偽勇者の大冒険   作:マリリス

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 今までのお話は、一人称視点、三人称視点の混乱がありました。
アドバイスくださった方々、ありがとうございます。
会話文の中での改行もやめました。過去の分も書き直しました。



俺はでろりん、転生完了して原作知識を手に入れたぜ!

 半日歩き続けると、頭上の光景に変化が訪れた。

自由自在に振り撒かれた梢や枝葉による深碧の装飾が削減され、空色の割合が増す。

魔の森が終わった。

 

 やがて木々と引き換えに現れた古めかしい民家、の谷間を抜けて人通りの少ない道に入ると、

俺たちは石畳の上で立ち止まり、この王都ロモスでの予定を確認する。

 

 今からすべきは武術大会エントリーと、そのために必要なずるぼんの国籍取得の手続きだ。

嘆願書――ずるぼんは俺が引き取る形でロモスの臣民に――の書き方がわからないが、

それは言い出しっぺのまぞっほに頼んだ。まずは武術大会の受付に向かおう。

 

 そうやって行き先が決まれば足を運び方もきびきびとしたものに変わる。

 

 だが、人けのない道では通行人の顔にやけに注意がいくものだ。

ある中年の男二人組とすれ違った瞬間、俺は言葉を失い棒立ちになった。

二年前に行方不明になった人物にそっくりだったからだ。

 

 ――親父!?

 

 「ちょっと会場まで先に行ってろ。俺はすぐ追いつくから」

 

 「え? え? ちょっと、何? でろりん」

 

 「なんじゃなんじゃ?」

 

 俺は戸惑う仲間を後目に、二人組を追いかけることにした。

追跡の対象は左に曲がる。街角の死角を使って一気に距離を詰めていく。

 

 「デル……よ、あとの……は任せ……も………な」

 

 彼らは何か喋っているが、俺は背後からさらに近づき耳を澄ました。

 

 「ザムザ殿、私はロモス王に顔が利きます。全ての段取りはお任せください」

 

 「キヒヒっ、やはりおまえを造ったのは正解だったぞ。素材の余りを残したことが幸いしたか。

ルーティアのやつは強くても微妙に失敗作だったからな」

 

 「失敗作、ですか」

 

 「女性素材を多く混ぜた影響で自我がそちらに傾きすぎていた。それをいじろうとした結果、治るどころか壊れてしまったようでな。逆におまえには手を加えていないので、人間時代と性質は変わらないと予測されるが」

 

 「はい。確かに今の私は、以前とあまり変わりがないようです」

 

 「フン。こちら側に生まれ変わったとはいえ、おまえは魔族の仕事に抵抗はないのか?」

 

 「蘇らせてくれたのはザムザ殿ですが、私は自らの意思で魔族の側についたのです」

 

 「そう言って、オレの寝首を掻こうとしているのではあるまいな?」

 

 「私は元々人間に失望していたのです。確かに人は優しい生き物ですが、それは自分に余裕があるときだけ。余裕を剥ぎ取られれば魔族より恐ろしくもなる。その振れ幅が大きすぎて、かつての私は人間がわからなくなっていたのです」

 

 「知っているぞ、以前のおまえは一部で勇者と呼ばれていたそうではないか。そのおまえに今はそこまで言わせるとは、人間は罪深い生き物なのだろうな。……魔族よりも恐ろしくか。自分がその魔族になったことはどう考える?」

 

 「魔族は最初から強くて余裕がある。その点で、人間よりは良いと解釈します。ザムザ殿のお力で、地上の人間が魔族に代われば多くの者が救われるでしょう。その理想に微力ながらお力添えをしたいのです」

 

 「満点の回答だな。人間だったとは思えんよ……。いや、元人間だからか。デルタよ、とにかく頭脳面に問題はないようだ。オレも手間がかからなくて助かる」

 

 ザムザという人物と話していたのはやはりデルタ――バカ親父のようだ。

魔族や人間がどうとか喋っているが、それは自分たちのことを指しているのだろうか?

俺の空耳かもしれない。まぁ後で問い詰めてみればいい。

 

 「オレはルーラで研究室に一度戻るが、中継機の設置はおまえに任せたぞ」

 

 「御意」

 

 「おっと、ルーティアの服を買ってやる約束だったな。まぁ頭脳のデルタに戦闘のルーティアだ。あいつのためにドレスの一着ぐらいはいいだろう」

 

 そう言うと二人は左右に別れて歩き始めた。

俺はザムザの姿が見えなくなるまで慎重にバカ親父の後を付け、遅れて次の道を右に曲がる。

問い詰めよう。二年間何をしていたのか、今の会話は何なのか、母さんを死なせたことも。

 

 街角を曲がり「おいっ!」と俺が激しく声をかけようとした瞬間、

 

 ドガスッ!

