偽勇者の大冒険   作:マリリス

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 でろりん、アポロ、レオナ姫が活躍するお話です。



俺はでろりん、アポロを倒して仲間も増やしたぜ!

    ◇

 

 「でろりん、そこよ! あ、危ない!」

 

 会場から離れたパプニカ城の地下、牢につながった石畳の一室。

ずるぼんは観戦しながら、水晶玉の中に映るギラを一緒になって避けている。

もちろん彼女の応援する声はでろりんに届かないが、一緒に戦っている気分なのだ。

 

 「ほっほっほ。若賢者もやりおるわい。わしの全盛期以上かもしれんのー」

 

 「もう! まぞっほ。どっち応援してんよ」

 

 「慌てるでない。お主のでろりんは、何か策があるような顔をしておる」

 

 「顔でわかるんだ。すごい! さすがは占い師ね。まぁあたしはどんな負け方してもたとえ罪人になってもずっとでろりんに付いていくって決めてるけど」

 

 「まったく最近の若者は眩しいのう」

 

 

    ◆

 

 

 俺とアポロの試合はまだ続いており、パプニカの試合会場は既に熱気に包まれている。

 

 「でろりん。だいぶメラの対処が上手くなったじゃないか。その曲芸、確かに面白い。メラを切るなんて君は器用なヤツだ」。アポロは感心したように口を開いた。

 

 俺は試合用の剣で、飛んでくるメラを叩き落とし続けてきたのだが、

あるとき力が抜けて剣を振るうと、バシュッとメラの中心を捉えて切り裂くことができたのだ。

誰かの言ったとおりになった。自然体で振るう十分な剣速と、魔力の流れを断ち切るイメージか。

 

 「だが、君の刀身はこの空と同じさ。もう真っ赤に焼けている。……間もなく日が沈むし、そろそろ決着をつけようか」

 

 俺は戦士らしく戦って勝ちたかったが、それが難しいのなら奥の手を使う。

しかし、タイミングには気をつけなければな。

 

 「いいぜ。来いよぉ……アポロ!」

 

 ――メラ、メラ、メラ、メラ、メラ!

 

 アポロが連射するメラを避け、或いは切り裂き、俺は機会を待った。序盤に試した相殺外し。

カウンターの発想は間違っていないんだ。思い出す。メラミを躱しながら放った俺の特製メラを。

呪文後のアポロの硬直を狙ったが間一髪防がれてしまった。それはやり方が間違っていたからだ。

 

「真っ赤に焼けろ! でろりん! 僕が君を鮮やかに染め上げてやる」

 

 ――メラ、メラ、メラ、ギラ。

 

 そこだっ!

ギラは目で見てからでは避けられない。だがその放出速度がヒントになった。

遅いメラミを避けながらのカウンターは違ったんだ。

 

 ギラの熱線が発射される直前、野生の勘で軌道を読んだ俺は飛び退き、焼けた剣を投げ捨て、

地面に転がりながら右手の三指に着火。

 

 サァッーー! ジリジリギラギラ……。

 

 伏せた頭上をアポロのギラが通過していくのを感じながら放つ、俺の……三発同時! 

怨念のでろりん特別製メラだぁ!

 

 「な、何!」

 

 今まさにギラの閃熱を放射している最中のアポロに、大型の火球が三発、急接近。

それは螺旋を描くように回転しながら、辺りを今日一番赤く染め上げる。

 

 「ヒャダルコで相殺してみろよぉ、アポロ。間に合って狙いもつけられるならな」

 

 ギラの停止後、アポロはさらに二動作必要だ。ヒャダルコを発動させて、

火球三発をかき消す軌道に照準を合わせなければならない。

 

 「う、嘘だろ! しまった! バカな!」

 

 それはアポロにはできないはず。これまでの戦いで俺には分かる。ここが決め所になりそうだ。

 

 「何故だあぁぁぁ! うわああああーーーーーーー」

 

 ブワッ! ブワッ! ブワオオァァァァァァァァッーーーー!

 

 アポロは何かを詠唱しようとするが、杖の照準は宙をさまよい定まらない。

その結果、三発の火の玉が着弾、アポロの体を包み赤く大きく膨れ上がった。

 

 「え、嘘でしょ! アポロ!」。思わず身を乗り出すレオナ姫。信じられないという表情だ。

 

 「おい、どうしてこうなった?」。唖然とする観客たち。

 「きゃーアポロさまー! こんなのいやーー!」。泣き出す女性ファンもいた。

 「あいつやりやがった!」。まさかの大逆転劇に騒然となる会場。

 

 ……。

 

 アポロを包んだ火球はみるみる膨れ上がりどんどん大きくまるで夕日のようになる。

しかしその後は急速に表面が薄くなり、そしてすぐに内側からかき消されていった。

 

 「見てみろ! 賢者は無事だぞ!」

 「は? なんで大丈夫だったんだ?」 

 「ふむ~あの若さでフバーハとはベリー驚きましたねぇ」

 「よく分かんないけど、やっぱりアポロ様すごーい!」

 

 アポロは球状のバリアによって守られており、でろりんの炎はその外周に弾かれて急速に拡散、

肥大化して散っていったのだ。

 

 「で、できた……。ついに僕はこの呪文に成功したんだ! 一週間前でろりんに負けてから、密かに特訓し――」

 

 アポロよ、俺の攻撃はまだ終わってないぜ。

今の攻防で稼いだ時間。それを使って奥の手を出すという二段構えの反撃だからだ。

俺の最大最強、爆裂の光球を受けてみやがれ!

