカウントなく二条城周辺まで行って、『絶霧』で包まれた異空間に入れたのはいいよ。良かったよ。

接触してた人も一緒に霧に出来るってのも知れたし。

でもさ…

二条城の何処だ?

お前ら待ち合わせに建物名しか使わんのか?

THE城って感じの建物でもないし…英雄派って自己顕示欲高そうだから、そういう感じの建物だと思ってたんだが…

そのせいで死角も少なそうだし、気づかれず忍び込むのは難しいか?

なんて外堀の前で思っていると、巨大な光が現れ…

 

オオオォォォン!

 

そのまま金色の九尾の狐に変わった。

 

「行きます」

 

目的地が定まった『俺』は、チェーンソーを構え堀を飛び越え向かっていく。

一方存在を認知されてない俺の方は飛ばした監視で誰にも発見されないようにしてからだ。

あの巨大化した九尾を救助したいが、どういう状況かもわからないしな。

今はただ佇んでるだけで、動こうと言う気配もない。

 

なんて思ってゆっくり進んでいると、不意に巨大な、それこそ近くの九尾の狐よりも大きい聖なるオーラが現れた。

グランドクロスでも使ったか?と思ったが、十字でもないし、力を消耗してる感じはない。

となると、自動的に消去法で誰のかわかるわけで、やりかねない人物像とも一致する。

ほんの少し…ほんの少しだけ嫌な予感がよぎったが…流石にそんな事はなく、狐を避けて振り下ろされた。

良かった良かった。

…って良くねぇ。九尾が戦闘に巻き込まれる前に急がないと。

 

***

 

巨大な聖なるオーラの一撃の跡地に、地面から腕が突き出てくる。

そして、英雄派メンバーが出てこようとしたその瞬間――

 

「はあっ!」

 

英雄派メンバーにも見覚えのあるチェーンソーが、ローブを羽織った青年に振り下ろされる。

すかさず聖槍に防がれ、魔剣が、聖剣が、拳が、その持ち主を撃退せんとするが…

チェーンソーとセピア本人から聖なるオーラが溢れ、先程のゼノヴィアの一撃のような光の奔流を柱でなく、十字架型に放つ。

十字架型の光はゼノヴィアのに比べればサイズは劣るが一撃ではなく、その場で数秒程放たれ続ける。

光が収まる時には、その場に居るのはセピアだけだった。

 

「…一日一回しか使えないんですけどね。

 あれでもダメですか」

 

ため息と共に横を見やる。

一誠らもつられてそちらに目を向けると、そこには五体満足な英雄派のメンバーが。

多少焼けたり焦げたりはあるが、有効打には至らなかったようだ。

 

「さっきの対処を見て霧を引き寄せるタイプの攻撃方法にしたのか。

 ま、悪くはないけど、絶霧は霧にしか効果がないようなチャチな神滅具じゃない。

 …しかし、今のもさっきのも予想以上だ。

 上級悪魔の中堅程度と思いきや、上級トップクラスの眷属と遜色がない」

「それよりさ、曹操、早くやろうよ。

 僕、さっきのくらってテンションおかしくなってきちゃった」

「そうだな…

 ゲオルグ!」

「了解」

 

ゲオルグと呼ばれたローブを羽織った青年は、曹操の呼びかけに答えるように周囲に多種多様な魔方陣を出現させる。

それと同時に九尾の狐が輝き出す。

数秒もしないうちに、ゲオルグの周囲を縦横無尽に動いていた魔方陣は停止し、九尾の狐の足元にその体躯に負けないサイズの魔方陣が現れた。

 

オオオォォォ…オオオォォォン…

 

再び雄叫びを上げる九尾の狐。

だが、先程のような迫力はもうない。

目を見開くどころか白目を剥き、全身の毛を逆立てている。

 

「準備は良好だ。

 後はグレートレッドの興味を惹けるか次第だが…龍王と天龍のおかげで可能性は高そうだな。

 曹操、すまないが後は任せるよ。あの九尾の狐を死なないように制御するのは思ったよりキツくてね…」

「了解了解。

 さて、実験終了まで長いだろうし、みんなのためにせっかく招待した遊び相手なんだが…外の連中がどれだけ時間を引き伸ばせるかわからなくてね。

 なんせ堕天使総督に魔王レヴィアタン、その上、セラフのメンバーまで来るらしい。

 あまり遊びすぎないようにな」

「はいはい」

「おうよ」

 

