ハイスクールDevil castle×Dracula 作:二痔升
忘れないためにタイトルはそのままにしておきます
やりたかったことまで詰め込んだので長め
魔獣騒動が終わっての休日。
どーもグレモリー先輩関連の訪問者が来るらしい。
らしい、ってのは誰が来るのか一切言わないから。
アザゼルの教育の賜物だな!
んで事前に集まる必要もないとか。
となると、公的な立場の訪問ではないということかな。
とは言ってもこの状況の…オーフィス抱えた兵藤家に来てもいいと判断する相手なんて魔王、かその妻くらいだろう。
とおもいきや…
「お久しぶりです、皆さん。ミリキャス・グレモリーです」
え?いいの?
オーフィスのこととか把握済みなの?
と思ったんだが、それには誰も触れずに何故かグレモリー眷属の見学がしたいのだとか。
見学?何の?
グレモリー先輩いわく、
「ミリキャスもいずれ眷属を作って人間から契約を取らないといけなくなるの」
とのこと。
あれ形骸化してるんじゃなかったっけ?
…ま、何にせよ、地球の貨幣・物品が冥界に流出しまくりなのは変わらんが。
あ~早くそんなことしないといけなくなる状況をブチ壊して差し上げたい。
そんな事を考えてる俺を他所に、和気あいあいとしてる周り。
「ゼノヴィアさんは聖剣使いですよね。レーティングゲームも見ました。すごいパワーで相手を倒す姿は格好良かったです!」
…ん?
さっき言ってたのは…
朱乃姉さま呼び、からのアーシア姉さまはリアス姉さまの妹のようなヒトなので僕にとってもアーシア姉さまです!
って話だったよな。
んで兵藤先輩が紫藤さんとゼノヴィアさんのことを聞いたって下りのハズだが…?
「けれど、せっかくたくさんの聖剣の能力があるのですから、もう少し剣の特性を使った方がもっとテクニックタイプとしても戦えると思います。
例えば…」
ゼノヴィアさんらは身内とは思ってなくて戦力としてしか考えてねぇってことかな?
…しかし手札持ってるのがテクニックタイプってのは子供にまで浸透してんのな。
そもそも。
いっくらでもトレーニングできる時間があるならその言い草もわからんでもないんだが、一応今は対テロリストで即戦力が居るわけで、そんなすぐ習得して実戦投入出来る練度になるまでどれくらいかかるんだっつーの。
ゲームでも今現在の決められたスキルポイントを効率よく使うなんて当然だと思うんだが…
平に伸ばした平均的キャラより特化してピンポイントでも役に立つ方が使われると思うし。
まぁ能力をあれもこれもと搭載したい気持ちはわからんでもないがな。そもそも俺自身がそうだし。
ヴァンパイアハンターで吸血鬼で魔王の転生者で…
なんにせよ結局は結果しだい。
名采配か、はたまたただただ外野が無駄に不得手な方向に意識させただけか。
そう思いながら茶をすすっていると、ミリキャス…様はこちらの方に向き、
「ショージさん、魔獣騒動の報道見てました。巨大なモンスターをやっつけるのは格好良かったです!」
「ありがとうございます。とは言ってもたまたま相性が良かっただけなんですけどね。
それに、代わり映えない映像が続いてつまらなかったでしょう?」
「いえ、他の映像の流れる右上にあったので退屈ではなかったです」
俺ワイプだったのか…
と、一騒動ありそうな魔王嫡男の訪問があったのだが、魔王眷属全員が来た程度で何も起こらなかった。
これで旧魔王とかの鉄砲玉がミリキャスさらおうとして、戦闘データが撮れるとかあればよかったんだが…
でもまぁ、オーフィスを匿っている兵藤家に魔王サーゼクス一行が集まったことの証拠は撮れたな。
まぁこれだけじゃどうにもならないが、無価値にはならんだろう。
「──以上、魔獣騒動の功績を称え、惣間正二を上級悪魔相当とする」
「ありがとうございます。身に余る光栄です」
魔獣騒動での被害から冥界の復旧もだいぶ進んだ頃、魔獣騒動で活躍した者たちへの授賞式。
それに俺の上級悪魔昇進も組み込まれてた。
なのでここには俺以外に魔王様直々に勲章を受け取って泣いてるやつとかも居るが…
グレモリー先輩やシトリー先輩の話によると、本当は上級悪魔昇格ではもっと長々と式をするらしい。王冠被らせられたりとか。
そこらへんは感謝かな。
あとは悪魔の駒と材料が同じらしい石碑に俺の魔力を登録すれば仕事は終わりだ。
魔力を纏わせた手で石碑に手を置く。
手を離すと、俺の魔力の色──乾いた血のような暗い赤色の手形が浮かび上がる。
色が色だけに殺人現場の跡みてぇ。
唐突すぎて喜びとかよりそんな考えしか浮かばない。
仕事は終わったので駒ガチャ。
リセマラなしの一発勝負。
上級悪魔昇格の場合、小箱を受け取ったらその時点で開いてその場のヒトにどんな駒を受け取ったかをアピールしないといけないらしい。
理由の説明はなかったけど、以前変異のありなしでグダグダ揉めたんだろうなぁ…と察せられるあたりがもうね。
まぁ俺は変異もらっても…とおもったら兵士の一つが『変異の駒』だった。
物欲センサーかな。
「よし、お前ら伊豆に行くぞ。この間の魔獣騒動、あれの慰安旅行だ」
放課後、職員会議を終えたアザゼルが部室にやってくるなりそう言い放った。
曰く「お前たちは信じられないくらい騒動に巻き込まれて体や心が傷ついてるから」らしいが、俺はアザゼルが自分の目的のダシにしてるとしか思えん。
まぁ本心からだったとしても、普段の行いがね…
「あ、アザゼル先生、魔獣騒動の慰安旅行って言うならロスヴァイセさんも構いませんかね?」
「ん?いいぞ。どうせ貸し切りにするつもりだしな。
…そういえばあいつ、この間車乗ってたよな?」
「えぇ。その方が便利なんで」
「よし、それじゃ俺も車出すから全員車で行くか。魔法陣で一瞬も早くていいがたまには旅の風景を楽しむのもアリだろ」
そんなわけで土日の一泊二日旅行。
ロスヴァイセさんに運転してもらって家から集合場所に。
アザゼルは青い5人乗りスポーツカーで、こっちは10人乗り(俺+メイド9人で出かけてた時のもの)。
全員で14人だから普通に足りるんだが、どうもアザゼルの運転が酷かったらしく乗りたがらないのでじゃんけんで決めることに。
見てはないが「堕天使に人間の法定速度は当てはまらないのさっ!」とか言ってるあたりお察し。
つーか法定速度は人種じゃなくて道路で決めてるんだが…免許持ってんのか?
アザゼルの場合無免許でも驚かんが。
普通に乗りたがったゼノヴィアさんと、平気なのだろう嫌がらなかったオーフィス、あとは向こうの運転手のアザゼル、こっちの運転手ロスヴァイセさん、それとロスヴァイセさんといざって時に交代できる俺。
残りの9人でこっちの車に乗車8枠を争ってたんだが、最後の方に残った男三人から木場先輩が勝ち抜き、ギャスパーと兵藤先輩が残ったら、2人乗れるぞとアザゼルが連れて行った。
背中は少し寂しそうではあったが、アザゼルが最初に大人しく運転してりゃあそこまで嫌がられなかったんだから自業自得なんだよな。
途中休憩を挟みながら3時間半ほど、目的地に着いた。
…アザゼル班になった二人はふらふら状態。
ギャスパーはともかく兵藤先輩は高速形態もあるのに。自分で動くのと動かされるのは違うのかな。
「お帰りなさいませ。いーっひっひっひ」
宿に着いた俺たちを出迎えたのはテンプレ的な妖怪風のお婆さん。
…もうちょっと見栄え良くできねーもんかな、と思ったが、どうもここは悪魔や堕天使が贔屓にしてる旅館らしい。
この方が客寄せになるんだろうな。
「今日はお世話になりま──」
グレモリー先輩が固まる。その視線の先をたどると、そこにはグレイフィアさんが。
「ごきげんよう、皆さん。先にこちらでお待ちしてました」
「グレイフィアさん!?」
「オフをいただきました。学生たちだけでの旅行は色々と危険でしょうから。今日は引率として参った次第です」
さっそく大げさにリアクションをかます兵藤先輩。
そして視線が私服に行った意図を理解して挟まれる補足。すげーな。もはや赤龍帝係じゃん。
しかしアザゼルは保護者たり得ないと思われてるのな。残念でもないし当然だが。
「リアス、まさか、旅先でハメを外そうなどとは思ってはいなかったでしょうね?」
グレモリー先輩が先程固まった理由はコレらしい。
何?そういうの禁止されてんの?
