偽勇者の大冒険   作:マリリス

4 / 21
 前半しんみり、後半コミカル
ずるぼんの心はすぐに復活します。


俺はでろりん、パプニカで逮捕されたぜ!

 今回の密猟で色々手に入れて俺はパプニカ王都に戻ってきた。

色々とは一体何かだって? それはもうたくさんある。経験値の他に例えばだな。

 

 白いライオンヘッドの珍しい毛皮と生きた赤子、その戦利品を売って得られるベホマの代金。

顔を治してパーティに入れたい少女――未来のずるぼん、最後に法律違反による逮捕のリスクだ。

 

 そう。俺はパプニカで立派な違法行為を行ってしまったのだ。

戦利品から足がつく可能性もあるし、賢者アポロと遭遇する危険もある。

 

 勢いで故郷のロモスへ脱出したいがそれは悪手だ。入国時にかえって危ない。

一般市民にベホマを公開しているのはパプニカの大聖堂だけだから結局ここに戻ってくるからだ。

 

 とりあえず付き合いのある業者に戦利品の査定をしてもらうと、

毛皮の状態の良さと希少度から五万ゴールド以上にはなるだろうとのこと。

それが本当ならこれだけでベホマ代は出る。

 

 もう一つの戦利品、赤子の方は売らずにロモス国王へ献上することにした。

権力者の後ろ盾も必要だ。そちらも業者に配送を頼んでおく。

 

 

    ◇

 

 

 やるべきことをやって一週間後、少女の顔の傷を治す日が来た。

 

 「おい、ずるぼん待たせたな。元気だったか。」

 

 この子には既にずるぼんというあだ名をつけてある。元の名前は何だったか忘れた。

それでいい。こいつはずるぼんだ。

 

 「うん、いつもどおりだよ……。本当にこの顔を治してくれるの? やっぱりあたしをからかって遊んでいるんだよね? あはは。でも、でろりんは本当に村や両親の仇を討ってくれたんだね」

 

 ずるぼんは俺の目を見ないでうつむき申し訳無さそうにしている。

 

 「ずるぼんは一生分のつらい気持ちを味わった。それも今日で終わりだ。もう自分を許して笑えばいいと思うぜ」

 

 「……。うん。でろりんがそういうなら少しずつ努力してみる」

 

 「そうだ。ずるぼんの服を買いに行かないか? ベホマの使い手は大聖堂のとても偉い人らしいからな。恥ずかしくない格好、いや、お前が好きな服を選んで良いぞ。おかげで良いモンスターが狩れた。だいぶ懐に余裕はあるからな」

 

 そのままずるぼんをお店に引っ張っていく。

 

 「わからない……。あたし、自分じゃ決められない……。今までこんなお店に来たことなかったから。でろりんが決めて」

 

 心の傷が深いようだな。だがベホマの光は心の傷すら治すらしい。問題ないだろう。

明るくないずるぼんを見られるのはきっと今だけだ。

 

 「そーか。じゃあこれなんかどうだろう。似合うんじゃないか」

 

 その辺にあるひらひらしているが下品にならないものを選ぶ。

 

 「こんな綺麗で可愛い服あたしには似合わない、恥ずかしくて無理」

 

 「だーっ! おい、なんだそれは。俺が決めろって言ったのはずるぼんだろ」

 

 「だって……」

 

 「よし、じゃあこの僧侶のコスチュームはどうだ。着てみろ。これなら聖堂に入っても変じゃないし、普通に町も歩けるぞ」

 

 どうでもよくなった俺は試着室にずるぼんと僧侶の衣装を入れて着替えさせる。

 

 「よく似合うじゃないかぁ、まるで本物の僧侶みたいに見えるぞ。よーし、もうこのままいっそ僧侶になってしまえ」

 

 「無理……。あたし小さいときにホイミの契約したことがあるの。でも全然効かないホイミだから村のみんなに笑われてたから」

 