曹操の言葉に、まるで普通の談笑のような態度を見せる、細剣を佩いた金髪の女性と筋肉質な巨漢。

 

「あぁ、そうだ。紹介しておこう。彼らはジャンヌ、ヘラクレス。

 それぞれ英雄ジャンヌ・ダルクとヘラクレスの意思、魂を引き継いた者たちだ。

 …すまない、またせたねジーク。

 誰とやる?」

 

曹操の問に、ジークフリートは答える時間も惜しいとばかりに剣の切っ先を木場とゼノヴィアに向ける。

 

「まぁ想定通りだな」

「じゃあ、私は天使ちゃんにしようかな。かわいい顔してるし」

「俺はシスターの姉ちゃんか」

 

そして、曹操と一誠、匙と九尾と対戦相手が決まっていく。

 

「『龍王変化』!」

 

黒い炎に身を包む匙が、細長い身体の東洋風の龍に変化し、九尾の狐との戦いを始める。

 

「木場!ゼノヴィア!少し離れて戦ってくれ!

 九尾の御大将からこいつらを少しでも離したい!」

「「了解!」」

 

一誠の声に、駆け出す二人。

イリナもそれに準ずるように、飛びながら離れた場所で戦闘をしようとする。

 

「あんたは離れなくていいのか?」

 

唯一動かないままのセピアにヘラクレスが声をかける。

 

「どうにか悪魔の皆さんに、流れ弾あてたりしながら九尾さんを助けれるか考えてましたが…ダメですね。

 おとなしく離れましょう」

「…」

 

ヘラクレスは予想もしない答えに一瞬頭が真っ白になったが、離れていくセピアの後を慌てて追う。

 

「このあたりなら大丈夫ですかね。

 じゃあ、始めますか」

 

ヴィィィィンとチェーンソーを起動させる。

聖なるオーラを放ちながら振るわれるそれを、難なく腕で防ぐヘラクレス。

 

「おいおい、人に対してこんな武器使うのはどうかと思うぜ?」

「…それを腕で防ぐような人は人間離れしてると思いますよ」

「ハッ!

 そりゃあ俺は英雄だから…なぁ!」

 

カウンター気味に拳を突き出す。

セピアは拳をいなそうとするが、その寸前に避ける。

すると、その拳周囲の空間が爆発した。

 

「ほぅ、いい勘してんじゃねぇか。

 俺の神器は攻撃と同時に爆破させる『巨人の悪戯』!」

 

再び突き出される拳。

避けつつ、一撃目と同じ場所を斬りつけるセピア。

だが、引っかき傷程度にしかならない。

 

「そんなチャチな攻撃じゃ、俺には効かねぇ、よ!」

 

ヘラクレスのカウンター、しかし再び避けられる。

 

「避けるのはウマいみてぇだが、それだけじゃ俺に勝てねぇぜ?」

「そうみたいですね」

 

そう言いつつ、聖なるオーラを放つ十字架を投げるセピア。

十字架はヘラクレスに当たるが、服が切れただけで肌に傷をつけるに至らずコロンと落ちる。

しかし、そちらに一瞬注視してしまったが故に、瓶が眼前に迫ってきた事に気づくのが遅れてしまう。

 

肉体の頑強さは目にも適用されるわけではない。

ヘラクレスは咄嗟に腕でガードする。

ガードした腕に、瓶があたった所から炎が燃え広がる。

当然振り払おうとするが、突如頭部に軽い衝撃。

ヘラクレスが知る由もないが、先程の瓶と共にセピアが山なりの軌道で投げていた投斧だった。

その衝撃に一拍遅れてだが、炎を振り払うと、聖なるオーラを纏った鞭を振りかぶるセピア。

チェーンソーが離れた場所に置きっぱなしにされていたので、その音で近づいていたのに気づかなかったヘラクレスは反応が遅れる。

 

「はっ!」

 

鞭が一閃。

ヘラクレスの肌に袈裟斬りにうっすら筋が通り、血が滲む。

 