まーそういえばグレイフィアさんはグレモリー先輩の処女ポイ捨て阻止してたしな。
「高校生が温泉旅行の名目で想いを完遂させるなど、百年早いですね。
いつも言ってるでしょう?
まずは殿方と普段の生活で成就させなさいと。旅行で盛り上がるのはそれからでも遅くありません」
うーん、どういうことが言いたいんだろう。
旅行バフでイチャコラできても普段の生活で出来るようにならないと意味ないよ!ってことかな?
普通なら余計なお世話なんだけど、確かに告白を競技場の盛り上がりバフでやって、それから進展なさそうなカップルだしなぁ。
「まーまー、今日は無礼講ってことでいいじゃねぇか。
お前さんも温泉浸かって日頃の疲れを取れって」
アザゼルがグレイフィアさんを温泉に追いやって話を打ち切ろうとするが、それは悪手だったようで、むしろアザゼルが手を引かれ、引っ張っていく。
「いい機会です。あなたにも色々を話さなくてはいけないことが山のようにありました」
「んじゃ俺らも部屋に行きましょうか」
アザゼルとグレイフィアさんの攻防戦が始まるが音頭を取る。
「てめっ、そうま!おい、誰か助けろ、おまえたちぃぃぃ!」
無視。
「薄情者おぉぉぉ!」
さて、部屋。
何故か旅館貸し切りなのに男は大部屋の一室らしい。
かと言って女性陣も個室というわけでもなく三人三部屋。
そりゃ全員個室には旅館の部屋が足りないが、もうちょっとどうにかならんかったものかね。
とは言っても実質スイートルームみたいなもので、一般的な部屋がいくつも入るサイズではあるから個室がないと嘆くのも贅沢ではあるが。
荷物も置いて、浴衣に着替え、現在14時。
ここは山の中で客層は裏のみ。故に人払いもされていて、ちょっと出歩いて…なんてことはできない。
まだ夕食の時間までもだいぶある。
というわけで、軽めに風呂に入ってお土産買って、即ゲームコーナー。
…う~ん、名前が違うだけの知ってるゲーム、ではなく、微塵も知らないゲームしかねぇな。
これガチでこの世界のマイナーゲーなのか、それとも俺が元ネタ知らないだけで名前改変されたゲームなのかわからんのがなぁ。
文句言いながらもなんやかんや楽しんで夕食。
…なのだが。
失敗した。
最近家では酒類を飲んでなく、出先だし悪魔と堕天使しか来ないし、と飲酒。
そして、ロスヴァイセさんにも酒を勧めてしまった。
飲んだ経験があるらしいからアル中とかは大丈夫と思ったのにまさか、あんなに絡み酒で酒乱だとは。
ヴァルキリー時代の愚痴を聞きながら飲むのに付き合って、許容量超えてダウンしたら回復するまで介抱して…とやっていたら日が変わってしまった。
ま、本人のガス抜きになったならOKか。
それに愚痴を吐き出す時にウチに来たことは挙げてなかったし、そこまで不満はなさそうで良かった。
ある程度回復したロスヴァイセさんを部屋に戻し、深夜に混浴風呂にヒトが大量に集まるのを感知しながら俺も部屋に戻って寝るか、と思ったら塔城さんから呼び止められる。
よかったら今から二人で話がしたい、とのこと。
即OKしたが、ふと思ったら俺ら、付き合いだして一月経ってないくらいなんだよな。
なのにオーフィスやら学校のテストやら英雄派やら魔獣騒動やらで忙しかったから、恋人らしいことなんもできてねぇわ…
いや一応ほぼ毎日顔合わせてたり、一緒にご飯食べたり家まで帰ったりはしてたんだけど、遊びに行ったりとかはまだできてないんだよなぁ。
さっきのゲームコーナー程度じゃノーカンだろうし。
「話ってどんな?」
「……」
部屋と風呂の動線に被らない場所に移動してから話を聞こうと思ったが…
うーむ、いつもより仏頂面だな。
「…ロスヴァイセさんを眷属にするんですか?」
「え?しないしない.
というか眷属化自体があんまりね」
「じゃあなんで、私を…」
そう言いよどむ。
そこまで言われたらいくらなんでも察しが付く。俺が駒もらったからトレードするものだと思ったんだろう。
でもそうじゃなかった。そして今日俺はロスヴァイセさんを連れてきて、介抱して…だからこれか。
「これは秘密なんだけどさ」
認識阻害の術を使いながら口を開く。
「俺には目標があって、それをしようとするとグレモリー先輩らとは戦う可能性があるんだよね」
「…え、部長と?」
「そうそう。まぁ俺も進んで戦いたいってわけじゃないんだけど。
それでもやっぱ恩人らしいし、可能性がある以上は…ちょっと言いづらくてさ、それが君のことを傷つけたのなら、ごめん」
頭を下げる。
「…ちょっと、顔を上げてください」
「いや~、俺も一応さ、白音のことを配慮してた…つもりだったんだけどさ、いざこう実際に相対して考えるとやっぱ一方的だったかな、って。
それもついこの間やらかしたのに」
思い出すのは以前黒歌が来た時のこと。
あの時は押し付けだったが今回は選択肢提示もできてない。
「何にせよ私はあなたについていくつもりだから。
私のことが要らなくなるまで」
思考が自責の念に囚われていると、いつの間にか隣に座った白音がそう声をかけてくる。
「え?」
「嫌だった?」
「嫌じゃないけどさ、そんなすぐに決めていいの?」
「いいの」
「いいのか…んじゃ、帰ったら先輩に話しておくよ」
「そんな事よりも」
だいぶ大事な話だったと思うんだがな。
「その…また、発情期が、ね?」
おや、一緒に訓練した時に体調管理は毎回チェックしてるが、そんな素振りはなかったはずだが…?
まぁそうじゃないんだろうけど。
今回の旅行の間に仲を深めようと思ったのは、グレモリー先輩や姫島先輩だけではなかったというだけだ。
つまりこれは白音なりの甘え方と言うか、なんというか。
…部活グループで来た時に、というのは俺はまぁ、万が一見られたりとか考えるとあんま好きじゃないけど、背徳感とかそういうのはすごいかもね。
レーティングゲームで半裸になるから見られるのに慣れてるのかも知れないが。
「おぉ、そりゃ大変だ。頑張って治療するよ」
「ふ~」
色々と終えて、お互い汗を流すために…せっかくなので混浴露天風呂へ。
騒いでいたようだが修復したのか争った形跡などは残ってなかった。
「…なんかおじさんみたい」
あぐらをかいている俺の足を椅子代わりにしながらそう言ってくる白音。
肯定はしたくないが否定もできないので、無言で湯から露出した白音の肩に掌でお湯をかける。
「お、朝日」
そのままのんびりしていると、空が明るくなってきて、日の出が差してきた。
「大丈夫?眠くない?」
「ん。大丈夫。
…こういう落ち着いたのもたまにはいいね」
「今年はずーっと戦ってた気がする。
今度は二人っきりでどっか行こうよ」
「うん」
そう嬉しそうに言うと背もたれにしていた俺に振り返り、抱きついてきてキス。
「…それじゃそろそろレイヴェルも起きるだろうし先に戻るね」
「俺はもうちょい入ってずらして出るよ」
風呂から出ていくのを見送る。
俺は懸念していた問題が解決して大喜びしたいところだったが、まだこれは一歩目に過ぎない。
目標をバラして、それでも一緒に居てくれるのが確定するまでは祝賀会は延期だ。
…それに今日は二日酔いのロスヴァイセさんの代わりに運転しないとだし。
そして朝食…のために集合した時。
「グレイフィアの様子がおかしかった?
夕飯にちょっと飲んでたみたいだからそれだろうな。
サーゼクスに聞いたことがあるが、酒が入るとちょっとお茶目になるらしいぞ」
兵藤先輩は昨日のグレイフィアさんの様子が気になったみたいで、アザゼルに聞いていた。
ちょっとお茶目、で義妹の旦那予定と一緒に風呂に入るとは思えんがな。
今も昨夜のことを思い出してだろう鼻の下を伸ばしてるし。
「あ、あの皆さん…?どうして不機嫌なのですか…?」
その兵藤先輩の姿を見て頬を膨らませてる女性陣に気づき、恐る恐るといった感じで兵藤先輩は声をかける。
『知りません』
全員に一蹴されていた。
嗤える。
嗤えるが、笑えない。下を見て安心してはいかんからな。反面教師にすべきだ。
しかし兵藤先輩は恋人やハーレムを欲しがっていたよな?それも尋常じゃないくらいに。
未だにあの状況をハーレムと認識できてない可能性はあるが、グレモリー先輩が恋人なのは自覚してるはず…だよな?
