ある理由で姫様に試合を没収されてしまいました。
◇
「ねぇアポロ? 体はまだ痛む? でろりんは勇者みたいなもんだし、あなたを責めないわよ。すぐに試合は没収して口外禁止令も出したわ」。パプニカのレオナ姫がアポロの見舞いに訪れる。
「げほっげほっ、た、確かにでろりんは強かったけど、あれが勇者だなんてないよ」
「あらそれでいいの? アポロはただの戦士に呪文勝負で負けた賢者になっちゃうわよ?」
「うわぁーいくら姫でも僕にそれだけは言わないでくれえぇ」。アポロは頭を抱える。
「いけない、今のは禁句だったわね。バダックに怒られちゃうわ。アポロの再起戦、組んでおいたから、早く元気になるのよ」
「いや、僕はもうダメなんだ……。」
「追っかけの女の子も、あなたの元気な姿、待っていたわよ。そうやってメソメソしてファンの子を悲しませてもいいわけ?」
「……そうか。僕のファンの女の子を悲しませるわけにいかないな」
「でしょー。次は魔法使いの占い師を当てようかと思ったんだけどー」
「分かった。僕は受けるよ。相手が誰であっても」
「あ、ちょっと待って。言いかけ。その人、まぞっほというんだけど国を出てしまったから、次の相手も戦士なの。いけそう?」
「せ、戦士か。トラウマになりそうだよ。どんなヤツなんだい?」
「確かへろへろみたいな感じの名前よ。えっと……なんだったかしら」
「なんで最近の僕の相手は変なのばかりなんだーーー!」
◆
俺がロモス行きの船に乗りこむと、一人の美青年が明るい顔で話しかけてくる。
「おや~こんなところで居合わせるなんて、ベリーベリー奇遇ですねぇ! でろりんくんじゃありませんか~! 試合、最前列で見ていましたよ~!」
「誰だアンタ? と思ったら声のでかい野次馬じゃないか」
口調で分かったがカールした銀髪に大きなメガネ。一度見たら忘れない強烈な見た目だな。
「いや~楽しく観戦させてもらいました。私は家庭教師をしている者です。ロモスに不穏な空気を感じて、ちょっと気になったのでこの船に乗ったんですよ~」
「うちのまぞっほも同じことを言ってたな。ロモスは何かイヤな感じがすると。まあ俺の故郷だし、無理やり連れてきたら寝込んでしまって起きてこないんだ」
ふむ、とその青年は少し深刻な顔をしてから一転。笑顔でそうだと口を開いた。
「観戦料代わりにコレをあげましょう~。輝聖石というのですが、失敗してペンダントのサイズに合わなくなり、使い道がなく困ってたんですよ~。指輪に加工してみました。なんとなんと! 魔力を蓄える効果があるのです!」
メガネをキラっと光らせ、家庭教師の青年が指輪を手渡してくる。
「魔力を貯めれば一回だけ、ワンランク上の呪文が使えるようにしてあります。ただし攻撃呪文の場合、出すのはベギラマまでで。それより高い威力を出すと壊れます。戦士のあなたには役に立ちますよ~。気をつけて使ってくださいね」
俺は、指輪を受け取った。ギラを一回だけベギラマにできるってことだろ?
とても使えそうだ。ずるぼんならホイミがベホイミになるのか?
