インフィニット・ストラトス 火力と愛と絆と for another answer 作:ディニクティス提督(旧紅椿の芽)
「もう二月か…………早いなぁ、時が経つのって」
二月の中旬。
「よし、勿体無いけど暖房をもう一段階上げてーー」
「ねえ、一夏ー、今いる?」
暖房をもう一段階上げようとした時、廊下の外から声が聞こえた。というか、この声の該当者なんて一人しかいない。
「おう、シャルか。中に入ってきていいぜ」
俺の嫁さん、シャルだ。いや、まだ結婚とかはしてないんだがな…………どうも企業連のノリに乗せられて、もう結婚しちゃった事になっちゃってる。シャルの父親のアルクロイドのおっさんだって、もう婚姻届出してきちゃったし…………歯止めが聞かないったらありゃしない。
「う、うん。じゃ、お邪魔しまーす」
「別にかしこまらなくてもいいんだぞ? 元ルームメイトだし。それで、今日はどうしたんだ?」
「実はね、一緒に買い物に付き合って欲しいなーって」
すまん、シャル。俺今日は出かける気なんて思いっきり無いんだよ、寒すぎて。埋め合わせはなんとか考えるからさ。とりあえず、拒否の意思を示そうかと視線をシャルの方へと向けた。
だが、その瞬間思考そのものが吹き飛んでしまった。現在シャルが着ているピンク色のセーター。フリルがあしらわれた濃いピンク色のスカート。後は白のハイソックスとローファー。…………ダメだ、拒否の意思を示す事ができん。もう、出かける気満々じゃないですか、シャルロットさん。
「ダメ、かな?」
少し上目遣いで此方を見つめてくる彼女。俺の今日の気分は、それにより見事破壊された。てか、あれを見たものは最後、拒否とかできねえって。したらしたで、地獄を見る。そして、俺が殺されるだろう…………物理的にも、社会的にも。
というか、今のシャルの服装ってーー前、龍之介に見せてもらった本に書いてあったんだがーー甘えん坊キャラが着る様な服装らしい。つまりは、拒否出来ない。
「…………五分待ってくれ。準備するから」
「う、うん」
シャルが部屋を出た後、外から「やったー♪」と聞こえてきたが、気にしない気にしない。俺も喜びの咆哮を上げていたからな。
…………その咆哮を聞いた千冬姉の折檻があったのは言うまでもない。
「んで、まず何処に行くんだ? 全然俺は知らないんだが…………」
「まずは雑貨屋かな。いろいろと買っておきたい物もあるし」
という事で現在、駅前にある大型ショッピングモール『レゾナンス』にきている。休みの所為か、心なしか人が多い気がする。まぁ、気にしたところでどうしようもないが。
シャルは、流石に寒いと判断したのかコートを羽織っている。気温8度。俺にしちゃ寒いかもしれないが、東北とか龍之介の故郷北海道とかはもっと寒いんだろうな。それを考えたらあったかくなってきた。でも、俺は脚もあったかいからいいとして、シャルは相当寒いかもしれん。コートを着ていても、覆いきれず生脚が露出している太腿などは冷たくなってるんじゃないか? かなり心配だ。
「ど、どうしたのかな? いきなり見つめてきちゃって?」
「いや、そんなに脚出してて寒く無いのかなー、ってさ」
「別にそんな事はないよ。結全然寒くなんてないし…………それに」
「それに?」
「こうして、一夏が手を握ってくれているから物凄くあったかいんだ」
えへへ、とシャルは笑う。俺もその笑みにつられて「そっか」と返したのち、笑みをこぼした。まぁ、手を繋いでいるのは、はぐれちゃわないようにするためだ。ほら、シャルって天然なところあるし、ちょっと子供っぽいところもあるしさ…………。
「むぅ…………なんか、今バカにされたような気がする」
…………思考を読まれた。つくづく思うんだが、俺の思考って読まれやすいのか? シャルにしろ、千冬姉にしろ、龍之介にしろ、箒にしろ…………俺の思考を読んだ奴を挙げて行ったらきりが無いぞ。何故だ、俺にはよくわからん。
「いや、誰もそんな事言ってねえし…………それよりも、早いとこ行こうぜ」
「そうだね」
俺たちはまず最初の目的である、雑貨屋「シャドーモセス」へと入って行った。…………なんだろう、店名から危険な匂いがしてきたんだが…………気のせいなのだろうか?