「…ほぉ、なかなかやるじゃねぇか」

 

ヘラクレスは再度反撃をする。

当然セピアは避けるが、今回のヘラクレスの目的はその背後にあった樹木だった。

ヘラクレスは爆破をせず、拳で樹木をへし折ると、その樹木をセピアの方に向け、今度こそ爆破。

その衝撃で樹木はバラバラの無数の木片になりながら、セピアの方向へ飛散する。

セピアは咄嗟に身をかがめ、重要な部分を守る為に、手足を盾にする。

 

「そっちの攻撃が全然効かねぇなら、攻撃が当たるまで爆発ショーでもいいんだけどなァ。

 有効打があるなら万が一、なんてこともある」

 

ヘラクレスが悠々と告げる。

それと同時に――

 

「禁手化!

 これが僕の禁手『阿修羅と魔龍の宴』」

「禁手化♪

 この子は私の禁手『断罪の聖龍』。ジーくん同様、亜種よ」

 

周りの戦闘でジークフリートとジャンヌが禁手化していく。

 

「ったく…どいつもこいつも禁手になりやがって。

 この流れじゃ俺もやらないと後でうるさそうじゃねぇか!

 禁手化!」

 

ヘラクレスが身体を輝かせ、だんだん光がゴツゴツしたシルエットを映し出していき、光が収まると、そこには全身からミサイルのようなモノを生やしていた。

 

「これが俺の禁手!『超人による悪意の波動』だ!」

 

挨拶代わりにミサイルの一本を遠くへ放つ。

着弾した途端、先程の拳による爆発の比ではない巨大な爆破を引き起こした。

 

「とまぁ、こんなモンだ。その足でどれだけもつかな」

「足以外でがんばりますよ」

 

ヘラクレスは再びミサイルを発射させようとする…と、その瞬間にナイフがミサイルに飛んでくる。

あまりにも巨大な爆破範囲にヘラクレスも巻き込まれる。が…

爆煙の中から現れるヘラクレスには爆発のダメージはない。

 

「おいおい!この攻撃で俺自身が傷つくわけねぇだろ!?

 神器ってのは身体の一部みたいなモンなんだぜ?

 もちろん…誘爆もしねぇってこった!」

 

今度は複数の…大量のミサイルを同時に放つヘラクレス。

いくつかはナイフや十字架を当てられ目標に届く前に爆散するが、それでもほとんどは逃げるセピアを爆発範囲に捉えて爆発した。

 

ミサイルの襲撃が止み、あたり一面煙だらけになる。

すると、ふいに煙の動きが変化し、爆発に巻き込まれた割には傷の浅いセピアがヘラクレスに飛びかかり、鞭を振るう。

 

「この禁手は遠距離用と思ったか?」

 

ヘラクレスは鞭を避け、足を少し上げ踏み込む。

すると、先程射出したミサイルの爆発よりは小規模だが、爆発が起こり、セピアは吹き飛ばされる。

 

「この通り、近距離にもちゃんと対応してるぜ」

「それでも、こうしないと勝ち目はありませんから」

 

にらみ合いになる二人。

と、そこに…

 

「あら、ヘラクレスが傷つけられてるなんて珍しいわね」

「ねぇヘラクレス、変わってくれない?僕消化不良気味でさ」

 

自分の相手を片付けたジャンヌとジークフリートがやってくる。

 

「ジーク、お前二人選んで遊んだだろうが。

 ジャンヌ、曹操は?」

「やる気なくしちゃったみたいね。

 赤龍帝がヘコんじゃって、ゲオルグとおしゃべりしてたわ」

「んじゃ別に急ぐ必要はねぇか!」

 

戦闘を再開するヘラクレス。

鞭と爆発の応酬が再開する。

「私たちヒマねぇ…どれぐらい持つかカケでもする?」

「どーせ時間いっぱいまで遊ぶでしょ」

 

見物人がそう話してると…

 

『…ぱい…』

「ん?」

『…おっぱい』

『おっぱい触りたい…』

『おっぱい触れなかった…』

 

赤龍帝の元から、大量の…千体はありそうな人型のもやのようなものが現れていた。

 

「なんだ?まるでゾンビのようだが」

 