そして壊さなければ時間を置けばまた使えるらしい。
やがて船はロモス王国のあるラインリバー大陸へ。
でろりん、船酔いずるぼん、寝込んだまぞっほ、三人の冒険の旅は始まったが俺も疲れている。
逮捕されたり試合したりいろいろあったからな。ぐっすり休もう。
……。
数日後、俺たちはロモス王国に到着して王都の宿でトランプに興じていた。
「はーい、またあたしの勝ちー!」
「くそっ! やっぱトランプは三人じゃつまらん。四人はいないと!」
「負け惜しみー。じゃあ、まぞっほはどう? 三人だとつまらない?」
「わしは楽しいのう。三人なら三人の、四人なら四人のムーブがあるわけじゃよ。それはパーティでの戦闘とも同じ、わしの師匠がよく言っておったわい」
ぐぬぬぬぬ。四人目候補はいないものか。家庭教師の人はどこかいってしまったし。
というか俺たちは一度、ロモスの国王に会いに行かないとな。
そう。パプニカでずるぼんを助けたときに、白い希少種のライオンヘッドを狩った。
そいつには赤子がいたので業者に頼み、ロモスのシナナ国王に献上しておいたのだ。
国王は珍しい動物に目がないという噂。パーティで動くなら名前を売っておきたい。
元々はバカ親父への反抗で今のでろりんという名前にしたんだ。
こういうのは知名度を上げていかないと意味がない。
本当はあと一人仲間が欲しいが、「家庭教師の指輪」をずるぼんにつけたので、
緊急時に一回はベホイミで大ケガを治すことができる。戦力に問題はないだろう。
「レオナのカード」といい、まったくレアアイテム様様だな。
王様に会ったらそれからどうするかな。俺は転職前と違って接近戦もできるし仲間もいるんだ。
危ないから入るなとバカ親父に散々言われた魔の森だっていけるだろう。
強そうなモンスターからは逃げれば安全なわけだし。
もしくは街でイベントをこなすのもいいな。困っている人を助けて金をもらう。
母さんの墓参りもしたいな。旧魔王軍に滅ぼされた場所の探検なんかも悪くない。
俺は意外と廃墟が好きなんだ。
あとは、王様に会ったらすぐパプニカに戻る手もあるな。
ロモスではまだ不逮捕特権がないから向こうのほうが無茶できそうだ。
……そのようなことをいろいろ考えながら俺は眠りについた。
◇
ここはラインリバー大陸のどこかにある洞窟、薄暗い研究室。
上級魔族の高笑いがこだまする。
キヒヒヒヒッ! キィーーヒッヒッヒ!!
「キヒッ! 戻ったか超魔実験体55号。拒否反応やエラーはないようだな。偶然の産物、研究の傍流だが敢えて言おう。おまえはオレの怪作だ! その体は不死にして両性具有、現時における地上の最強者よ」
「はい。ただいまでございますわ! ザムザさま!」
「首尾はどうであったか? あくまで我らは魔界の先遣隊なのだ。人間に手はだしておらんだろうな?」
「あたしの試験戦闘は、人間がいない魔の森で行いましたわ。呪文禁止で四十九連勝していたのですが、はぐれドラゴンをやっと倒したところ、後ろから変なワニ型が出てきて負けてしまいましたの……しくしく」
「だが、おまえの傷はもう治っているようだな。当然だがさすがだ。おまえに勝ったヤツも多くの経験値を得て強くなっただろう。再戦してみるがいい」
「いやですわ。消耗したところを襲われただけで、あんなの雑魚モンスターですもの。いくら経験を積んだところで、ドラゴンに比べればたかが知れていましてよ」
「まあよい。体が安定した状態で戦闘できた成果がもっとも肝要だ。よし! オレがおまえに名前を与えよう。妖魔学士となったこのザムザ様がな」
妖魔学士ザムザは少し過去を振り返り、口を開く。
「確かおまえは、超魔実験に失敗した二つの高級素材――元は強い人間――を再利用した産物。オレがどこをどうやったか、こねくり回していたら偶然動き出したのだったな」
「はい。人間側素材の記憶をたどるとデルタ、スローティアという男女みたいですわ」
「じゃあ名前を合体させて、おまえを超魔ルーティアと名付けようか。いや、翼もつけるからな。中性的な美貌でもあるし、邪天使ルーティアを名乗るが良い」
名前を授かり深々と頭を垂れ跪いて、ザムザの指にキスをする邪天使ルーティア。
「そうだ。ルーティアよ。そのうちオレの親父にも会わせてやろう」
「まあ! ありがたき幸せですわ!」
ふむっ、ザムザは考える。
ルーティアは一つの到達点ではあるが一品モノなので量産はできない。
自分の研究課題は、誰でも確実で安全に超魔生物の力を手に入れることだ。
だからルーティアで遊ぶのもいいが、あまり時間をかけてはいられない。
魔王が復活するまでにあと三年。そこから数年で完璧な組織を構築したら、
研究が途中であっても、人間どもに宣戦布告しなければならない。
人間が滅ぼされ、戦う相手がいなくなった後に研究が完了しても、
オレや親父の功績にならないのだ。いや、それはまだいい。
人間どもはかつての魔王を倒している。地上制圧も、万が一苦戦するかもしれない。
そのときに役に立てないようでは親父に見捨てられ、オレの居場所はなくなるのだ。
そういう意味ではルーティアの完成度は保険になるかもしれない。
見本のようなものだ。人間どもと争うのなら、新たな研究材料が大量に手に入ることになる。
そのときに第二、第三のルーティアを再現することができれば
優秀な兵の供給係として最低限の地位には留まれるだろうから。
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オリキャラが出てきましたが
退場までどれぐらいかかるのでしょうか?