少女と青年と精霊と(仮題)   作:反転アイール

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その場のノリで書いてるので、前回のラストにどう繋げよう…とかいつも困るんですよね…(ライブ感)
ちょっとずつ自分の執筆能力を高めていけたらいいな、と思ってます。


5:模擬戦闘/イーヴァンの追憶

グリム先生への叛意を高めつつ、彼女を指示を聞く。というか見る。今の私の表情は般若の如くであろう。周囲の生徒がじりじりと私から遠ざかっているのを感じるし。

 

毎日この爆音覚醒だと、正直『耳逝かないかなー?』とは思うが。

優秀なイェムスタ魔導学院は治療師も豊富である。

何でも、グリム先生が保健室へと連絡を入れてくれるらしく、私はこれから平日オールでチェックを受けることになるとか。有難い話ではあるが、貴重な放課後が削られて涙でもある。

レブトア先生へ訪ねるよりはマシだが。私の中における彼女の信頼はミジンコ並である。

 

因みに魔法実技に関しては補講の一回しか出ていないため、普通の授業としてはこれが初である。何気に。

 

グリム先生が描く術印を目で追う。

抗防班は今回、生徒同士1対1の模擬戦闘をするようだ。

『ペアは自分たちで決めてね~♪』とのことだ。あのファッキンクソ教師はさっきの状況を見ていたのだろうか。定期的に白目を剥いて痙攣する生徒なんて、私だったら絶対に関わらない。たぶん。

 

まぁ余った生徒と組むか…なんて考えていると、私の所へ金髪の少年が近づいてきた。非常に偉そうな面持ちをしている。

彼は何かぺちゃくちゃと私に話しかけているようだが、正直言って何も聞こえない。

何のためにグリム先生が術印を使ったと思っているのだろうか。正直睡魔で先程の指示を聞くのも精一杯ではあったのだが。

 

はぁ、へぇ、ほえ~、すげぇ~と適当に相槌を打っていると、何故か上機嫌になった彼は、私を連れて演習場の一角へ移動した。どうやら私との模擬戦を求めているらしい。

珍しい子もいるのねぇ…と思いながら、構える彼に対し私も準備をする。

 

ジジ…と手首の腕輪型魔具を起動させる。それと同時に、朱色の光が私の周囲に漂い始めた。

彼も術式を発動させたようだ。周囲に紫電が迸っている様子が見て取れる。

 

お互い静かに構える。聴こえる音は相変わらず喧しいが。

私の午後授業初となる魔法戦が、雷鳴と共に幕を開けるのだった。

 

 

容赦なく襲い掛かる雷撃を紙一重で回避する。

どうやら彼は雷魔法を得意としているようだ。魔法の構成速度が非常に速い。

 

雷魔法は完成してからの着弾速度・威力が非常に強力な魔法だ。

雷の速度は平均して200km/sを誇る。加えて、落雷時の電流は低いものでも1000アンペア程度。0.1ミリアンペアでも死に至る人間にとっては、非常に大きな脅威だ。

とはいえ、この話はあくまで自然現象での落雷の話である。これを魔素で再現するとなると、緻密な術式とそれを描くための大量の魔力が必要になる。そのため、基本的にはある程度ダウングレードした術式を用いて発動するのが一般的となっている。そもそも授業で人死にが出たら大きな問題であるし。

 

故に、彼が初撃で放った雷撃は殺傷能力を極力まで削ったものだと判断できる。当たっても痺れて失神する程度だろう。行動不能にできるという点では、それも十分に脅威ではあるが。

ただ、その分着弾速度を速くしているようだ。危うく開幕でノックアウトされる所だった。あぶない。

 

回避されるとは思っていなかったのだろう。彼は一瞬呆気に取られつつ、すぐに気を引き締めて次弾の雷撃を発射した。

その数は3。それぞれが異なる起動を描き、私へ接近する。

 

左右にステップし回避しながら距離を詰めようとすると、今度は5つの雷撃を私に放ってきた。どんどん難易度が上がっていくようだ。つらい話である。

同じように回避すると、彼は興奮したような表情を向けてきた。楽しそうで何よりである。

 

雷撃の数が10に増えた。体を捩じりながら避ける。瞬間、危険を感じたのでその場を飛び退く。ちらりとその方向を見ると、私が先程居た地面が槍のように盛り上がっている。

地創魔法も使えるようだ。頭が痛くなる。

 

地創魔法は地面を変形・隆起させる魔法だ。

極めると大地震を引き起こしたり、地中の物質から強力な武器を創造したりできるとか。

すごい話である。

 

しかし、雷魔法と地創魔法をこの年齢でここまで扱うとは…

彼は全く疲れたような気配を見せていない。内包魔力も相当のようだ。

敬意を持って天地くんとでも呼ぶことにしよう。

 

どうでも良いことを考えながら、雷撃と地面からの攻撃を回避する。

魔法の密度はどんどん高まっているため、全く近づくことができない。

そろそろ魔具の制限時間も近いし、一旦距離を取ることにしよう。

 

