少女と青年と精霊と(仮題)   作:反転アイール

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タイトル詐欺が著しいなと。
青年と精霊いつ出るの???????(遅筆)


3:寝不足ノア/イド先輩

スターク先生に釘を刺された翌日。

いつも通りに登校していると、おーい、と後ろから呼びかけられた。

振り向くとノアが居た。登校のタイミングが被ったようだ。

ノアはニコニコしながら、私に話しかける。

 

「メルトおはよう!」

「はい、おはようございます。今日は随分と機嫌が良いですね」

「えへへ…昨日、魔具作りの調子が良くてね。これなら今日の魔法実技で試運転できそうだなってくらいまで完成したの!」

「いや早くないですか??相変わらず器用ですね…」

 

ノアは手先が器用だ。もうとんでもないくらいに。

彼女が使用している手提げバッグも自身で作ったのだとか。

「お母さんの手伝いをしているうちに上手くなったんだよね~」と照れながら言っていたことを思い出す。裁縫は彼女の誇れる技術の一つなのだろう。

ただ、その分構想を練るなどの作業は苦手としているようだ。昨日まで作成に悩んでいたのもこの辺が影響しているのかもしれない。

しかし魔具もささっと作り上げてしまうほどだとは…驚きである。

 

私の言葉を聞くと、ノアはきょとんとした顔になった。

 

「メルトだってこのくらいで作ってるでしょ?」

「いや確かに作ってますけども…私は内部構造が簡単なものしか作ってませんよ。動作補助の魔具なんて中々に複雑でしょう。私ならもっとかかります」

「うーん、メルトならこれぐらいできると思うんだけどなぁ…」

 

ノアは随分と私を高く見積もっているようだ。まぁ確かに私は優秀ではあるが。

定期的にイキり散らかすような輩への評価ではない気がする。中々にむず痒い。

この話題を続けるのも不毛なので、適当に話題転換をする。

 

「まぁそれは良いとして。そんな急ピッチで仕上げてきて大丈夫なんですか?隈、出来てますよ」

「あっ…ば、バレてた?」

「貴方の集中力の高さは知っていますからね、恐らく夜なべして仕上げたんでしょう?午後まで持つんですか?」

 

私の言葉にノアは苦笑いを返した。

彼女曰く、家の手伝いが終わってからずっと魔具作成をしていたのだとか。簡単な動作確認が行えるまでに仕上げ、一息つくころには朝だったらしい。びっくりである。

先程のテンションには徹夜明けの影響もあったんじゃないか?となんとなく思った。

とはいえ、その状態はあまりよろしいものではないだろう。

私ははぁ…とため息をついて、ばつが悪そうにしているノアに話しかけた。

 

「試すのは結構ですけど、寝不足で授業がおざなりになってしまえば元も子もないですよ。自分の身体はもっと大切にすることです」

「う…善処します…」

「お役所みたいな濁し方しますね貴方。まぁ、講義を寝過ごさないといいですね」

 

そう告げると、ノアはむむぅっと顔を顰めた。

相変わらず威圧感の欠片もない表情であるが。

彼女はしかめっ面のまま、私に反論する。

 

「め、メルトだけには言われたくないもんね!今日もどうせ午後はぐっすりでしょ!居眠り常習犯だし!」

「私の地元で昼寝は当たり前だったので良いんでーす。セーフセーフ。徹夜よりはよほど健康的ですしぃ」

「むむむぅー!」

 

ぷんすことノアが怒っている。頬を膨らませる様はフグのようだ。

指で彼女の頬をぷすりと突くと、ぽひゅぅと気の抜けた音がした。面白い。

笑いを噛み殺している私を見て、彼女は顔を赤くし「もう知らない!」とそっぽを向いてしまった。

どうやらふざけすぎてしまったらしい。

 

残りの通学時間は、ノアのご機嫌をとる時間になるのだった。

 

______________________________________

 

 

学院に到着してからは、いつも通りの講義が行われた。

今は3限目。歴史学の時間である。

今日は魔獣大戦争に関しての講義が行われている。

 

