ハイスクールDevil castle×Dracula   作:二痔升

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一応予定通りすすめば今回二つ同時に投稿してるはず
最新話が原作関係ない話でもなーって思ったんで

これの前が番外編みたいな立ち位置の話で、こっちが本編の話です


35話 16巻序盤の方

もうそろそろ11月も末って時に、朝っぱらから吸血鬼の拠点に行ったアザゼルから直接の連絡回線が来たらしい。

というわけで、俺らも兵藤家のVIPルームに集合がかかった。

 

いつものオカ研+会長副会長、シスターグリセルダ、転生天使のジョーカー、デュリオさん。

俺は初顔合わせだが緊急時っぽいので挨拶も軽めに。

 

魔法陣から出た3Dアザゼルが話を始める。

 

『リアスらと連絡が取れねぇ。何かしらに巻き込まれた可能性が高い』

「リアスたちが!?」

『ああ。どうもツェペシュ側の方で大きな動きがあったようでな。

 ツェペシュ、カーミラの領地の境界線上が一時混乱状態になった。あちらでクーデターが起きたとみていい。リアスと木場はそれに巻き込まれた可能性が高い。

 というよりも拘束されてるだろうな。こちらからリアスに通信ができん。

 そちらも同様じゃないか?』

 

言われて姫島先輩が連絡を取るべく魔法陣を広げるが、反応はない。

魔力が通じないところに拘束されてる?

というかそういうシステムとかどうなってんだろ。

イメージの力とやらでどうにかできねーのかな。

 

『カーミラ側の幹部の話では、今回のクーデターでツェペシュのトップが入れ替わったそうだ』

 

んー?わざわざ公表したのか?それとも相手側の情報が筒抜け?

 

「と、とんでもないことになってんじゃないですか!」

『…現在、ツェペシュの当主、つまり、男尊派ツェペシュの大元たる王が首都から退避したそうだ』

 

ほーん。

情報漏れ漏れなのはそのせいか。

しかしアザゼルはそいつのこと嫌いなのかな。わざわざ男尊派とか言って。

…もしかしてどっかの誰かがこう言わないと覚えてないだろって目論見かね。

 

「…ツェペシュの王が逃げるだなんて、相当なことが起きた証拠ですわね」

「おそらく、聖杯に関与した件で禍の団の介入があったのでしょう。

 ツェペシュは禍の団に裏から支配されたと見ていいと思います」

 

と姫島先輩とシトリー会長。

この間のユークリッドとやらのおかげで、禍の団と滅んだはずの邪龍のつながりがあるのがわかっている。

で、ツェペシュが聖杯を持ってるって話があって、聖杯とやらは滅んだはずの邪龍を復活させられる可能性が高い。

だから関与があったんだろう。って話はわかるんだが…

なんで逃げれた?

その王様の能力はわからんが、逃げようとしたところを捕らえるくらいはできそうなんだが…意図的な放逐か?

 

『ああ。裏で禍の団が手引したんだろうな。カーミラ側も同意見だ。

 …もともと、吸血鬼の連中はツェペシュもカーミラも他の勢力との接触を避けて、内々に独自の政治を行っていた。

 だからこそ禍の団もそこにつけいる隙があったんだろう。

 内部に現政権をうとむ連中なざ、どの勢力にも必ず一派はいるもんだ。聖杯の噂を聞き、そいつらを通して裏からじわじわと侵食していったんだろう』

 

あーアザゼルにとってのコカビエルみたいなもんね!

禍の団に協力して神器のデータ持ち出してた堕天使も居たしね!

 

「反政府の過激派の動きに気づいても現政府側は他に助けを呼ばなかったんですね」

 

兵藤先輩はそう言うが、誰に助けを?ってレベルだし、誰も助けてくれそうにないのがわかってるから助けを呼べなかったんじゃないかねぇ。

禍の団の関与に、って話なら基本的に全勢力の敵ポジだからわかるんだが、流石に証拠もないとなぁ。

 

『自分たちのことを至高の存在と位置づけて、誇りとやらを重んじた結果だろう。死んでも他に助けを求めたくなかった。

 または聖杯の存在を意地でも他に漏らしたくなかった。そんなところだろう。

 というわけでツェペシュの本拠地が気がかりでな。

 俺はカーミラの根城からあっちに向かう予定だ』

 

言いたいことはわかるが決めつけてそれありきで考えてねぇかなぁ。

前の接触で吸血鬼が嫌いになったとか?

 

『──お前らを召喚することになるな。てなわけですぐに飛んでこい。

 リアスたちと合流しつつ、ツェペシュ側の動向を探らなきゃならん。お前らの戦力が絶対に必要だ。

 何せツェペシュの反政府グループ以上に危険な者が関与しているだろうからな』

「もちろんっスよ!主たるリアスを守るのが俺やグレモリー眷属の務めですからね!なぁ皆!」

「「「もちろん!」」」

 

一回死んでるのに元気だなぁ。

あ、二回目か。

 

『だが、戦力をこちらに集中して再び襲撃を受けるわけにもいかん。

 こちらに来るのはグレモリー眷属とイリナ、ショージ眷属だけでいいだろう。シトリー眷属とグリセルダ、ジョーカー、『刃狗』鳶雄はその町に待機してもらう』

 

つまりはいつものメンツってわけね。

しかしアンバランスだが…

 

「了解しました。デュリオ、この町へ来て早々で申し訳ないのですが、守備に徹してもらいます」

「俺が行ってツェペシュの町ごと荒れた天候で閉じ込めてもいいんスけどね~」

 

何言ってんだこいつ。

手ぇ上げてそう発言するヤツの顔を見るとフザけた感じはない…

真面目にそう思ってるってことか?それはそれで頭大丈夫なんか?まだおふざけで言っちゃったバカの方がマシだよ。

第一印象から最悪なんだが…

 

「あなたは天界と吸血鬼の関係を悪化させる気ですか。まったく…」

 

シスターが軽く注意するように拳をコツンって程度で叩くが、それですませてるからこうなったんだろうが。ガキじゃねぇんだぞ。

教会はバカしか育てられねぇのか。まともなヤツ見たことねぇぞ。

 

『こちらも重要だが、そちらも大事だからな。神滅具の所有者が複数いる以上、そっちとこっちで分散させた方がいいだろう』

 

あ、これは白龍皇居ますわ。

 

「もしかして、そっちにも味方の神滅具所有者がいるんですか?」

『ああ。ヴァーリが吸血鬼の領域に潜入している。

 そっちはジョーカーと刃狗、こっちは二天龍。こんなときに不謹慎だが、豪華すぎて神器マニアとしては大いに興味をそそられる』

 

潜入て。まーた許可なしでテロリスト潜伏やってんのか。

これでよく禍の団に対してみんなで協力しようとか言えるね。ハーデスのやろう英雄派と結託しやがって~とかもさぁ。

あ?自分らが自発的にやったんじゃなくてたまたま近くに居ただけってか?

でももうナチュラルに味方扱いしてたぞ。

今回ばかりは兵藤先輩ナイス質問。

…ってよくよく考えると、アザゼルはあの録画撮られてたのに未だにこんな発言してるのか。

いや、警戒強めたけど俺に効果がないだけ?結界強化とかはしてるかもしれんが…案外未だにヴァーリといっしょに居るのが悪いと思ってないのか。

 

「いい機会です。

 グレモリーの皆さん、うちの新人二名を連れて行ってもらえないでしょうか?」

「ベンニーアとルガールさんですか?」

「えぇ。彼らはまだ悪魔としての戦いが経験不足な面があります。

 それに今回の一件、彼らの力が役立つ可能性も高いでしょう」

 

じゃあなんで前回の自陣営に来た魔法使い相手に出さなかったんだよ。バカじゃねぇの。

つーか普通は経験不足のやつなのに役立つから送るって意味不明なこと言うならその根拠とか言うべきだろ。

どういう技能があるから、とかさぁ。

 

『確かにな。特にルガールはいざとなったときの戦力になりそうだ。

 送ってくれるならそれに越したことはないが…』

「では連れて行ってもらいましょう」

 

アザゼルには言ってるのか。

ルー・ガルーさんは死神よりも上…?

反応見る限りはグレモリー眷属も誰もしらなさそうだし。

まぁ死んだらその時は推し進めたシトリー会長とアザゼルのせいってことで。

よし、ベンニーアはいつ死んでも構わないぞ。

ルー・ガルーさんは…まぁ余裕があったら。

 

『レイヴェルはそこに残れ。流石に今回は客分のお前さんが立ち会うには辛い局面だ。

 いくらイッセーのマネージャーといってもテロリストが潜伏するであろう場に連れ出すわけにもいかない。

 わかってくれるな?』

「はい。心配事もありますけれど、兵藤家と駒王学園はお任せください」

 

何を今更。

 

『詳しいことは現地で話す。

 では、準備ができ次第こっちにジャンプしてくれ。

 カーミラ側に受け入れ用の魔法陣を敷く。状況開始だ』

「「「はい!」」」

 

はいはい。

 

 

 

さっくり終えてカーミラ領土の直通魔法陣を用意した場所に集合。

俺らは忘れ物あっても分身使ってどうにでもできるし、そもそも異空間やらアイテム欄やらどーにでもなるからそんな準備とかいらんのだけど。

しかしグレモリー眷属らはみんな学校の制服来てその上に防寒具。

別に悪魔の興行じゃねぇんだから制服はいいだろ。

ってか制服で学園特定されてなんかされたらどうすんだろ。また怒るのかな?