なんで混浴風呂にまで押しかけてきてくれたことを喜ばずスルーし、グレイフィアさんの裸体の記憶を有難がるのだろう?
他人のだぞ?もっと喜んだら実利がある相手がいるだろうが。
いや、もしかして他人のだからありがたいと感じているのか?
そう考えながら木場先輩に諭されている兵藤先輩を見ていると、未だになぜ女性陣が怒っているかもわかってなさそうな感じだった。
…なんかもう、理解しようとするだけ無駄なのかもしれないな。
「つーわけで、トレードお願いします」
「…お願いします」
翌日放課後、早速俺はグレモリー先輩にトレードのお願いをしにいった。
「えぇと、その話は今ここでしても大丈夫かしら?」
「はい、大丈夫です」
以前の恋人関係のことは内密に頼んだからか、今部員全員の衆人環境のこの場でトレードの話をしてもいいか気になるみたいだ。
隠し続けるのも無理があるし言うことを話し合って決めたので構わない。
…それに、もしも黙り続けていたらまた白音が何か不安に思う可能性もある。
「…ふぅ。遅かれ早かれこうなるとは思っていたのだけれど、流石に早すぎるわね」
「ちょっとそれってどういうことですか!?」
出たな、黙っていた原因。
あんのじょう、グレモリー先輩の呟きに即反応する兵藤先輩。
グレモリー先輩はこちらに目線を送ってくるがあえて無視して自分の口から説明する。
「あぁ、俺は塔城さんとお付き合いしてるんで。
それで予想してたんでしょうね」
「えぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!」
相変わらずうるさい。
でもまぁこれも今回限り。
「知らなかったぞそんなこと!」
「え、兵藤先輩に言う必要あります?グレモリー先輩ならまだしも」
言外にお前に決定権はないんだよと言ってやる。
グレモリー先輩にさっさとトレードして貰えばそれで終わりだ。
「けっ、イケメンはいいよなー!」
それは、いつもの聞き慣れたセリフだった。
相手に対し、言い返せない時の苦し紛れ、八つ当たり。
自分にはない恩恵を羨むような、ただの嫉妬。
だがこの時だけはすぐ苛立ちを感じた。怒りがこみ上げてきた。
自分でもわからないままに。
自分が怒っていることを認識してから、もしかして「塔城小猫は人を顔だけで判断した」かのような物言いに感じて嫌だったのかな、とかどこか冷静な部分で思い始めた。
「別に顔がいいからって得ばっかでもないですけどね」
冷静じゃない部分の方が大きかった。
こんなの無視すりゃいいのに、流せばいいのに、何でもいいからやり込めてやろうと思ってしまった。ムカつくやつをどうにかして黙らせてやりたいと思ってしまった。
そんなに怒ってる割に、声はいつもどおりだった。
「俺なんかそれで童貞より先に処女失ってますし」
いつかこのネタで言い返してやろうかな、なんて思ってたからスムーズに発言が出てしまった。
そして部室が無音になった。
さっきまで恋愛話にわーきゃー言ってたのが嘘みたいだ。
「で、どうです?トレード」
「えっ、えぇ…こ、小猫の気持ちを尊重してあげたいのは山々なのだけれど、流石にレーティングゲームに戦車なしで挑む、というのは無謀だと思うわ」
「…そう、ですか」
うなだれる塔城さん。
でもまだグレモリー先輩のお話は終わってない。
「だから、今後まだ私が戦車を見つけてない時にレーティングゲームに出ることになった際、一時的に戻ってくれるならトレードに応じるわ」
「ではその条件でお願いします」
先程の一件のおかげか、今度は誰も何も反応しなかった。
俺とグレモリー先輩は向き合うように、俺は戦車のコマを持って、グレモリー先輩は魔法陣の中に塔城さんを立たせ、それぞれ魔法陣の両端に立つ。
すると、俺とグレモリー先輩それぞれの周りに自身の魔力色と同じ…向こうの赤いのは輝きといっていいほどだが、こちらはモヤのようなものが見えてくる。
…だが別に強制的に魔力を出させてるというわけではない。
おそらくは無意識的な魔力の視覚化だろう。
そしてコマと塔城さんもそれぞれ持ち主と同じ状態に。
コマとの間にレイライン的なのを感じる。
そしてそれが薄くなっていくと同時に、俺と塔城さんの間に段々と繋がりを感じていく。
繋がりが完全に切り替わったと思った時には、まとっていた魔力色も変わっていた。
「…これで終わりですか?」
「えぇ。簡単でしょう?」
簡単すぎてあっけないと言うか、ありがたみがないな。
そりゃトレードが一般的なわけだよ。
ホ○ケモンの交換より手軽だぞ。
「というわけだし、改めてよろしく」
「えぇ。今後とも宜しく」
トレードが成立してしばらく、塔城さんが今まで住んでいたグレモリー家の所有するマンションからうちのマンションへの引っ越しとかでドタバタしてる期間、どうやら兵藤家にテロリストのヴァーリチームの黒歌とルフェイが住み着いたらしい。
しかも話を聞いた感じだとアザゼルの手引だとか。
てーことはつまり、もう取り繕う必要がないと判断して、テロリストでも何でも有能そうなのを引き抜くモードに入ったってことか。
しかしこのメンツ、探知系よりだよな。だいぶ前回の冥府で映像を抑えられたのを警戒してるんだろうか。
「さてみんな、今日集まってもらったのは他でもないの。
今日から『魔法使い』との契約期間に入っていくわ」
テロリスト来訪からしばらくして、集合がかけられた日。グレモリー先輩は眷属にそう声をかけていた。
魔法使いと悪魔は密接な関係らしい。
何故かと言えば…
「魔法使いが悪魔と契約する理由は大きく3つ。
一つは用心棒として。
いざという時、バックボーンに強力な悪魔がいれば、いざこざに巻き込まれた時に相手と折り合いがつけやすいからよ」
「ヤクザみたいですね」
えぇ?兵藤先輩は今更理解したの?魔法使いとか関係なくそうだよ。
グレモリー先輩も苦笑いしながら肯定してる。
「2つめ、悪魔の技術や知識を得たいがため。
もっと言えば冥界の技術形態ね。魔法使いが研究に使うためにそれらが効力を発揮するの」
つまり自力で冥界に行けないレベルの術者が契約するってわけだ。
とは言っても、正々堂々と冥界に行けるヤツはわざわざ未成年の悪魔と契約する必要はないし、こっそり冥界に侵入できるやつは大体ヤバい奴らで悪魔全体から契約されにくい。
お互いちょうどいいんだろう。
あと気になったところだが、地球の魔法使いが冥界のアイテムを欲しい場合、何故か契約するしかない。
それ以外では他の悪魔と繋がりがある陣営を経由しまくってだいぶぼったくられるらしい。
…悪魔は地球に簡単に来て非課税で買えるってのに、その逆はだめなのか。
「最後に、己のステータスにするため。
強力な悪魔と契約すれば、それだけで大きな財産になるわ。
契約を受けた悪魔は、契約者が何かあった時の相談事を受ける義務が生じるの。
当然、相談を受けるためや有事の際には召喚されることもあるわ」
「まさか、私が魔法使いに呼び出される側になるとは…
人生とは面白いものだ」
言った言葉の割には複雑そうなゼノヴィアさん。
「そうね。異能に携わる人間なら普通は呼び寄せる側よね。
みんなはまだ魔法使いとの契約にピンときてないし注意しておくことがあるわ。
それは通常の悪魔の仕事での普通の人間との契約とは違うということよ。
通常なら件数をこなしたり、報酬が多いことが評価されて、相手のこと自体は明確には評価の対象とは異なるわ。
例えばあまり研究熱心でもない、簡単なテーマの魔法使いと契約すれば簡単に要求をこなせる…と思うでしょう?
でもそんな相手と組んでしまうと、この悪魔は魔法使いとの契約で何も悪魔社会に貢献するつもりがない、と思われてしまうのよ。
つまり悪魔の評価の加点は0…どころかその悪魔の能力を考えた場合、減点されてしまう可能性すらあるわ。
一度交わした契約は簡単には反古にできない…
魔法使いとの契約は相手と自分の実力とのバランスを考えて慎重に、最高の相手を選びなさい」
『はい!』
「さて、もうそろそろ時間ね。
みんな、魔法使いの協会のトップが魔法陣で連絡をくださるわ。きちんとしておいてね」
時計を確認したグレモリー先輩が、特にごく一部に向けて声をかける。
鼻の下を伸ばした誰かさんが、焦ったように取り繕う。
…が、相変わらず制服の前は閉めていない。
それでも座り直した直後に、床に見たことのない魔法陣が出現する。
「メフィスト・フェレスの紋様」
わざわざ木場先輩がそう口にする。一応偉いヒト来るんだからちゃんと黙ってろ。
そもそも事前に教えたい相手には教えておけよ…
魔法陣が光り、いつぞやのフェニックス婦人の時のように立体映像が現れる。
ハーフサイダーでオッドアイなのか髪も目も右が赤で左が青。
パッと見は男性。
『これはリアスちゃん。久しいねぇ』
「お久しぶりです、メフィスト・フェレス様」
『いやー、お母さんに似て美しくなるねぇ。キミのお祖母様もひいお祖母様もそれはそれはお美しい方ばかりだったよ』
「ありがとうございます。
みんな、こちらの方が番外の悪魔(エキストラ・デーモン)にして、魔法使い協会の理事でもあらせられるメフィストフェレス様よ」
俺はお世話にならんとは思うが、一応一緒に頭を下げ挨拶。
『や、これはどうも。メフィスト・フェレスです。
色々と自己紹介したいところだけど、詳しくは関連書物でご確認ください。
何しろ僕を取り扱った本は世界中に溢れているしねぇ』
そういうのって尾ひれついてそうだし「本物」の話のが気になるよなぁ。
自伝とか出してないのかな?