 

 鳴り響いたのは俺の叫びではなく打撃音と大きな衝撃で、

わけも分からぬまま俺の視界は下に傾き暗転していった。

 

 ……。

 

 真っ暗な中、気がつくと俺の前にゆらゆら揺れている不思議な存在が光っていた。

相変わらず、見えているのに相手の顔を認識することができない。

 

 ……この人は神様だ。何度も夢の中で会ったことがある。

 

 『そろそろ時間じゃ、おまえの記憶のロックを外そう』

 

 ああ、そうだった。俺には前世の記憶があったんだ。思い出した。

ときどきこういう夢を見ていたな。

 

 『本当はもう少しこのままにしたかったが、それではおまえの身が助からん。この世界は救われるかどうかの瀬戸際。お前の知識を活かすのじゃ。ワシの力が届くのはここまで。繋がりは切れるがしっかりな』

 

 神様がそう言うと、真っ暗だった視界が光に包まれて白く変わり、

日本で生きていた頃の記憶が、そして『ダイの大冒険』の知識が蘇る。

 

 家庭教師の指輪をくれたのはアバン先生だった。マァムやレオナはまだだいぶ若かった。

アルキード王国は……時系列的にもうだめだな。

原作通りに進んでいるのだとしたら、バランの手でとっくに滅んでいるはずだ。

カール王国、リンガイア王国、オーザム王国はまだ無事だろう。

 

 というかおれは偽勇者じゃないか!

主人公の『ダイ』とは物語の序盤で激しく戦った。

あの経験を通してダイは一回り成長し、デルムリン島以外での名声を得た。

 

 反対にでろりんはこっぴどくやられる悪役を演じなければならない。

 

 って、そんなことはまだいい。

今はそれどころじゃない、ザムザはザボエラの息子だ。

大魔王バーンや魔軍司令ハドラーはまだ活動していないようだが、妖魔師団は暗躍していたのか。

 

 そして俺の身はバカ親父によって拘束されているようだ。俺が死ぬと世界が危ない。

考えるのは後だ。瞼に力をいれ一気に開くと、俺は縄で縛られており木に括り付けられていた。

 

 「おまえか。目が覚めたようだな」

 

 声の方に視線を移すとバカ親父の代わりに、目玉状の小さなモンスターの姿があった。

 

 「これはミニの悪魔の目玉。中継機のようなものだ。魔法の筒があればおまえを拾って帰れたのだが、ザムザ殿には少し野暮用があるようでな。会わせた後は縄を解いてやるからそこで待っているといい」

 

 「おいっ! このバカ親父! 勝手に消えておいて現れたと思ったらまた勝手なことばかり! 昔からいつもそうなんだ。母さんも死んじまったぞ。どうして魔族の味方なんかしてやがるんだ」

 

 「聞いていたのか。まぁ少し待て、ザムザ殿の研究室に連れ帰るからそのときに説明してやる。そしておまえはザムザ殿や私の元で働くのだ」

 

 く、くそ。まずい。俺――でろりんが捕まって妖魔師団の手下になったら、

俺の知っている『ダイの大冒険』の世界が崩壊する。縄をなんとかして逃げるんだ。

そして、ずるぼんやまぞっほを連れて……。

 

 いや、その猶予もなさそうだし、かえって二人を危険に晒すことになる。

悪魔の目玉の監視がどこにあるかわからない。俺と関わるのは危険だ。

ここは一人だけで逃げるしか無い。

 

 俺は意識を集中させ、指先だけでメラの火を飛ばすと小型の悪魔の目玉を倒す。

次のメラで自分の皮膚ごと縄を火で炙って焼き切っていく。

 

 これでは足りない。掌にも呪文の力を高めるんだ。

想像以上の激痛だが関係ない、とにかくバカ親父が戻ってくる前に。

何とかしなけ――

 

 「無駄だ。大人しく待っていろと言っただろう」

 

 だが現実は無情。縄から開放されや否や、俺は頭を掴まれてしまう。

そうだ。ルーラは行ったことのある場所、見たことある場所に飛ぶことができるのだ。

 

 だから、俺が拘束を外そうとしたときのバカ親父の行動は予め予測できていた。

右手をヤツの腹に当てて、さっきまで必死に溜めていた必殺の呪文を発動する。

 

 「イオラーー!」

 

 「!? くうぅ」

 

 バババババアアアアアアアアーーーーーーーーーーーーン!

 

 バヒューーーーーーンン!!!

 

 バゴオオオン! ガンガンガン! ダンダン! ダン! ダン! ダン!

 

 超至近距離の爆発で俺は百メートルは吹き飛ばされたのだろう。

地面に叩きつけられてダンダンダダンダンと激しく転がる。

土の味と匂いに自分の血と焼けた匂いが混ざり合い、気持ち悪い。

痛覚はもはやない。体を突き抜ける衝撃を感じるだけだ。

 

 俺は回りきった目と体で、破れた袋から転がり落ちたキメラの翼を拾い、

パプニカへと旅立ったところで力尽きて意識を失った。

 

 

    ◇

 

 

 一方その頃、視点は移ってザムザの研究室でのお話。

 

 デルタと別れたザムザはルーラで一度研究室に戻ったが、

彼を出迎えたのは、スライムになったルーティアであった。

 

 スライム状の体を器用に操り、口と声帯を作って喋りだす。

 

 「おかえりなさいませ、ザムザ様。あたくし、気がついたらスライムになっていましたの」

 

 「おい、なぜそうなった! ……確かに繋ぎにスライムを多く使ってはいたが。頭だけでなく体まで暴走したのか?」

 

 「ワニ型にやられて気がついたらこうなっていました。それより約束のドレス! ありがとうございますですわ」

 

 「ま、魔族のオレが、恥を忍んで人間の! 女物の服を! 一人で買ってきたんだぞ! 店員の目で百年ぶりに死にかけた! どうしてくれるんだ」

 

 「はい、今から着てみますわ」

 

 スライムになったルーティアは、ザムザの服を着ようと、

にゅるにゅるとドレスに入り込んで……、そして溶かしてしまった。

 

 「ルーティアーーーー!」

 

 

    ◆

 

 




活動報告です。

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