 

「じゃあ行ってきます」

「ええ。吉報を待っています。

 ベンニーア、ルガールさん、彼らのフォローを頼みます」

 

おいおい、新人の練習って体裁はどこやったんだよ。

 

んで相変わらず行ってきますって言ってから長々と喋ってから移動。

着いた。

魔法陣だからね。

 

「よう、来たか」

 

とアザゼル。

お前が呼んだんだろ。

 

「さっそくで悪いが移動するぞ。詳しい話は移動中の車内でする。

 エルメンヒルデ、案内を頼む」

「かしこまりました。

 皆様、カーミラの領地までよくぞお越しになられました。手前どもはギャスパー・ヴラディだけでよろしかったのですが…

 到着早々で申し訳ございませんけれど、車まで案内いたしましょう」

 

この状況でも、ってよっぽどギャスパーの能力信頼してんのな。

んで車まで移動。

転移先であった地下からあがり、外に出て外気に触れる…と想定よりも寒い。

ルーマニアとの時差は-7時間、今は深夜帯。

二人の体調チェック。問題なさげ。一応カイロ渡しておいたしな。俺はいらんが。

ってかエルメンヒルデは息が白くねぇな。体温が低いのか、呼吸に水分が少ないのか、寒冷地暮らしで慣れてるのか、この世界の吸血鬼の能力というか特徴なのか…ちょっと気になったので吸血鬼モード起動。

 

「さ、寒いですぅ…」

 

ギャスパーは寒がってるし、吸血鬼の能力じゃないな。

ってか魔力でどうにかせい。お前は純正の転生悪魔なんだからさ。

一応カイロはあげておく。

 

改めて移動…の間にざっくり周囲把握。

吸血鬼、カーミラ領地は城があって、でも中世的じゃない建物もあるような…

しかしカーミラの城ってチェイテ城ってやつ?あれはゲーム?ってかカーミラにしろエリザベート・バートリーにしろルーマニア出身だっけ?悪魔城ドラキュラ風世界のWikipediaには吸血鬼の情報ねぇからな…

現在俺らの居る場所は領地の端というかフチにあるんだろう物見櫓用の建物。

あと、車を二台用意してくれたのはいいんだけど、てっきり吸血鬼の運転手がつくのかと思いきや自分らで運転しろってさ。

運転手はアザゼルと俺。

ロスヴァイセさんも運転できるけど俺のが運転歴長いしね。

 

「……悪魔の趣味は理解できませんわ」

 

別れ際にエルメンヒルデがルー・ガルーさんを見ながら言う。

移動中他の吸血鬼からのリアクションもよろしくなかったが、原因はこれか。

…吸血鬼が嫌う?恐れる?存在だってアザゼルは知ってて連れてきたってことか。相変わらず説明もなしに。

いや、俺はもうどうでもいいんだけどね。どうせ敵対する予定だしさ。アザゼルがムカつくほどその時に思いっきりボコれるし、そういう俺の思いが伝わってるかもだし。

でも兵藤先輩をはじめグレモリー眷属はお前のこと慕ってるじゃん?そいつらにはちゃんと説明してやれよ。

 

「…」

「…」

《…》

 

車の中が静寂に包まれてる。

車の中で説明するって言ってたアザゼルは向こうの車。

当然こっちは状況説明してくれるヒトは居ない。

で、俺の眷属とシトリー眷属は別に特段関わりがある間柄でもないし、特に仲良くしたいわけでもない。ってか単純に話題がない。

俺もむしろ嫌いなやつも居るしで自分から話しかけるつもりもない。

身内しか居ないドライブデートってわけでもないし。

比較的話しかけたりしそうなゼノヴィアさんも今日は単語帳に目を通している。

一応運転中の車内で見ると酔いやすいと声はかけたが大丈夫だってさ。

 

そんなこんなで法事みたいな二時間が過ぎて、山の中頃に到着。ここのゴンドラ乗り場から行けるらしい。

 

「これがカーミラ側が確保できたツェペシュ城下町に続くルートの一つらしい。

 …このゴンドラはツェペシュ派が敷いた多重結界を通れる特別なものなんだとさ」

 

へー。そんな重要そうなもん確保ってどうやってしたんだろうな。

アイテムとちがってゴンドラ乗り場なんてさ。

こんなでかいもんがガコンガコン動いてりゃ察知されそうなもんだが。

観光地でもないから客に紛れるとかでもないし。

 

んでさっきしそこねた情報収集。

ギャスパー、よろ。

 

ツェペシュの新たなトップに以前話題にあがったヴァレリーちゃんが就任したらしい。

んでアザゼルの読みだとそれも禍の団の誘導だろう、と。

聖杯で強化した吸血鬼をカーミラにぶつけていたのもそいつらだろうって。

で、ツェペシュ現政府…いや、前政府側が反政府グループに対処できなくて、カーミラに援助を求めた。カーミラ側はツェペシュの王に貸しを作るために快諾、と。

俺のギモン点の二つは解消したな。

 

んでアザゼルはツェペシュ側が気になって、戦力補充のために俺らを緊急招集。

荒事になりそうだから、だって。

まずは話し合いからするけど、カーミラ側もクーデターの鎮静予定なんだとか。

そりゃツェペシュ側に恩を売る目的だしなぁ。

もう城下町を囲むようにエージェントを配置中とか。

 

「…で、先生が言うには『あの野郎が関わってるなら、高い確率でろくでもないことになる』だって」

「へぇ。

 ま、ここ最近ロクなことになった記憶はねぇけど」

 

で、いつものごとくあの野郎とやらの情報開示はなしか。

ほんとアザゼルってクソだわ。

んで大事件が起こってあとからやはりそうでしたか…みたいな顔してるんだろ?

 

30分ほどで到着。

到着後、即吸血鬼が数名現れた。

 

「アザゼル元総督とその関係者の方々ですね?

 我らはツェペシュ派の者です」

 

やっぱバレてんじゃんよ。

…ってかそもそも俺らってどういう名目で来たんだろう?

グレモリー先輩と木場先輩返すからさっさと帰れって言われたら終わりじゃね?

 

「こちらへどうぞ。リアス・グレモリー様はツェペシュ本城でお待ちです」

 

入れてくれるんだ。

促されるまま豪華な馬車の元に連れて行かれた。

 

吸血鬼、馬車…死神に襲われないといいんだけど。

と思ってたらその死神とルー・ガルーさんが居ねぇ。

兵藤先輩がキョロキョロしてると姫島先輩が耳打ち。

 

「お二人は別行動ですわ。独自に市街の様子を探るそうです。

 いざというときの脱出ルートも確保しておきませんと」

 

先に言っとけ?

言ってねーからキョロキョロしてたせい…かは知らんが吸血鬼にも居ないの気づかれたじゃん。

ってか吸血鬼側は人数を把握してたのか?この短い間に?

…まぁツェペシュ側にしか反政府グループが居ねぇはずもないしな。

 

んで守衛吸血鬼は上役に報連相してたんだが、どうも俺らを先に行かせるように言われたっぽい。

…逃がしたから給料下がるんかな?

いや流石にそれはねーか。

ちなみに俺は守衛の見ている前で堂々と霧化した分身出してたり。

 

今回の馬車は全員乗れるほどのデカさ。それを引く馬は普通の感じだったが、もしかしたら吸血馬かもしれん。

 

「クーデターが起こったにしては静かすぎじゃないですか?

 町中で破壊された跡があるのかなって思ってたんですけど」

「おそらく、住民に知られないように最低限の行動でクーデターを成功させたんだろう。

 となるとだ、謀反を起こした連中は内部の深部にまで話をつけていたと見える。

 …聖杯を餌に貴族の上役を何名か丸め込んだのかもしれないな」

 

と窓の外を見ながら話してる。

クーデター鎮圧する側についたやつの言葉じゃねぇな。

これから荒らす側になるんだし。

 

 

 

城下町を通り抜け、本城。

跳ね橋ではなく…えーっと、落とし格子ってやつか。滑車かなんかで持ち上げる、下が杭の。

あ、そういやここの吸血鬼は流れる水だめだもんな。跳ね橋だめか。

 

そんなことを思いながら、馬車を降り、城に入り、いかにもボス部屋の扉、ってとこの前で待つことに。

すると…

 

「イッセー!皆!」

 

グレモリー先輩の登場。

 

「リアス!無事でしたか?」

「ええ。なんとかね。

 …クーデターのことは察知したようね、アザゼル」

「ああ。何か起こるだろうなと思ってこいつらを召喚して、ここまで連れてきた。文句はないだろう?」

「そうね。私もどうにかして皆を呼ぼうと思っていたから。

 ただ、この城に軟禁されていてどうにも動けない状況だったのよ。けど、王にお招きいただいた割に今の今まで謁見はなかったわ。

 そうしてるうちに先ほどお客様が来たからって、ここに来れたというわけ」

 

新しい情報ナシ、ってことね。

ただ俺ら、というかアザゼルとグレモリー一派をまとめて対処したかった、みたいな感じ?