(初代ゲオルグ・ファウストと契約したあと、初代が亡くなられたあとも人間界にとどまり、そのまま協会のトップに位置したそうですわ)
フェニックスさんが兵藤先輩に耳打ちしている。
だから本人が来てからやるなよ。
「個人なんですよね?家とかじゃなく」
アホ!
初対面の偉いヒトにいきなり質問しやがった。
「メフィスト・フェレス様は悪魔の中でも最古参のお一人で、活動のほとんどを人間界で過ごされているの。
それと、タンニーン様の『王』でもあらせられるわ」
グレモリー先輩は説明の前に叱れ。
『タンニーンくんには僕の女王の駒をあげたんだ。
滅びそうなドラゴン種族をできる限り救済したいと言ってきてね。
やー、龍王の鑑だよ、彼は。
駒と言っても僕はゲームに参加しないし、冥界の騒動にも首を突っ込まないから、基本的に本人の自由にさせてるけどねぇ』
(メフィスト・フェレス様は、旧四大魔王様と同年代だそうですわ。
仲が悪かったようですけど。だから仲違いをして人間界にお隠れになったそうですわ)
お前も耳打ちすんなや。
『そうそうその通り。僕は彼らがだいっ嫌いでねぇ。あれをしろ、これをしろって要求ばっかり。
その点命令してこない今のサーゼクスくんやセラフォルーちゃんは大好きさ。
アジュカくんとは意見が対立することはあるけれど、別にそれは嫌ってるからじゃあないからねぇ』
ほれみろ、聞かれてるじゃねぇか。
グレモリー家に好意的だから許されてるだけだぞ。
…あれ、フェニックス家はどうなんだろう。婿入りの嫁予定だからいいのかな?
その後もグレモリー先輩とメフィストフェレスの話は続き…
「ではメフィストフェレス様、ソーナとは既にお話を?」
『ううん、残念だけどまだなんだ。
なんでも新しい眷属を迎えてから僕と話がしていっていうんでね。
あ、ちなみにサイラオーグくんやシーグヴァイラちゃんとは済んでるよ』
「そうですか、ソーナの新しい眷属…
話には聞き及んでおりますわ」
おや、アテはあったらしいが決まったのか。戦車と騎士、どっちも埋まったのかな。
『いやー、キミたち若手四王(ルーキーズフォー)はうちの業界でも、他の業界でも大人気だからね。
早く話をつけてくれと下に突っつかれて仕方なかったんだ』
(な、なんだルーキーズフォーって?)
早速兵藤先輩が耳打ちするが、話の流れで察しろよ…
もう目の前のヒトに聞けばいいんじゃねぇの?
と思ったところで部室の扉が開く。
「わりぃわりぃ、会議が長引いてな…
お、メフィストじゃねぇか!」
『やーやー、アザゼル。この間ぶりだねぇ。先にリアスちゃんと話をさせてもらってたよ』
親しげだが、前述の旧魔王政府の時に接触してたらしい。
…え、悪魔と堕天使なのに?と思ったが、魔法使いとのつながり目的だったようだ。
でもそういうことやってるからコカビエルみたいなのが出るんじゃねぇのかなぁ。
と思っている俺の前で、情報交換が始まる。
「なぬ!マジか!同盟拒否ってたあそこの神話体系が交渉を?」
『というよりも、例のドラゴンの件を掘り返してる輩がいるようでねぇ。
それについての話し合いがあったってだけさ。同盟には期待しないほうがいい。
基本、我々とは交流を拒絶しているからねぇ。
おかげで鎖国してる神話のまともなデータは取れずじまいさ』
「…その件か。
ま、古参の神話体系は他の勢力に対して完全に黙殺だからな。
たとえ自分のところの反乱分子がこちらに牙を向けても知らぬ存ぜぬを貫くだろうよ」
『それだけ信仰者を奪われたことに対して心を閉ざしているのさ。
特に僕ら聖書に記された天使、堕天使、そして悪魔は他勢力に酷く嫌われているからねぇ。
どれだけの神話を潰して、信仰と伝説を広めたやら。
今まで和平に応じてくれたところだって、腹の中じゃどう思っているのやら。
各神話の主神様の指導っぷりに期待するしかないねぇ。
…基本、僕らは本来の魔王と神を失っているから、神話体系の真実としては酷いくらいに弱者だ。
今の僕らが歩いている歴史は偽りとされていてもなんらおかしくはない』
「…それでも生きなきゃどうしようもなんねぇだろうが。
神や魔王が居なくても俺らは生きてんだからよ」
『ま、僕も今の魔王たちが好きだから、文句はないよ』
と、俺らがいることを考えてかどうか、ふわっとした言い方でちゃんとした情報は回ってこなかった。
しかしまぁ、なんだな。
自分らが加害者チームにいるのを理解してるのに、あんな被害者ムーブで和平しないのはおかしいと言いまくってたのか。
怒りを通り越したのか呆れしかねぇ。
自分のところの反乱分子、なんてそれこそ禍の団じゃねぇか?
天使と堕天使の被害者だろう神器持ちに、
悪魔が追い出した旧魔王、
あと和平会談の場に現れたのは魔法使い、
アザゼルの拾ったヴァーリのチーム。
あいつらに奪われたヒトたちに頭でも下げたのか?って話だよ。
そんな事を考えながらも、メフィストフェレスの送ってきた契約者候補のデータの仕分けの手伝い。
しかし俺が呆れてるのがわかってもこれだと、このデータを揃えてもってこいよ、とか電子データにしないのか、とか思って本命はわからんかもな。
ちなみに、契約希望者が一番多かったのはグレモリー先輩。
まぁグレモリー家があって、眷属を動かせる王だし当然。
その次がアルジェントさん。
本人は何故かオロオロしてたが…普通に治療能力は重宝されるもんだろうに。
だから聖女やれてたんじゃないのか。
『回復という能力はメリットが大きい。それに、どこの時代、どこの誰でも、それこそ魔法使いじゃなくても癒やしの力とは究極のテーマの一つだよ。
キミと契約を結び、回復の恩恵を受ける。
更にそれを使って富を得ることも容易に可能だからねぇ』
教会時代からそうだと思うけどなぁ。
治療して欲しい人は寄付金いくらですよーみたいなことしてたと思うよ。
「アーシア!相手は慎重に選べよ!あくどそうなヤツにだけは引っかかるな!いや、俺も一緒に選ぶ!」
早速過保護発動させてら。
『まぁ、僕たち協会が人選した者たちだから、そこまで非道な輩はいないさ』
相手のメンツ傷つけてる発言なんだよ、って教えてくれてるよなコレ。
ま、わかってねぇんだろうけど。
俺も説明してやる義理ねぇから言わねぇが。
「安心なさい。私や朱乃もアーシアの相談に乗るのだから、下手な交渉はしないわ」
過保護2。
そうやって純粋培養するのって教会と何が違うんだろうなぁ。
本人の思考力とかを養う機会を減らした結果が追放だって前例になったと思うんだが。
なぁ『魔女』さん。
まぁそれは置いといて、その次に多かったのが兵藤先輩。んで木場先輩、姫島先輩、ゼノヴィアさん、ギャスパー、と続いて塔城さん。
一応悪魔の枠組みだから応募は来たのよね。
俺がトレードしてからキャンセルもあったらしいが。
まぁグレモリー家の威光使えないしな。
そして最後に、俺。俺?
