ハイスクールDevil castle×Dracula   作:二痔升

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36話 16巻中盤

ヴァレリーを助けに、吸血鬼居城の一番地下へ。

 

戦闘を避け、あっさりと地下への階段を降り、地下一層。

見えやすくだいぶ広い空間に、わらわらとがっちり武装した吸血鬼兵士が。

んー?鎧とか意味ねぇと思うんだが…

逆か。鎧を着る必要がある、まだ弱点消されてない下っ端戦闘員とかか。

 

「さて、誰が行く?

 結構な数だ。この下に手練れが待ち構えているとすると、ここで無駄な体力は使いたくない」

「アザゼルやショージくんは聖杯にたどり着いてからが本番ですから、こんなところで消耗してもらっても困りますわ」

 

あらどうも。んじゃゆっくりさせていただきますわ。

 

「私が開幕の合図としてデュランダルのオーラを出したいところだが、それはよした方がいいんだろう?」

 

ゼノヴィアの一言を皮切りに、パワーバカ扱いコントが始まっていく。

 

「ええ。あれはそう簡単に連発できるものではないのでしょう?邪龍クラス相手にまで温存しておくほうが妥当だわ」

「ゼノヴィア、ちょっとは考えて。

 テクニック的な動きをしたかと思えばまたパワー思考なんだから!」

 

いや考えたからよした方がいいって言ったんだろうに。

ってかそれより謁見の間で武器だしたりする方がおかしいだろ。まずそっちを怒っとけ。

 

「ごめんなさいね、木場くん。ゼノヴィアは昔から人手が足りない時は率先して穴を補おうとするんだけれど、人手が足りていると途端に抜けちゃうの」

「で、結局どうするんで?」

 

コント長いし面白くないしめんどくせぇ。ぶった切る。

ヴァレリーの存在忘れてないか?それとも眷属にしたいからわざと?

 

「…問題ない」

《ま、ここはあっしらってことでしょうねぇ》

 

おー。お手並み拝見。

 

「ベンニーア!ルガールさん!二人だけじゃ、この数は厳しいんじゃないか?」

 

と兵藤先輩。

まぁ別にそれならそれでいいじゃん。

と俺の期待を裏目に、ベンニーアは大鎌を手に鎧兵士の元に走っていき、残像を生み出す速さでなぎ倒していく。

鎧兵士どもは広範囲攻撃をする能が無いのか、反撃も残像をちょろっと消すのがやっと。

 

「…あの残像は目で捉えられるけど、超高速の末に生じたものだ。実際に捕まえようとしてもそう容易くはいかない動きだよ」

《死にやすぜ…あっしの姿を見た者は皆死んじまいやすぜ》

 

あっ。

あぁ、うん…

 

「死神の鎌(デスサイズ)だ。あれに斬られた者は外傷もなく、魂だけを刈り取られる。魂に損傷を与えられるダメージ量は持ち主の技量に比例するが…

 聖杯で強化された吸血鬼の兵隊を一太刀で沈めるということは、ベンニーアの実力は目を見張るものがあるということだろう」

 

そうだね、デスサイズだね。

ってあいつら強化されてたのか。の割には…

 

「少なくとも中級以上はありますよ。中級悪魔の試験後に出会った死神どもよりいい動きしてますからね」

 

と兵藤先輩。そっすね。まーあれ義体っすけどね。悪魔と違って死神は数少ないし他所からぶんどったりできないから向上心あるんですわ。

 

「さらに騎士でスピードも底上げされている。本人の資質と好相性だ。

 ゼノヴィア、見ておくんだよ?」

「…それは皮肉か?」

 

テクニック至高がなんか言ってら。

ってか柔よく剛を制す、だけじゃなく柔よく剛を制し、剛よく柔を断つ。どっちも揃ってだろうに。なんのための二人体制なのやら。

 

んで、ルー・ガルーさんも負けじと狼男に変身して、敵陣に駆け込んでいく。

ルー・ガルーって検索したらフランスの狼男の呼称って出たんだけど、そのまんまだわね。

あ、あと西インドの魔女もあったか。

本当に名前なんだろうか…?人間に人間って名前つけてるようなもんでは?

むしろ普通に本名隠すための通り名と考えたほうがいいよな。いみなとかあざな的な。

それはともかく吸血鬼連中は慌てふためく。

 

「吸血鬼と狼男は古くから争っているから、お互いに天敵として認識しているのよ」

 

グレモリー先輩がそう言うが…んじゃ天敵を連れてけってシトリー先輩は言ってたんすね。

本気で和平する相手として考えてんのか?

 

んでルー・ガルーさんは回避のベンニーアと違ってガチガチの高防御タイプ。この程度の相手の武器じゃ文字通り刃が立たない。

名前の元ネタ要素っぽい魔女と狼男のハーフで魔法も使えて安心。

…だからさっさと行こうぜ。

俺がギャスパーの立場だったら手伝ってもらってるけどイライラすると思う。

 

『ここはベンニーアと俺に任せて先に行け』

「任せてもいいのね?」

《そのために派遣された面がありますぜ。新人コンビは能力の初お披露目と主役のための足止めが適任なんでさぁ》

 

メタいなぁ。

ベンニーアだけメタネタでなんか思い込みとかして失敗しねーかなぁ。

 

 

 

と言うわけで二層目。

 

「来た来た。主どのが仰った通りだ」

「うむ、噂のグレモリー眷属」

「強化された我々にとってはいい相手になりそうだ」

 

向こうから声をかけられる。扉を開ける前から気づかれてたっぽいし、流石に上のやつらよりは気配察知もできるのだろう。

 

「さーて、どうすっかな。そうだ、木場」

「なんだい?」

「同時攻撃ってのはどうだ?」

「君にお誘いを受けて断れるわけもないさ。いいだろう。赤龍帝と聖魔剣で踊ろうじゃないか」

 

…あーその、なんだ。

敵さんの眼の前で作戦会議すな、とか、お前らどっちも竜殺し持ちなのに邪龍前に消耗すんな、とか言いたかったんだが、それらがなんか吹っ飛んでしまった。

二人がそんな感じでちんたらしてると…

 

「お先に」

「行くわよ!」

 

とゼノヴィアと紫藤さんがコンビで出ていく。

聖剣と聖魔剣が吸血鬼を斬り刻む…と思ったら霧になって回避、コウモリ変化で回避、あたっても聖剣が効果を発揮せず低ダメージなどなど。

しかし霧回避は俺の占有技能かと思ったらそうでもないのか。

となると、魔法陣侵入後の連れ出しも厳しいかもしれない。

 

「軽く振ったとはいえ、吸血鬼にデュランダルが効かないのは遺憾だね」

「けど勝てない相手じゃないわ。でも時間はかかる。

 だからここは私達に任せて先に行って!」

「でも二人だけじゃ…」

「なに、どうせ人手が足りてたら抜けてるやつなんだ。これぐらい頼りない相手と組んで思考力を養うさ」

「ちょっと、ゼノヴィア!さっきの話根に持ってるの?」

「持ってない」

 

喧嘩を始める二人に任せて先に。

ここまでいくとギャグ補正で生きてるでしょ。

 

 

 

第三階層。

扉を開ける前から気配をプンプンさせてたのは…

 

『グハハハハハッ!この間ぶりだなぁ、ドライグちゃんよぉ!』

 

邪龍グレンデル。

 

『ちょっとだけなら遊んでいいっつーからよぉ、この間の続きをしにきてやったのよ!

