魔導王の姉〜異世界行っても知識は役立つ〜 作:はる
今世の弟は弟(オート)と。
前世の弟はアキ、と私は呼び分けている。
アキはこの頃反抗期になってしまって面倒臭いところはあったけど、小さい頃はいろんな場所について来て可愛がったし、第一志望に落ちた時は一緒に悲しんでくれた。成人してからも結構良好な関係を築けていたと思う。
……アキ、最近妙に筋トレしていたけど、無事マッチョになったのかなぁ。
転生したか、召喚されたかはわからないが、日本に置き去りにしてしまった家族も気がかりだ。
お父さん、お酒控えてくれたかな?
お母さん、甘いものばっか食べてないかな?
アキ、体脂肪率どのくらいかなぁ?
転生してしまった以上、私に出来る事はもう無い。とはいえ、やはり気になるものは気になった。
まぁ、私にはしっかり者の7歳離れた兄がいるから、両親と弟は兄さんが支えてくれることだろう。多分。きっと。
兄の事だ。私が居なくなって悲しんでる家族にキツい事言うんだろうな。昔、公園で転んだ私に言ったみたいに。
たしか、
「何泣いてんだ!
泣いても何も変わらないぞ、〇〇!」
……ん、〇〇?
あれ、名前なんだっけ。
落ち着け。私の名前は、、、あれ?
あんなに家族が呼んでた名前なのに、思い出せない。
「ほら〇〇。貴女の弟よ!」
「〇〇、お前が俺のチョコ食べたんだろ!」
「ちょっとそれマジ〜、〇〇偉くね?」
「受験番号10792 〇〇〇〇」
あれ、この記憶、本当に私の何だっけ…?
ベシッ
ベシッ
…おい痛いな⁉︎
、は?
目が見えない⁉︎
腕も縛られているようだ。
という事は捕まってしまったわけか。
…兵士1人に捕まるとか、神様特典弱すぎねーか?いや、そもそも特典ですらなかったとか。確かにソレっぽい人には合わなかったし、、、
ゴツゴツと整備されていない道を乗り物が動く。こんなに揺れるなんて、荷馬車か何かだろう。私は目隠しをされ、縄で簀巻きにされているので憶測でしか無いが。
「ねーた」
弟が私の頭をぺちぺちと叩く。別にねーたは寝てるわけじゃないんだけど。ちょ、やめてもらっていいっスか、、、
ぺちっ、ぺちっ
「さっきから馬車の内部が見えんだが、あのガキ共何やってんだ?」
「さぁ?それよりも、周り警戒しとけよ。」
*
弟のぺちぺち攻撃が済んだので私は姉弟のこれからを考える。目下の目標は相手の本拠地に入る前に、弟を逃してやる事だ。
先ずは弟に目隠しをとってもらおう。
さぁ、弟よ。ねーたの目隠しを取るのだ!!
…
……、。
……………
………、………弟ォ、取って、
ビーっ
痛い痛い!それ目隠しじゃなくてねーたの髪だから⁉︎
ぐにゅっ
それはねーたの鼻だからァ!
ーあれから20分後ー
、、、、と、取れたぁー。
良かった。見えるって素晴らしい…
「ねーた」
有難う弟よ。色々と言いたい事もあるが、一先ずは有難う。
所でここは何処だ?
家から大分離れてしまったのはわかる。
外の景色を見るに、住んでいた森の葉は黄緑が多かったが、荷馬車から見える森には深緑の針葉樹が多い。ここいらは寒いのか?
「ん?子供の目隠しが取れてるな。」
誰かが荷馬車の後口から、馬に乗ったまま顔を出した。
…貴様は、この間の分隊長!ここで会ったが100年目、必殺!
…
…
…、アレ?
「おい、俺の言葉が理解できるか知らないが、お前の即死のトリックは見破れてんぞ。」
え?コレってトリックとかあんの?魔法でしょ?
「お前の持ってる莫大な魔力を相手に一気に流し込む事で、身体が耐えられなくなって自滅する、だろ?だったら対処は簡単だ。自分の魔力をスッカラカンにしておけばいいんだ。」
…、ヘェー、転生特典じゃなかったのか。
私自身自分が何やったかわからなかったから解説してくれて有難う、分隊長。だが、それと
「んまぁー、
「お前今俺を馬鹿にしたか?」
「♪〜♪〜」
「おい、口笛なら吹けて無いぞ、、
…はぁ、ここらで一旦休憩だ!」
…この分隊長、コッチが言葉理解してんのわかってやがる。
そして休憩か。弟を逃す大チャンス。
「言っとくが、お前等の分もあるぞ。」
…何ですと!