まぁ一つだけだが。
「あんま多い少ないで一喜一憂すんなよ?どうせこの大半の連中は雑兵もいいとこなんだからな。
ま、この山だ。数える程度には光るやつもいるだろうが」
『ハハハ、否定はできないな。
しかしその割には赤龍帝くんへの指名率は思ったほど伸びなかったねぇ。
それでも一年目の悪魔としては異例だけど。
あんまり最近の子はミーハーってわけでもないのかねぇ』
「魔法使いの連中はステータスを重視はするが、ソレ以上に業界内での体裁を気にするからな。
エレガントじゃないものに関しては少々手厳しい。
イッセーの人気が俗過ぎると判断したのかもな。本人もエロ技ばっかだし。価値観の違いってやつさ」
『さてさて、そのようなわけで、今回の書類は全部送らせてもらったよ。
めぼしい子がいたら連絡をいただけるとありがたいねぇ』
「今回、ってまたあるんですか?」
「えぇ、それはそうよ。
今回で決まるとは限らないし、仮に契約を結んでもその魔法使いが悪魔のように、永遠に等しい時間を生き続けられるはずもないもの。
今回いい相手がいなかったら、また新たに書類をいただけばいいわ。
あと契約を結んだ相手が寿命で亡くなった場合も、フリーになるから新規契約になるわ」
「それに契約したとしても、期間限定の場合もあるからね。
相手の都合で一年だけの契約だったり、契約の代価を支払えなくなった場合は解約したり、なんて形もあり得るよ」
兵藤先輩の疑問にグレモリー先輩が答え、木場先輩が補足する。
ほんとーにこのヒトら兵藤先輩が上級悪魔になるの応援してるのかしらねぇ。
そして大量の書類を転移魔法陣で送っている最中、ふとメフィストフェレスがフェニックスさんに目を向ける。
『そこの女人はフェニックス家の者…でいいんだよね?』
「は、はい。レイヴェル・フェニックスと申します」
『うん…うちの協会だけに届いてる、まだ極秘の情報なのだけれどね。
どうにもはぐれ魔術師の一団が禍の団の魔法使いの残党と手を組んで、フェニックスの関係者に接触する事例が相次いでいるんだよ』
メフィストフェレスの話によると、どうやらフェニックス家産ではないフェニックスの涙が闇マーケットで流通してるとのこと。
それも本物同然の効力のものが。
十中八九このことと関係してるだろうし、レイヴェルが狙われる可能性もある、と。
で、いつものごとくアザゼルが兵藤先輩にお守りを焚き付ける。
が、今回はそれだけではなかった。
「しかしな、どうにも禍の団の旧魔王、英雄派の残党、それに陰に隠れた魔法使いどもをまとめようとしてる輩がいるようでな。
そいつが実質的な現トップだって話だ。
詳しい情報はこれからだが…嫌な予感ばかりする。
奴らの戦力は確実に破滅の一途なんだけどな。ったく、戦力減少の歯止めがきかない状態で何をするつもりなんだか…」
一難去ってまた一難、としか思えない情報に暗くなる雰囲気。
『おっと、話がそれて申し訳なかったね。
ということで、うちの魔法使いたちをよろしく頼むよ。
良い契約が叶うことを願わせてもらうからねー』
そう言って魔法陣は消えた。
契約の話だけかと思えば次の騒動の予告としか思えなかったな。
…しかし次の騒動だけに意識を向けるわけにもいかない。
まさか魔法使いから契約の希望があるなんて微塵も思ってなかったからな。
それも普通なら無視してもいいが、経歴に『アリオルムナスの一族』とある。殊更無視はできない。
それから数日後、今日は久々にグレモリーチームのトレーニングに同行。
戦力把握のため…というのもあるが、腰を据えて魔法使いの契約のことの話がしたかったからだ。
今回は体を動かしたいので兵藤先輩、木場先輩、ゼノヴィアさん、紫藤さんのグループに混ぜてもらった。
とは言っても、兵藤先輩はドライグが疲弊してるらしく、禁手のみでトリアイナは使えず、紅の鎧にもなれないらしい。
籠手の毒素抜きとかやってたのは肉体改修の際に一切合切なくなって、仙術での生命力云々も黒歌が宿泊代代わりと出しゃばって、俺は解任されたので知らなかったが。
…流石に普通の鎧とはいえ禁手。殴ったらくっそ硬かった。
木場先輩も、ジークフリートから手に入れた魔剣は消費が激しく、訓練で使えるようなものではない。
「僕が直接持つよりも、龍騎士たちに持たせて運用させた方がデメリットは少ないだろうね」とのこと
「…魔剣を持った龍騎士に阻まれて木場に触れることすらできなかったぞ。
ふふふ、所詮パワーバカの私はアウトレンジの攻撃に弱いんだ…」
いじけるゼノヴィアさん。
どうも現在はデュランダルでの砲撃など破壊力を封じて、他のエクスカリバーの能力特性を使うための模擬戦らしい。
…いじけるくらいならそこまでしなくていいと思うんだがな。
というのも、だ。
制限プレイするなら、と一度エクスデュランダルでなく、俺のクロスクレイモアを使って模擬戦してもらったのだが、そちらのほうが動きが良かった。
それに、エクスデュランダルとはデュランダルが制御できないからエクスカリバーを後付して抑えにしてるわけだ。
で、デュランダルは木場先輩が使ったらおとなしく控えめだが、ゼノヴィアさんが使うとオーラをめちゃめちゃ出して暴れる前科がある。
ゼノヴィアさんがエクスデュランダルでエクスカリバーの能力を使おうとすると、デュランダルが暴れてるのでうまく使えてないんじゃないか?
一応この仮説を提唱してみた。
「え、それじゃゼノヴィアはずっとエクスカリバーの能力を使えないままってことか!?」
第一の兵藤先輩の反応。
それを聞いて当然落ち込むゼノヴィアさん。
「いや、デュランダルを使いこなせるようになれば、エクスカリバーの能力をもっと使いやすくなるんじゃないかと思うんですよ」
俺がそう言った瞬間…
「…ぉ、ぉぉぉおおお!
希望が見えてきた!ありがとうショージ!」
全速力で抱きついてきた。いてぇ。
やわらか…締まる。苦しい。
「まだ今のところは可能性でしかないですけどね」
「それでも光明が見えた気分だ!
よーし!木場!デュランダルの修練のための模擬戦を頼む!」
「ゼノヴィア、嬉しいのはわかったけど今日はもう終わりの時間だよ」
終わったから感想会をしてたのに、それすら忘れるほどだったらしい。
「むぅ…いいところだったのに。
実戦の必要な、『はぐれ悪魔』や『反悪魔の駒協会』とやらの捕縛任務でも出てくれないだろうか」
魔獣騒動から悪魔社会では『はぐれ悪魔』と『反悪魔の駒協会』のメンバーの捕縛の指名手配が出ている。(一応まだ殺害ではない。
とは言っても、グレモリーチームは捕まえる側になったことが未だ無いし、俺が関係したヤツは誰一人として捕まったり交戦していない。
…まぁソレ以外の、俺は知らんヤツや我を失ったようなやつらが少し暴れて捕まったらしいが。
雑談しながら戻り、他のメンバーと合流。
「あら、ショージくん。お帰りなさい」
今回のトレーニング部屋使用料…というわけではないが、ロスヴァイセさんは温泉から紫藤さんとアルジェントさんの魔法の先生をしている。
温泉着いてから、夕食食べる時の酒を飲むまでの短い間で、紫藤さんと仲良くなって頼まれてしまったのだ。
仲良くなるのを禁止はしてないし、するつもりもなかったが…
でもメイドのマネごとやってる時より、魔法とかの話してる方がいきいきしてるしなぁ。
「…」
塔城さんはギャスパーと一緒に心をカラにする訓練だとか。
ギャスパーは神器に潜る…のに近い形で自分の奥に潜むチカラを探ろうとしている。
だが、兵藤先輩みたいにドライグの補佐もねぇしで難航してるようだ。
…でも何なんだろうな。
心をカラにして自然との一体化が仙術の基本、って。
黒歌が提案してきた修行法、なんだが…
仙人の技的に考えると外丹系列なんだろうか。自然から多くの自然エネルギーを取り込む…みたいな?
