現代にTS転生したけど馴染めないから旅に出た   作:朧月夜(二次)/漆間鰯太郎(一次)

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2026/04/21 加筆修正分


新:Black hole

 

 

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 すっかりと陽が暮れたキャンプ場。

 アウトドアチェアーに座り、焚き火とランタンの明かりに照らされるソレをカメラに向ける。

 

『これはひどい』

『予想外すぎた』

『女子力低すぎィ!』

『wwwww』

『草』

『あのさぁ……』

『やはりポンコツだったか』

 

「いつから野外料理がお洒落なメニューだと錯覚していたの?」

 

 初手から罵倒されるのも慣れたけど。

 これも配信者としての成長、だよね?

 

『なん……だと……』

『すごいドヤ顔だぁ……』

『ヒマDと同じ変態蝶仮面でドヤ顔がより見やすくなりましたね……』

『www』

『隠す気ねえだろ』

『だがそれがいい』

 

「チェリーちゃん、私もこれは予想外だよぉ……」

「一緒に買い出しに行った身内に真っ先に裏切られた」

 

『残当』

『姉の意見が正解』

『悔しいっけどそんなチェリーがしゅき』

『当たり前だよなぁ?』

【3000円】『そうだよ(便乗)』

 

「でも姉さん、美味しいでしょう?」

「とっても美味しいよぉ……」

 

 キャンプ場についたのは17時丁度くらいだった。

 シーズンとは言え平日のど真ん中だからか、オレが予約してあったキャンプサイトの周囲に他の客はいない。

 ここは那須高原に近いオートキャンプ場で、バンガローみたいにキャンプ道具が無くても宿泊できる施設もある。

 土日だとかなりごった返す程の人気ポイントだ。

 

 それにキャンピングカーがおけるスペースだと電源が来てたりする。

 オレらの場所もそこだ。

 ライブ放送をしながらだから、電源が取れる方が便利だし。

 

 ここは山の中腹にあるから、森のあちこちがキャンプサイトとしてぽっかりと開けている場所がいくつか点在している。

 管理棟がある場所へは良い感じの小道で繋がっている感じで。

 金額は一泊5000円で直火OK。

 直火が使えるって結構レアだよね。

 

 到着して直ぐにライブの昼の部は終了として一度切った。

 その間にキャンプの準備をする。

 前世でも結構やってたんだよな、キャンプは。

 仕事であちこち行くからそのついでに。

 

 キャンプって言っても宿泊しなきゃいけないって事も無いし。

 なので休みが少ない分、時間が出来ると現在地から行ける範囲のエリアでキャンプ場を探し、そこでタープを張って簡単な料理をしながら自然の中でのんびりと過ごす。

 それがいい感じの息抜きになるんだよね。

 なのでその経験を活かしてじゃないが、放送のネタにしてみたのだ。

 

 道具は事前に購入してある。

 大きめのタープを何種類か。

 焚き火台やそれ関係の道具諸々。

 シートやテント、チェアーやランタン。

 必要な物を最低限で、かつ安いだけの粗悪品を省いて。

 金があるなら道具に妥協してはいけない。結局あとで買う羽目になるんだから。

 

 設置したのはオレたちがいるサイトの直ぐ横の木々の間にハンモック。

 太い木の間に2つ並べて張った。

 一応タープも上に張っているが、これは雨対策で、降ったら直ぐに拡げられる状態にして巻いてある。

 降らなきゃ星空を眺めながらそのまま寝る。

 ハンモックには虫よけのメッシュがあるから蚊や山ヒルの心配もないし。

 

 一応荷物置き兼、万が一の避難場所としてテントも張ってある。

 形状としてはツールームテントって奴で、四人くらいが余裕で眠れる。

 これの特徴はドーム型テントとロッジ型テントの複合タイプって感じ。

 寝室部分がドームで、入り口との間にリビング用の前室がついている。

 なので大雨が降っても寝室部分は割と安全。

 

 何よりだんだんと女の身体に慣れつつある今、男の様な雑な立ち居振る舞いは出来ないのだ。

 具体的には着替えとか。

 人の目が無いとは限らないからね。

 個人的な好みだけならティピー型テントなんだけどね。

 

 ティピー型は円錐状で、イギリスのフェスとか某有名魔法学校のファンタジー小説や映画で、箒に乗ってやる競技のワールドカップで並んでいた奴とかもそう。

 元々はアメリカのネイティヴインディアンの竪穴住居っぽいテントがモデルらしいけれど。

 まあいいや。

 