 グハハハハハッ!』

 

ちょっとだけなら、か。多分戦闘猶予時間が伸びたんだろう。

つーことはお遊びタイムの時点で致命的なダメージを与えたい。俺の手元には都合の良いことにヴァーリからサマエルを摘出した実績があるわけで…

 

「イッセー、まだ真女王にプロモーションしてはダメよ」

 

グレモリー先輩、ナイス。

いやまぁ今回ばかりはお遊びタイムに有効打を与えるべく、最初に最大火力はまちがってはないが…

今回はあんまテンションあげさせたくないしね。

 

「ショージ、後衛用の結界を作るから戦車の小猫をこっちに貸してくれ。ヤツの癇癪の不安を潰しておきたい」

「了解。というわけでよろしく」

「…はい」

 

悪くない話だったのでアザゼルの提案に乗っておく。ついでに違和感持たれないように駒の強化内容の攻撃分を防御の方にまわしておく。

そんな話の間にグレモリー眷属は全員の手数で攻めることにしたようだ。

さっそく、先程の挽回とばかりに兵藤先輩と木場先輩が先陣を切る。

…が、大したダメージはないみたいだ。

 

「…ッ!グラムでもこの程度のダメージ!?」

『グハハハハハッ!いってえぇな!やるじゃねぇか剣士の坊主!』

 

特に木場先輩は禁手の騎士団に魔剣をもたせ、自分も龍殺しの魔剣グラムを持ってまでだったのだが思ったよりも浅いようだ。

俺としては出血はしたし、いい感じ。

ロスヴァイセさんに援護兼目眩ましを頼んで、俺も九尾モードになってから向かう。

幻術で分身したように見せかける…のはブラフで、極微量とは言え武器にサマエルの呪いを塗ってるのを悟らせないために。

一応バレにくいように呪い属性武器のドラゴンスレイヤーを使ってるが。

 

目眩ましや幻術に隠れながら近づいて、傷口を刺し、押し込む…

 

『邪魔くせぇ!』

 

単純そうなグレンデルだが、幻術ではなく俺を確実に狙い、攻撃してきた。

まぁ今回の幻術の目的は囮じゃなくて視界潰しってのもあるが。

即座に剣だけを消し、回避…はできそうにないのでガードして受け──

 

吹き飛ばされて壁にめり込んだ。

ダメージは自動回復でどうにかなるレベルだからいいんだが、流石にもう何のスキルも使わずに回避ってのも無理らしい。

 

『どうしたどうしたドライグゥ!本気だせや!あの真紅の状態になってみせやがれぇぇぇぇ!』

 

戻って後衛陣営に集まってるとこ合流。

 

「一つだけ、あのドラゴンに致命傷を与えられる技があるわ」

「リアス、あれを使うつもりなのね」

 

良くってよ。

いや、俺はあれがどれかは知らないが。でもまぁほんとにできたらすごいっすよ。

 

「けれど、あれを使うには時間が必要なの。魔力を練る時間が」

「そんなことでしたら楽勝ですよ、リアス」

 

快諾していくメンバー。俺は便乗しておく。

まぁ成功すれば万々歳で、失敗したら笑ってやればいい。

ってかそもそも俺の案のサマエル効いてないっぽいしな。隠す為に少量にしたけど少なすぎたか?

 

「…よし、後衛用の結界も出来たことだし、俺も参戦するぜ」

 

とアザゼル。

 

「では皆、お願いするわ」

 

魔法陣を広げ、魔力を高め始める。すると、グレモリー先輩の頭上に滅びの力?みたいなのが集まる。

何分くらいいるんだろう…

前やったことあるならある程度の時間の指示を…まぁいいか。

 

とりあえずはまぁ、注文通りに兵藤先輩が向かっていき、他はそのサポート。

俺の攻撃自体はまだ警戒されてないんで、吸血鬼モードに切り替え、霧回避を優先にしてるっぽく振る舞う。

 

『結局まだ本気出すつもりはねぇってかぁ?んじゃ、お仲間潰して本気出させてやんぜぇ!』

 

攻撃が激しさを増していく。とは言ってもこっちは時間稼ぎがメインになってるから回避に専念できる…というよりかはそうせざるを得ない、といったところか。

グレンデルもデカいが鈍重ってわけじゃない。後衛の防御の援護ありでやっと直撃を免れてるといった感じ。いや俺はいらんからそれより攻撃援護をって断ったが。

 

回避が3人で防御が一人、その偏りのおかげで兵藤先輩ばっかよく狙われるので俺らは攻撃しやすい。

何度も何度も剣を差し込んでいると、グレンデルが腕で薙ぎ払ってくる。

今回はわざと避けずに、タイミングを合わせて…必殺技『サモンスピリット』。霊のような何かが召喚されてグレンデルを襲う。だが目的はそっちじゃなく…

グレンデルの腕に押し出されるように俺の位置がずれた。殴られふっ飛ばされたわけでもなく、もちろん傷はない。

 

『あぁ?なんだぁ?』

 

無敵時間の相手に攻撃あたると反応が奇妙すぎて違和感あるんだよな。俺は攻撃する側も自分で実験してるからわかる。

そして普通に回避も入れながら、何度か腕、爪、火炎、尾などの攻撃を無敵時間で避けていると、仕組みにも気づくわけで…

 

『これなら避けられねぇだろ!』

 

硬直中に掴まれた。まぁわざと避けなかったんだけど。

締め付けてくる力に全力で対抗してみるが、まぁ案の定全然緩まない。片手の握力に両手で負ける。

とは言っても、俺も圧死したいわけじゃない。必殺技『ヘルファイア』でワープして攻撃しつつ…反対の手で普通に防がれたが、脱出。

 

グレンデルは飛び退き、大きく息を吸い火炎のブレス。

確かにこれなら多少の無敵時間や短距離ワープに対応できるだろう。でも俺の手札はそれだけじゃない。メニューから全装備を火属性対応に変える。

さて、邪龍の攻撃にどこまで耐えれるか…

 

──っ!熱くて痛い。が、耐えられないほどではない。

お返しに開けっ放しの口に聖魔力で作った槍をブレスに負けないよう全力で投槍。

 

『ごほっ』

「ナイスだショージ!」

 