曹操も怪しむ。

と、人型は形を崩し、地面に溶け出していく。

全てが溶け終えると、その溶けた物体が、巨大な魔方陣を作り出していく。

そして、一誠は叫ぶ――

 

「サモン!おっぱい!」

 

***

 

さて、兵藤先輩が変なことをして、目立ってるおかげでそろそろこっちも仕事が出来そうだ。

 

「ロスヴァイセさん、お願いします」

『わかりました。術式を転送します』

 

魔方陣の中心に現れたグレモリー先輩を横目に作業に移る。

俺の仕事は九尾の狐の救出、開放だからな。

曹操らが仕組みをべらべら喋ってくれたおかげで、作戦はすぐに決まった。

 

単純に、この術式で京都の力が集まる先を俺にする。英雄派の「九尾の狐に力を与える」術式を悪用しようってね。種族的には同じだし。

薬か術かで正気は失ってるかもだけど、肉体さえ取り戻せばそこら辺は京都の人らに丸投げできる。

で、あとはついでにその力を英雄派に味わってもらおうって寸法。

 

「!

 そう――」

「しーっ」

 

九尾の狐に近づいた俺に気づいて声をかけようとした匙先輩を制し、巨大な九尾の狐に飛びつき力を奪っていく。

力を奪うと巨大化した九尾の狐が萎えていくが…

まぁ兵藤先輩がグレモリー先輩の乳を触って送り返して、急に手に入れた力でなんか大暴れしてるから目立たないだろう。

あぁ、自分で言語化すると余計にムカつくな…

まぁそれはそれとして、備えておこう。

 

「すいません匙先輩、九尾の狐に対処するんで、楽になったらでいいんで英雄派から見えないように壁してくれません?

 そんだけデカくなってるんだから楽でしょ」

「あ、あぁ…」

 

九尾の狐は、段々動きを遅くし、沈静化していく。

そして、完全に人型にまで戻る。

その代わりに俺は、流れてくる力を制御するため展開してた尻尾がクソデカくなったが。

 

「…そう言えば、そうまも九尾の狐だったんだよな」

「そうですよー」

 

九尾の体調チェック、完了。

他に術は…かかってない。

 

で、この結界。中から開けるのはくっそ難しいが、外からだと比較的ラクなんで、外の『俺』に開けてもらって、九尾の狐を霧化させて、外の『俺』に渡す。

救助完了。

後は外の『俺』と京都の職員の人らに任せよう。

 

バジジジッ!バヂヂヂッ!

 

鳴り響く音の方向に目を向けると、空間が裂かれつつあった。

…『絶霧』の空間にあれだけ巨大な裂け目を作るとか、とんでもない。

少なくとも、先程の兵藤先輩の砲台以上の出力がある相手だろう。

最悪は、英雄派のお望み通りの相手だが…

 

現れたのは、10メートルちょいの細長い東洋風なドラゴン。九尾の狐やヴリトラよりちょっと大きいか。

グレートレッドの別形態、とかではないよな?

身にまとう視認出来る程の濃厚なオーラもあるが緑色だし。

 

で、どうも曹操が言う所には、あれが玉龍らしい。

となると、以前の話からあの龍の背中に乗っているのは初代孫悟空って事か?

 

その後、英雄派は孫悟空に挑み、やられていく。が…

なんだかなぁ。

あ、孫悟空が霧使いの攻撃いなしたら術式の制御完全に外れたわ。まぁもうグレートレッドはこないだろうしいらないんだろうか。

 

…で、そんなすげー孫悟空さん、そんだけ強いならそのまま英雄派潰してくれません?英雄派ってテロリストよ?しかも構成員じゃなくて幹部とかトップよ?

なんか勿体ぶって今更出てきた割には…

と言うか、明らかに欠点指摘して伸ばそうとしてるように見えるんだが?

曹操とは以前からの知り合いっぽいし。

 

今も、逃げようとする英雄派へ追撃するのを、乗り気になった兵藤先輩に任せてる…

なんだろうな?

お仕置きとか言ってるし、更生させたいんだろうか?そいつ現行テロリストなんだけど?

あ、兵藤先輩の射撃攻撃の軌道が変わって曹操にあたった。

さっきの急速パワーアップのおかげかな?それとも孫悟空が何かしたんだろうか?