「結構買っちゃったね。というか、一夏の買ったそれ何?」
「これか? なんでも核搭載二足歩行戦車のロゴが入った、ここ限定のボールペン。俺のはREXって書いてある」
シャドーモセスを出た俺たちは次に何処へ行こうかと迷っていた。と言うのも、あの雑貨屋、小物から軍用レーション、挙げ句の果てにはアウターヘイブンとかと言うVIPエリアもあった。そう言う事でで大概必要な物は買い揃ってしまった訳だ。俺は無駄な物を買ってしまったような気がするが…………。ボールペンって、使うときあんまり無いよな。
「次何処へ行く? 俺には特に行く当ても無いしな…………」
「僕も買いたい物買っちゃったしね」
手詰まりだな。本当にどうしようかと思っていた時、シャルが何かを思いついたようだ。
「そうだ、城址公園に行ってみようよ」
「城址公園? なんでまた?」
「そこに、美味しいクレープ屋さんがあるんだよ。せっかくだし、ね?」
城址公園か…………あんまり行った事なかったしな。せっかくだし、行ってみるか。
「おう、俺は構わないぜ」
「じゃ、早く行こう‼」
「うおっ⁉ 突然引っ張るな‼ バランス崩れる‼」
俺が許可した途端、俺の手を取り、シャルは走り出した。俺もそれに引っ張られる形で、連れていかれた。てか、荷物持ち俺なのかよ⁉ しかも、両手⁉
城址公園まで行くのに一時間とはかからなかった。意外と駅前から近い事がわかった。城址公園とはいう物の、城あとなんて物はほとんど残っておらず、広大な敷地が広がるだけだ。って、もう城址公園とは言えなくね?
「一夏こっち、こっちだよ」
「走るなって…………はぁ、はぁ…………荷物持ちながら走るのって大変なんだからさ」
「早く、早く」
「って、全然聞いてないし…………全く、仕方ないな」
子供の様にはしゃぎ回るシャル。そんなに楽しみなんだろうか。
てか、荷物持ちながら追いかけるのって疲れるんだな。体のバランスが取りにくくなるって言うか、走りにくい体勢で走っているからなのか、その辺はよくわからんけど。
「ここが、そのクレープ屋さんか?」
「そうだよ。前に、ラウラと一緒に来たんだ」
シャルの後を追いかけてたどり着いたのは、海沿いにあるクレープ屋の屋台。夕暮れに近い所為なのか、それとも人が少ないのか、少し物寂しい感じがするな。
「あ、すいません。ストロベリーとブルーベリーを一つずつ下さい」
「おう。お嬢ちゃん、ちょっと待っててくれよ」
イチゴとブルーベリーか。もしかして、シャルは二つ食べる気なのか? 別に悪いわけでは無いんだが、何だか俺の苦労が報われない感じがするぜ…………。
店主が少し含み笑いを見せたのだが、あれにはどういう意味があったのだろうか。気になる。
「はい、ストロベリーとブルーベリー、お待ちどうさん。焼きたてで少し熱いから、気をつけてな」
「はい、ありがとうございます。一夏、向こうのベンチに行こう」
「お、おう」
俺はいわれるがままに、海が一望できるベンチに腰をおろした。ふう、やっと一息つける。なんだかんだで、歩き続けるのは疲れた。途中、走ったし。
「はい、一夏。ブルーベリーの方で良かった?」
どうやら、二つ食べる気はなかったようだ。俺はブルーベリー味のクレープを受け取った。焼きたてだったため、少しは冷めてしまったかもしれないが、それでもほんのりと温かい。
「どれ、じゃ早速」
クレープを一口かじる。普通なら少し硬くなっている皮が、モチっとした感触で舌触りが良かった。あと、中にあるブルーベリーソースも程よい酸味と甘味が出てて、食べやすい感じがした。次の一口も直ぐに食べたくなって来た。
「これ、美味いな」
「でしょ? ここ、ちょっとした噂のあるクレープ屋さんなんだってさ」
噂? それは一体どんな噂だよ、と突っ込みをいれながらまた一口、口の中へ入れていく。すると、シャルが此方を見ていた。