流石に予想できなかったろう攻撃に動きを止めたグレンデルにアザゼルが追撃。

目に光の槍をぶっ刺す。

 

『ククク…ンだよ。ヌルい攻撃ばっかかと思いきや楽しいことしてくれるじゃねぇか…

 いいねぇ!やっとらしくなって来やがった!やっぱこうじゃねぇとなぁ!一人二人死んでも後悔すんじゃねぇぞぉぉぉぉっ!』

 

目ぇ潰されたのに元気だなぁ…

 

「おまたせ。もう大丈夫よ。みんなのおかげで十分に魔力を練れたわ」

 

やっとグレモリー先輩の準備が出来たらしい。

見てみるとまぁ高密度な魔力の塊を作り出してはいる。

 

「イッセーくん!」

「おう!」

『BoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoost!!』『Transfer!』

 

兵藤先輩の譲渡。あ、なくなってなかったんだそれ。

ってかグレモリー先輩にすれば待ち時間…いや、なんかそれじゃダメなんだろう、うん。

 

俺の考えをよそに、木場先輩は強化されてグラムの、多分龍殺しのオーラを砲撃にしてグレンデルへ。

 

『グオオオオオオオオオッ!』

「皆、離れて!リアスの後ろまで、急いで!」

 

砲撃で動きを止めている間に、俺らは離れて、グレモリー先輩は塊を放つ。

塊はゆっくりとグレンデルのもとへ。

だが、木場先輩は体力の限界なのか、もう砲撃は止んでいる。

 

『ハ、残念だったな。流石にそんなトロくせぇ攻撃当たってやんねぇよ』

 

と塊の軌道から外れようとするが、身動ぎしても位置が動いてない。よく見ると、微妙に少しずつ塊に引っ張られてる。

グレンデルも気づき、もっと離れようとするが、塊に近づき吸引力も増しているのだろう。

 

『ぐおっ!なんつー吸引力だ!』

 

そのまま受け止める方向にシフトしたが…

 

『グオォォォッ!』

 

塊に鱗の先端が触れたかと思ったら、剥ぎ取るかのように弾け飛んでいった。

流石のグレンデルも翼を広げ羽ばたかせて逃れようとする。

 

「イッセーくん!こっちにも!」

「了解っす!」

『BoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoost!!』『Transfer!』

 

兵藤先輩が再度譲渡を姫島先輩に。

雷光の龍が3匹飛んでいき、2匹が翼にまとわりつき電撃で動きを止め続け、残りの1匹が塊の方へ押しつける。

 

「イッセーの力の影響で私の魔力にも変化が生じていたの。

 消滅の魔星(イクスティングイッシュ・スター)とでも名付けましょうか。耐性だとか弱点だとか、そんなものは一切関係なくあらゆるものを滅ぼす塊よ。

 吹き飛びなさい!」

 

その言葉と共に塊が一回り大きくなった。

しかしどういう影響だよ…

と思ったが、肉体への洋服破壊と考えればまぁわからなくもない、か?

 

 

 

しばらく続き、塊が消え失せると、残ったのは大ダメージ受けて頭も半分なくなった状態のグレンデル。

やっぱ死なない敵って便利よね。

 

『なるほど。ユークリッドの野郎が言う通りだ。バアル家の血筋が持つ滅びの魔力ってぇやつぁしぶとい邪龍の意識、魂すらも削るってな。けっこー効いたぜ。

 だがまぁ、なーに、また体を新調すりゃあいいだけの話だ。なんせ、魂さえ無事なら俺らはいくらでもボディを取り替え可能なんだからよぉ!

 聖杯様々だぜ!』

 

魂さえあれば、か。

ってか俺の魂とかどうなってんだろうな。無数の肉体があって同時に操作して…邪龍よりもヤバいのかもしれん。

 

『だからよぉ!こんな体でやるってーのもなかなか乙なもんじゃねぇか!?こっから本番ってなぁ!

 一人でも噛み殺しておきゃあ次の戦いはもっといいスタートになりそうだしなぁ!グハハハハハッ!』

 

その言葉に周りも身構える、その瞬間──

 

「グレンデル、一度引け」

 

現れるクロウ・クルワッハ。

 

『クロウの旦那か。これからどこまでやれるか挑戦しようって時によぉ!あんた、邪魔するってーのか!?』

「邪魔ではない。相手にサマエルを使われている。早く肉体を棄てねば魂まで消滅する」

『なっ!?』

「「「!?」」」

 

あちゃーバレテーラ。

 

『ハハハッ、旦那も冗談キツいぜ…』

「冗談ではない。お前の生命力ならまだ大丈夫だろうが、なるべく早く体を替えるべきだ。魂も消滅したいというなら止めはしないが」

『…いや、お言葉に甘えさせてもらうぜ』

「そうか」

 

クロウ・クルワッハがそう言うと同時に消え…たかと思うと、グレンデルのもとに移動していた。

そしてグレンデルの足元に広がる転移の魔法陣。

 

『ハァー…これからって時によぉー…』

 

ぼやきながら消えていく。

もっと弱体化してりゃーソウルスティールで魂取れるかチェックするんだが、あの程度じゃあ無意味だろうな。

これでまた再生してくるんだろ?めんどくせぇ。

 

「ここから先に行かすわけにもいかないのでね」

 

クロウ・クルワッハがこちらに向き直る。

と同時に外の方からなにかがこっちに近づいてくる。

扉が破壊されると同時に飛び込んで来た光の塊。兵藤先輩の隣に降り立つと、光が収まり、現れたのはヴァーリ。

 

「お前がクロウ・クルワッハか」

「ああ。そうだ。現白龍皇」

 

これはお前たちは先に行けパターンかな?

戦力的に無理か。

 

「ヴァーリ!おせぇじゃねぇか。カーミラの領地から俺よりも先に出てたのに、なぜ到着が遅れた?」

「色々とね。途中で妨害されてたのさ。あのルキフグスの男、ユークリッド・ルキフグスにね」

「美猴たちは?」

「はぐれ魔法使いの集団…魔女の夜(ヘクセンナハト)、だったか?

 そこに所属しているという聖十字架の使い手に捕まってな。あいつらはその女の相手をしている」

「聖十字架も禍の団に本格的に協力というわけか…

 聖遺物が聞いて呆れるな。神滅具の聖遺物は全部禍の団に関与しちまってるじゃねぇか、聖書の神よ…!」

 

なんかアザゼルがキレてるが、別に聖書の神がなんかしたわけでもねぇーだろ。神滅具持ちはテロリストになるように聖書の神が仕込んでる、ってか?

それ以外の、例えば個人に何かするとかももうとっくの昔に死んでるやつには無理だろ。死人に鞭打つつもりか?

第一そんなこと言うならお前、禍の団側についた堕天使どもの責任取ってんだろうな?