禍の団関係者がいるんだろうし。

 

準備ができたのだろう、扉の両脇の全身鎧兵士が動く。

 

「では、新たな王への謁見を」

 

扉が開き、アザゼルが先頭を進む。グレモリー先輩が続き、姫島先輩からアイコンタクトが来たのであぁそういうことね。とグレモリー先輩の斜め後ろに続く。

着いた先は王の間、だろう。

玉座に女性。多分ヴァレリー?

そばに控えるように男性。

左右には貴族らしきヒトが奥側、兵士が手前。どっちも数人程度。

部屋の空間に対して人数は少ない。クーデターで減ったせいか?

 

「ごきげんよう、皆様。私はヴァレリー・ツェペシュと申します」

 

発言者に目をやると、ギャスパーとエルメンヒルデたちの中間、と言ったような血色の悪い、とか人工物じみた感じのない顔立ち。

…あれが普通のハーフでギャスパーは転生悪魔になって変わったのかなぁ。

一番目を引くのは赤く、濁ったような虚ろな目、有り体に言うならレイ…いや、ギャスパーに悪いしやめとこう。

 

「あ、えーと、一応ツェペシュの現当主、王様をすることになりました。以後、お見知りおきを」

 

喋りは普通の若いねーちゃんなんだが、やはり違和感がある。

壊れたマリオネットとかそういう感じ?薬物投与で洗脳…までいくと喋りが流暢すぎるか。

 

「ギャスパー、大きくなったね」

「ヴァレリー…

 うん。会いたかったよ」

 

ギャスパーもヴァレリーの現状がよろしくないと察したのか、一瞬言葉に詰まったが、明るく振る舞う。

 

「私もよ。とても会いたかったわ。

 もう少し近くに寄ってちょうだい」

 

手を広げ、招くヴァレリー。

ギャスパーは近寄っていくが、周りも止めない。

もしかしてヴァレリーの精神回復としてギャスパーを利用しようと…?まさかな。

 

「…元気そうで良かった」

「うん。悪魔になっちゃったけど…僕は元気だよ」

「ええ。そのことは報告を受けていたわ。あちらでは大変お世話になったそうね」

「うん。友達や先輩もできたんだ。もうひとりじゃないよ」

「まぁ…ギャスパーのお友達なのですね。

 …あら。

     、   。    」

 

ギャスパーの声に反応して俺たちを一瞥したかと思えば、そのまま虚空を見つめて理解できない何かを口にしていた。

喋ってはいるみたいだが、理解できない言葉…いや、音ですらない何か?

 

「お前たち、あれを真正面から捉えるな。聖杯に引っ張られる。

 特にアーシア、ゼノヴィア、イリナ、教会出身のお前たちはあれから視線を外しておけ」

 

…そう言えば幽霊が見えることが幽霊にわかると付きまとれるとかよくある話だな。

ただアレは幽霊ではないが。

幽霊なら俺がどーにでもできるんだが。

 

「どういうことですか?」

「…あれが聖杯に取り憑かれた者の末路だ。

 決して見てはいけないモノが見えてしまうんだよ。詳しい話はあとでする」

 

場がグッダグダになったところで、パンパンと手を打ち鳴らす吸血鬼の男性。

 

「ヴァレリー、その『方々』とばかり話し込んでいては失礼ですよ?

 きちんと王として振る舞わなければいけません」

「うふふ、ごめんなさい、皆さん。

 でも、私が女王様である以上、平和な吸血鬼の社会が作れるそうなの。楽しみよね。

 ギャスパーもここに住めるわ。だーれもあなたや私をイジメることなんてしないもの」

 

それが餌か。

いじめて鬱屈とした状態に救いの手を差し伸べて自分らの都合のいいように操作。

 

「よくもまぁここまで仕込んだもんだ。それを俺たちに堂々と見せるたぁ趣味が悪すぎだ。

 お前さん、この娘を使って何をしたい?見たところ、お前さんが今回の件の首謀者なんだろ?」

「首謀者と言えば、そうなのでしょうね。

 おっと、そういえばご挨拶がまだでした。

 私はツェペシュ王家、王位継承第五位マリウス・ツェペシュと申します。

 暫定政府の宰相…兼、神器研究最高顧問を任されております。どちらかというと、後者の方が本職なのですが…叔父上方に頼まれましてね。一時的に宰相となっております。

 一応、系図的にヴァレリーの兄でして、ツェペシュの将来を憂いたかわいい妹が王としてどう吸血鬼の世界を変えていくのか、そばで見守りたいのですよ」

 

アザゼルの言葉にゲス顔しながら返すマリウスとやら。

あーはいはい、あんたが今回の悪役なのね。

 

「…こちらがカーミラ側と接触してるのは知ってるんだろう?

 ここまで招き入れてよかったのか?」

「新政府はカーミラだろうと堕天使の元総督様であろうと有効的に交渉をしていきたいというスローガン…

 まぁそれは、半分冗談ですが。

 いえね、正直な話、私は別に政治に興味はあまりないので。クーデターに乗った私の同士にお任せしています。

 今回ヴァレリー女王があなた方に相対と仰って、私もあなた方に興味があったもので。

 何せ、協力者からよくあなた方のお噂を伺っているものですからね」

「…じゃあ政治の話はおいておこう。

 クーデター主犯のお前さんに聞こう。なぜクーデターを起こした?あの野郎の立案か?」

 

相手がおしゃべりっぽいからか直球で聞くアザゼル。

周りの貴族吸血鬼もざわめいている。

 

「私が聖杯で好き勝手できる環境を整えているだけです。ヴァレリーの聖杯は興味の尽きない代物でして、色々と試させているのですよ。はい。

 本当にそれだけでして、そのために前王…父や兄上が邪魔なので退陣していただきました。

 あの野郎とは…あの方を指しているのでしょうが、今回の行動は我々が起こしたことです」

「マリウス殿下!

 それは今ここで話すべきことではありませぬぞ!」

「こ、ここは仮にも謁見の間です!ざ、暫定の宰相といえど、それ以上のことは謹んでいただきたい!」

「相手はグリゴリの元総督とグレモリー家の次期当主なのですから、今の発言を総意と取られてしまうと我々の立場がありませぬ!」

 

研究にしか興味がないのってやだわ~。

ねぇアザゼル先生?

しっかし興味が尽きないってんならマジで一生使い潰しそうだ…どう解決したもんか。

特定の目的がある方がよっぽど楽だよ。

 

「これは失敬。早く宰相の任を解いてもらいたいくらいです」

 

相変わらずヘラヘラと。

宰相の任を解かれることはない何かがあるってことか?ヴァレリーの制御?

まぁともかく。

こーんな私悪者ですムーブをやってると単純な連中は怒りを隠せないわけで。

 

「ヴァレリー・ツェペシュは解放できないと言うのね?」

「当然です」

「話し合いは無駄だよ、リアス部長」

 

とデュランダルを取り出すゼノヴィア。

無駄か決めるのはお前じゃないよ。ってか無駄でも話し合いをしようとする体裁が必要って話なんじゃないの?

 

「こいつを消してさっさと帰ろうじゃないか。

 このヴァンパイアは生きていても害になるだけの存在だろう」

 

おーすげぇな。生きることすら許されないんですってよ。

はぁ。魔女ですら斬って浄化しようとしてたんだよ~。方法はアレだけど悪い人じゃないんだよ~。って擁護してた俺がアホみたいじゃないか。

『昔のあなたなら、デュランダルで斬りかかったところですね。よく我慢しました。成長しましたね。』

でしたっけ?成長してないみたいですよ。

ってーか教会のせいで斬って解決!って学習完了してたんじゃねーの?

…おい、さっさと止めろよ。

 

「おやめなさいゼノヴィア!

 …相手は宰相なのよ」

 

宰相じゃなくてもダメでしょ。

まぁ斬りかかるならご勝手に。俺の管轄下なら殴ってでも止めるけどね。

…いやうちのはどっちもそんなことしねぇけど。

はぁ。

しかし感情のままに行動する転生悪魔も、それを制御できない主も、俺が上の人だったら昇格させるの絶対に嫌だけどな。

平和のために人一倍奔走してたらしいアザゼルも何も言わねぇし。

平和のための行動か?これが?

 

「怖いですねぇ。では、ボディーガードをご紹介いたしましょうか。

 私が強気になれる要因の一つをね」

 

そう言って指を鳴らす。

その瞬間、すっ…と全身を殺気が通っていく。

あからさまに威嚇とわかっているのにそれでも警戒せざるを得ない…そんなレベル。

 

少し離れたところに、黒コートの長身の男が柱にもたれかかるようにして居た。

黒髪と金髪を散りばめたような、目も同じく黒と金のオッドアイ。

そいつはこっちのメンバーが自分の存在を認識したのを確認すると、どことなくつまらなさそうにうつむく。

 

そいつのせいで周りがわちゃわちゃざわざわしてると、再びマリウスがパンパンと手を鳴らす。

 

「今日はここまでにしましょうか。

 お部屋をご用意しています。皆様もしばしご滞在ください。

 …あぁ、そうでした。ヴラディ家の当主もこの城の地下室に滞在しておりますのでお会いになるとよろしいでしょう」

 

ここまでってどこまでだよ…結局折れるつもりもねぇんだろうし。

 

 

 

部屋までの案内中。

 

「…吸血鬼とは思えない異端の男だな」

 

とアザゼル。

あんたのお仲間ではないんかい?

だからあんまキレてなかったんじゃないんかい?

この間の吸血鬼との会談のときのキレ方はわかりやすかったぞ?