絶対さっきまでの兵藤先輩じゃそんな事出来なかっただろうしなぁ。

 

で、曹操は兵藤先輩にライバル宣言して帰って行きましたよ、っと。

そっちが目的だったのかな?

…俺はこの溜まっていく力とフラストレーションを何にぶつければいいんでしょうね。

や、力は京都のパワースポットに戻さないとだけど。

 

「…終わった、のか?」

 

匙先輩がそう呟き、人型に戻り、緊張の糸が切れたのか安堵か倒れる…前に尻尾で掬い取る。

ただの体力の消耗かな。

少なくとも外傷は大したものはない。一応アルジェントさんに診てもらえばいいか。

 

 

 

「先輩方、お疲れ様でーす」

 

そのまま集まってるグレモリーチームに近づいていく。と…

 

「は、母上は!母上はどうしたのじゃ!?」

「相当消耗されてたでしょうし、戦闘に巻き込まない為に外の術者さんに渡しました。

 もう少ししたらここも解除されるでしょうし、すぐ会えますよ」

 

そう告げると、ホッとしたような、どことなくがっかりしたような反応を見せる。

え?何?もしかして自分で助けたかったの?その割にはなーんにも戦力になってませんでしたけど?

 

「つーか、なんでお前がここに居るんだよ。

 グレモリー領はどうしたんだよ?」

 

なんて思ってたのがわかったのか、早速兵藤先輩がつっかかってくる。

 

「依頼されたからですよ。

 グレモリー領でなんかあったんですか?」

「依頼って誰にだよ」

 

どうやら俺の疑問に答えるつもりはないらしい。

この人、なんか歪んだ年功序列意識あるからなぁ…

 

「セピアさんにですよ」

 

当の本人は、悪魔に貸しを作りたくないって言ってアルジェントさんの治療を断って、既に俺の尻尾をベットに休んでるけど。

 

「…その人とどういう関係なんだ?」

 

その治療を断ったのがよっぽど腹に立つ事だったのか、機嫌を悪くしながら尋ねてくる。

 

「弟子です」

「弟子…ってことは、お前あの人に手取り足取り!?」

 

…どうもそうじゃなくて美人と知り合いな事への怒りだったらしい。

相変わらずっすね。

 

「おーい、赤い坊や。

 そろそろフィールドが解除されるからホテルまで送るぜぃ」

 

見れば兵藤先輩以外の悪魔たちは、既に全員玉龍さんに乗っている。

俺は二条城に集められた力の制御があるから二条城から離れられない。

 

「あ、はい、行きます!

 そうま、九重に何かあったら許さねぇからな?」

「はいはい」

 

何かってなんだよ。

覗きするような脱衣させる技持ちの人に言われたくないんだけど。

 

 

 

その後、九尾の狐…八坂さんと九重を、迎えに来た京都の妖怪に引き渡し、そのまま俺は京都の術者さんに手伝ってもらって集まった力を元に戻した。

まぁそんなすぐに出来るもんでもなく、徹夜。朝日がキレイだ。

 

あと、京都の痴漢化事件は案の定収まっていた。

まぁ原因が原因だからだろう、兵藤先輩の一連の行動あたりからは発生してなかったらしい。

更にその少し前の時間に、アザゼルも原因に気づいたらしく、妖怪を通して堕天使の技術提供で被害者加害者全員以前の状態に戻すことに成功したとか。

結局、今回得したのは三大勢力だけのような…

いや、俺も俺だけの、三大勢力を挟まないコネクションが出来たから無駄ではないか。

 

さぁ、これから帰って学校行かないとな…

俺は修学旅行じゃないし。

あ、そうだ。グレモリー先輩たちにも報告しないとなぁ?

昨日、京都で兵藤先輩らが英雄派と戦ってましたよ…と。

報連相は大事だからな。

 

 

 

で、放課後、兵藤家集合。

2年組は正座させられてる。ちなみにここは洋間。

兵藤先輩はこっちを睨んでるが…俺が言わなくてもバレるっての。それなら先に言う方が誠実に思われるだろ?

 

「どうして知らせてくれなかったの?

 ソーナの方には連絡が入ってたのよ?