しかしそれだと暴走とかが意味わからんのだよな。
その説明だと邪気を取り込む必要を感じないし。
まぁ万が一もあるからこそ、俺は自分もやってる内丹式を勧めてるわけだが…
「あらロリコンの人。白音の修行の邪魔でもしにきたの?」
「もう終わりなのを知らせに来ただけ。
あと妹殺そうとしたテロリストがやらかしてないかのチェック」
そのまま睨み合い。と言うか向こうが一方的に睨んでくるだけだが、別に俺が引く義理もねぇし。
「おーい、そっちはまだやってんのか?」
「あっ、赤龍帝ち~ん」
グレモリー先輩の方に行ってた兵藤先輩が戻ってくるなり、黒歌はそっちに飛んでいく。
もちろん先程までの低い声じゃなくて猫なで声。
残された二人に声をかける。
「ふたりとも、そろそろ終わりにしよう」
一応相談はしたが、明確な答えが出せないまま、今日は吸血鬼との会談。
メンバーはいつものグレモリーチーム、俺の眷属である塔城さんに箔付けのために居てもらってるロスヴァイセさん。堕天使代表のアザゼル。
それとシトリー先輩と女王の真羅先輩。
今回は更に天使の使いとしてシスターが一人。
「挨拶が遅れました。私、この地域の天界スタッフを統括しておりますグリセルダ・クァルタと申します。
赤龍帝さんやシスター・アーシアとは少し前にご挨拶できたのですが、皆様とはまだでしたので、改めまして今後とも何卒よろしくお願いできたら幸いです」
うわ、アルジェントさん肯定派かぁ…
「私の上司様です!」
紫藤さんは元気だなぁ。
で、アザゼルの話によれば女性エクソシストの中でも五指に入るほどで、天使ガブリエルの転生天使のクイーン枠だとか。
あとゼノヴィアさんはどうやらこのグリセルダさんが苦手らしい。
ゼノヴィアさんはグリセルダさんに怒られるのが嫌で連絡を入れなかったりで、余計に心配かけて圧を強くかけられるという、教育ママとその子供みたいな感じ?
…17で仕事にも着いてて一人暮らしできる相手にそんなムーブをかますのは毒親っぽい、と考えるのは俺が子供だからなんだろうか。
そんな考えをおくびにも出さず待機していると、冷たさ…血の通っていない、無機質な感じが近づいてくる。
段々わかっていったのだろう、みんなも口数が減っていく。
グレモリー先輩が立ち上がり、木場先輩にアイコンタクト。
木場先輩も立ち上がり、何故か一礼して部屋を出た。
この世界の純粋な吸血鬼は、『ブラム・ストーカーのドラキュラ』がベースなのだろう、初めて訪れた家には家主から招待されないと入れないからだ。
吸血鬼を迎える間に、王が座り、その後ろに眷属が立つという形に整列。まぁ一応、俺も悪魔枠でこの会議に参加してるわけだからね。
が、しかし、何故か天使の使いの二人もグリセルダさんが座り、紫藤さんがその後ろに。
完全に主体は悪魔だなぁ。
「お客様をお連れしました」
現れる純血の吸血鬼。
青白い顔、顔色に不釣り合いの赤い唇、そして鮮やかな赤い瞳。
見た目…はギャスパーと変わりない感じの女性。
「ごきげんよう、三大勢力の皆様。
特に魔王様の妹君お二人に、堕天使の前総督様とお会いできるなんて光栄の至りです」
グレモリー先輩に対面の席へ促される。
「私は エルメンヒルデ・カルンスタイン。
エルメとお呼びください」
「…カルンスタイン、確か、吸血鬼の二大派閥の一つ、カーミラ派の中でも最上位クラスの家だ。
久しぶりだな、純血で高位のヴァンパイアに会うのは…」
アザゼルが、まるで誰かに説明するように喋る。
カーミラ派ってなんだよ。という話だが、どうも吸血鬼はツェペシュ派とカーミラ派に分かれてるらしい。
「エルメンヒルデ、いきなりで悪いのだけれど、質問させてもらうわ。
私達に会いに来た理由をお話してもらえるかしら?
今まで接触を避けてきたあなたたちカーミラの者が、突然グレモリー、シトリー、アザゼル前総督のもとに来たのはなぜ?」
エルメンヒルデが席に座り、姫島先輩がお茶を出したのを確認して、グレモリー先輩は質問をする。
エルメンヒルデは目を閉じ、うなずいてから目を開く。
「ギャスパー・ヴラディのお力を借りたいのです」
意外な答え。驚いた奴らがギャスパーの方に視線を向けてるのが見ずともわかる。
客の眼の前なんですが。
「率直な質問に率直な答え。
すまんが、順を追って説明してもらおう。
吸血鬼の世界に何が起きた?」
「我々吸血鬼の世界でとある出来事が、根底の価値観を崩すほどのものになってきているのです。
情報が流出しご存知かも知れませんが、神滅具を持つ者がツェペシュ側のハーフから出てしまったのです」
アザゼルの質問に答えるエルメンヒルデ。
…まーた神滅具か。
「それでツェペシュ側が所有している神滅具は何だ?」
「幽世の聖杯(セフィロト・グラール)です」
「よりにもよって、聖遺物の一つ、聖杯か」
今度はそいつが敵か。
神滅具は13つ。
そのうち三大勢力側には悪魔が2、天界が1、堕天使が1、魔法使いが1の計5つ。
禍の団で3つ倒した判定だとすれば、今回含めてあと5つ。
んで多分最後に赤白対決があるだろうしボスは残り4人。手に入れるチャンスは最高でも4回。
「最後の晩餐に使われたもの、イエスの血を受けたもの…
聖杯ってのはとりわけ伝説が多い。だが、神器のアレはただの聖杯じゃない。神滅具であり、生命の理を覆しかねない代物だ。
エルメンヒルデといったか、不死者の吸血鬼がそれで何を求める?」
「絶対に死なない体。
杭で心臓を抉られても、十字架を突きつけられようとも、自分の棺で眠らずとも、太陽の光を浴びようとも、決して滅びない体をツェペシュの者たちは得ているのです。
…いえ、正確に言うのであれば滅びにくい体を得た、でしょうか。
聖杯の力はまだ不完全のようですから」
今まで淡々としていたエルメンヒルデの声に少し感情が乗る。
「何の弱点もない存在になろうとしているのです。吸血鬼としての誇りを捨てる。
それだけならまだしも、あの者たちはこちら側を襲撃してきました。既に犠牲者も出ております。これら一連の行為を私どもは決して許すつもりはございません。
同じ吸血鬼として粛清するつもりです」
「カーミラ側は吸血鬼としての生き方を否定して襲ってきた、ツェペシュ側のやり方が気に入らないってことか。
まぁ、攻撃されたら誰だってアタマくるわな」
アザゼルがそう返すが…お前は自分らが攻撃したのをやり返されてキレてねぇか?
で、それは吸血鬼も同じだ。
カーミラ派はツェペシュ派に何もしなかった、なんて言ってねぇしな。
まぁだからと言ってツェペシュ派に味方するつもりってわけでもないが。
「はい、その通りです。
そして私たちの目的は──」
エルメンヒルデの目がギャスパーに向く。
「そちらにいらっしゃるギャスパー・ヴラディの力を借りて、ツェペシュの暴挙を食い止めることです」
ふぅむ。
ギャスパーの魔獣騒動の際の力について情報持ってるのか。
それも聖杯と戦えるレベルであるのは確信がある、と。
「…それは、ギャスパーがヴラディ家の…ツェペシュの吸血鬼であることと関係があるのかしら?」
苛立ちを抑えながらグレモリー先輩が聞く。
それを見透かしたのか、エルメンヒルデは笑みを浮かべる。
「それもあります、リアス・グレモリー様。
けれど、本当に私どもが欲しているのはギャスパー・ヴラディの力です。
眠っていた力が目覚めたと小耳に挟んだものですから」
眠っていた、か。
「私どもは吸血鬼同士の争いを吸血鬼の力で解決しようと思っていますわ。
そのためには、ギャスパー・ヴラディのお力をお借りしたいのです」
「…あの力は何?
あなた達はそれを知っているの?」
「…極稀に本来の吸血鬼が持つ異能から逸脱した能力を有する者が、血族から生まれることがあります。
今世においてはハーフの者に多く見られておりますわ。
ギャスパー・ヴラディもその一人でしょう。
カーミラに属する私どもでは、詳細を調べ上げられるほどの資料を有しておりません。
しかし、ツェペシュ側には手がかりになるものがあるやもしれませんわ」
つまり知らねぇじゃん。
「そして、問題の聖杯について。
所有者はもちろん忌み子──ハーフではありますが、名はヴァレリー・ツェペシュ。
ツェペシュ家そのものから生まれたのです」
「ヴァレリーが…?
う、嘘です!ヴァレリーは僕みたいに神器を持って生まれてはいませんでした!」
名前が出ると反応を返してしまったギャスパー。
自分の急所です、って言ってるようなもんだぞ。
…しかしぶっ殺して神器回収はダメそうだな。
「生まれつきでなくとも神器とは、なにかのきっかけで発現します。それはあなたもご存知でしょう?
ヴァレリー、彼女も例外ではありませんでした。
近年覚醒し、能力を得たものと思われます」
「俺たちや天界が観測、特定が済む前に隠蔽されたんだろうな。
ったくどうしようもないな。聖なる力を嫌う吸血鬼が、聖遺物の神滅具、聖杯を捨てもせず、こちらに預けもしないで、自分たちのもとに隠すなんてよ」
「私もそう思います」
…それがどうしようもないなら聖剣返してない悪魔や聖魔剣作れる悪魔はどうなんだ。天使と行動を共にしてる悪魔は。
エルメンヒルデは再びギャスパーに目を向ける。
「ギャスパー・ヴラディ、あなたは自分を追放したヴラディ家に、ツェペシュに恨みはないのかしら?