あとそこの裏切り者のテロリストの起こした事件の責任とかも。

 

んで、ヴァーリが来たからそうなるだろうな、と思ってたが、案の定二天龍が協力して戦うルートに。

まぁそれは俺らは休めるからいいんだけど。

ただ…またブルセラドラゴン召喚の流れになって…うん。

敵味方どちらもIQが下がるからしんどいんだよな、これ。

で、まぁ全然勝ち目もクソもなかったんだけどクロウ・クルワッハは時間稼ぎが仕事だからってやる気なくした。

あー、はいはい。儀式がもう終わる目処が立ったのね。

じゃ四階層にさっさと行こうや。

 

 

 

階段を進み第四階層、らしき扉を開く。

パット見ですら怪しい地下室、ヤバいことやってる研究所のような雰囲気の部屋。

 

「…ギャ、ギャスパー…」

 

ヴァレリーの声。

棚やらを避けて声のする方に行くと、そこには巨大な魔法陣。そしてその中心にヴァレリーが寝かされた寝台。苦痛を滲ませる表情。

 

「ヴァレリィィィーッ!

 やめて!やめてください!もう、これ以上、ヴァレリーをいじめないで!彼女を解放してあげてぇっ!」

 

いじめないでって…そういうレベルじゃないだろ。

ギャスパーは魔法陣の中へ入ろうとしてるが、障壁によって入ることができない。

 

「ええ。だから解放してあげようとしているのですよ?

 ほーら、もうすぐ彼女の心身を蝕んでいた聖杯が取り出されますよぉ~」

「いやぁぁぁあああっ!」

 

下卑た表情で煽る、魔法陣の中にいるマリウス。ヴァレリーの悲鳴。

やっぱりか。

俺はそこらへんの棚から適当に良さそうなのをチョイスして位置を整える。

 

「斬れないか!」

 

木場先輩が障壁に斬りかかる。も無傷。

俺は棚に乗ってー…

 

「おっと、下手に攻撃するのはやめておいた方がいいですよ。障壁を壊して術式が崩れたら、聖杯も、聖杯の所有者も無事では済みませんからね。

 元総督殿に案があったとしても無駄です。私は誰よりもこの聖杯に触れ、調べてきました。抜き出し方も誰よりも熟知しているのですよぉぐぉっ」

 

速度を上げて結界内に入り込んで蹴り飛ばす。

 

「き、貴様!私に怪我させて術式がどうなってもいいのか!?それに一体どうやっ──」

 

斬る。

 

「まぁ、俺にゃそういう術式とかはわからんからお前を殺してからじ~っくり時間かけて調べてヴァレリーさんに負担かからんよーに戻してもらうわ」

「残念だな!私は既に強化済みで──」

 

斬る。

斬る。

再生していくその度に斬る。

だが何度目かの際に、魔法陣が強く光り、ヴァレリーを包む。

 

「ちっ!」

 

妨害失敗か…魔法陣の中なら死にかけでも関係ないってか。

ヴァレリーの体から出てきた聖杯…らしき金色の小さな杯。せめてそれを確保しようとしたが、小さな魔法陣が現れ、杯は消える。

そして魔法陣の障壁も消え、離れたところにマリウスが。

追撃…出来なくもないが、聖杯を道連れにされるわけにもいかん。

 

「ヴァレリー!」

 

ギャスパーがヴァレリーに駆け寄る。

…そうだな。こっちの対処をせねば。

ギャスパーが抱き起こしたヴァレリーに、一応一言いってから露出している首から身体に侵入し、体の不調のケアを…しようとしたんだが、それらしい異常はない。

 

「…泣き虫ね、ギャスパーは…

 ……ちっちゃい頃から泣いてばかり…強くなったんでしょう…?」

「…ごめんね、僕…君を助けることが…」

「…いいえ、私は助けてもらったわ…最後に…ギャスパーに会えた…

 ……私のたった一人の友達…家族…

 …ねぇ、ギャスパー…」

「何?」

「…お日様、見たかったわ…皆で、ピクニックに行けたら…どんなに…」

「見れるよ!僕が連れてってあげるよ!ピクニックも行こう?」

 

ヴァレリーはギャスパーの胸元に手を当てる。

 

「…ここに、もう一人のあなたがいるの…最後に、お願いしなきゃ…

 ……あなたともお話したかったわ…あなたも、ギャスパーなんだから、皆とお話しなきゃダメよ…

 …あなたを許してくれる居場所はここにあるんだから…

 あなたが、皆と仲良く、できますように…」

 

死んだ…かのように手から力が抜け、垂れ下がる。

肉体は死んだわけじゃない。それはさっきからチェックしている。

完全に意識を失った状態なのを確認。魂に接触する。

 

「うぇ──くっ」

 

やっべ吐くところだった。

気っ持ち悪…なんだこれ、って聖杯の悪影響的なあれこれなんだろうけど。

でもこれ呪いとか毒とかそういうのじゃないから俺浄化とかできんよ。

でもまぁ、ちょっとでもきれいな部分さえあればコピって増やして対応…はできる、はず!

なんか後ろの方でグレモリー先輩に攻撃されたのにヘラヘラしてるマリウスとかいうのも似たような方法使って滅びから回復してるし。

…なんか似たような方法だと思うと申し訳なく思ってきた。

だって彼女が病んだ原因とおんなじだしなぁ…

 

「おぼ」

 

気持ち悪さに耐えながら汚い部分を削って、きれいな部分のコピーでそれを埋めていると、後ろの方でなんか自分らに権力がないのは弱点があるからだ、って思想の吸血鬼のじいさんらが出てきたみたい。

気分転換に耳を傾けていたが、まぁ大層な野望をお持ちだこと。

でもぶっちゃけデイウォーカー能力持ちが存在してる時点で、それがないヤツが弱点のせいでって愚痴ってる時点でなぁ。

にんにくもギャスパーは克服してたし、ちゃんと対処しようとしてれば耐水魔導器開発出来たりもしたんじゃねぇの、と思わなくもない。

十字架と聖水?避けろ。

ってか世界征服マンはさ~、まずオーフィスに勝てるようになってからが開始地点じゃないの?

なんか偉そうに語ってるけどさ~

あ、ほら、ギャスパーも黒オーラ出してブチギレてんじゃんよ~

ん?なんか伯爵の第二形態みたいになってんな。気合入ってんね。

それ見てグレモリー眷属がなんかプルプルしてて面白い。

あ~笑ったらちょっと楽になったわ。

 

ギャスパー?の中のヒトが吸血鬼片付けてから、やっとアザゼルがヴァレリーの近くにやってきて魔法陣で調べ始めた。

しかし事象にまで停止が効くとか半端ねぇ。

でもそこまで行ったら生命活動の停止とかもできそうね。

 

「なぁショージ、もしかして神器がヴァレリーの中にもう一つあったりしないか?」

「ありましたよ。

 でも二つあったんだから結局はもう一つを戻さないと意味がないんじゃ?