 冥界に行ってたとしても連絡を入れる事は出来たでしょう?」

「こちらから電話をした時にも、少しでも相談がほしかったですわ」

 

早速圧をかける二人。

 

「で、でも皆さん無事だったわけですし…」

 

居心地の悪さを感じたのか仲裁に入るギャスパー。

ぶっちゃけ詰問するなら本人らだけでやってほしいしな。

 

「イッセーは現地で新しい女を作ってたから言いにくかったんだろ」

 

アザゼルが茶化すように言う。

 

「しかも九尾の娘だ」

「いやいや!九重とはそんなのじゃありませんって!」

 

圧を増していく二人から目をそらしつつ、兵藤先輩は弁明をする。

 

「そうか?あの八坂を見た限り、将来相当な美人で巨乳に育ちそうだぞ?」

「…そ、そうかもしれませんけど、でも俺はちっこい子への趣味はありませんって!」

 

つまり、将来女が増えるのを否定はしないわけだ。

 

「ま、イッセーで遊ぶのはこのくらいにしておいて。

 リアス、劇的なパワーアップも出来たんだし、大目に見てやってくんねぇか」

「それは…まぁ、喜ばしい事だけど。

 けど、いきなり召喚されて、む、胸を…」

 

グレモリー先輩が赤くなってるけど…

なんか今更だなぁ。

好きでもない内から、婚約破棄のためだけに処女散らそうとした人と同一人物とは思えん。

 

「あぁ、そう言えば…学園祭前にフェニックス家の娘が駒王学園に転校してくるんだったか?」

「そのように聞いてますわ」

 

アザゼルが確認を取ると、姫島先輩が肯定する。

他のメンツも驚かない。俺は初耳なんだけど、グレモリー領に行ってた時に聞いたのかな?

 

「レイヴェルがですか!?マジっすか!」

 

妙に興奮してる兵藤先輩。

 

「あぁ。リアスやソーナの刺激を受けて日本で学びたい…とかな。

 学年は1年。で、もうそろそろ手続きが済みそうって話だったか」

「しかし、なんで急に転校して来るんでしょうね?」

 

日本で学びたいって言ってんだろ。

グレモリー先輩もシトリー先輩も3年だぞ。急じゃないと時間ねぇだろ。

…まぁ本当の理由じゃないんだろうけど。

 

「ま、そういうことなんだろうけどな。

 リアスらは大変なもんだ」

 

アザゼルが兵藤先輩を見てニヤつきながら言う。

…はぁ。

アザゼルは楽しそうだが、処女もらうとか言ってたヤツの鈍感恋愛ストーリー見物の何が面白いんだろう。

 

***

 

「いやー、助かったよ!」

「いえ、自分の知り合いが持ってきた話ってだけですから」

「それでも、だよ!

 これで妖怪の連中に恩が売れたってもんだ!

 さぁさぁ、飲んで飲んで!」

「ありがとうございます

 …! これ美味しいですね」

「だろう?」

 

とある料亭。

そこでは京都の裏関係者の事件解決の打ち上げが行われていた。

 

