ーーー全て、間違っていたのか、私のやってきたことは。
世界で人類に残された数少ない土地、四国、香川県。
その中でもかつて観光名所として栄えた丸亀城は今、火の海に包まれていた。
その煌々と燃え盛る炎と煙で視界が揺らぐなか、二人の少年少女が向かい合っていた。少年は立っているが、少女は膝を突き、目の前の少年を見上げている。
「ぐ……。はあっ、はあっ、はあっ……。」
精霊・源義経を身に宿す少女、乃木若葉は身体にムチを打ち、立ち上がろうとする。
しかし身体中に受けた傷の痛みがそれを許さない。気を抜けば今にも精霊の力まで手放してしまいそうだ。
「もう諦めなよ、牛っころ。もうお前が出しゃばったところで何もかも手遅れなんだって。」
若葉はもう一度身体に力を入れて、立ち上がろうとする。不屈の覚悟が彼女を中腰程度まで立たせた。
しかしまた倒れる。無理をして傷が開いたから、倒れた衝撃で血が周囲に飛び散った。
「だから言ったじゃん。もうお前には以前ほどの力はない。お前にあるのは今までの力の残りカス。だから大天狗も宿せない。何も……守れない。」
「うる……さい……。」
若葉は床に這いつくばりながら、少年に言い返した。こんな状態でも、その目だけは強い意志が宿っている。
「私は……、勇者だ。みんなを導き……奮い立たせ、どんな絶望にも抗うそんな……勇者……」
「だった。だな。」
少年が若葉の言葉を遮って口を開く。
「かつてのお前ならそうだったね。でも、今は違う。」
「な、そんなことは……」
「違うだろ。力を取り上げられて見栄を張り、怖がり、自分の運命から目を背けてひなたさんに泣きついた。あんたはそんな牛なんだよ。」
「違う!」
「違わない。力を持つ前のお前は、そうじゃなかった。」
少年は、冷静な口調を保ちながら、身体の内から熱いものがこみ上げてくるのを感じた。怒りだ。
憎い。この女が憎い。自分から全てを取り上げておいて、人の羨むものをすべて持っていながら、自分では何も出来なかったこの女が憎い。
「小学校の5年生だったっけ。お前が力を持つ前は強くて、意志がはっきりして、みんなを引っ張っていける。強いやつだった。」
「私は勇者になってからも、そんなふうに……」
「やってない。力に溺れて、自分なら何でもできると思い込んだ。できなかった時、お前は仲間を見殺しにした。だから4人は死んだんだ!」
少年はついに我慢できなくなって、強い口調になった。泣きながら聞いていた若葉はうつむいて、目が隠れてしまった。
「なんか言いたいこと無いのかよ。」
少年が聞くと、若葉はしぼんだ震え声で応えた。
「4人じゃない……。」
「は?」
「死んだのは4人じゃない!2人だ!そっちこそ、私を貶めたいからって数をチョロまかすな!」
「……ああ、そういう事か。なら何も言えないわな。」
「何を勝手に納得している……!」
「お前、無意識に未来見てるだろ。」
少年の言ったことの意味が、若葉には分からなかった。
未来を見る? 普通ではありえないはずのことを唐突に言われ、今の悲しみと周囲の暑さでどうにかなってしまいそうだ。
少年は倒れている若葉に近づくと、ズムっと髪を掴んで無理やり身体を持ち上げた。
若葉の頭に、鋭い痛みが走る。
「な、何を……。」
「だったら戻れ。現実に戻って、時間に追いついて。未来を見たんだから過去ぐらい変えてこいよ。お前は俺に無いものを持ってんだから。」
若葉は訳も分からず、何のことか聞こうとするが、口が動かなかった。
煙や炎の
ーーーばちゃん、わかばちゃん。朝ですよ……ーーー
その声はどこか暗く、切なかった。
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「若葉ちゃん!大丈夫ですか!?すごく
気がつくとベッドの上にいて、その脇には巫女服を着たひなたが立っていた。いつもの制服姿ではない。
「……ああ、すまない。少し変な夢を見ていたんだ……
「悠城さん、ですか。そうですね。もう若葉ちゃんの弟さんが亡くなってから、3年も経ちますから……。」
「そうだな。そしてまた、私は大切な人を失ってしまったんだ……。」
……四国は諏訪よりも勇者の人数が多いせいで、大社でも安心されていたのにな。
その日は、新型のバーテックスの襲来によって命を散らした、二人の勇者の葬儀の日だった。
誤字脱字、ご不明な点(今後の展開は話せませんが。)等ございましたら、コメントでお知らせください。