 

 「イオラァー」

 

「密かに特訓してついに……!? は? ちょっと待て、待つんだ何だそれは」

 

 フバーハは炎や氷から身を守る呪文だが、イオラの爆発の衝撃には対処できない。

アポロは慌ててフバーハを解除し、かろうじてその場を移動するが……。

 

ドガアアアァァァーーーーン! ズドドドドーーーン!

 

 「き、きゃーーーー!」

 「うわあああああああああああ!」

 「なるほどイオラですか~魔王との戦いを思い出しますねぇ」

 「ひいいいいぃぃぃぃぃぃーーーーー」

 

 

 ……。

 

 

 結局俺のイオラで競技場の床にべっこりと穴が空き、破片が辺りに飛散。

観客はパニックになっている。そのような状態でアポロが無事なはずもなく

加護を全部失って戦闘服は破れ、血まみれのまま地に伏している。

 

 一応は直撃じゃなかったから、たぶん大丈夫だろう。かなり痛そうだけど。

 

 うむ。最初のメラで決まらなかったせいで、必死になってしまったな。

よく考えたら、イオラはまずかったか。無防備な観客の前だし。子どもたちは泣き出している。

そこまで頭が回らなかった。

 

 でもアポロ以外の怪我人はいないようだな、端の方でやらなくてよかった。

甲高いレオナ姫の叫び声も聞こえてくる。

 

 「ちょっとー! 何てことしてくれんのよー! バダックー! ああいう魔法は事前に禁止してないわけ?」

 

「姫様。まさか戦士がイオラを使うとは誰も思いませんのじゃ」

 

「あー、言われてみればそれもそうわね」

 

 二転三転した展開に、会場は騒然としている。

 

 「神試合だったな! あんなすごい呪文初めてみたぞ」

 「でろりんってもう戦士じゃねえじゃん。剣を持っただけの魔法使いだよ」

 「バカ言え。メラを剣で切る魔法使いがいてたまるかよ」

 「でろりんは勇者様なのかも……。アポロから乗り換えようかしら」

 「エクセレント。あと二歳若かったら弟子にとりたかったですね~」

 

 アポロが負けて落胆するかと思いきや、観客たちはなんだかんだいって強い者が好きらしい。

やがて勝者である異国戦士の俺に敬意を表したコールが巻き起こる。

 

 『でろりん! でろりん! でろりん! でろりん! でろりん! でろりん!』

 『でろりん! でろりん! でろりん! でろりん! でろりん! でろりん!』

 『でろりん! でろりん! でろりん! でろりん! でろりん! でろりん!』

 

 ……。

 

 「くすっ。なんだかずいぶんと締まらないコールね」

 

 「お気を落とされず姫様。これでアポロもますます強くなれますじゃ」

 

 やがて俺へのコールが少し収まってくるとレオナ姫たちの声が聞こえてきた。

騒がしい会場で聞き取れるのが不思議だったが、どうやら控室出口にあったモニターの影響だな。

関係者用の中継装置にレオナ姫の映像が映っており、その声が漏れてきてるのだろう。

 

 室内では確かに大きな音だったが外の観客に伝わるほどの調整はされていない様子で、

レオナ姫の無防備な会話が漏れ聞こえてきた。

 

 「この負けっぷりよ? 賢者が戦士に呪文戦で負ける形になったのよ。でろりんが剣で勝つなら私も祝福できたんだけど。おかげさまで、栄光のパプニカ賢者の戦績に傷がついてしまったわ」

 

 「姫様。戦士に呪文戦でのくだりはアポロには固く禁句でございますぞ」

 

 「言うわけないでしょ。とにかく今回のは薬にしてもアポロにはきつすぎるわよ」

 

 『でろりん! でろりん! でろりん! でろりん! でろりん! でろりん!』

 

 「それにしてもすごい人気ね。変な名前に最初は笑っちゃったけど、何でも出来て強くておまけに顔までかっこいいし」

 

 「でろりんはまるで、わしの若い頃を見ているようですじゃ」

 

 「もうー。何言ってるのよバダック。でも今からこの試合を没収して、アポロの心を守ったら、きっとあたしは悪者になるのでしょうね」

 

 「姫様はそのおつもりなのですじゃ?」

 

 「でろりんには可哀想だけど埋め合わせはするわ。勝利のメダルの代わりに、あたしがもっといいモノをあげるから……」

 

 「姫様はお優しいお方ですじゃ」

 

 何やら今後のことを話していたようだ。

まぁ俺の立っている場所は控室のモニターに近いので内容も聞こえているんだが。

 

 ……。

 

 『でろりん選手は前へ。勝者として記念のメダルを授与いたします』

 

 パチパチパチ! でろりん! でろりん!