 結構治療できた…とは思うんですがまだ起きないですし」

 

取り込んでコピーしようかとも思ったけど、そもそもコピーできるかどうかってのと、外したらその瞬間魂が完全に死んだりしそうでなぁ…

流石にギャスパーのこと考えるとそれする勇気はなかった。完全に無関係な相手だったらしたんだが。

 

聖杯の話に騒然となる周囲。

 

「で、でも先生、神滅具って同じのは二つ以上存在しないはずでは?」

「ああ。つまり二つで一つとカウントされるような亜種…なんだろう。前例がなさすぎて詳しく調べないとなんとも言えないが。

 一つ確かなのは、死んじゃいないってことだ」

 

歓喜の声があがる。

いや生命活動は俺の方で確認してたから。最悪心停止してようが動かしてたが。

ってか死んでないつっても意識が戻るかはわからんし…

 

「とりあえず早く戻してあげてくださいよ。なんか正しい戻し方とか知ってるんでしょう?」

「おう。待ってろ」

 

アザゼルが魔法陣を広げ、戻す術式を始める。

はぁ。疲れた。

んで休んでると聞こえた話からすると、ギャスパーの中身のヒトは魔神バロールの力の擬人化的な存在だったらしい。

んでヴァレリーがそれを形どったんじゃないか、って。

その中のヒトは自分の現状を禁手であり、そうでないものと言い、御大層なクソ長いお名前をつけて眠りについた。

うーん、結局どう呼べばいいんだろうな。

自称はギャスパーであってギャスパーでなく、バロールであってバロールでもなく…ギャロール?バスパー?いや単純すぎるか。

 

「これで目を覚ますはずなんだが…」

 

おっ、儀式とやらが終わったらしい。

一応脈とかチェック。大丈夫。

 

「何だ…?何か見落としがある?聖書の神のプロテクトコードのせいか…?」

「あー、もしかしたらコレも戻さないと一度失われた意識は戻らないかもねぇ」

 

この気持ち悪い声。

 

「会いたかったぞ…リゼヴィム・リヴァン・ルシファーッ!」

 

ヴァーリが吠える。

リゼヴィム・リヴァン・ルシファーじいさんの手元には魔法陣、その中に聖杯のような金色の杯。

俺らに一通りそれを見せつけたあと、口を開く。

 

「そう、ヴァレリーちゃんの亜種の聖杯は全部で3つ。三個でワンセットの規格外の亜種神滅具なのよん。

 お先に一つ俺らで抜き出していてねぇ…マリウスくんは聖杯が複数あることすら気づかなかったみたいだけど。

 それで聖杯に熟知しているなんて聞いて呆れるぜ!」

 

じいさんはヴァーリに向き直る。どうやらヴァーリが怒り狂ってるのが楽しくてしょうがないらしい。

 

「んちゃ♪うひょひょーっ!リゼヴィムおじいちゃんだよー?

 じゃあここから愉快なお遊戯タイムになりまーす。いい子の皆はおじさんの話に注目してね☆

 うひゃひゃひゃひゃっ!きゃわいい孫にそんな目をされちゃうとおじいちゃんうれしくてイっちゃいそうになっちゃうよ~!」

「先生、ヴァーリとの間に何があったんですか?」

 

と兵藤先輩。プライバシー踏み込むねぇ。聞いたところで、だろうに。

 

「…ヤツは自分の息子、つまりヴァーリの父親に、ヴァーリを迫害しろと命じたんだよ」

 

へー。

毒親は連鎖するとは聞くけどなぁ。

 

「聞き捨てならないにゃー?俺はバカ息子に、怖いんならいじめろよ。って的確なアドバイスをしてあげただけなんだぜ?ま、魔王の血筋から産まれた白龍皇、なんてあのビビリなバカ息子の豆腐メンタルじゃ耐えきれないだろうさ」

 

んー…よくわからんな。

物事の見えてこなさも、ヴァーリ親父の考え方も。

なんとなく予想できる点としては、ヴァーリの親父がメンタル弱くてじーさんに泣きついて、じーさんは自分のためにヴァーリ親父を都合よく使った、ってとこだろうが…

じーさんがわざわざヴァーリの恨みを買う利点がなぁ。

親父は親父で怖いのに殺さずイジメるってのがね。

 

「結局、ヴァーリきゅんはお父さんの仕打ちに耐えられずに家出しちゃったけどねん♪

 ま、グリゴリでアザゼルくんに育ててもらった方が良かったんじゃない?アザゼルおじさんは面倒見いいもんね~」

 

そんなアザゼルすら裏切ってテロリストに…

結果的にはアレだが、ヴァーリの性格的にもスパイには見えねぇしな。

 

「…くだらん。それよりもあの男はどうした?」

「ん~?ヴァーリくんはパパのその後が知りたいの?うひゃひゃ、ごめんね~俺が殺しちゃった!

 だってビビリすぎてウザくってさぁ。つい物の弾みで殺しちゃった☆もしかしてショックだった?パパ殺されて怒っちゃった?」

「別に。俺も消そうとしていただけだからな。

 …ただ、俺は嬉しいよ。俺は貴様を一番殺したかったからな…貴様は、明けの明星と称された魔王ルシファーを名乗っていい存在ではない…!」

 

お前はどうやねん。テロリスト。

お前のルシファー名乗っていい悪いの基準もわかんねーよ。

 

「お~いいじゃん。チョーいい目つき。良い育て方してんねぇ、アザゼルおじちゃん。

 なんということでしょう、あのメソメソ泣いてた孫がこんなにいい殺意を向ける青年にビフォーアフター!」

「…リゼヴィム、その聖杯を使って何をするつもりだ?

 邪龍どもを復活させて何を企んでやがる?」

 

アザゼルが問う。

 

「うひゃひゃ、聞きたいのぉ?いいよ、特別にお話してしんぜよう。

 今から数ヶ月前のことだ。とある実例が俺たちの世界にもたらされた。

 …俺たちが知らない、異世界の存在だ。こいつは以前から可能性を議論されていたわけだが、ついに存在の確認がされたわけ」

 

一瞬、俺関係のことかと思ったが、数ヶ月前ってことはそうじゃないだろう。

そもそも隠し通してたわけだし。

 

「アザゼルくんなら理解できるよねぇ?そう、悪神ロキが日本に攻め込んだとき、その可能性は現実を帯びた」

 

兵藤先輩を指差す。

…セーフ!

 

「お前さんがそれをやっちまったのさ、おっぱいドラゴンくん♪

 お前は、異世界の神である乳神とかいうのに接触した。

 その神はな、この世界に伝わるあらゆる神話体系とは関連を持たない未知の世界の、未知の神様だったんだぜ?