「ね、ねぇ、そっちのクレープ、一口くれないかな? ブルーベリーの方も美味しそうで…………」
「ああ、そういう事か。いいぜ、代わりにストロベリーの方も一口くれよ」
「本当⁉ …………よし、作戦成功‼…………」
シャルが何かを呟いた様だったが、小さすぎて聞こえなかった。まあ、気にしてもしょうがないだろう。
「ほら、先に一口いいぜ」
「じゃ、お言葉に甘えて」
シャルはクレープを一口かじった。なんだかそのシーンが、小動物っぽく見えて、脳に焼き付いてしまった。…………正直、とても可愛かったぜ。
「こっちも美味しいね」
「んじゃ、俺も一口」
シャルが差し出して来たストロベリーのやつを本当に一口だけかじる。多く取ってしまうと、申し訳ないからな。
ストロベリーの方も、柔らかい甘味で、口当たりがとても良かった。…………こんな風に言ってると、グルメリポーターに思われそうだ。
「こっちも美味いな。ここに来て正解だったかもしれない」
「よかった。今度ここに来た時は一夏と一緒に食べたかったもん」
「俺? なんで? もしかして、噂とかと関係あり?」
「それはね…………秘密だよ♪」
「なんだそりゃ」
そんなこんなで他愛も無い話をしているうちに、互いのクレープもなくなった。よし、そろそろ帰りますか。っと、その前に
「シャル、こっち向いてくれ」
「え?」
「口元にソースがついてたぞ、ほれ」
彼女の口元についていたクレープのソースを拭き取った。そうしたら、突然顔を赤くしてしまったのだが、風邪じゃないよな?
「それにしても、今日は楽しかったね」
「そうだな。外に出ないつもりだったけど、出かけてみると楽しい事もいっぱいあるんだな」
帰り道。さっきまで明るかった空も段々暗くなり、街灯がつき始めた。少し寒さも出て来た様だ。その証拠に吐く息が白い。
にしても、今日は楽しかった。出かけて良かったと思っている。ん? あんなに出かける気がなかったやつがそういう事を言うな、って? 細かい事は気にしなくていいんだよ。
「でも、この雑貨ってかなりあるけど、一体何を買ったんだ?」
「え⁉ ちょ、見ないでよ‼」
「お、おう、すまん」
人の物を勝手に見るのは万国共通ダメな様だ。シャルがあそこまでいう物だから、見られてはいけないやつだったか? それだったら、失礼した。
(な、中身をまだ見られてないよね?)
「そ、そんなに見られちゃいけない物だったか?」
「そうだよ。特に一夏にはダメ」
シャルが反抗期になった…………、と一夏がぶつくさ言っていた。いや、僕は反抗期じゃないからね。多分、とっくの前にすぎたはずだからね。
でも一夏のその様子は、僕にとってなんだか少し面白く映っていた。その時は少し油断していたんだと思う。
歩道と車道の境目の段差で踏み外してしまった。
「きゃっ‼」
そのまま転ぶ僕。幸いにも人通りは少なく、見ている人もほとんどいなかった。やっぱり目立つんだろうなぁ、黒髪が多い中で金髪が転ぶのって。
うぅ、なんだか左足の方が冷たいよ…………もしかして、靴、脱げちゃったのかな?
「お、おい、シャル。大丈夫か?」
「う、うん。大丈夫だよ、平気平気」
そう一夏に言って、足元の方を見る。近いところに脱げたローファーは転がっていた。特に破れたりとかはしてないようでよかった。僕は、それを履きなおそうとしてしゃがんだ。
「痛っ⁉」
ローファーに足を入れようとした時、突然足首が痛んだ。もしかして、足首挫いちゃったのかな。
「おいおい、大丈夫かよ…………さっきので足挫いたんじゃないか?」
「そうみたい…………」
「歩けそうか?」
「…………ちょっと、それはわかんない」
ど、どうしよう。痛みに耐えながら帰る事もできるかもしれないけど、一夏に迷惑かけそうだし、タクシーを拾おうにも全然見当たらないし…………どうしよう。僕って、運とかないのかな…………?