 「へーそれはすごいな。契約できたなら才能ある証拠だろ? もっと前向きな気持ちになれば、ずるぼんはいい僧侶になれると思うぞぉ」

 

 とりあえず、ずるぼんの衣装が決まったので俺のも何とかしよう。

ずるぼんが偽僧侶なら、俺は偽勇者なんてのも面白いかもしれんな。

俺は勇者を模した一着を手にとって試着室で着替えてみる。

 

 なるほど、ずるぼんの言う通り背伸びした服装はちょっと恥ずかしいな。

というか、勇者の格好をしていたらバカ親父のことを思い出して腹が立ってきた。

俺は勇者なんか嫌いだ。この服はやめておこう。

 

 バッチリ準備できたので俺たちはパプニカの聖堂に向かう。

 

 

    ◇

 

 

 一方その頃、ベホマが行われる聖堂では二人の聖職者が話をしていた。

 

 「テムジン様、このおやつを食べたらベホマの時間ですよ。後は礼拝をすれば神への一日のお勤めが終わりますね」

 

 「おおバロンか。今日は久しぶりにベホマの日だったな。すっかり忘れておったわ。しめて五万ゴールド。これで我が研究がいっそうはかどるな」

 

 神に仕える身でありながらこの二人は裏の顔を持っている。

魔王軍の遺物を人間用の兵器に転用できないか、研究しているテムジンとバロンなのであった。

 

 「それではバロンよ。マリンとアポロ、見習いのエイミを呼んできたまえ」

 

 「御意」

 

 

    ◆

 

 

 「おっほん。わしがパプニカ大聖堂の司教をしているテムジンである。今からベホマの説明に入る。まず君たちはこの白線の中だけを歩くこと。ここは神聖な場所だから決められたルート以外に足を踏み入れないように。真っ直ぐ進んでそこの箱に五万ゴールドを代金として入れた後、被術者は五芒星の中に入って立ち、付き添いの方は所定の位置にて待つこと」

 

 なんかすごく偉そうな人が出てきて流れ作業みたいに説明を初めたぞ。

これはこれで緊張しないし分かりやすくて俺好みだ。

 

 「バロン、準備はいいか」

 

 「はい、テムジン様。マリン、アポロ、エイミを連れてまいりました」

 

 俺たちの入り口とは違う専用のドアから賢者たちの一団が現れる。

てか、ちょっと待て、今アポロって聞こえたぞ。アポロはだめだろ。

森でいきなり絡んできて一戦交えたバカ賢者だ。

 

 「よろしい。では付き添いの者はベホマ代を納めてから所定の位置に。ベホマの被術者は真っ直ぐ歩いて五芒星の中心に立ちなさい」

 

 五芒星ということは五人で協力して一回のベホマを使うのか?

なるべく下を向いてアポロとは目を合わせないようにしよう。

森で会ったときよりしっかりした格好で来た。もしかしたら俺だとバレない可能性もあるぞ。

 

 向こうから視線を感じるのは気のせいだ。他人のフリ他人のフリ。

まっすぐ歩くだけなのに嫌な汗をかいてきたぞ、ちくしょうアポロめ。

 

 それでも何とか箱に料金を納めて、所定の場所に立つ。ずるぼんは五芒星に入ったな。

無事にベホマの儀式が終わってくれ。俺の逮捕劇などで厳粛な場をぶち壊してしまうのは最悪だ。

 

 ベホマさえ終わればずるぼんの手を引いて逃避行と洒落込んでもいいからな。

 

 「滞りはないな。ではベホマを行うので被術者は自分の名前を言いなさい」

 

 「名前? ですか」

 

 「そうじゃ準備はできておる。早くお主の名前を言いなさい」

 

 テムジンがずるぼんに名前を教えるように催促する。

俺としては元の名前ではなく、ずるぼんの方を口にして欲しいな。

 

 「スロー……。じゃなくて、えっと……ずるぼん」

 

 「は? なんじゃ? よく聞き取れんぞ」

 

 「あたしの名前はずるぼん」

 