今のあなたの力なら、それが可能ではないかと私は思うのだけれど」
「…ぼ、僕はここにいられるだけで十分です。
部長たちと一緒にいられればそれだけで──」
「──雑種」
エルメンヒルデからその言葉を耳にしたギャスパーは、顔を曇らせる。それを見たエルメンヒルデは続ける。
「混じりもの、忌み子、もどき…あなたは如何様な呼び名でヴラディ家で過ごしていたのかしら?
感情を共有できたのはツェペシュ家のハーフ、ヴァレリーだけ…でしたわね?
ツェペシュ側のハーフが一時的に集められて幽閉される城のなかで、あなたとヴァレリーは手を取り合い、助け合って生きてきたと聞いておりますわ。
ヴァレリーを止めたいと思いませんか?」
そう言うが…別に止めたいと思う情報なくね?
ツェペシュに洗脳されて尖兵にされたとかじゃないし。
そのヴァレリーくん?ちゃん?はツェペシュ側もぶっ殺す予定なのかもだし。
「あなた方はハーフの子たちを忌み嫌いますけれど、もともと人間を連れ去り、慰み者として扱い、結果敵に子を宿させたのは、吸血鬼の勝手な振る舞いでしょう?
あなた方に民を食い散らかされ、悔しい思いをしながらも憂いに対処してきたのは、我々教会の者です。
できれば、趣味で人間と交わらないでもらいたいものです」
グリセルダさんが口を開く。
が、ぶっちゃけそれ今手を組んでる悪魔もやってねぇか?転生悪魔とかどう考えてるんだか。
エルメンヒルデは口元に手をあて、笑う。
「それは申し訳ございませんでしたわ。
けれども、人間を狩るのが我々吸血鬼の本質。
悪魔や天使も同じだと思っておりますが?
人間の欲を叶え対価を得る、または人間の信仰を必要とする。
我々異形の者は、人間を糧にせねば生きられぬ『弱者』ではありませんか」
おめーらもやってんじゃん、悪魔のお仕事で人間から金とかもらうのと一緒だ、と。
ま、俺は悪人だから何やってもいいだろってのはクソだが、変に正義の味方ぶる異形の者よりかは好感が持てるな。
後ろの配下らしき吸血鬼がカバンから書類を取り出す。
「手ぶらで来たわけでもありませんわ。書面を用意しました」
そう言ってアザゼルにわたす。
「カーミラ側の和平協議について、か。
つまり、今日のこれは外交…特使として、お前さんが俺たちのもとに派遣されたってことだな?」
「はい。
我らが女王カーミラ様は堕天使の総督様や教会の方々との長年に渡る争いの歴史を憂いて、休戦を提示したいと申しておりました」
「順番が逆だ、お嬢さん。普通は和平の書面が先で、神滅具の話はあとだろうが。
これじゃ、まるで力を貸してくれなければ、和平には応じないと言っているようなもんだ」
アザゼルは流石に言葉では平静を保っているが、傍目からわかるくらい額に青筋を立てている。
まぁ本人的にはこれは『てめぇ、力を貸さないなら和平に応じないつもりかコラァ!』っつーわけだ。
「隔てることなく各陣営に和議を申込み、応じていた我ら三大勢力が、この話し合いに応じなければ他の勢力への説得力が薄まりますわね。
『各勢力に平和を説いてるのに相手を選んで緊張状態を解いてるのか』と。
しかも停戦ではなく休戦ですもの。こちらの弱みを突かれた格好ですね」
グリセルダさんも怒りを出さないようにしている。
公的な外交の特使を出してこれできるの羨ましいなぁ…
ギリシャは冥府以外三大勢力よりだからできないし。
グレモリー先輩は何も言えないまま、怒りで震えている。
「ご安心ください。吸血鬼同士の争いは吸血鬼同士でのみ、決着をつけます。
ギャスパー・ヴラディをお貸しいただければ、あとは何もいりませんわ。和平のテーブルにつくお約束と共にヴラディ家への橋渡しも私どもがおこないましょう」
「待て──」
勝ちを確信したかのように口の端を吊り上げるエルメンヒルデに釣られて、案の定やらかした兵藤先輩に対して、俺は魔力で周りの空気の振動を打ち消し、声を発しても無意味にする。
「大変失礼しました」
反応できてないグレモリー先輩の代わりに頭を下げる。
「確かあの方は…上級悪魔リアス・グレモリー様の下僕の赤龍帝、ですわね?
いくら赤龍帝とはいえ、特使である私に話しかける権利もない、ただの従僕だと思うのですけれど?」
「その通りです。
失礼ついでで申し訳ないのですが、確認させて頂いてよろしいですか?
ギャスパー・ヴラディ『だけ』の助力を提示されたのは、ハーフで転生悪魔といえども吸血鬼同士で解決するため、ですよね?」
「えぇ。そう申し上げたつもりでしたが」
「ありがとうございます。
では──」
普段とは違う形で魔力を高める。
体の全身から血の気が引いていくのがわかる。
***
正二の雰囲気が一変する。
顔色は青白く、瞳は赤く、気配は温度を感じさせない冷たいものに。
「他の吸血鬼がギャスパー・ヴラディに同行することは問題ありませんよね?
一応これでも魔獣騒動における功績はギャスパーに引けを取らないですし、ツェペシュとの戦いでもギャスパー以上にお役に立てる自信がありますよ」
そう言いながら、手を浮かせて影がないことを確認させたり、手鏡を近くに置いたりして、今の自分の状態がギャスパーよりもよほど吸血鬼であることをアピールする。
「…少し驚きましたが、私どもは他の吸血鬼がギャスパー・ヴラディに同行の要求は先程申し上げた通りですので問題ありません。
お力をお貸しいただけるのはありがたいですわ。
…ですが、それだけではギャスパー・ヴラディを送ることに賛成でない方がまだいるようですわね」
多少は減ったものの、リアスやその眷属たちからの怒りや警戒がなくなったわけではない。
「この場での進展はもうなさそうですし、本日はここまでにいたしましょう。
今夜はお目通りできて幸いでした。
何よりも、自分の根城に吸血鬼を招き入れるという寛大なお心遣いに感謝致しますわ。リアス・グレモリー様」
リアスの怒りの火に油を注ぐ。
もはやリアスは怒りを隠しきれない様子で、それでも形だけは会談を続ける。
「…えぇ、今日は貴重な会談ができてよかったわ。あなたたちのことがよくわかったものね」
「それではごきげんよう。
この地に従者を置いていきます。何かありましたら、その者に取り次いでください。
では、よいご報告をお待ちしております」
***
エルメンヒルデが立ち去り、吸血鬼の気配が十分に離れた頃。
ゼノヴィアさんがテーブルを叩く。
「…相変わらず、吸血鬼は好きになれない…っ!」
「昔のあなたなら、デュランダルで斬りかかったところですね。よく我慢しました。成長しましたね」
吸血鬼がどうこうじゃなく、普通に政治で負けた感じだけど。
「しかし、これからどうするのですか?
我々は協定を無視するわけにもいかないでしょう。そうなると、ギャスパーくんと惣間くんを送りだすことになります。
…最悪、二人を失うかもしれません」
蚊帳の外だったシトリー先輩が改めまして問う。
「俺は死ぬつもりはないし、ギャスパーを殺させるつもりもないですけど」
「ですが、相手側には神滅具。万が一がないとは──」
「ぼ、僕、行きます」
ギャスパーが声を震わせながら、でもはっきりを顔を上げて言った。
「…吸血鬼の世界に戻るつもりはありませんし、ここが僕にとってのホームです。
でも、ヴァレリーを助けたいんです!
彼女は…僕の恩人なんです。彼女のおかげで僕はあの城から抜け出て、ここにたどり着けました。
一度は死んじゃったけど、今は優しい主がいて、頼れる先輩がいて、一緒に遊んでくれる友達もできました…
でも、僕だけが幸せになって、彼女だけ辛い目にあってるかもしれないと思うと…」
「あ、ちょっといいか?」
話の腰を折るようでわるいが、どうしても気になる。
「は、はい」
「そのヴァレリーさんとやらはツェペシュ側を強化してカーミラ派を襲わせてるんだよな?