「私も聞いたが現場の者も助かっていたそうだよ」

「いえ…自分にはあれだけしか出来ませんでしたから。

 もっとうまくやれれば、未然に防げたかもしれない…なんて思ってしまいますね」

「…そうだな。

 赤龍帝とやら、あれだけ多くの人に迷惑をかけてまで一体何がしたかったのやら」

「妖怪の方たちはなんと?」

「恩人の情報は売らんとさ。

 …何が恩人だ!そいつは千人もの人間を操ってたんだぞ!」

「まぁまぁ、落ち着いて下さい」

「…すまない。

 しかし、君はもう京都を離れてしまうのか?」

「はい。

 この瞬間にも日本の何処かに何者かの被害を受けてる人が居るかも知れませんから」

「そうか…

 まぁ今は疲れを癒やしていってくれ。

 それと、もし近くに寄る事があったら足を運んでくれ。歓迎するよ――

 東海林 壮真くん」




>武器
既存の武器にソウル合成してそれっぽいのを再現してた設定
今回は光属性の強い武器をベースにしたよ、って話

>一技能を複数人で使い分け
分身Aと分身Bがどっちも魔力を使うと実力の100パーは扱えない設定

>修学旅行は修学旅行でしっかり楽しんでから救出に行く
焦ってるようには思えない
それまで何時間あったのかは知りませんが、行動1時間前に作戦会議してますし

>10時過ぎ
「就寝時間前に1時間後に集合して」からだったので
多分高校生の就寝時間は10時くらいかな、と

>バス
なんで?
相手テロリストよ?
バスジャックされなくてよかったね

>アザゼル抜き
なんで?
なんでアザゼルは行かないの?初戦は一緒に戦ったじゃん?曹操も参加してねって言ってたじゃん?
そもそも二条城に居るって言ったのに上空から探す意味は?二条城に行って居ないの確認してからじゃダメなの?

>九重同行
一誠が連れて行こうと思った瞬間に転移するのズルいと思う
でも、何かの鍵になるかも!と思ったけどなりませんでしたね
居なくても孫悟空がどうにでも出来ましたし
これ、一誠が連れて行ってたら九重がケガしたり死んだ時どう責任取るんでしょう

>出てこようとしたその瞬間
なんか原作ダベってばかりで問答無用!したくなるけど
そういうのするとマジで会話なくなる

>九尾の狐を死なないように制御
バカ正直に戦わずゲオルグ狙えよ、と思っちゃったからゲオルグ狙えない理由捏造

>あまり遊びすぎないようにな
多分こういう事が言いたかったんじゃないのかなぁ

>千体はありそう
原作だと千人の痴漢とその被害者が居たみたいですね
改変したここだと被害者はほとんどいません
「触りたいのに触れなかったエネルギー」が代わりに役目を果たしたんでしょう

>ゾンビ
「痴漢にさせられた人が触ったら、触られた人も触りたくなる」からゾンビって例えられたみたいです
でも曹操ってそれを知ってた?
更に言うならそんな描写原作でされてました?

>孫悟空が霧使いの攻撃いなした
ちなみに、孫悟空がゲオルグにお前も神器に潜れって言ってますが
それって
神器に魂を封じるタイプだからこそできるやり方(8巻)
らしいですね
絶霧は何の魂が封じられてるんでしょうね

>英雄派戦後の九重
どうしたんでしょうね
ホテルに送った後九尾の所に戻るって言ってるから親子で置きっぱなしなんですかね
置きっぱなしにする必要性がわかりませんが

>連絡
ソーナに連絡した時点で箝口令解除されてますよね
なんでメールとかしなかったんでしょ

>将来女が増えるのを否定はしない
そういう事でしょ
一誠の説明じゃ「九重は俺にもう既に惚れてるけど、ちっこい今は彼女にはするつもりがない」です
九重が俺に惚れてるわけないじゃん、といった感じではないんです
九重から恋愛感情を持たれてるとちゃんと認識してるとしか思えません

あ、ちなみに>俺はちっこい子への趣味はありません
8巻(時系列は2巻後)で発育不足の女子の着替えで喜べる、って言ってますね

>なんで急に転校
ここおかしいと思わなかったんですかね
いや、そりゃ自分のもガバい所はあるでしょうし、下手くそでしょうから
完全なモノ以外認めないなんて事は言うつもりも無いですしそもそもいえませんが
それでも
一誠はここ「レイヴェルの転校理由はさっきの日本で学びたいのは嘘」とでも思ってないとこんな事言えませんよ
それとも自分のは落丁なだけでそういう説明がされてるんですかね

>最後の
偽名・別の顔で色々活動させてます、って説明(など


元ネタ
>グランドクロス
暁月や蒼月のユリウス・ベルモンドの技
リヒターのアイテムクラッシュも同名ですが、ちょっと違う感じ
なぜこっちかと言うと、セピア・ベルモンドさんはユリウスがモチーフ元っぽいから(色即是空するし

あと、前回言い忘れてましたが、
セピアさんは出てるゲーム本編でドゥエドゥエしたり色即是空は出来なくて(少なくとも今は
公式の漫画の方でしかしてませんので…

漫画面白いですよ
自分みたいに近場のゲーセンにない人でも見れますし

>一日一回
ブラフで2回目、3回目と某天軍の剣みたいに強襲しようと思ったけど入れられませんでした

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