 

「ええ。誇りや血筋よりも己の欲求を満たすために動いてる吸血鬼なんてそういないわ」

 

ん?吸血鬼は集団的な生物ってこと?虫かなにか?

ってかギャスパーは転生悪魔だからノーカン?

 

「だからこそ、あの手合は厄介だ。種族の定めたルールを全速力で突き破ってくるからな。

 このクーデターもそこから始まったんだろう。それに乗っかった者たちがあそこにいた貴族どもだ。

 マリウスは己の欲求のため、政治家に協力者が必要だった。あいつに乗った政治家、その他お偉いさんは聖杯による強化と、現政府への不満解消を同時に叶えた。

 聖杯によって蘇らせた邪龍がいれば王側の打倒も容易かったろうよ。

 それらを行わせたきっかけは『ヤツ』なんだろう…

 鎖国してるような国だからこそ可能な腐った貴族とテロリストどもの宴だったわけだ」

 

んー…貴族は悪、鎖国は悪、そんな吸血鬼は悪、ってか?

アザゼルって悪魔の上下関係とかも嫌いじゃん。現状を打破しうるってグレモリーチーム買ってるじゃん。それ考えるとクーデター起こしてる側なんか評価する対象そうだけどな。

単純に好き嫌いの話だろ。

俺としちゃあ現状そうなだけとは言え自分の周りに攻撃してこない分吸血鬼のがマシにしか思えん。

まぁルーマニアの人は被害にあってるかもだけど。

それでも三大勢力に比べたら人的被害はマシにしか思えんし。

 

「本来のツェペシュの当主、王様は今どこにいるんですか?」

「…瀕死の重傷を負い、現在はこの領土から退避してるそうよ」

 

そう兵藤先輩がグレモリー先輩に聞く。

…なんで聞く?

逃げたのは既に聞いたじゃん?

だからここに来たんじゃん?

更に言えばこのお城に軟禁されてたグレモリー先輩に聞くことじゃねぇだろ?

逃亡先だろう、恩を売りたいカーミラと繋がってたアザゼルに聞くならまだしもよ。

どういう思考回路してんだか。

 

「ツェペシュの王側はカーミラ以外に助けを呼んでないんですか?」

「呼んでないだろう。

 禍の団が裏で関わってる以上、他の勢力も介入しようと根強く交渉してるだろうが、今のところそれは叶ってない。

 俺たちがここにいるのも別件だしな」

 

今度はアザゼルに聞く。

ギャスパー様々ってことか。

 

「…彼女は何と話してたんですか?」

「…あの世の亡者どもさ」

「えっと、地獄の…冥府とか冥界に行った人間の魂とかですか?」

「人間のもあるだろうが、それ以外の異形やそれらが変質したもの…などの集まりに近い、が…もはや特定の何かとは言えねぇな」

「よくわからないんですけど…」

「よくわからないものと話してる、ぐらいの理解でいい。

 …聖杯を酷使したせいで相当精神汚染が進んでるんだ」

「ええ。私もすぐにわかったわ。

 ヴァレリー・ツェペシュは心、感情を曖昧なものにしている、と」

 

心?平和な吸血鬼の世界云々も言わされてるだけで本心じゃねぇってこと?俺はてっきり弱みにつけ込む形だと思ってたんだが…

でもマリウスの話に反応なかったしなぁ。実質おもちゃ扱い発言だったのに。

 

「ヴァレリーにいったい何が…」

「聖杯だ。生命の理に触れ、命とは、魂とは、それらがどういうものか、神器を使えば使うだけその作りを強制的に知ることになる。

 命の情報量ってのは思っている以上に果てしなく膨大だ。聖杯を使うたびに生きた者、死んだ者、様々な者たちの精神、概念、そんなものを取り込んでしまうのさ。自分の心に、魂に、な。

 …無数の他者の意識が心に流れ込み、侵食してきてみろ。壊れて当然だ」

 

…他人の魂いじくり回した経験があるの黙っとこ。

 

「…あれ?

 じゃあショージくんの場合は?」

 

ギャスパーがこちらを振り返る。

 

「俺も汚染されてんのかな?自覚症状ないけど」

「聖杯みたくデータがないからわからんが、順当に考えれば必要な部分だけ自分の扱いやすい形に変換できるから平気、とかだろうな。

 聖杯は一度全部拾い上げる過程で汚染が不可避…そのかわりに蘇生ができる」

 

まぁ蘇生はできんよ。心臓に電気ショックとか酸素供給に血流操作はできるが。

…しかし神器、それも神滅具ですら使用者が病むレベルのリスクがある蘇生をあっさり成し遂げる悪魔の駒って低リスクすぎてやばくね?

ポケモンの戦闘不能者を石進化やふしぎなあめで蘇生するぐらいあっさりというか。

いやあれは瀕死だから死亡とは違うか。

 

「あ、一応幽霊とかは見えますよ」

「つってもお前にも亡者は見えなかったんだろ?単純に霊能技能だろ。

 亡者が向こうから話しかけてきて、更に奴らと楽しげに話して…ヴァレリーの汚染状況は相当致命的な領域に突入している。何せ滅んだ邪龍を蘇らせるほどだ」

 

「先生、助ける方法はないんですか?」

 

と兵藤先輩。

そこはまぁ俺も知りたいところ。

 

「…まずは聖杯、神器の活動自体を──」

 

流石にアザゼルも絞り出すように考えを口にしていると、ふと正面から誰かが来る気配。

 

「およよ?こいつぁ奇遇だな♪」

 

気持ち悪い喋りしながら近寄ってきた痛々しい銀髪の中年。

アザゼルはわなわなしてて誰か知ってるみたい。ってかこれがヤツ、か?

 

「……やっぱり、てめぇなのか…っ!」

「んほほっ!おっ久しぶりぶり♪アザゼルのおっちゃん、元気そうじゃん?」

「…アザゼル、誰なの?」

 

いつも回りくどい説明するアザゼルがなんの説明もしないのでグレモリー先輩が聞いてあげる。

 

「……リゼヴィム。若いお前でも、この名を親から聞いてるはずだ。グレモリーであれば知っていて当然の男だろう」

「…っ!…嘘、でしょ…?」

「……こいつのクソったれな顔は忘れられねぇよ。なぁ、リリン、いや、リゼヴィム・リヴァン・ルシファーッ!」

「そーんな、怖い顔すんなよぉ。老けちゃうぞ♪」

 

気の所為じゃなければ、アザゼルがキレるたびに上機嫌になっていくリゼヴィム・リヴァン・ルシファー。

おもちゃにされてんな。

 

「先生、ルシファーって」

「ああ。正真正銘の前ルシファーと、悪魔にとって始まりの母たるリリスの間に生まれた息子。リリンとして聖書に刻まれた者。

 そして、歴代最強と称される現白龍皇ヴァーリの実の祖父だ」

 

へぇ。そういえばあいつっていくつくらいなんだろうな。

どうせ外見通り10代なんだろうが。

 

「そして、こいつが今の禍の団の首領だ。俺がここに来るまでの間、あの野郎って言ってたやつだ」

 

うん。事前に言え。無駄にぼかす必要ねーだろ。

あ、いや事前に言うと腰が引けるやつが一名居るから気を使ってたのか?アザゼルなりに。

…でも結局いつかは騒動に巻き込むんだから言っといた方がいいだろ。いいよな?

 

「過去、まだ前魔王の血族が冥界を支配していた頃、リゼヴィム・リヴァン・ルシファーは当時のお兄様、サーゼクス・グレモリーとアジュカ・アスタロト様と並び、超越者として数えられていたわ」

 

本人眼の前に説明するグレモリー先輩。

失礼だと思ったがテロリスト相手だし、まぁいいか。

こころなしか向こうも楽しそうだし。

しっかし超越者は過去三人しか居ない悪魔の枠を文字通り超えた存在…らしいが、なんで悪魔の枠がわかってんだろうな。

多分レベル上限99の存在からレベル100以上が出てきた、的な話なんだろうが、お前らレベルとかねぇだろって。

むしろ前例ができたんだから次世代の悪魔、とかいってまた次のが生まれてくることを願う方が勢力的にはいいんじゃねぇのか?