 で、テントなんかも張り終えたら後は焚き火だ。

 地面に穴を掘って、その周囲をその辺で拾ってきた石で囲って簡易的な竃を作る。

 そこに拾ってきた枝とかで焚き火を熾すんだけど、今回はキャンプ初心者の姉さんもいるので簡単にした。

 具体的には管理棟で薪の束を買ってきて、ライタートーチで火点けをする。

 

 一応姉さんにもアウトドアを満喫してほしいから、フェザースティック(※薪の先をナイフで切り込みを入れてケバ立たせた焚きつけ)を一緒に作ったりしたけどね。

 

 焚き火の面倒な部分はこの火点けなんだけど、姉さんと拾い集めた小枝を円錐状に組んで、その下に枯れた木の枝枯葉つきを置く。

 あとはライタートーチを姉さんに渡してフェザースティックに火をカチリ。

 じわっと燃えたら火吹き棒(※伸縮自在金属製)でフーフー。

 一気に燃え上がり、小枝がパチパチと爆ぜる。

 

 後は薪をナタで割った細いのから太いのへ順番に火の勢いに合せて投入する事で焚き火は安定する。

 姉さんが大はしゃぎで可愛かったな。

 火傷防止に渡していた皮手袋をしたまま、満足げに額の汗を拭うと、煤でまっくろ。

 二人で大笑いしちゃった。

 

 まあ本格的なブッシュクラフターを気取るなら、薪も現地で拾い、火付けも火口を自作して火打ち石とかファイヤースターターでやったりするんだろうけどさ。

 けど今回はやめた。

 前世での経験はあれど、この身体ではまだないし。

 それにモタついてグダるくらいなら、さっさとライターを使えばいいのだ。

 

 まあホントはこの流れを放送にした方が面白いんだろうけれど、別に全部のプライベートを切り売りするつもりはないんだよね実は。

 姉さんもこの過程は美味しいんじゃ? とか言ってたけどさ、キャンプの一番のクライマックスって個人的には焚き火を作る所にあるって思うんだな。

 

 キャンプの準備をして、現地に向かい、ベースを設営して、焚き火をする。

 ここまでが多分クライマックス。

 後は余韻を楽しむというかさ。

 なので最初のキャンプは姉さんと楽しみたかったんだな。

 

 さくらの影響か、こんなにもオレを受け入れてくれた母さんや姉さんへ、オレ自身の関わっていきたいという気持ちが強くなった。

 どうしてかはわかんないけど、正しく家族としての時間を持ちたいと思ったのは真実だ。

 まあそうやってやるべきことを終わらせたのちに、ライブを再開したオレ達である。

 

 でだ、冒頭でリスナーに呆れられていたのは、キャンプ料理として披露したのがまさかの焼き餃子だったからだ。

 どうやら顔も知らぬ彼らは、お洒落な料理なんかを想像していたらしい。

 けど姉さんと自分用に買った外でも使えるホットサンドメーカーで餃子を焼いてるんだな。

 取っ手がついてなくて、枝とか薪をさして柄にして使うタイプの。

 

 今回オレが料理の道具として持ってきたのは少ない。

 このホットサンドメーカーと、20センチ幅くらいの鉄板。

 コールマンのガスバーナーにマトリョーシカみたいに収納できるクッカー。

 これくらいだ。ガスバーナーとかクッカーはコーヒーを飲んだりする目的以外に使わないし。今回は。

 

 だからダッチオーブンとかスキレットみたいないかにも野外料理! みたいな凄い道具は無いのである。

 いいのだよコレで。

 キャンプなんてカッコつけなきゃいけない決まりなんかないんだし。

 どこかの輸入業を営む独身貴族じゃないけどさ。

 キャンプは自由で救われてなきゃダメなんだよ。そう、餃子こそがオレの自由の証明だ。

 

 で、宇都宮で一度高速を降りて大型スーパーで買った食材は、有名餃子店のお土産用冷凍餃子(30個入り)と、ちょっと奮発した和牛ステーキ肉。あとはパンだけだ。

 調味料関係は色々持ってきたけどね。100均で買った化粧水を入れる小さなプラスチック瓶に、うちのキッチンにあった豊富な調味料類を小分けにして。

 

 でも馬鹿にした物でもないのだ。

 ホットサンドメーカーは素晴らしい調理器具なのだ。

 まあ蓋の様に上下に開く形状だから、閉じれば自然と蒸し状態になる。

 だから焚き火で熱して油を引いて隙間が開かない様にみっちりと餃子を並べて焼き、少し焦げる程度になったらミネラルウォーターをドバー!