ヴァレリーさんが吸血鬼を全滅させたがって望んでやってる…とかはないか?」
「えっ、えぇっ?」
「それこそ神器の発現のきっかけが、ギャスパーの死を知ったとかでさ。
ギャスパーが死ぬきっかけとなった吸血鬼たちの存在が許せない、とかさ、ありそうじゃないか?」
「僕を襲ったのはハンターだったから、それはないとは思いますけど…
でもそれならなおさら僕がいかないといけないんじゃ…?」
「決めたわ」
グレモリー先輩が立ち上がる。
「行くわ、私。今度こそヴラディ家とテーブルを囲むつもりよ。まず私が行ってあちらの現状を確認してくるわ。
ギャスパーの派遣はそれからでも遅くないと思うの」
「じゃあ俺たちも──」
「いえ、イッセーたちは待機していて頂戴」
「…と、言いますと?」
「そりゃ会談で立場ないのに喋っちゃうヒトとか居ちゃだめでしょ」
ついつい口を挟んでしまった。
「ンだと!」
「いや、キレたいのはこっちだよ。なんで喋ったんだ?
自分で自分の主の顔にドロ塗りましたよ~?」
「…くっ」
流石にグレモリー先輩をだしにすると反論できないらしい。
「と言うかグレモリー先輩が止めるべき場面でしたよね?
いや、それ以前に公的な場に同席させるならマナーくらいちゃんと教えておくべきではないですか?」
「…そうね」
「そうま、その辺にしといてやれ。
リアス、警護に一人くらいは連れて行けよ?」
「えぇ。私の騎士は連れていくつもりよ。
いいわね?ユート?」
「はい、お任せください」
「よしよし。さて、今回の件は俺も行こう。
俺はカーミラ派の方に行って、他にも何名か吸血鬼の抗争でも動けるように話をつける。いくつか土産を持っていくつもりだ。
ヴラディ家の方はツェペシュ側だ。リアス、頼んだぞ」
とアザゼル。
天界も駒王町グループの援護を重要視してるのか、場合によってはジョーカーを使うとか。
「と言うか、そうま、さっきのアレは何だ?」
「あぁ、あれですか。
九尾の狐モードと一緒で、単に俺の中の吸血鬼としての力を表層に出しただけですよ。
吸血鬼の能力があるのは知ってたと思うんですが」
「あんなふうになれるとは思ってなかったからな。そもそも魂の力とやらで魔神になれる時点で規格外だが。
…流石にもうないよな?」
…うーん、どうだろう。一応アタマの中で整理してみる。
「ちゃんとした、戦力になりそうなのはないですね」
「ちゃんとしてないのはあるのか…」
>魔王眷属襲来ほぼカット
やることが…やることがない!
主人公も別に沖田推しじゃないし
>ゼノヴィアさんらは身内とは思ってなくて戦力としてしか考えてねぇ
子供はナチュラルに残酷
>魔力色
主人公の色は朱殷(しゅあん)時間がたった血のような暗い朱色(#740A00)
>駒ガチャ
10人に一人らしいので今回は乱数で15/150に当たったら駒入りのを引いたってことに
で、そこから更に乱数で駒の種類を確定
一応チャートは変異なしで組んでおります
だからこそ乱数でやれたわけですが
そういえば作中変異持ちはリアスとサーゼクスだけ?
サイラオーグの未使用の兵士が変異とかウィキにあったけど本当なのやら
>10人乗り
普通免許で乗れるのね
知らなかった
>家では酒類を飲んでなく~
こういうのはしつこいくらいで良いと思ってるので何度でも
本作は未成年飲酒を勧めるものではありません
>白音
嫉妬深いイメージからこうなってきた
だいぶ原作とは乖離してきた気がするが、まぁ原作もここではリアスが幼児返りしてたし
ちなみに眷属トレードに乗り気なのは私が
「冥界では魔王夫妻のせいで眷属と主のラブロマンスものが流行ってる設定があったはず」
と思っているためです(確認放棄中
>異能に携わる人間なら普通は呼び寄せる側~
原作のここ、どういう意味か全くわからん
なんか言葉のキャッチボール失敗してる感じ?
一応自分なりにこういうことかな?と思ったけど違うのかも知れない
>メフィストフェレスとアザゼルの業界話
三大勢力は他神話勢力から嫌われていて、和平に応じても腹の中でどう思ってるかわからない状況
ってのは原作設定なわけですねぇ
>偉い人の前で私語したり質問したり
吸血鬼の時へのフラグのつもりなんでしょうが
吸血鬼の情報はそこそこ入れてるのに魔法使いの話はあんま事前情報入れてないっぽいのが気になる
>アリオルムナス
悪魔城ドラキュラにちょいちょい出てくる雑魚モンスターの魔法使い枠
「魔女」とかそのものもいるけど
>ゼノヴィアがエクスカリバーの能力使えない話
明らかに扱い悪くねーかって話
(アンチがかわいそうと思うのってよっぽどじゃない?)
一応今回のは自分なりの理由付け
むしろ原作のはなんでなんでしょうね
これがアーシアをいじめたバツだ!とかなら引くけど
>仙術
黒歌がやってるのはNARUTOの仙術チャクラ的なやつ
主人公がやってるのは波紋の呼吸的なやつ
ぐらいの認識で大丈夫だと思います
ただHSDD世界の仙術は房中術とかもあって完全に同じ、というわけではないですが
>暴走
ボツネタですけど
これを悪魔の駒のせい、とする案もありました
主に牙を向いた眷属の駒は変質して、自分の欲求に貪欲になり、それ以外に対して 考えが回らなくなる…みたいな
裏切り者を簡単に倒せるようになる防犯とか1巻のバイサーがあんな感じなのはそれのせい、とか考えてたけど
流石にそれをサーゼクスが認可してるか?ってなるとなぁ…
本作ではそもそも暴走してるのかしてないのかすらわからなく、暴走者も出てないので戯言ということにしてます
と言うか今回の話の部分のちょっと後くらいに、一誠から俺と小猫を毒霧でやろうとしてたのに、って話をしてるんだけど
それの返し(言い訳)が「白音に再会できた嬉しさでやんちゃしちゃったの♪」ってなぁ
もうなんか人間性終わってるキャラとして描いて終わりでいいんじゃない?
二人だけの姉妹だからってだけで復縁させたがるヤツと一生イチャイチャしてれば満足でしょ
>アルジェントさん肯定派かぁ…
教会的には魔女でしょ?
個人でそう思ってなくてもそうやって決めつけて追放した組織でいい子ぶるってのはなぁ
名誉回復の運動とかもどーせシステムのせいにしてやってないだろうし
>ギャスパーの力
見返したら確証ないのにやってきてワロタ
いや、現場のエルメンヒルデにないだけでカーミラ派の偉いヒトにはあるのかな?
>ヴァレリーを止めたいと思いませんか?
これ前提条件が作者の中で完結してる感じある
>他の吸血鬼の同行~
やりたかったこと
そのための上級悪魔相当の地位
>「そりゃ会談で喋っちゃうヒトとか居ちゃだめでしょ」
>「と言うかグレモリー先輩が止めるべき場面でしたよね?」
やりたかったこと
主人公はリアスの悪魔としての立場とかどうでもいいんで普段は放置ですがね
と言うか原作一誠って、自分が会談に割り込んで発言したことに罪悪感とか持ってなさそう
>私の騎士は連れていくつもり
朱乃が女王って何なんだろう?リアスの代わりに現地指揮もとれそうにないし…
お茶くみ係なのかしら?
グレイフィアは一応メイドでもあるからわかるけど朱乃はちゃうでしょ
あとここの下りがすっげー無駄な感じするんだけど
一誠らは待機→地元の警護よろ・あとで増員するから→じゃあ最初から一緒に…→あっちが警戒するでしょ
とか回りくどい
・原作の一誠のエルメンヒルデへの悪意が強すぎる
自分は人間辞めて悪魔だと思いながらも勝手にその狭間にいると思い込む
そして人間を糧だと割り切ってる相手に「目が嫌」「自分たち以外を見る目が蔑んだもの」とレッテル貼り
「ハーフのギャスパーに忌み子とか雑種って呼ぶし…」
→呼んでません。そう言われて育ったでしょ?って話
むしろエルメンヒルデは一貫してフルネームで呼んでたり
ま、一誠は読解力ないキャラとして描かれてるから正しいんですが
「純血の吸血鬼は自分たちの世界以外どうでもいいんだ!身勝手!
ハーフでも、有用なら対立側の出身者でも使う。迫害しても半分吸血鬼なら使う」
からの「矛盾だらけだ、理不尽すぎるだろ!」
ってどこが矛盾なのやら
こっちはそれこそ「下僕だからと蔑まれて」これだけ言ってるのかも?
なんか「純血の吸血鬼は悪魔以上に血と階級にこだわり持つって話だった」とか知ってますよアピールはするのに理解を示さないのがうーん…
いやそれは一誠だけじゃなく全員だけど
まぁ一番アレなのはここまでやっておいて後々兵藤一誠のヒロインにするために吸血鬼うんぬんとか関係ない生き物に変えることですが