ま、悪魔ってなんか向上心なさすぎるしな。

あいつが強いのはイレギュラーだからで俺が弱いのは普通の悪魔だから、って自分をなぐさめるくらいはするだろう。

 

「こいつが姿をくらましてから、二名の超越者、サーゼクスとアジュカが現悪魔を引っ張ってきた。

 ま、こいつは元々前魔王一派の中心の一角だった。

 平和、種の存続を願うサーゼクスどもと話があう道理はねぇよな」

 

くらましてから?なんか戦争してたんじゃなかったっけ。だから勝って引っ張ることになったんだろ。なんか放棄して押し付けたみたいな言い方すんなよ。

ってか現魔王は4人制度じゃん。

しかし…

種の存続を願う、でも妹が純血悪魔との結婚を嫌がったらレーティングゲーム勝負させて負けても反故にする超越者サーゼクス。

前魔王派とは話し合いをしようとするけど別に一切合切折れるつもりはなかった平和を願うサーゼクス。

結局三大勢力の中で争うか否かくらいしか差がないと思うが。

 

「悪魔側の旧政府と反政府の内戦時、途中で姿を消した男が今頃になって…

 今更、旧魔王派の連中のごとく、現政府への怨恨でやってるわけじゃねぇんだろ?」

「うひゃひゃひゃひゃ、ま、やりたいことができたから帰ってきた、っつーだけだ。

 アザゼルおじちゃんも元気してた?なんか全勢力と和平結ぼうとめっちゃ頑張ってるそうじゃん?俺、マジ応援したいわ~♪」

 

煽る煽る。アザゼルには和平結ぶことへの妨害宣言にしか見えないだろう。

むしろそっちに意識を持っていきたいのかもしれない。

 

「紅髪のお嬢ちゃん、お兄ちゃんは元気かな?」

「お兄様に何か含むものでもあるのかしら?」

「ないわけじゃねーな。同じルシファー名乗ってんだしぃ。でも、まぁ、どうでもいいっちゃーどうでもいいんだけどね。

 いずれ、会いそうだからよろしく言っておいてちょーよ?」

「…ッ!」

 

こいつらいっつもキレそうになってんな。

まーここの方が正式な場でもないし、まだマシか。

しっかしまぁ、そろそろ縁切りを選択肢に入れれるようにはなりたいな。アザゼルとその仲間、の枠組みに入るの嫌になってきた。

元々は俺自身にネームバリューがないから経験値稼ぎにグレモリー先輩の騒動に乗っかかってた、グレモリーのおまけだったわけだけど、でも今はまぁそれなりに名も売れた、だろうし。

 

「ま、アザゼルおじちゃんの質問に答えてあげましょうかね。

 シャルバくんやら他の前魔王みたいに憎悪やら怨恨で動いてるわけじゃねぇさ。

 悪魔の政治なんざ、サーゼクスくんたちで十分だろうし?俺は俺で別のやりたいことをこの組織を使って実行したいだけなんだよー?」

「…ここでお前をぶん殴ってそれの邪魔をするってのもアリなんだが…

 ここは俺たちにとって正式な協力関係を結んでいない中立の国だからな。簡単に手を出すわけにはいかないか。どうせ、この国では表面上招待を偽ってVIP扱いを受けてるんだろ?」

 

今更。

さっき止めなかったこととの違いってなんだ?結局刃傷沙汰になるならないが経験でわかってるからとか?

 

「うひゃひゃひゃひゃひゃひゃ、そうそう、その通り。

 俺はマリウスくんの研究と革命の出資者でね、今の暫定政権にとっては国賓扱いなのですよ。ここで俺に手を出すのは得策じゃねぇな。

 負けるつもりもねぇけどよ?」

 

そう言うと後ろに人影が一瞬で現れる。

それもオーフィスに瓜二つ。

流石に服装は普通だが。

 

「…マジか」

「奪ったオーフィスの力を再形成して生み出した我が組織の新たなマスコットガール、リリスちゃんだ。よろしくね~♪

 俺のママンの名前をつけてみたのよ。いいでしょー」

 

ネタバラシがはえーな。

俺ならオーフィスって説明してどっかの迂闊な誰かがうちに居るとか言ったのを突っつくが。

 

「このコ、ちっこいけど腐ってもオーフィスちゃんなんでめっちゃ強いよ?僕ちゃんの専属ボディーガードでもあるの~。ユーグリットが留守の間はこのコが僕ちんを守ってくれます!おじさん感激!

 ちっこい子が強いってロマンあふれるよね♪」

 

まぁそれは否定できん。

 

「んじゃ、俺はマリウスくんにお話があるのでここを通らせてもらうよん?ここでは平和に過ごしましょうね~。ここはヴァンパイアくんたちのお家なのですよ~。喧嘩はよくありませ~ん。プライドが高くて、鎖国なお国は最高です♪」

 

こちらが何か言う事も実力行使ができないのを確認しながら通り過ぎていく。

しかし喋りがうぜぇ。

 

「リゼヴィム、ヴァーリがお前を狙っているぞ」

「あーあー、そういやぁ俺っちの孫息子くんをグリゴリが育ててくれたんだったな。

 ちったぁ強くなったん?俺んちの愚息よりかは強かったけどさ」

「いずれお前の首も取れるさ」

「わーお、そりゃおじいちゃんとしてはむせび泣きそうだわ」

 

振り返ったリゼヴィム・リヴァン・ルシファーが兵藤先輩を視界に捉える。

 

「現赤龍帝ねぇ。グレートレッドとオーフィスの力を有する唯一の存在っつーとプレミアム感満載だわな。

 うち来ない?」

「行くわけねぇだろ」

 

即否定。

ってか力の話ってもう漏れてんのね。俺が知らんだけで公言してんのかな?

何にせよ、勧誘するなら女をちらつかせないと。

 

「あらら、そりゃ残念♪

 カーミラと結託してクーデター返しをするならいつでもいいぜぇ♪すんげぇ期待してっから」

 

そう言って今度こそ去った。

そしてアザゼルが何故か廊下の壁に拳を突き立て破壊する。

いやマジでなんで?

 

「…ヴァーリ、お前の気持ちが理解できて仕方ないよ」

 

俺には育ててくれたところを裏切ってテロリストになって、のうのうと神と戦うから力貸せとか言ったりするやつの気がしれないな。

その腕だって裏切ったせいで今義手なんじゃねぇの?

ってかムカついたからってやつあたりで他所んち壊すんじゃねぇよ。

さすがテロリストの気持ちが理解できる男。

 

 

 

滞在用の部屋に移動した後、ギャスパーの父親に会いに行くことに。

まぁ大勢で行くわけにもいかないので、ギャスパーと接触の多い白音と俺と兵藤先輩に引率の姫島先輩で。

ギャスパーはグレモリー先輩と一緒にヴァレリーに呼ばれて、アザゼルはマリウスの本業である神器研究仲間っぽいやつらのところに呼ばれたから全員で行けたわけでもないが。

 

で、言ってた通りに地下室に連れられた、わけなのだが…

 

「ここがヴラディ家当主様がおられる客室にございます」

 

と案内してくれたメイドさんが言ってノックして一声かけて、扉を解錠して開き、俺らに中に入るよう促す。

軟禁ってこんないかにも牢屋みたいなところにするもんなんだな。

とは思ったが一応貴族、中は割と豪華な作りにはなってる。

外見は軟禁って体裁のため?

外が見えない以外は下手なホテルよりかは良さそうんか。

 

「初めまして。私達はリアス・グレモリー様の眷属悪魔です。

 私はリアス・グレモリー様の女王、姫島朱乃と申します。この度はご挨拶だけでもと思いまして、この場に馳せ参じさせていただきました」

 

俺らは違うけど、じゃあなんでギャスパーの話しに来たんだ、とか言われると困るので打ち合わせしてその件については黙って仲間っぽい面をする。

 

「どうぞお座りください。

 アレ、いえ、ギャスパーについて、話をしに来たのですね?」

 

ソファに座る姫島先輩。主の代理みたいなもんだからね。

俺らは後ろ。

 

「既にリアス様とは話をしましてね。お互いにアレの情報を交換しあいました。今後、アレの処遇を巡ってグレモリーとヴラディでどうしたらいいか、話し合いを進める中で私がこの城に召喚されまして…情けない話ですが、ここに幽閉されたのですよ。

 まさか、こんなにも静かにクーデターが起こり、ツェペシュ王が退かれるなどと、想像もしてなかったものでして。

 私が幽閉されたことで、マリウス殿下側が息子にリアス様をこの城に連れてくるように命じたようです」

 

淡々と喋る。が、周りはそれどころではないように感じるみたいで…

 

「アレ、ですか」

「アレは…ギャスパーは悪魔としては機能しているのですね。リアス様からそれを聞き、正直おどろきました」

 

機能してる…?

 

「ギャスパーくんのお母様はやはり…」

「ええ。既に亡くなっております。アレを産んだ直後にね」

「難産だったと?」

 

そこまで聞いた時に表情が動く。

まるでクーデターよりもそっちの方がよほど深刻なように。

 

「…いえ、ショック死です」

 

ショック死、えーっと…なんらかの原因があって、心臓に血液が戻らなくなり血圧低下、酸素が回らなくなって死亡。

しかしここまでの感じだと、オキニの愛人が死んだ原因だから嫌い、とかそんなレベルじゃないな。もっと別ベクトル。

 

ギャスパーの親父さんは手を組み、うつむきながら話す。

 

「彼女の腹から産まれたのは…禍々しいオーラに包まれた何か別のモノ、でした」

「何か?」

「そうとしか形容しがたいのです。

 産まれたとき、アレは…ヒトの形をしていなかった。黒くうごめく不気味な物体が腹から出てきた。人でもなく吸血鬼でもなく、ハーフですら…

 そんなモノが自分に宿っていた。アレの母親はそれを目の当たりにして精神に異常をきたし、そのまま死に至ったのです。

 我々もそんな報告を受けた時、何をバカな、と思ったのですが、その場に居合わせた産婆も、複数の従者も、それから数日のうちに全員と変死しました。内々に調査した結果、呪殺だろう、と」

 

ホラー映画か何かみたいだな。でも真面目な話なんで、呪殺って聞いて出てきた死んでくれる?ってワードを脳内から追い出す。

 

「ギャスパーが?呪いを?」

 

赤おじ…じゃない。兵藤先輩が相変わらず立場を考えず出しゃばる。

こいつこの間の吸血鬼との会談のこともう忘れたのかな。

 