 後は蓋をして蒸気が出なくなったらお店の餃子みたいな完璧な焼き具合で完成するのだ。

 

 ここをリスナーに見せながらやった訳だが、最初はおー! とかリアクションしてたくせに、完成後、オレが「今回の料理のほぼ全てがこれで終ったなぁ……」発言で反応が裏返った。

 ポンコツを連呼するとか万死に値するよ……。

 姉さんもぽかんとしているし。

 

「でもね、美味しいんだコレが。確かにスキレットでローストビーフでも作ればお洒落な女子感あるよ? けどそんなのTVを見れば女子アナとかタレントがキャーキャー言いながらやってるじゃん。谷間とか見せながらさ。チェリーはそれは違うと思うな。自然の中で好きな物を食べる。その方がずっと素敵だと思うな」

 

『こいつ胸の事気にし過ぎてね?』

『チェリーは所詮、女の敗北者じゃけえ』

『はぁ・・・はぁ・・・敗北者?』

『取り消せよっ! いや別にいいわ』

『飽きんなwww』

『でも同意。別にそれってチェリーじゃなくてもいい』

『少なくともこれは酷いメシテロだ』

『うち今日カップメンなんだけど……』

『ランタンに照らされて余計うまそう』

 

「胸の事は気にしていない。今後この話題に触れた奴は不幸な目に遭う」

 

『効いてる効いてるww』

『僕はチェリー様の希少価値を信じる』

『ロリコン乙』

【10072円】『そうだよ。胸とかどうでもいいし』

『端数に悪意を感じるぜ』

『それなww悪意のありすぎる端数』

『ランタンで浮かび上がるチェリーのジト目いいれす』

 

 それにしても姉さんが無言だけども。

 餃子はホットサンドメーカーで6個ずつ入れられた。

 これでパンパン。

 でもね、オレ、既に4回焼いてんだ。

 それが無言の理由。

 

「ひぇりーひゃん、これおいひぃねぇ……」

「………………うん」

 

『いっぱい食べるきみがしゅきいいいいいい』

『姉のキャラ属性大杉』

『可愛いからタチわるい』

『頬袋パンパンのリスかよ』

『はらぺこヒロインとか壊れるなぁ……』

【30000円】『せやな』

 

 黙々と食べている姉さん。

 リスナーも困惑するほど食べている。

 噛んではいるけれど、とにかくペースが早い。

 喉に詰まらせないか心配になるレベルで、次々と餃子が消えていく。

 リスじゃなくて、どこか別の生き物を見ている気分だ。

 

 ちなみにオレは、3個でお腹がきつくなってきた。

 夜だしキャンプだしお酒でもと、芋焼酎のタンサン割りを飲んでるから余計に膨満感があるし。

 だってこの餃子、1個がけっこう大きいんだよ?

 

 まあね、前に五反田のステーキハウスに行った時、「結構歩いたからお腹ペコペコだよぉ~」と言いながら、姉さんはライス大盛のステーキセット(※1ポンドのサーロイン)を完食してたからね。

 その頃から薄々大食いキャラではと疑ってはいた。

 普段の食事にでも大きい茶碗でご飯3杯は食べるし……。

 一体どこに消えてるのか。

 

 そうして餃子が売り切れた頃に、

 

「せ、せっかくだし奮発して高級ステーキ肉買ってきたけど……姉さん食べる……?」

「うんっ、お肉だいすきぃ~」

「じゃ、じゃあ焼くね……」

 

『うわぁ……』

『チェリーが出した肉、結構でかくね?』

『満面の笑み!』

『対してチェリーの真顔』

『チェリー声震えとるぞ……』

『すげえ』

『ごめん見てて満腹になったんじゃが』

『ワイも……』

 

 そうしてキャンプ放送は意外と好評のうちに終った。

 姉さんのサポートのおかげだけど。

 ……完全にチェリーを喰う程の強烈なキャラだったし。

 

 ただ放送後に姉さんとハンモックで寝て、夜空を見ながら語りあっていたのに、これじゃスキンシップが足りないと言う理屈で、結局はテント泊になった事が恨めしい。

 もっとさ、ほら。

 綺麗な星空、見ようよ姉さん……。

 

 ホントそういうとこだよ、姉さん。

 可愛いけれど。

 ちくしょうめ。

 




おまけ:あの時咽て断念したがリベンジに成功

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