 聖書でもねぇ、北欧神話でもねぇ、インド神話でもねぇ、日本神話でもねぇ、全く知らない世界のわけのわからねぇ神様がこの世界に接触した。

 異形の世界を研究してる界隈じゃ、こいつは革命的な出来事さ。

 …でな、俺は思ったわけよ。なら攻め込んでみようぜ?ってな!」

 

無関係な異世界で良かった、と心から思う。

だがこいつは絶対に殺さねばならない。

 

「でもでも、それは叶わない。なんせ、こっちの世界にゃ次元を守護するとんでもないドラゴンがいるからね」

「そうか、お前は、グレートレッドを…!」

「はーい。優秀ですねぇアザゼルくん!

 その通り。俺はグレートレッドをぶっ倒して、あっちの世界に突貫したいんだよ♪

 だけど、グレートレッドくんは強大。めっちゃ強くてマジ強くてどーしようもないくらい強い。

 オーフィスも独力は半分諦めてるくらいなのに、曹操のクソバカ小僧が余計なことして龍神ちゃんを分割しちゃうから勝率は0。

 んじゃグレートレッドどうするよ?曹操みたくサマエル使う?いやいや真龍様にゃ効くかもわかんねぇ。

 って頭をフル回転させてひらめいたのよ。

 …黙示録の一節を再現しようぜ、ってよ?」

「666(トライヘキサ)…っ」

「ピンポーン。

 そう、黙示録に記された伝説の生物は赤龍神帝グレートレッドだけじゃねぇ。

 『黙示録の皇獣』(アポカリプティック・ビースト)666。聖書の神に存在を示唆されたあの子がいれば、グレートレッドといい勝負できそうだとは思わないかね?」

 

あー…つまり今度の敵はマザーハーロットとかマスターテリオンってこと?

ただそれにしてもサマエルとかサタンとの同一視が云々の黙示録の赤い竜とグレートレッドは違うし、あんまあてにしすぎるものではないが。

 

「あれは存在の可能性があるってだけで、どこにいるのかも未だ各勢力で議論の最中だったはずだが?」

「おっくれってるぅ~。こっちはもう発見済みよ?

 聖杯使って生命の理に潜って、忘れ去られた世界の果てなんて見つけちゃったのよね~

 だがねぇ…ど~にも先に666くんを見つけてかたーい封印施した方がいたんだなぁ。アザゼルおじちゃん、それ誰だと思う?

 な~んと聖書の神様!

 あんの神様ったらすごいねぇ。何千って封印術式で封じちゃってさぁ。案外、聖書の神様の死因ってそれかもよ?一つ一つの封印術式が手ェ焼くようなヤバいのばっか。

 そんな封印したあとに三大勢力で戦争、なんてことなら疲労が祟って消滅、なんて有り得そうだし」

「さっきのマリウスの術式もその666の封印術式関係か!」

「まぁね~。マリウスくんに扱える程度のデチューン品だけどいい出来っしょ」

 

出来たら今すぐワープして頭からかち割ってやりたいが、情報収集は必要だ。

こいつが頭なだけで、こいつの野望を遂行するやつがいたら困る。

 

「つーことで俺らは666くんを復活させて、グレートレッドを撃破・撃滅・撃退させて、復活邪龍くん軍団と666を引き連れて異世界に殴り込みかけんのよ!

 あっちの世界の神々に魔物、生物どもを一切合切蹂躙して絶滅させまくって、俺だけのユートピアを作るっつーわけ!

 いや~楽しみだ。

 あっちの世界の神話にさ、『異世界より来たりし邪悪なる存在は、強大な獣と、邪龍の群れを引き連れこの世界に災いをもたらした──』なーんて刻まれちゃったりして!

 どーせこっちじゃ何したって前魔王ルシファーの子孫の、って枕詞がつくんだろうが、異世界じゃ唯一無敵の大魔王様になれっかもなぁ!うひょひょ!」

「そんなくだらないことの為に俺達に多大な迷惑かけるってのかよ!?」

 

兵藤先輩が吠える。が、そりゃそうだろ。そういう思考のやつだからテロリストになるんだわ。

てかくだらない目標で他人に迷惑かけるなって話なら、ハーレム作れるくらいモテたいのにモテないから覗きとかします!ってヒトが言えたもんじゃねぇだろうに。

 

「おいおい、くだらないとは失敬な。

 これでも俺にとっちゃあようやく生まれた目標なんだわ。悪魔ってのはよぉ、ながーく生きてもなかなか夢って持てないのよね。

 俺もこの新たなすンばらしい夢が生まれるまで自堕落でどーでもいい生き方してたんだぜ?

 生きるってなんだろーとか、夢って何?とか、野望なんてどうしたら持てる?そもそも悪魔って何?生活に刺激ないしとりあえず息子に孫いじめさせて恨まれとくか~みたいな?

 そんなことをそれなりにふかふかのソファに座って、そこそこいいワイン飲みながらずーっと考えて生きてきたわけよ。生きてたっつーか考える置物か。

 そういう点では人間みたいな野望が湧いてくるやつが羨ましくはなるがな。生物的な思考の違いってのが」

 

割と人間でも金持ちが金持て余してすることない、みたいな話聞くから生物的なものではないと思うが。

 

「そんな俺のところにユークリッドくんがおんもしれぇもんを持ってきたのさ。

 オーフィスの力と聖杯の情報、異世界の証明!んでもってトドメに666。おじさん、年甲斐もなくめっちゃはしゃいじゃってさ。生まれて初めて胸がドキドキ、心がワクワクしちゃったの!

 滅んだ邪龍くんたちを復活させて、世界に混沌を与えたあげく、異世界にまで足を運んでチョー暴れてぇ!ってね」

 

ってなると主体はユークリッド…?

このウザいじーさんはパトロン、というか投資者?

 

「わけわかんねぇよ!どうして異世界で暴れなきゃいけねぇんだ!?」

「ふっ。いいか坊主。

 悪魔ってのはな、邪悪で、悪鬼で、畜生で、悪道で、外道で、邪道で、魔道で、鬼畜で、悪辣じゃねーとダメなんだよ。

 英雄のマネごと?ヒーロー?それは『正義』がやることだ。ほら、人間サマや天使サマがな?

 俺らはなんだ?『悪』で『魔』の存在なんだぜ?じゃあやることは決まってんじゃねーの?

 どこであろうと、気にいらねーやつらを一切合切ぶっ殺しだろうが!