――――『禍』。1000年前に発生したとされる魔獣の大量発生だ。

原因は未だ不明であり、歴史的観点から見ても、この魔獣の発生はあまりに唐突で、ありえない事象であったらしい。

 

魔獣。私たち魔導士を除いた生物の中で、魔法を扱う生物の総称である。

彼らは無意識的に魔法を行使することで、様々な進化を遂げている。

 

例えばアンスレープ。四足の肉食獣であるコイツは、獲物を捕える際に肉体に強化魔法をかける。肉体には加速魔法、牙には硬化魔法といった感じでだ。結果として肉体の構造はその魔法を活かせる形状となり、牙は鋭く、肉体は空気抵抗を極力まで減らした形態となっている。

 

例に挙げたように、基本的には自分の長所を活かした形態として進化を遂げるのだ。

また、魔獣はあくまで自然現象として、環境のバランスを崩すことは行わない。それが結果的に食糧難などの災いとなり、自分の身を滅ぼすことを無意識的に理解しているからだろう。

 

しかし、『禍』においては魔獣の性質が双方ともに矛盾しているのだとか。

以前発掘されたアンスレープの祖先と呼べる魔獣の化石からそれは読み取れる。この生物は現在のアンスレープと異なり、飛翔に適さない翼が取って付けたかのように存在しており、また肉体の中心には広域殲滅を可能とする魔法発動体が存在していたのだ。

 

アンスレープは自身を強化する魔法には長けているが、形態的に飛翔に適しておらず、拡散性のある魔法は得意としていない。

これは明らかな矛盾である。

 

加えて、この時の魔獣は他の生物を見もせず、ただひたすらに人間だけを襲撃していたという文献が残っている。

まるで『何者かが意図的にそう仕向けたように』だ。

 

三英傑によって解決には導かれたこの事件ではあるが、上記のような不審点が存在するため、今現在でも議論は絶えない。当時の研究者の暴走だとか、魔獣の上位固体の発生だとか、様々である。

 

まぁ正直なところは私には分からないし、知ったところで「へー」で終わる話だろう。

そこら辺の議論は専門家に任せるのが一番である。

 

板書を写すのにも疲れてきたので、ちらりと横をみる。

ノアがうつらうつらとしている様が目に入った。徹夜テンションは2限目までが限界だったのであろう。この調子で午後の試運転まで持つのか疑問だ。

 

(午後、ですか。ふむ…)

 

板書写しに戻りながら、私は考える。

昨日のスターク先生の警告があった以上、流石に起きていないとまずいだろう。

ノアはこの調子であるので、昨日仕上げた魔具がどれだけ活きるかとなる。

 

かちゃり、と机から件の魔具を取り出す。あまり使いたくはないが、背に腹は代えられないだろう。これから常にこれで覚醒しなければならないと考えると、悲しくて涙が出そうだ。

 

ほろり、と涙が流れるのと同時に、4限目終了のチャイムが鳴った。

 

______________________________________

 

 

昼休みである。

 

爆睡していたノアを放置し、食堂へと向かった。そのうち来るだろう。おそらく。

ここの食堂では、王国内でも店を開けるような一流の料理人が腕を奮っているらしい。

初めて来た時には高貴そうな味に驚いたものである。まぁ正直に言えば、田舎民の馬鹿舌にはどの料理も等しく美味く感じるのだが。

 

また、運営費は学院が出しているため、一生徒でも気軽に赴ける。これは最大の利点だろう。私的にはとてもとってもすごいうれしい。夜にも営業しているとなお嬉しかった。

まぁその分自炊できるので良いのだが。

すごいイェムスタ魔導学院は、食堂もすごいのだ。

 

トレーに料理を乗せ、適当な席に着く。今日は麺の気分なので、ペペロンチーノを注文してみた。ピリッと効いたトウガラシとコクのあるニンニクが絶妙にマッチしている。結論として美味だ。

ニンニクの香りに関しても、私の体から発せられるフローラルの香りと打ち消されるのでプラマイゼロだろう。もしかしたらプラスかもしれない。優秀な人は体臭管理もバッチリなのである。たぶん。