 「そうか、ずるぼんか。では始めるぞ」

テムジン、バロン、マリン、アポロ、エイミの五人が、ずるぼんを囲むように立ち呪印を組む。

 

 「パプニカの守り神、数多の精霊、遍く森羅万象よ、神の御名の下に命ずる。哀れなる一人の少女ずるぼんの傷と心の闇を全て祓いあるべき姿に戻し給え! ベ・ホ・マァーーーーー!!」

 

 五芒星が神々しく光り、聖堂の中で視界は白く包まれる。

光が引いていくと、そこには笑顔を取り戻したずるぼんの姿があった。

 

 「な、なおったあああーーーーーー! でろりんーー! あたし、治ったよぉ! うわあああぁぁぁーーーん」

 

 涙と最高の笑顔で俺に抱きついてくるずるぼんだが……。 

やめろ! 名前を呼ぶな名前を! そこにアポロがいるんだぞ。

 

 「おおおお、やはり君だったのかーーーー! でろりん! よくおめおめと僕の前に姿を表せたものだな。覚悟はできているのか!」

 

 バレてたぁ!

 

 「まっ待てアポロ、静かにしろ、大声出すな。神聖なる大聖堂では、この白線の中しか歩いちゃいけないんだぞ。お前外に出たからアウト」

 

 「アホかぁー!! 動いちゃいけないのは君だけだ。今すぐに逮捕だ。この罪人め! 縛り首にしてやる」

 

 「ちょっと待て、俺が何をしたというんだ。突っかかってきたお前に正々堂々の決闘をして勝っただけじゃないか、何が悪い。俺に負けたのが悔しいからって縛り首とかないぞ」

 

 「ええー。アポロって魔法の暴走で法衣焦がしたんじゃなくって、本当はでろりんって子に負けたからなんだー! アポロの嘘つきーー!」

 

 「な、何を言う、エイミ。こいつは不意打ちなら何でもする卑怯者だぞ。ってそうじゃない、僕との決闘の勝ち負けなどはどうでもいい。でろりん、君は密猟しただろ、森にいたライオンヘッドのシロと子供を!」

 

 「うっ。ア、アポロ。何を言っているんだ」

 

 「えー! あの事件の犯人ってでろりんなの? 見た目はこんなにかっこよくて素敵で立派そうなお姿なのに」

 

 「エイミ、君はアホかぁーー! こいつの人相の悪さがわからないのか。こんな目つきの悪いやつは今まで僕は見たことがない」

 

 「えー! アポロの見る目がないんだよ、すらっとした長身に切れ長の目、キレイな横顔、憂いのある雰囲気、危ないオトコって感じでかっこいいよ! それに傷ついた女の子を助けたんだよ。アポロはでろりんに決闘で負けたのが悔しくてひがんでるんだーー」

 

 「おほん。静粛! 静粛に! お前たちはこの神聖なパプニカ大聖堂を何だと思っている」

 

 「もう、アポロのせいでテムジン様に怒られた」

 

 そのとき、周囲の勢いに押されて黙っていたマリンが口を開く。

 

 「とりあえず、ベホマの儀式は終わったんだし、その子のことは別件として場所を移して取り調べをしたらどうかしら? でもアポロに勝つほど強くて、女の子を救うために大金を使って、私がいうのも何だけどすごく出来た若者だと思う。勇者級かも」

 

 マリンの言葉に呆れたような声でアポロが嘆く。

 

 「はあ。全く二人とも男で不幸になりそうなタイプだね。でも、マリンが言うように場所を移して取り調べは僕も賛成だ。……今度は僕から逃げるなよでろりん!」

 

 俺は大聖堂の白線の中であえなくアポロに逮捕されてしまった。

パプニカ城地下の取り調べルームに連行される。困惑しているずるぼんも事情聴取で一緒だ。




 ロモスではベホマの使い手が思いつかず
パプニカに残る逮捕ルートになってしまいました。
これからどうなっちゃうんでしょうかねぇ。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。