 てなわけでよ、悪魔とドラゴンといやー悪役だろ?俺様は邪龍を使ってこの世界と異世界で暴れまわるわ。気ににいらねーもんを壊して、目障りそうなのを片っ端から殺していくぜ!」

 

くっそ長い演説が終わった。

しかしまぁ、個がない。

なぜリゼヴィム・リヴァン・ルシファーが異世界転移かまして暴れたいのかっつー肝心要が。

まぁなんとなくは想像できるが。

話からしてサーゼクスに負けて失った自尊心の回復。そりゃ隠したいわな。

ルシファーの息子とかいう立場があっても何も成せなかった…いや、もう失ったルシファーという名前にすがるジジイ。

まぁ人生の目標もナシに研鑽もせずうん百年堕落してくすぶってたロートルが重い腰上げたところでこんなもんだろう。

正義と悪云々言ってるのはサーゼクスが正義側だって認識だからなんだろうな。なんか自分の中に芯がある善悪論持ってるでもなさそうだし。

俺からすりゃてめぇもサーゼクスもどっちも悪で魔だが。

 

「はっはっはーっ!嫌だねぇ!何その目!悪魔の目じゃねーな。ろくでもねーよ。

 …そいつは正義の目だ。ヒーロー様の目だ。救えないねー。

 特に赤龍帝の坊主、お前さん自分が何かわかってんのか?怪物ドラゴンの上に危険極まりない悪魔なんだぜ?」

 

浅いジジイだなぁ。

悪で魔だから青春を取り戻したジジイがウザくて邪魔したいんだよ。

とかなんとでも言えるわ。

まぁ確かにこいつらは自分がヒーロー側だと思ってそうだけど。

 

「俺を嫌悪するか?いいぜ、来いよ?孫のヴァーリのお友達は歓迎しなくちゃな」

 

また赤龍帝にご執心か。

んー、立場わきまえずに喋りまくるのも一つの手なのかね。

 

「来いよ、天龍くん。おじさんでよければ相手してやるぜ?

 中二病こじらせた精神年齢お子様のおじさんで大変申し訳無いけどよ!」

 

ほんとだよ。

 

「イッセー待てっ!そいつの能力は──」

 

アザゼルが何か言おうとする。

だから知ってるなら先に言えよ。チャンスいくらでもあっただろ。

兵藤先輩が撃った球が精神年齢お子様おじさんに当たる瞬間に霧散した。

 

「…いいか、イッセー。そいつの能力は悪魔の中で唯一の異能…

 神器無効化だ。神器によるいかなる特性…神器によって底上げされたすべての能力が効かないんだ…

 お前の赤龍帝の力も、木場の聖魔剣の力も、神器である以上はその男に一切のダメージを与えることができない…!」

 

だいぶこのメンツには致命的だな。

しかし、あのじいさんはその能力に絶対の自信がある。兵藤先輩の攻撃をリリスを使って防がなかった。

そこに隙がある。

どうせ兵藤先輩が殴りかかるだろうからそれに便乗…って木場先輩が行った!チャンス!

視界を分身と共有する。

 

「はあぁっ!」

 

当然聖魔剣はあたった部分が霧散する。

と同時に、背後から分身が頭と心臓、急所を狙って攻撃する。

ワープがバレるかもしれんが、それは後で考える。

聖杯の強化もあるんだろうが、今度こそ死ぬまで殺し続ければ──

 

***

 

ガシャン、と武器の落ちる音。

 

先ほど、急に正二がリゼヴィムの後ろに追加で二人現れ、それぞれ頭を狙って斬ろうと、胸を狙って突き刺そうとしていた。

それがその場の面々の認識だった。

だが、斬撃は剣が触れたら刀身が消え、突き刺すはずの刀もあたった先から消えていき、肩口がリゼヴィムにあたりそうになった瞬間、正二自体が消えた。

正二が居た形跡は、半分消えかけ落ちた剣と、その場の3つの衣類のみ。

 

「何が…いったい、何が起こったんだ…?」

「およよー、こうなるのかぁ~」

 

眼の前で起きた現象を理解できないアザゼル、何か訳知り顔のリゼヴィム。

 

「いったい何をしやがった!?」

「何かしたなんてそんな。アザゼルくんも知ってるでしょ~?俺の能力は。

 ま、俺も最初から神器だってわかってただけだし、単純に神器で肉体を維持かなんかしてたんじゃねーの?

 とは言っても、あの様子だと無自覚とか?

 どーいう仕組でかはアザゼルおじちゃんの方が詳しく調べられるんでないかい?

 あぁ、死んじゃったからもうわかんねーか。

 無自覚で無駄死に。かわいそうに。そんな人生は送りたくないものだねぇ」

 

嘆くかのように話すリゼヴィム。

 

「あぁあぁぁぁっ!」

 

その言葉に反応して、リゼヴィムに向かい走り出す小猫。

 

「おいおい、もう神器持ちへのサービスタイムは終わりだぜ?

 それともおじちゃんには頼もし~専属ボディーガードがいるのをお忘れかい?」

「リリス、リゼヴィムまもる」

 

リリスがリゼヴィムに近づいてきた小猫を腕を軽く振るうだけで膨大なオーラが動き、吹き飛ばす。

 

「ぐっ…」

(力が、力が欲しい…)

 

後方からの悲鳴などをよそに、倒れ伏した小猫の脳裏によぎるのは一誠の死を嘆く時のリアス、朱乃、アーシア、そしてレイヴェル。

過去の事実と──最近苛まれる、それを自分が成してしまうという悪夢。

 

(あれだけ戦わなくていいと言われたのに、どうしても頭をよぎってしまう…

 でも、グレモリー眷属の皆だってあの場にイッセー先輩の仇が居たら倒そうとしたはず…力が欲しい…!

 力が──あぁ、そうか)

 

倒れたままの小猫から黒いオーラがあふれる。

それは小猫を包み込み、人型になり…人型の黒いオーラは起き上がる。

そして、黒いオーラは霧散していき、現れたのは身長が伸び、道士服に身を包んだ小猫。

 

「変わった!?」

「先生、あれは?」

「わからん、だがあの服…中国にも猫の妖怪の話はあるから、小猫がショージの力でそっちに変質した…のか?」

 

背が伸びた小猫は、体を確かめるように少しずつ動かしていき、納得がいくと再びリゼヴィムに向かって駆ける。

 

「だからパワーアップだろうが何したってリリスちゃんには勝てないってーの。

 オーフィスだぜ?」

 

小猫にリリスが再度立ちはだかる。

 

「あ、それとも」

 

膨大なオーラを伴った一撃。

 

「狂っちゃった──」

 

小猫が防ぐ瞬間、リリスのオーラが急速にしぼむ。

そしてその減衰した攻撃を受け止め、リリスの腕を掴み取り、リゼヴィムに投げ飛ばす!