 

 「そこの司会の人、ちょっと待ってくれる?」

 

 『こ、これはレオナ姫様……。ふ、不手際がございましたでしょうか』

 

 「不手際? あるわね。この試合の勝者はでろりんではないから」

 

 『え、では勝者はアポロなのですか?』

 

 「いいえ、ちょっとマイクを貸してくれるかしら」。そして彼女は司会からマイクを受け取る。

 

 『でろりんは戦士で出て、呪文で勝利を収めました。呪文使うなとは言わないけど、剣をほぼ使わずに勝った形よね。出場の職業を偽ったレギュレーション違反にならないかしら? 魔法使いが戦士の格好をして不意打ちするのは許されないでしょ』

 

 「申し訳ございません。姫様。姫様のおっしゃることは正しいのですが、出場時の職業は、転職後のものを登録することになっておりまして。でろりん選手が違反とは言えないのではないかと、ひいぃぃ、すみません」

 

 『そのレギュレーションは一考の余地ありね。それなら【周りに被害がでる攻撃は反則】という部分はどうかしら? 会場に大穴が開いたのよ? 幸い怪我人はいなかったようだけど、もしも運が悪かったら大変だったかも。そこんとこどうなの?』

 

 「う、そ、それは……」

 

 『周りを気にせず何でもありなら、アポロだって大暴れできたかもしれないわ。勝負はでろりんが勝ったかもしれないけど、試合は没収してノーコンテストにします。あ、はい、マイク返すわ』

 

 おい。なんなんだそれは。でもよく考えれば、アポロに無理やり吹っかけられた決闘だし、

記念のメダルなどは興味もないか。試合でレベルアップできたので良しとしよう。

 

 そう思っているとこの国の姫が近づいてきて、俺だけに聞こえる小声で話しかけてきた。

 

 「ホントごめんね! でもあなたにいいモノあげるから許して。でろりんは前科ついてるのよね? ならこのカードを上げるわ。不逮捕特権がついてるの。知ってる? 勇者が住居侵入しても罪に問われないのはこれのおかげなのよ」

 

 レオナ姫が申し訳無さそうな顔で、俺にカードを手渡す。

 

「国から正式にじゃなくて、あたしが出してあげるだけだから乱用はダメよ。でろりんの今後の冒険に役立ててね」

 

 レオナ姫はそう言ってウインクしてみせる。使いすぎはダメらしい。

 

 確かに俺には勝利のメダルよりこちらの方が向いてるぞ。姫様は人を見る目があるんだな。

大立ち回りでアポロの見栄やプライドを守りきった一方で、実利を求める俺にはこれだ。

年下のくせに大物。これが帝王学ってやつなのか? 圧倒されたぜ。

まぁいいや。とにかくずるぼんのところに戻ろう。

 

 

 ……。

 

 

 会場を後にして城の地下室へ戻るとずるぼんがいきなり抱きついてきた。

お、おい。他人がいるじゃないか。

 

 「ほっほっほ。まぶしい青春じゃのう。見てられんわい」

 

 「おい、ずるぼん、この爺さんいったいだれだ?」

 

 「その人は占い師のまぞっほさん」

 

 「まぞっほ? でもよく見ると爺さんは牢の中に入ってるじゃないか」

 

 ずるぼんは参考人としての事情聴取だったので牢の外にいて、まぞっほは牢に囚われている。

 

 「お前さんに頼む。そのカードでわしをここから出してくれい!」

 

 このカードの効果を知ってるのか? ふむ。まぞっほか。

なかなか見どころがありそうな名前をしているな。俺のパーティに入れても良いかもしれない。

 

 でろりん、ずるぼん、まぞっほのパーティか。

占いとやらも役に立ちそうだし、レオナのカードでこいつを出してやるか。

紆余曲折あって疲れたが、まぞっほを仲間にできたのでとにかくヨシ!




 今更気がついたのですが、ドラクエナンバリングではフバーハで呪文の炎や氷は防げません。
フバーハが防ぐのはブレス攻撃のみ。呪文はマジックバリアかマホカンタです。
でも外伝の一部ではフバーハにマジックバリアの効果がある模様ですし、
『ダイの大冒険』はナンバリングタイトルではないので、グレーだけどセーフかもしれません。

本編でフィンガーフレアボムスを食らった三賢者に死人がでなかったのは
フバーハで多少和らげられたからと考えることも一応出来ますので。

 あと姫様のファンごめんなさい!
本当はもっと雑な立ち回りになるところでしたが、感想を読んで思いとどまりました。
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