ご飯?私の分もあるの?
「元々赤ん坊捕獲しに来たのに、連れてくる途中で餓死しました何て事、なるわけないだろ?まぁ、赤ん坊の世話係をする奴はお前に殺されちまったけど。」
悪ぅござんしたね。だが、忘れてないぞ!
お前らが弟を「良い兵器」呼ばわりした事はな!
「まぁ、明日になったら帝都に着くんだ。
最後の晩餐くらい、たらふく食べさせてやる。」
たらふく!
…ん?最後の晩餐くらい?
、帝都に着いた瞬間ジ・エンドですか、そうですか。
ぜってー逃げてやる。
「休憩終わり!
行くぞ!」
荷馬車が動き始めた。逃げようにも、荷馬車を囲って騎馬兵達が配置している為、難しい。馬車の前方に4人、馬車の後方に2人。馬車を操縦しているD班の2人組。
後方の2人を何とか出来れば弟と一緒に逃げれるのに。
「ねーた」
弟を振り返る。あれ?あの子何処言った?
この荷馬車荷物が多すぎて見えにくいんだよな。
荷馬車の中には、
封がされてる樽が4個
分厚い藁の束が2束
四角い木箱が8つ
大きなテント用の布が2枚
剣や盾、杖などが無造作に入れられている封が空いてる樽が6つ
ん?
…、良い事思いついたぞ。
*
「うわっ!」
「何だ⁉︎」.
後方で部下の慌てる声が聞こえた。それに続いて、荷馬車の荷がゴロゴロと落ちていっている音がする。落ちたのがゴミ同然の藁の束だったのは不幸中の幸いか。
敵襲か。賊か、魔獣か、敵国の残党兵か。
急いで後ろに下がると、部下共はテント用の布を上から被せられていた。我が軍の軍用テントには国章が縫われている。剣で斬る訳にも、魔法で燃やす訳にもいかなくて慌てたのだろう。部下の間抜けな姿に呆けていると、今度は木箱の塔が自分に向けて落ちてくるのが見える。待て、木箱だと?そっちには大事な物が結構入ってるんだが⁉︎
木箱を倒す瞬間小さい影が見えた。木箱の一番下の箱を剣の腹で持ち上げて倒したようだ。
…もう怒った。んのクソガキッ、大人を舐めるのも大概にしろよ⁉︎
とっ捕まえてやる。
ゴロンッ
ゴロンッ
ゴロンッ
ゴロンッ
樽が4つ転がり落ちてくる。さっきから馬車を止めるよう言っているのだが、馬が止まってくれないらしい。運が赤ん坊に味方したのか。それとも赤ん坊が何かしたのか。
天才児ってのはこういうのの事を言うのだろう。
だが、
「…これだ!」
4つ目の樽を受け止める。やはり中の重さが変わっていた。
馬車が止まってくれない以上、落ちた物を拾いには行けない。だが、このクソガキを逃すという最悪は免れた。
「おーっし。馬も早く帰りてーみたいだし、これ以上ガキの好き勝手にはさせねー。コイツには二度と悪さできねー用おれの前に乗せるわ。」
怒りで素の言葉使いが出てしまっているが、知ったことか。
樽からガキを引っ張り出して愛馬に乗せる。俺の愛馬はデカイから、赤ん坊なら落ちる=死ぬくらいの高さだ。
「ぐぅゔ」
「おっと悪ィな。強く結びすぎたようだ。」
あの木箱の中身は貴族連中の物だった。後で責任取らされる事を考えると、つい子供を強く縛ってしまったようだ。
まったく。ウチのジェイクもそうだが、近頃の子供ってのは迷惑ばっかかけるなぁ。コイツといい、ジェイクといい。それに比べて女の子はいいなぁ。悪戯なんて考えもしないんだから。本当、良い子ばっかりだ。
あ?
このクソガキは女の子じゃねーから。
あぁ、そう思うとコイツの弟は静かで割と良い子だったなぁ。姉弟の中身を替えると丁度良いのかもしれない。
…弟?
ち、ちょっと待てよ⁉︎
「おい、待て馬車!
コイツの弟は乗ったまま何だろうな⁉︎」
半ば暴走列車となりつつある荷馬車に追いつき部下にいう。すると部下は怪訝な顔をして、
「隊長が捕まえに行ったのではないのですか?」
…、、、
自分の前に固定した赤ん坊を見る。
まだ言葉は話せない見たいだが、分かるぞ何が言いたいか。
だがその顔は止めような。温厚な俺でも今すぐ殴りたくなる顔だから。
ドヤッ( ⊙‿⊙)