 

「──かぁあっ!あっぶねー!」

 

リリスの一撃の威力そのままのエネルギーだったが、間一髪でリゼヴィムは回避。

 

「…ぐっ!」

 

その勢いに乗って追撃しようとする小猫だが、全く動けなくなりその場にうずくまってしまった。

慌ててロスヴァイセが回収に回る。

陣営に戻ったときには既に元のサイズに戻っていたが、全く動けそうにない。

 

「…流石にオーフィスクラスの攻撃を一発カウンターすりゃ、負担がでかすぎるか。強制的な成長の反動もあるな」

「いや~面白いモンみせてくれるねぇ」

 

後ろで壁から抜け出そうとしてるリリスを尻目に、リゼヴィムが拍手をしながらアザゼルたちを見る。

 

「こりゃこっちも面白い見世物を返さないとねぇ」

 

リゼヴィムが指を鳴らすと、吸血鬼の町の立体映像が現れる。

 

「これは…カーミラ側の城下町?」

「正解!そして──」

 

リゼヴィムが、先程とは逆の指を鳴らす。

…映像は何も変わらない。

 

「あれ、おっかしいな…」

 

何度も指を鳴らすリゼヴィム。

するとそのうち、映像に黒いドラゴンのようなものが見えた。

そしてそれらは──カーミラの城下町を襲い出す。

 

「おほっ、出た出た。

 さて皆様、ご覧ください!

 元吸血鬼たちによる邪龍化ショーにございます!なーんつってなぁ!うひょひょひょひょ!」




次回に続く


>地下一層>聖杯で強化された吸血鬼の兵隊
多分雑兵の雑魚相当なんだと思うけど、どの程度なのかわかんない
中級死神兵より強いベンニーアよりも弱い、だけ?
アザゼルの評価はベンニーア<ルー・ガルーだし
ただわざわざ鎧着てるからあんま強くない扱いでいいのだろうか…

>二層目
本作で小猫は火車(カシャ)じゃないので教会戦士コンビが担当に
まぁ最初に殴りかかるのは原作ままだし…

ってか弱点がどうのこうのいっておきながら火車の特攻は入るの意味わかんない
いや浄化の力で邪悪な相手を倒すの自体は好きよ?
ネタバレすぎるから伏せるけど某作品のタイトル回収のやつ好きだったし
ただ聖杯すごい持ち上げてこれだと神滅具である聖杯がしょぼく見えるじゃん
聖杯に固執して弱点消せるぜヒャッホーしてるやつら全員バカにしか見えないじゃん

あと小猫の変身の一誠の反応が「黒歌に似た風貌のお姉さん」なのはクソ要素
やっぱり黒歌>小猫じゃないか

>ドラゴンスレイヤー
悪魔城ドラキュラギャラリーオブラビリンスの武器
本文でも言ってるように呪い属性の武器
龍特攻とかはないです

>必殺技『サモンスピリット』
悪魔城ドラキュラ月下の夜想曲、アルカードの必殺技
コマンド4628(右向き
発動後に無敵時間があるっぽい

>必殺技『ヘルファイア』
悪魔城ドラキュラ月下の夜想曲、アルカードの必殺技
コマンド8236、上+波動拳(右向き
伯爵も昔から愛用するワープして火の球射出

>譲渡
原作とグレンデル戦改変してるけど
それにしても譲渡使えるんならもっと全体的に使っていくべきでは?
どーせ一誠の消耗とかないに等しいんでしょ?

>肉体への洋服破壊
雷を龍のように動かせます!ってのと対比させるならこういうことなのかなと
鱗弾け飛んでるし

>死なない敵って便利
ヒロインの必殺技が即死攻撃なのが扱いづらいだけだと思う
ゲームならまだしも

>聖遺物が聞いて呆れる
アザゼル聖書の神に文句言いがち
聖書の神への期待の裏返し?での反感とか?
親父殿、とか呼んでたし父親への甘え方、みたいなアレ?
まぁどっちでもいいけど、もう死んでる相手で、本人が何かしたわけでもないのにケチつけるのはなぁ

>クロウ・クルワッハ戦
ファーブニルが出てくるとしんどいんでカット
ツッコミどころしかないけどマトモに取り扱うだけ損
シリアスなところにギャグで緩急いれるのはよくみるけど、これはねぇ

>ヴァレリーをいじめないで!
ギャスパーも悪い意味で高1とは思えん
そういや明言されてないし、実年齢はもっと下だったり?

>下卑た表情で煽る、魔法陣の中にいるマリウス
ゲス敵と研究以外興味ナシとが混ざってる…というよりかは使い分けというか切り替わりというか

>伯爵の第二形態
悪魔城ドラキュラの昔からよくある方
元ネタにしてる作品中からだと月下の夜想曲のOPのベルモンドステージのやつのイメージ
描写は二足歩行の獣っぽい感じなので

>グレモリー眷属がなんかプルプルしてて
ギャスパーに怖がらせる必要あったのかな
覇龍の時は誰も怖がってなかったのに
これじゃギャスパーの父親に上から目線だったのがアホみたいじゃない?
それが狙いで、ならなんか言及させるだろうし…

>ワープ
悪魔城ドラキュラ奪われた刻印のアルバスモードのタッチパネルさわってワープするやつ
液晶画面内にタッチしたらワープするのを視界ないへの転移として考えてます

>生活に刺激ないしとりあえず息子に孫いじめさせて恨まれとくか~
正直これくらいのてきとーさだと思ったので入れちゃった
原作で後からでたらどーしょ…

>人間みたいな野望が湧いてくるやつ~生物的な思考の違い
むしろ福本作品でいそう
ちなみにカイジの会長は兵頭で一誠の名字の兵藤とは字が違う

>失ったルシファーという名前にすがるジジイ
初回はただのウザいじーさんだったけど
文章として書くために改めて見るとそんな感じに見えた

サーゼクスに負けてルシファーの息子としての地位を剥奪されて、それは覆せないから他所に行ってすげー悪いやつになるぜ!
みたいな

そう考えると割とユークリッドと仲いいのも納得というか
サーゼクスに負けた仲間で傷のなめあいしてるっていう

>また赤龍帝にご執心か
一誠にこだわるのもサーゼクス関係でっぽく思えたり

ってか普通にサーゼクスが眷属に神器持ち入れてないのは俺対策!
とか言ってる時点でだいぶこじらせてるわな
普通にサーゼクスぶつけりゃ終わるんだわ

>小猫
裏切らせた側が言うことじゃないけど
結果的にとは言え裏切ったことになってしまったら葛藤くらいは欲しいよね

つーわけで精神的要因のせいで伸び悩んでました、というお話です
で、枷が取れたので原作みたいに変身できるように

で、変身先は原作通りの火車じゃなく、まぁなんとなく説明でわかる人もいそうだけど仙狸(センリ)
ちなみに仙狸の狸は中国語のヤマネコ

この時点の原作設定だと
小猫は猫又の力を使うために成長して
火車は猫又が操る能力の一つで
火車は猫又のもう一つの姿といわれていて
猫魈(ねこしょう)は猫又種族の中のエリート種族ポジとかなんとか
なので猫魈が一時的に仙狸になって能力使えても別にいいんじゃないかなーと

あれ、今更だけど猫ショウの漢字でフォント崩れるのか

あ、あと小猫の成長の姿は原作と違って巨乳にはなってません
巨乳ではないですし着物も着てないし、もちろんレオタード姿で傘かぶってもないです
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