私は一瞬の隙を突き、大きく飛び退く。その瞬間、淡い光を放っていた腕輪から光が失われ、

私の周囲に漂っていた朱色の光も消失する。

 

私の愛用しているこの腕輪。これは刻んだ術式の効果を、魔石を動力源として起動する魔具である。因みに、術式の内容は身体強化魔法となっている。

 

私は魔素適性が絶望的に低いため、自身の魔力で術式を描き、魔素を注入するプロセスを行うことができない。そのため、基本的に発動体を魔具で代用している。しかし、魔素注入型の魔具であると、一回内部の魔素が枯渇した際、外部から魔力を再注入しなければならない。

 

そのための魔石である。コレは、文字通り魔素が注入された石であり、動力源として様々な場所で扱われている。所謂電池のようなものだ。

基本的に質を問わなければ安価であるし、魔具に付け替えるだけでいい。何なら他人に頼んで使用後の魔石に魔力を注入して貰えば再利用もできるなど、ナイスな代物なのである。

余談だが、私はノアに頼んで魔素を再注入してもらっている。最近愚痴が多くなってきたが。

 

腕輪の使用済み魔石を取り出し、新しいものと付け替える。ヴン、という音と同時に腕輪が光り輝き、再度身体強化魔法が展開される。

瞬間、雷鳴が鳴り響き、さらに密度の高まった雷撃弾幕が襲い掛かった。

その数は50を超える。未だ底は尽きていないらしい。すごい笑顔してるし。

 

屈み、捩じり、跳び、その悉くを回避する。

 

私が避ける毎に天地くんのテンションは上がっているようだ。それは良いのだが、その毎に魔法が強力になるのは非常にいただけない。普通にしんどい。

 

と、ここで急に攻撃が単調になった。先程までは非常にいやらしい位置に飛んできていたのだが。

天地くんを見ると、どうやら別の術式を構成しているようだ。それも、かなり大規模な術式である。

ここで決めようとしているのだろうか?

 

何にせよ打たせるわけにはいかない。ヤバそうだし。

雷撃の弾幕が薄くなった瞬間を見計らい、接近のために大きく片足を踏み込む。

 

刹那。

ずぶり、と足が地面に埋まった。

 

「…ッ!」

 

やられた。

下を見る。そこには泥に埋まる私の右足があった。

魔石交換の刹那で構成していたのであろう。随分な戦闘センスである。

もう片方の足を地面に叩き付け、強引に抜け出した。

しかし隙を見せてしまったのはかなり大きかったようで。術式は完成してしまった。

 

彼の背後に発生した巨大な砲塔。

 

(うっそ)

 

そこから放たれた大規模な雷撃が、私に直撃した。

 

______________________________________

 

メルトが天地くんと呼んでいた少年―――イーヴァン・テッラはメルトのことを非常に高く評価していた。

彼は王国有数の貴族、テッラ家の長男として生を受けた存在である。

生まれに恥じない才能を持った彼は、自身の更なる研鑽のため、ここイェムスタ魔導学院へと入学した。

学んだ知識をスポンジのように吸収し、自身の鍛錬も欠かすことはない。

まさに『努力する天才』と言えるだろう。

 

ただ、そんな彼にも悩みはあった。

 

同級生の中で、誰一人彼に匹敵する者が存在しなかったのだ。

 

当然、入学当初は魔具作成能力など、他人より劣っている点はあった。

しかし、彼の不断の努力と先天的才能は、驚異的な速度でその差を縮めてしまう。

結果として、入学して2ヶ月足らずで大半の生徒の能力を追い抜いてしまった。

 

未だに自身の能力より高いものは確かに存在する。だが、そのような存在は皆、自分を恐れていた。理解できない存在を見たように。

そして、自分に技術を抜かれた者は諦観の表情で自分を見ていた。

『彼は優秀だから、私とは違うから、しょうがないだろう』

そんな目で。

 

先達には未だ及ばない身であることはわかっている。だからこそ。

だからこそ、お互いに高め合えるような、そんな存在が欲しかった。

 

そんな時、メルト・アーメンテラスと出会ったのだ。

 

彼女を初めて見た時、随分と不思議な生徒だなと感じた。

真面目でいるようで不真面目。自尊心の塊のようで謙虚な一面もある。

掴みどころのない存在だなと思った。

 

しかし、日を追うごとに彼女の能力の高さを思い知らされた。

午前中に存在する科目の評価で、並ぶことはあれど、勝つことは1度として無かった。

追いつけないのだ。この自分が。

自分と同じ年で、更なる高みを持つ者が存在したのだ。

 

それが、途方もなく嬉しかった。

 

今回、彼女を誘ったのも「彼女なら、あるいは」という期待があったからだ。

魔法を用いた戦闘は自分が最も得意としている分野。

だが、もしかしたら、と。

 

彼女は全く物怖じしていない様子(実際には睡魔と爆音で会話どころではなかっただけだが)だった。

逸る気持ちを抑えられず、彼女を連れ、開けた地点へと移動した。

ここならば十全に魔法を使えるだろう。

 

そこからは、驚きの連続だった。

自分の放つ雷撃を障壁で防ぐのではなく、悉く回避している。

それも発動しているのはあの腕輪による身体強化魔法のみ。

自分の予想を遥かに上回っている。

 

「は、はは……ははははははははははははははッ!!!!」

 

思わず笑ってしまう。

魔法戦闘における実力の読めない彼女に対し、どこか手加減する心もあったようだが。

今、そんなものは杞憂だったと理解した。

全力でいこう。

 

この一撃で終わらせる――――ッ!!