「ええ。無意識のうちに振りまいた呪いなのでしょう。産まれて数時間ののち、通常の赤子の姿に変化したのですが、もうそのときにはアレの母親はショック死したあとでした」

「それをギャスパーくんは知っているのですか?」

「いえ、知らせていません。

 何がきっかけであの姿に戻るのかわからなかったものですから。とにかく刺激したくなかったのです。

 …事情を知らない近縁者が時間停止の神器とやらを薄気味悪がっておりましたが、私どもにとってはそんなものよりもアレの方がよほど畏怖すべきものでした」

 

深く息をはく。

 

「…グレモリーの皆さん、我々はアレを吸血鬼とも人間とも、もちろんハーフとも思えないのです…ただ異形としか…

 一応はアレをハーフとして扱わせましたが…それが正しかったとも思えず…正体がわからぬまま、私たちはアレを外部に出してしまった…」

 

嘆くように話す。

安堵と罪悪感とか責任感がまぜこぜになった感じ…かな。

 

「昔のあいつがどうだったのかわかりません。

 けど、今ギャスパーは悪魔です。俺の後輩です。例え、体が闇に塗れようとも…仲間ですから」

 

兵藤先輩が口火を切る。

が…なぁ。

 

「…ギャーくんは私の大事なお友達です。初めて出来た、同い年のお友達なんです」

 

…まぁ仲間とは言い難くなっちゃったからね。

すまん。

 

「当主様に一つだけ。彼の名誉の為に言っておきますが、彼が我々の前で闇を纏ったことは二度ありましたが、どちらでも味方に害をなしたことはございません」

 

被らないような内容…呪殺は事故じゃね?とだけ言っておくことに。

赤ちゃんがしょんべんひっかけるようなもんだよ。

吸血鬼らが死ぬようなしょんべんだけど。まぁ今はトイレでできるでしょ。

 

どーせ周りからはヴラディ当主は悪者あつかいされてるだろうと思ってなぐさめようかと思ったけど

呪いが効かない俺が何言ってもなぁ。

 

ヴラディ当主は顔をあげる。

 

「あなた方はアレの正体をご覧になられた上でそうおっしゃるのですね。

 リアス様も『人間でもなく、吸血鬼でもないならギャスパーは悪魔です。何せ、私がこの手で悪魔に転生させたのですから。正体がなんであれ、紛れもなく、あの子はグレモリー眷属の悪魔ですわ』と」

 

まぁ俺らは被害受けてないからね。

なんとでも言えるよ。

 

「……我々には理解しがたい感情ですが、なるほど。

 あの力を見た上でそうおっしゃるというのなら、アレは少なくともあなた方に救われたと思っていいのでしょうな」

 

その後も多少話をしたが、特に進展もなし。

わからんものがわからんかっただけ。

 

…が、しかし。

そもそもリアス・グレモリーの仕事って吸血鬼の問題にギャスパーや俺以外も対処できるように、で、ギャスパーの処遇を完全にこっちに移す、とかじゃねーはずだが?何やってんだ?

 

まぁ仮にそういう流れにされたとしても、グレモリー先輩もそこまで言ってるんなら、ヴラディ家はギャスパーいらねぇし、グレモリー眷属はギャスパー欲しいってお互いウィンウィンの取引が成立してるもんじゃねーのか?

…ってかヴラディ当主は色々大変だったし今も大変とは思うけどさ、それはそれ、これはこれで、てめーの感情とかどうでもいいんだよ。捨てた側が別に執着してるわけでもないのに処遇でモメてんじゃねぇ。

 

で、戻る途中。

 

「兵藤一誠様、塔城小猫様、惣間正二様、ヴァレリー陛下がお呼びでございます」

 

 

 

連れて行かれたのは室内庭園。

途中階段も登ったが、天窓とかそういうのも一切ない。

…って吸血鬼日光ダメだもんな。

しかしながら明かりはちゃんとあるし、植物も…何かはわからんが綺麗。こーゆーのってセンスだよなぁ。

 

庭園の中央のテーブルまで連れられて、そこには既にヴァレリー、ギャスパー、グレモリー先輩が座っている。

俺らも適当に座る。

…と、さっきの殺気の持ち主が兵藤先輩に視線を送っている。そういや邪龍さんなんですっけ。ターゲッティングかな。

 

「あちらは私のボディーガードさん。クロウ・クルワッハさんです」

 

兵藤先輩が視線に反応したからか説明する。

一応紹介されてたから会釈しとこ。

 

「リアス様から日本でのギャスパーの生活を聞かせていただいたの。日本はとても平和な国だそうですね、兵藤一誠さん」

「え、ええ。日本は美味しい料理や楽しいものがたくさんありますよ、ヴァレリー…陛下」

「敬語はやめてください、兵藤一誠さん。

 リアス様にも普通に接してくれるようお願いしてるのよ。ヴァレリーと呼んでくださいね」

「ええ。ぜひそうなさい、イッセー」

「はい。

 わかりました、ヴァレリー」

「うふふ。ありがとう」

 

なんだろうなぁ~

幽閉されてる相手には敬語使わねぇけど、暫定政府のトップには流石に使おうとするのか?

で、許されてだんだん敬語が使えなくなる、と。

ってか自分は様つけさんつけで呼び捨て頼むってどーなの。

 

「塔城小猫さんは美味しいお菓子をたくさん知っているのでしょう?日本にはどういうのがあるのかしら」

「えぇと、私が好きなのは…」

 

などと至って普通の雑談を続けていく。

 

「  そうよね。   わかるわ。 けれど、それは  」

 

だが、やはり途中途中で虚空に話しかけるのは変わらない。

 

「…ギャスパーはお日様を見たことがあるのよね」

「うん。僕はデイウォーカーだから。

 …ヴァレリーだってそうじゃないか」

 

亡者とやらに話しかけてたかと思ったら天井を見上げていた。

なんの前触れもなく通常モードに切り替わるんだな。

 

「そうよね。けれど、私は…外に出してもらえたことがないから…

 一度でいいから、お日様の下でギャスパーとお茶がしたいわ。ピクニックってとても楽しいものなのでしょう?」

 

ピクニックて…

情緒が育ってない?まぁこんな閉鎖的なとこだしな。

 

「それなら皆で行きましょう。オカルト研究部のメンバーとヴァレリーとで、日本の行楽地に行きましょうか」

「まぁ。それは素敵だわ。

 お日様…の下で皆とピクニック、とてもとても楽しそう」

 

目に生気が戻る。

確かにこういう姿を見ると、謁見の間での発言はおかしいと思えるな。

ただそれが聖杯だけのせいなのか、外からなんか精神的な操作をされてるのかはチェックしないと。

集中してヴァレリーを見る。

兵藤先輩とギャスパーもどうにかヴァレリーに元気を出してもらおうと盛り上げようとする。

 

「ははは、引きこもりのギャスパーにしちゃ、ノリノリだな」

 

しっかし兵藤先輩のギャスパーの弄り方は好きになれねぇ。

もう引きこもりじゃないのに昔のイジれるネタをずっと当てこすりしてるからだろうか。

立場が一方的に優勢で、上下関係的なものを感じるからか。

 

「も、もう!イッセー先輩、冷やかさないでくださいよぉ!僕は真剣にヴァレリーに提案してるんです!」

「そうです。ギャーくんは人生初のデートのお誘いをしてるんです。冷やかし厳禁です」

 

単純に嫌い、なんだろう。

とまぁそんな感じで、俺の腹の中はともかく表面上は楽しげに和気あいあいとしていたのだが…

 

「何が楽しいのかな」

 

マリウスがやってきた。お前に楽しむ権利なんざない、とばかりに。

それと同時にヴァレリーの目から生気が抜ける。嫌な上司が来た会社員みたい。

 

「マリウスお兄様。ギャスパーとリアス様方とお話をしていたのです」

「これはどうも。失礼します。

 ヴァレリーがお客様と面会されていると聞いて、顔だけでもと思いまして。

 お邪魔でしたかな?」

 

邪魔しに来たのになーにいってだ。

でもまぁこれくらい取り繕えねーとな。

 

「いいえ、そんなことはありませんわ。こちらこそ、先程は眷属の騎士がご無礼なことをしまして、大変ご迷惑をおかけしました」

 

ほんとにな。

いやこれもどーせ本心からじゃないから改善しないんだろうけど。

相手が悪人だからどんだけ無礼でもいいってか?

 

「いえいえ。下界の者がこの世界に飛び込めばわからないこともおありでしょう」

 

お優しいのね。要求はなし。

本気で政治に関心ねぇんだな。

もしくは単純にグレモリー眷属らに興味…いや、使い道がないのか。

 

「あ、あの!」

「何かな、ギャスパー・ヴラディ」

「…ヴァレリーを解放してもらえませんか?僕ができることがあるのなら、なんでもします。

 …だから!どうか、ヴァレリーをこれ以上、苦しめないで…」

 

良いこと言ったなぁ。と思う気持ちが半分。

でもお前そんなに大切ならなんで吸血鬼の外出たんだよ。というのが半分。

大切な相手ならなんで離れた?

仮にヴァレリーがマリウスからトラウマになって近寄るなり言いなりになるくらい凌辱されてたとしても、近くにいないから助けられなかったわけじゃん?