 

「隣、良いかな?」

 

もしゃりもしゃりとパスタを頬張っていると、帽子を被った藍髪の少女が、トレーを持ちながら話しかけてきた。

イド・クウェング。イェムスタ魔導学院4年の魔具師である。

私が今年入ってきた1年生のため、彼女は3個上の学年の生徒ということになる。

 

特に断る理由もないので、むぐむぐと咀嚼しながらOKサインを出した。

彼女は「行儀が悪いな」と苦笑しながら私の隣の席に座った。どうやら彼女はビーフシチューを頼んだようである。昨日の私の晩御飯候補だ。ちなみに昨日はハンバーグを作った。

 

「どうだい?この学院には慣れてきた?」

 

昨日のハンバーグに思いを馳せながらパスタを啜っていると、イド先輩が話しかけてきた。

口に含んでいたパスタをごくん、と飲み込み、返答する。

 

「まぁ、まぁまぁ、うーんといった位かなと。学院生活自体には慣れてきたんですけど…どうもこの体質で、午後授業が出にくいんですよねぇ」

「やっぱりか、中々難しい問題みたいだね」

「改善できるのであれば早く直したいんですけどね…頼みの先生がアレですから」

「あはは…レブトア先生は研究に熱を入れすぎて暴走することが多いからね…」

「熱烈歓迎は結構なんですけどね…両手にメスやら怪しい薬やら持ってなければ」

 

彼女は、レブトア先生の研究室にて、先生の研究補助をしている一生徒である。

そして、私がレブトア先生に追いかけ回された際、無力化に協力してくれた生徒でもある。ここが非常に重要。

 

イェムスタ魔導学院では、上級生になると『自身の目標に沿った能力の研鑽』ということで、自身が「この人に学びたい!」と志望した先生の元に配属される。

そして、そこで得た知識を用い、卒業時に自分なりの研究成果を発表するのだとか。俗に言う卒業研究である。

先輩はレブトア先生が専門としている『魔導薬の開発』に興味を持ち、日夜調合や素材調達に励んでいるのだとか。

 

私が追いかけ回され、先輩や先生達が無力化する。この作業毎に顔を合わせているため、いつしか世間話をする程度の仲になったのだ。感謝感激である。

 

彼女はもぐもぐとビーフシチューを食べながら、私に話しかける。ちゃんと飲み込んでから話す辺り、お上品さを感じる。

 

「まぁ今度起きた時もボクが何とかするから、そこは安心してほしい」

「そういう所、最高に男前ですよね。惚れますわ」

「あはは、喜んでくれるなら嬉しいよ。ちょっと複雑ではあるけどね」

 

先輩はちょっと照れているようだ。

クソ良い人だなーと思いながら、残りわずかとなったパスタを頬張る。

もむもむ、と頬を膨らませて食べる私を見て、先輩は「気持ちの良い食べっぷりだね」と微笑む。

褒めても何も出ませんようふふ。

 

水を飲んで一息つくと、昨日、スターク先生に魔素注入器の使用許可を貰っていないことを思い出した。

提出用のテールランプもそうだが、昨日作成した魔具にもまだ魔素を注入されていないため、効力を発揮できない。

丁度いいので、先輩に注入を頼むことにした。

 

私の話を聞くと、先輩は二つ返事で了承してくれた。有難い。

提出用のテールランプに関しては、私本人の魔力を用いなければならないと規定にあったため、後日先輩が魔素注入器を借りてきてくれることとなった。

昨日作成した魔具も、ちゃちゃっと魔力を注入してくれた。「午後の講義時間くらいなら持つと思う」とお墨付きを貰ったので、準備は万端である。

先輩への借りがどんどん肥大化してはいるが。

 

今度お礼になんか奢りますと伝えると、先輩は「このくらい気にしなくて良いよ。また困ったことあったら、いつでも連絡してね」と返されてしまった。

 

世の中にはああいう善人も存在するんだなぁ、と思いながら、私はイド先輩と別れ、食堂を後にした。

今度差し入れでも渡そう。

 

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