 

「術式充填」

 

時限式で起動させた泥土。それに足を取られている彼女へ、今の自分が用いることのできる最大・最強の魔法を放った。

 

ジジ…バチッ…と電気が弾ける音のみが聴こえる。

 

(…当たった、はず)

 

肩で息をしながら、彼女が居た一点を見続ける。

 

連鎖増幅・破雷砲。

魔法で生み出した雷をぶつけ合い増幅。それを圧縮し、指向性を持たせて発射する術式だ。

その威力は先程の電撃の比ではない。

直撃すればひとたまりもないだろう。

 

前方には砂埃が未だ舞っている。だが、酷く静かだ。

 

(…勝てた、のか)

 

思わず肩の力を抜く。

随分とあっさりした終わり方だな、などと拍子抜けする気分だった。

それと同時に冷静な思考も戻ってくる。

少し熱くなりすぎてしまったようだ。彼女は無事だろうか。

あの術式は流石に過剰な攻撃だったように思える。

「治療師を呼ばないと不味いか…」などと、思考が逸れた。

 

 

『そこ』だった。

彼の敗因は、最後に気を抜いてしまったことだろう。

 

気づいた時にはイーヴァンは地に伏していた。

 

(…な……に…?)

 

彼が最後に見たのは、メルトが自身を見下ろしている姿だった。

それに何処か安堵する気持ちと同時に、イーヴァンは意識を失った。

 

______________________________________

 

 

イーヴァンを見下ろすメルトは、無表情ながらも内心で悶え苦しんでいた。

 

(いたい)

 

最後のビームは確かに私に直撃していた。正直言ってあの威力は反則だ。並の魔導士なら死んでいたかもしれない。私も優秀じゃなきゃ死んでいた。びりびりする。

あの魔法が直撃する瞬間、私は特に何をしたわけでもない。

 

ただ耐えただけである。

 

えぇ…?となるかもしれないが、正しく事実なのである。

私の地元であるラムシアの民は、昼寝をするだけの存在ではないのだ。

というか、そうだったら都会へ出稼ぎに行くラムシア民とか、ただ毎日昼寝するだけの無能カスゴミ集団になるだろう。クビ不可避である。

 

ラムシア民は、非常に肉体が強靭なのだ。何故か皆そう生まれてくる。

そのため、魔法がさほど使えずとも前線で活躍する人も少なくない。戦闘民族なのか??

これは昼時の睡魔と同様に研究が進められているが、未だに原因が判明していない。

因みにこのせいで風邪は引かないが薬も効かない。

睡眠改善薬などが存在していないのもこの影響である。ゆるせぬ。

 

(まぁ、今回は助けられましたけど…)

 

このおかげで鼓膜もまだ生きているし、何かと便利ではあるのだ、一応。

流行り病に罹らなかったり、体育でマウント取れたりと。

 

まぁそんな訳なので、さっきの状況は一言で片付く話だ。

 

ビームを耐えて油断したところをぶん殴った。

 

以上である。正直被弾レベルでアウトになる形式の試合だったら負け確だった。

まぁ勝ちは勝ちなので、ノア辺りにイキるとしよう。

 

それにしても、ぷすぷすと焦げたこの運動着はどうすれば良いのだろうか。

所々から肌が露出しているし。

サービスショットを提供する分には別に構わないが、今後ずっとこのボロ着となると流石に困る。無料で替えを購入できたら良いのだが。

 

ふらふらとしながら終わったことを告げようと、グリム先生を探す。

彼女は入口の方でノアと話していた。居ないと思ったら、遅刻していたようだ。

忠告の通りになるとは…彼女はエンターテイナーの素質でもあるのだろうか。

 

びゅう、と風が吹く音が聴こえる。この格好なので、まぁまぁ寒い。

ちゃっちゃと着替えたい。そう考えたタイミングで、違和感に気づいた。

 

風の『音』が聴こえている。私の耳には爆音魔具くんが付いていたはずなのに。

 

嫌な予感がして下を見ると、天地くんの横に、半ば破壊された魔具が転がっている。

未だに魔力が含まれた状態かつ、中途半端に術式が削れた状態で、だ。

 

「あっ」

 

瞬間、暴走した術式によって爆音が響いた。

どうやら今の私にそれを近くで聴く体力は残っていなかったようで。

 

締まらないな…と思いながら、私は泡を吹いて気絶した。

 

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