魔導王の姉〜異世界行っても知識は役立つ〜 作:はる
おっでれぇた。
「滅竜魔導士への昇格に成功したのは20人中12人。最初に実験を行った001番と002番は埋め込んだ場所が悪く、命に別状はないが、この国の兵士として戦うには身体に負荷がかかりすぎて居る。よって二人はこの実験場から指揮官育成学校に降格する。」
退院してすぐ、集められた私達が言われた言葉がこれだった。同じ一期生として、同期が二人も居なくなるのは悲しい。
「皆、ごめんな。」
「012番、身体に気をつけてね!」
001番と002番がお別れの挨拶をした。だが、その隣には私の後に手術を行った子達もいる。私の後は全員成功した訳ではないのか?
「また、009番、011番、013番は埋め込みには成功したが、滅竜魔法の魔水晶では無かった為に失敗。017番、019番は滅竜魔法に身体が耐えきれなかった為に失敗。
彼等も身体の事を考え、それぞれの望むところに降格とする。」
滅竜魔法の魔水晶では無かった…か。自分より小さい子に不幸が舞い降りたのは不甲斐ない気分だが、同時に怒りが湧いてくる。偽物くらい、埋め込む前に判別しろよ。
だが、心のどこかで安心している自分もいた。001番、002番は責任感が強く、常に子供達の前の方にいる。戦場ではそういう奴が真っ先にやられるというからな。
指揮官育成学校というからには後方勤務だろう。死ぬ確率は低い筈だ。
また、009番、011番、013番、018番、019番もそれぞれの望むところに降格と言っていた。なら後方勤務を選べる筈だ。
「実験に成功した者は引き続きこの施設に残る事とする。これからは勉学に続き、戦闘訓練も行うからな。…以上!」
「解散ッ」と言われ、子供達が散り散りに別れていった。…戦闘訓練か。前世から割とアウトドア派だったけど、それとは比べ物にならないんだろうな。どうしよう、いきなり10キロマラソンとか言われたら。
まぁ、そりゃ無いか。私達まだ5歳だし。
*
「次は戦闘訓練だ! 全員配った服を着て中庭に来てくれ!」
ここの実験場勤務じゃない大人がそう言って、皆に服を配った。
この服…体育の授業とは似ても似つからないな。こういうの、何ていうんだっけかな。あのナウ◯カが着ていたやつ。あぁ、確かジョージアの民族衣装だ。チョハって言ったっけ。それに似てるな。フリンフリンのスカートを渡されるよかマシだが、なんか重くないかコレ。
「その服には重石をつけてある。全員それを着て中庭三周からスタートだ!」
ここの中庭は意外と広い。100メートル x 50メートルといったところか。つまり300 x 3 = 900 だな。良かった、1キロも無いじゃないか。走れはしないが、皆歩ききる事が出来る距離だ。
「じゃあ、皆俺の後についてきなさい!」
男(戦闘訓練の先生)が私達の前を走り始めた。しかし、それはとても遅い。歩いた方が早いくらいだ。
「先生遅すぎだよ。」
100メートルを過ぎるあたりで誰かが言った。
子供は風の子。誰が言った言葉か知らないが事実だ。ゆっくり歩くより走った方が子供は喜ぶ。
確かに5歳児や4歳児なんて、死ぬほど遅いし900メートルなんて走れないかもしれないけど…流石にこれは遅すぎる。逆に疲れてくるな。
他の子達がブーブー言う中、5分程かけて300(一周)を走り終えた。戦闘訓練といっていたが、これでは期待外れもいいところだ。こんなの、何日やったって強くなれる気がしない。
「二周目行くぞ。」
次の二周目もゆっくりだった。今まではポーズだけでも走ってるフリをしていたが、他のチビ達が我慢しきれずダラダラと歩き始めた。だが、徒歩よりは少し早いみたいで、早歩き(競歩)になって居る。それじゃ逆に疲れるだろうに…
ん?…徒歩よりは早い?
いや、さっきまでは徒歩より遅いくらいだったのに。…この先生、まさかだんだん早くなっているのか⁉︎
「おら、どうしたどうした。へばって無いでしっかりしろよー!」
先生の言葉で確信する。
「へばって無いでしっかりしろよ」だと?
そこは「へばって無いで走れよ」と言うべきだろ。
わざと遅く走って、こんな短距離なのに疲れさせている可能性が高いな。何の為に…?
「007番、考え事とは余裕だな。お前はもう一周追加だ!」
なっ…ふざけんな!
文句も言わず走っていただろう。こちとら優等生じゃこんにゃろー。
「その文句がありそうな顔、、、変わんねーな。」
…ハァ?
この男とどこかで会ったっけか。いや、、確かに見た事ある気はしていたが。…。
「ハァ…ハァ…、あれ?何でボク疲れてるんだろう?」
「ふぅ…?ほんとだ。なんかむねがくるしい!」
「…。」
「ねーさん、あたしつかれた。」
上から012番、018番、005番、014番。
全員余裕ぶっこいて歩いて(途中から早歩き)いた者達だ。
わざと歩かせ、意識させずに競歩させていた男の手腕は見事だ。が、私だけ一周追加した事は許さないからな。
「ねーさん、おんぶ。」
無茶言うな。
「良いじゃねぇか。やってやれよ、ねーた。ま、おんぶは4周目からにしろ。」
…あぁん⁉︎
4周目って私以外無いじゃん。その頃には014番は休憩できてるだろうが!
…ん?
今この男「ねーた」と言ったか?
「ねーた」って弟しか呼ばないその名を何故知ってるんだ⁉︎…まさか、弟が捕まってしまったのか?だから知ってるのか?まさか弟が捕まってしまうとは、、早く助けてあげないと!あれ、でも捕まったなら弟もこの施設に来る筈だが…
「混乱してるところ悪ィが、…俺の顔に見覚え無いか?」
え。
…うーん。
…、まったく?…………。
「おいクソガキ」
…!
その言い方、
貴様はあの時の分隊長!
ここで会ったが百年目、いざ、尋常に勝負!
「何が「尋常に勝負」だよ⁉︎
バリバリ不意打ち狙いじゃねェか!
…はぁ、007番もう一周追加!」
⁉︎
そんな…。何で。
後ろから頸あたりを狙ったのが悪かったのか。それとも頭ハゲロとか思ったのが悪かったのか。はっ…まさか木箱の件をずっと根に持ってやがったのか?…器の小さい奴め。
「お前、4周目と5周目は014番おぶって走れよ。これ上官命令だから。拒否不可能だから。」
「ねーさん、おんぶしてくれるの(キラキラ)」
やらないからね⁉︎
そんなキラキラした目で見ないでくれ。
子供って無駄におんぶとか肩車とか好きなんだよな…その対象はパパかマッチョなママだけにしてくれ。
「キラキラッ」
…わかったから。やるって、ねーさんがおぶってやんよ。
「フッざまぁねー、ねーちゃんはいつだって大変だなぁ?」
…テメェ許さないからな分隊長。
将来絶対私の方が偉くなって上官命令で「逆立歩き中庭一周」の刑に処してやる。
自分的にはやっぱり原作に出たドラゴンは出来るだけ使いたくないので、014番を刃竜から棘竜(きょくりゅう)に変えました。