利用価値があったから今命は失われてないだけで、死んでた可能性もあったんだろうし…

まぁギャスパーにも事情があったのかもだけどさ。

 

「………

 わかりました。解放しましょう」

 

少し考えた後に微笑みながらそう言う。

 

「ただし、少しだけ時間をください。何せ政権が移り変わったばかりですから、女王にと据えたヴァレリーがいきなり降りるのも体裁が悪い。

 しばし、お時間をいただければヴァレリーをあなた方にお渡しいたしましょう」

 

神器抜くまで待ってね。ってことかな?

 

「ヴァレリー、日本に行ってもいいですよ。あちらでギャスパー・ヴラディと平和に暮せばいいでしょう」

「けれど、聖杯は…」

「気にする必要はありません。あなたはもう使わなくていいのですよ。十分に役目を果たしてくれましたからね。

 聖杯から解放されてもいいでしょう」

「ほ、本当ですか?

 わぁ、ギャスパー。私、日本に行けるみたいよ」

「うん!良かった!…本当に良かった!」

 

ふむ。「あなたは」使わなくていい。「聖杯から」解放ね。

めっちゃストレートだな。

 

 

 

さて。それから2日間はギャスパーと白音と一緒にヴァレリーの元へ通い詰めてずっと見ていた。

いくら興味は神器だけっす。って口で言っても信用できんし、何か変な術とか仕込まれてたらやだし。

ヴァレリーに視姦趣味と思われてたら嫌だけど。

 

で、本日分の時間も終わって滞在部屋に戻る。

本日分の…とは言うが別に政務をするでもなく、お飾り女王とは言え仕事もほぼないっぽい。

代わりにマリウスは初日以降全然来なかったが…神器抜く準備で忙しいんだろうな。

 

2日ぶりにアザゼルが、吸血鬼の町中に外出してた組と帰ってきた。

 

「アザゼル先生、聞いてください!マリウスさんが、ヴァレリーを解放してくれるって約束してくれたんですよぉ!

 良かったですぅ。これでヴァレリーを日本につれていってあげられます!」

 

ここんとこずっとハイテンションなギャスパーがアザゼルに話しかける。

 

「…話せ、何があった」

「まぁそのままですよ。

 マリウスにギャスパーがヴァレリー解放してくれって頼んだら、いいけどちょっとまってて。って返して。

 ヴァレリーにも、あなたを聖杯から解放しましょうとか、あなたは神器を使わなくていいです、とかいかにも神器抜き取るからお前の肉体の方は良いよ的な感じで話してただけで」

「──えっ」

 

さっきまでのハイテンションぶりが嘘のように止まるギャスパー。

 

「ちょっと、ショージ!?」

「えっなんすか?

 あぁアルジェントさんの眼の前で言う内容じゃなかったですね。すみません」

 

全然すまないとは思ってないけど。

 

「そうじゃなくて!…いえ確かにそっちもだけれど」

 

ギャスパーにもっと気を使えってか?黙ったまんま夢見心地にさせて現実に向き合わせたくないって?

俺はやだよ。

 

「じゃあなんです?

 神器にも神器抜き取りにも詳しそうなアザゼル先生が帰った今だからこそ、ちゃんと話をしないといけないでしょう?

 で、先生。どうです?研究所みたいなとこでそういう気配はありました?」

「…いや、なかった。なかった、が…

 どうもあいつら、俺とヴァレリーを会わせたくなかったみたいでな。それを考えると俺の見えないところで作業をしてた可能性は、ある」

「あ、あの…

 聖杯を、抜き出されたらヴァレリーは…どうなるんですか…?」

「…死ぬ」

「そ、そんな…マリウスさんは解放してくれるって…日本に行ってもいいって…

 全部、嘘だったの…」

 

アザゼルの言葉にポロポロ泣くギャスパー。泣くんじゃねぇよ。あーもういいや。

 

「いや別に嘘はついてないだろ。生きたまま引き渡すとも言ってないし。

 あ、そうだ、アザゼル先生」

 

アザゼルに呼びかけて数名の名前を上げる。

 

「彼らは捕まえた英雄派の構成員のはずですが、知ってますか?」

「いきなりなんだ。

 まぁ知ってるが。なんせそいつらは…まさか!?」

 

ハッとするアザゼル。

周りはわけがわからん状態。

…ちょっと楽しいな。これ。

アザゼルもこれが楽しくて匂わせマンになってるんだろうか。でも喋ってくれない側に立つとこれムカつくのも知ってるから時と場合を気をつけないと。

 

「そう。英雄派に所属していた神器持ち…神器に負けたら死ぬようにプログラムされた蛇を入れられて。でも生存してる人物…

 その理由は俺が生きてる間に蛇ごと神器を奪ったから」

「そんな…そんなことありえるわけがねぇ!

 まだ蛇の機能がミスした可能性の方が高い!」

「んじゃ…はい。神器」

 

研究も終わって要らなくなってた神器を渡す。

 

「「「…」」」

 

神器を渡されたアザゼルも、それ以外の面々も、呆然としている。

 

「あ、この情報はあんま広めないでくださいよ?

 必要な時に必要なだけにしないと、こいつの神器取れとか注文がひっきりなしになりそうですし」

「………出来ねぇよ、そんなこと」

 

絞り出すように返答するアザゼル。

カードを切っちまったわけだが…まぁこの情報はいつかは出さなきゃいけないもんだったんだ。

神器に悩んでる人間もいるって知ってんだから。

ここで切った方が良かったかどうかは…

 

「ってわけで、もし神滅具抜き取られても死なないかもしれないと思ったらどう?ちょっとは安心した?」

「…うん、ありがとう」

 

涙でぐちょぐちょのままの笑顔が帰ってきた。

ほれティッシュ。

ま、明日考えよう。

明日は敵かもしれんが、まぁそれはそれ。

 

「とは言っても何事もない方がいいが…最悪こいつもあるしな」

 

悪魔の駒を取り出す。

 

「流石にそこまで甘えるわけにはいかないわ。私もギャスパーの力になりたいんだから」

 

そう言って自分の駒を見せてくる。

私が助けるわよ、みたいなことが言いたいんだろうけど、リアス・グレモリーさんの駒価値5で助けれるかどうか…

抜いてたら行ける?抜いてても神滅具持って産まれたから神滅具判定?

 

「ぶちょお…」

 

今度は嬉し涙。涙腺忙しいなおい。

お?

 

「じゃあ早速助けてください。

 この部屋にシトリーの魔法陣だけを受け入れる結界とか作れません?」

 

お互い親しいからそういうのできそうっぽいから頼む。

自分はできそうにないけどできそうな他人に頼む。これが仲間パワーだ。

 

「えっ?

 できるけど、連絡は取れてるの?一度張ったら向こうに警戒されるわよ?」

「大丈夫そうですよ」

 

怪しみながらも結界を張ってくれる。

張った瞬間、天井に魔法陣が浮かぶ。

 

《どもっす。だいぶ難儀してたんで助かりやした。

 …おや、どうされたんで?》

 

逆さに顔をだしたベンニーアが唖然となってる周囲に反応する。

…落ちてきたヒトに対応してスライディングして受け止め、クッションになる。

 

「きゃっ…」

「大丈夫ですか?」

「…し、失礼しました」

 

俺の腕の中から降りて、身だしなみを整える。

 

「ごきげんよう、皆様。お元気そうで何よりですわ」

 

何事もなかったかのように挨拶。

 

「エルメンヒルデ、この国に潜入していたのね」

 

グレモリー先輩も何事もなかったかのように対応。

 

「ええ。町で城へのルートを工作員と決めかねているときに、そこのベンニーアさんと裏路地でお会いできたものですから。

 …お話しすることがありますわ。

 間もなく、マリウス・ツェペシュ一派は聖杯を用いた一連の行動を最終段階に以降すると密告がありました」

「…やっぱりか!」

「細かい情報は?」

「ヴァレリー・ツェペシュから聖杯を抜き出し、この国を完全に制圧するそうです。

 聖杯の力を高めて、この城下町の住民全てを作り変える計画を発動させるそうですわ」

「てめぇらだけじゃなくて住民全て、か。

 尖兵にでもするつもりか?」

「思惑はどうあれおぞましい話です。聖杯の力で吸血鬼の特性を持った別の生物に変える気なのですから。

 我々、町に侵入したカーミラの者はもうすぐツェペシュ派の政府側と共に反政府派の打倒を開始するつもりです」

 

しかしなんだなぁ。禍の団って旧魔王派のときもそうだが、引っ掻き回して仲違いさせてたのを協力させてるような気も…

 

「とにかく、早くヴァレリーを助けに行かないと…!」

 

ギャスパーがそう言った瞬間、窓から光が入る。

陽の光ではない。ってか吸血鬼が大丈夫だし。

 

「…先手を取られたか!

 おそらくカーミラ側の動きが察知されてるな。奴らこの時点で聖杯を抜き出す儀式を展開する気だ!

 かなりオリジナルが入ってるが、神滅具を所有者から取り出す術式に間違いない!」

 

と外を伺ってたアザゼルが。

しっかしオリジナルが入ってるってーか独自に作り上げたんじゃねぇの?そこまで自分の専売特許だと思ってるってか?

…ふと思ったけど、二天龍が大暴れするクソ野郎って認識だったのに白いのから抜き取ってないんだよな。神滅具を所有者から取り出す術式知ってるってのに。

 

「私は外から仲間と共に行動します。あなた方は早く脱出してください」

 

魔法陣に戻りながらエルメンヒルデが言う。

 

「この状況でも俺たちの介入を拒むつもりか?相手はテロリストも絡んでいる。間違いなく邪龍どもも出てくるぞ?」

「ええ。それでも吸血鬼の問題は吸血鬼が…失礼」

 

話の途中で目をつむる。

 

「…我らが女王カーミラがあなた方の援助をお認めになられましたわ。

 ギャスパー・ヴラディ、聖杯を…ヴァレリー・ツェペシュを奪還したいと考えていらっしゃいますか?」

「もちろんです!」

「いいでしょう。

 ギャスパー・ヴラディが行くというのであれば、あなた方の同行を認めます。彼の補佐、護衛をお願いしますわ。

 手前どもは元々、ギャスパー・ヴラディを使ってヴァレリー・ツェペシュの行動を止めるのが目的でしたから。

 それではごきげんよう。

 お手数ですけれど、外と繋げてください」」

 

くどいな。美形じゃなかったら三大勢力と吸血鬼の和平とかどうでもいいから無視してたところ。

まぁ俺も自分がそれやってないと怒られるならするんだけどね。組織ってめんどくせー。

 

「案外あっさり任せるんだな?」

「あなた方の実力は買ってますので」

 

リップサービスじゃないんなら大変ねぇ。

勝手に動くだろう人員にも動かす理由づけや上役からの許可がないとダメとか。

 

「きゃあぁぁぁ」

 

エルメンヒルデが魔法陣に入ってら悲鳴が。

 

《繋げた先もどっかの屋内の天井ですぜ》

 

舌を出すベンニーア。

マジか。何考えてんだこいつ。

嫌がらせってバレねぇからOKってか?

何を考えてシトリーはこんなやつ連れてけって許可出したの?

 

「…救います、僕。ヴ」

「そうだな。早く行こうぜ」

 

なんかギャスパーが決意表明しようとしてたんで話の腰を折る。時間勝負だろ。

 

「ちょ、ちょっと待て!まずは作戦会議だ!」

 

出ていこうとしたらアザゼルに止められた。なんの作戦なんだよ。

無視…してもいいが、まぁ間に合わなかったらちんたらしてたやつの責任でいいな。

 

アザゼルは図面を広げる。

 

「くすねてきた見取り図だ。ここを見ろ、城の地下深くに広大な空間が存在する。地下は深いが大きく分けて4段構成。

 ツェペシュ側は吸血鬼に関する主だった儀式をその一番下、最下層の祭儀場でおこなっていたそうだ。

 あの魔法陣が城を中心に展開したということは、聖杯の取り出しもこの最下層でおこなっていると見て間違いない」

 

木場先輩が地図に印をつけていく。2日間で探索した結果だそうな。

 

「今はこうですね」

 

手を加える。

 

「仙術か?」

「吸血鬼はあれじゃわかりにくいんでエコーロケーションの方ですね。

 …ま、こっちも現状がこれってだけで変わる可能性はありますが」

「じゃあルートはこっちの方がいいね」

 

訝しむ視線を感じるが、それくらい出来ないと一人で突っ込もうとしてた説得力ないし?

現場を実際に見てた木場先輩が、大勢で通りやすそうなルートを構築する。

今回は襲撃にあってる建物内。ここにもクーデター鎮圧に来るかもだから、非戦闘員をおいていくわけにもいかない。

 

「こんなもんか。よし、確認だ。

 目的は聖杯の抜き出しの阻止。出来なかった時でもマリウスの捕縛。マリウス以外の上役はできるだけ生き残らせろ。

 その代わり、テロリストどもは問答無用で始末していい。それは俺が許す。

 邪龍に襲われ危なくなったら、ヴァレリーと聖杯だけでも取り戻して逃げの一手だ。無理に倒そうとするな。

 …いいな?」

「「「はい!」」」

「絶対にヴァレリーを助けます!」

 

いや急ごうや。





いつものアレやソレ

・ベンニーアとルガール同行のくだり
何度でも言うけど
何度でも言うけど
原作からしてこれどういうこと?ってなる本文多いよHSDD
トーシロが何いってんのって言われるかもだけど

あとやっぱ会長頭良くないよ…
テーブルゲーム強いだけだよ…
魔法使いとの戦闘でも言ってたかもだけど

・出立前の匙との原作会話
ホントはせっかく手を入れて原作の一誠用踏み台よりマシにした匙なんだし、主人公と会話させようかと思ったんだけど、原作のが宝くじ買っただけで既に当たった後の心配をするようなものなのでなんとも言えなくて

・車
メンバー分けわからん
いつものかと思ったけど、一誠が単語帳に言及するのがゴンドラだとゼノヴィアと同行はしてない?
ってか原作はアザゼル側じゃない車のメンバーとも情報交換したのかねぇ

>鎮静
原作だと沈静
でも鎮圧する方だからこっちよね?

>私が女王様である以上、平和な吸血鬼の社会が作れる
なんか原作だとこれが本心からの言葉じゃないと一誠ですらすぐにわかったらしいんですが自分にゃわかりませんでしたわ
読解力ないのかしら

>マリウス
最初から敵役のカスなんだけど、そんなカスの方が発言は取り繕えてるのがねぇ…

>擁護してた俺がアホみたい
自分が思ったこと、ってわけでもなく主人公の意見
ってのも読者視点で考えるとキャラ変扱いでいいでしょ、と思うわけで
あの時はあの時
今は今
リアスも1巻と2巻以降で性格違うし
なので3巻のゼノヴィアを擁護するのは続けます
それ以降のゼノヴィアは知らん
知らんけど扱い悪くてかわいそう

>クロウ・クルワッハ
原作だと一誠どころかグレモリー眷属メンバーの探知能力のせいか唐突に現れてる感じすぎてちょっと表現困る
まぁ一応主人公自体の探知能力はそれなりでMPでの録画とは別口のつもりではいるんですけど
それもじゃあどの程度まで主人公に感知させるかが…
全部が全部当てつけで、グレモリー一行はわからなかっただろうけどうちの主人公はわかってるから!ってのもなぁ

>ツェペシュの当主、王様は今どこにいるんですか?
何度でも言うけど
兵藤一誠さん基本ヒトの話聞いてないっすよね?理解できてないっすよね
何度でも言うけど

>他人の魂いじくり回した経験があるの黙っとこ
とは言っても主人公がいじくり回したところで聖杯の汚染とは全然桁が違う

>蘇生はできんよ
レイナーレを魂から復元してコピったアーシア神器持たせてお望み通りヒーラーとして三大勢力でこき使ってるネタがあった
でも蘇生はなぁ…ってことでボツ
復元ディオドラやその眷属たちが反悪魔の駒協会にいるみたいなのとかもあったが…
まぁ結構汚れ落としして、どっかの教会から追い出された狂人よりは死に際もきれいにしたつもりなので出さない方がいいでしょう

>ポケモンの戦闘不能者を石進化やふしぎなあめで蘇生
悪魔の駒の蘇生ってこれからなのかも、って思ったので

>リゼヴィム・リヴァン・ルシファー
言動がきついっす
でもリゼヴィムのセリフだけ削って
~(意訳)といってる、なんて形にもできんしねぇ…

あと>ネタバラシがはえーな以降
こんなだから騒動の天才とは一切思えんのよね
描写されてない部分では天才なのかしら

>ヴラディ当主は悪者あつかいされてるだろう
基本的にグレモリー一行は自分が相手の言動気に入るか気に入らないかだけで、相手の立場とか状況とかそういうの考えないよね

>リアス・グレモリーの仕事って吸血鬼の問題にギャスパーや俺以外も対処できるように、で、ギャスパーの処遇を完全にこっちに移す、とかじゃねーはず
一応14巻見てきたけどギャスパーの処遇とかの話題はなかった
どっから湧いて出てきたんだろう

>お前そんなに大切ならなんで吸血鬼の外出たんだよ
なんかこれ情報出てたっけ?
なぜか外に出てて、ハンターに殺された。くらいしかなかったような…

>黙ったまんま夢見心地にさせて現実に向き合わせたくないってか?
言わなきゃなーって後ろの方でひそひそ話する必要性って何?
なんだろう、イッセーを女装して騙した悪者扱いがまだ続いてる…とか?

ってかさっくり騙されてるギャスパーってどうなんだろう
意図的に知能下げられてる?希望にすがって目をそらしてるだけ?

>神器抜きバラシ
最初は黙ってたルートで考えてたんだけど
主人公って吸血鬼寄りだし、普段ならともかく吸血鬼関係でなら言いそうだなって変更
まぁ大筋はかわらんので

>落ちてきたヒトに対応して~
なんかさぁ、こういう雑な扱いしてて、それでよしとしておいて、でもそいつハーレムいれるわ!ってするの違和感あんのよね
まぁ敵だった黒歌にしろすり寄ってきたら受け入れるから関係ないのか?包容力すごいっすね
の割にはゼノヴィアの扱いは黒歌よか悪い気がするけど
なんだろう、これはアーシア幸せ計画()とやらの一環?
単純にアーシア>小猫で、黒歌>小猫だから、黒歌>ゼノヴィアになるだけ?

>時間勝負だろ
原作はもっとお話長いっていう
ピンチなのに急がないのはここだけじゃないけど、そのせいで茶番感が増すんだろうか
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