「ほら、乗れよ」
「え…………?」
どうしようかと考えている僕に、一夏は自分の背中を叩いて何かを伝えようとしている。
「流石に足挫いたまま歩くのは辛いだろ? だから、おんぶしてやろうかなー、ってさ」
いやいや、流石にそれは恥ずかしいでしょ? 高校生になってまでおんぶとか、目立つよ絶対。
それに、一夏には負担をできるだけかけたくなかった。
「大丈夫だよ、ほら立てるしーーっ⁉」
立てる事を証明しようとした物の、思った以上に痛んだためその場に座り込んでしまった。多分、歩くのは無理みたいだ。
「こら、怪我してるんなら無理すんなって。ほら、乗れって」
「それじゃ…………お願いします」
結局、一夏におんぶしてもらうという事で、なんとか解決はした。でも、僕はとても申し訳ない気持ちでいっぱいだった。自分から誘っておいて、自分だけ楽しんで、そして相手に迷惑をかけてしまった。こんなに自分勝手な僕なのに、なんで一夏はこんなにも優しくしてくれるのだろうか。
「シャル、俺からおんぶしてやると言ったけどさ、荷物持ってくれないか? あと、靴は脱いでおいてくれ、頼む 」
「う、うん…………」
僕は一夏に言われた通り、怪我してない方の靴も脱ぎ、余っていたビニール袋に両方を入れた。あと、一夏から買った物を受け取ってそれを持つ。これくらいはなんともないよ、一夏に比べたらね。
一夏の背中に揺られながら、帰り道を歩いていく。実際、歩いているのは一夏だけなんだけどね。
「ごめんね、一夏…………」
「ん? 何がだ? シャルは何か俺に悪い事をしたのか?」
「だって…………本当は今日は出かけたくなかったんでしょ? それを僕が無理やり連れてきちゃったせいで…………」
そこまで言った時、一夏が「そんな事はない」って言った。
「だって、今日出かけられなかったら、あの雑貨屋で買い物も出来なかったわけだし、城址公園で二人でクレープの食べさせ合いも出来なかったんだし、今日は出かけられてよかったって思っている。それも、お前が俺を誘ってくれたからさ。お礼を言いたいくらいだ。それに」
「それに?」
「こうやって、シャルをおんぶする事だって出来なかったかもしれないしな」
一夏はそう言って、笑った。そうしたら、僕の心の内にあった不安とかそう言ったものが、フッと消えて行った。そうだ、一夏はこういう人間だ。いつも、人が悩んでる時には嵐のようにやってきて、それ以外の時は森の奥へ逃げるリスみたいに掴みにくく、それと言って温かい風のように心を癒してくれる、そんな人だった。
いつの間にか、僕は一夏を抱きしめていた。別に、一夏は苦しんだりしてないからいいとは思うんだけどね。
(一夏の背中…………あったかいな)
もう少しこの温もりを感じていたい、そんな事を考える自分がいる。気がつけば、もうモノレールの駅まで着ていた。
「おし、着いたぞ。流石にモノレールには、きついからな」
「わかってるって。一夏、ありがとう」
僕は、一夏の背中から降りて駅のホームに立つ。うぅ、やっぱり靴下のままで地面に触れると冷たいよ。それも、ここコンクリートだし。急いで靴を出し、それを履く。左足の痛みも少し引いてきた。これで、なんとか歩ける。
「そりゃ、どういたしましてだな。怪我の方はどうする? 医者に見てもらうか?」
「部屋に医療用ナノマシンカプセルがあるから、それにしておくよ」
「ああ、あの企業連のあれか」
ナノマシンカプセルって効果かなりあるんだよ。痣とかも二時間程で消えちゃうんだから。挫いた程度の事なら、二日もあればなんとかなるだろう。
「あれの効果はすごいからね。あ、一夏」
「ん? なんだ?」
「二日後、楽しみにしててね♪」
「どういう事だ、そりゃ」と言ってきた。あと残りは二日。しっかり頑張らないとね‼
二日後ーー
「おーい、シャルー。呼ばれたから来たぞ」
「いいよ。中に入って来て」
主から入室の許可を得たので、中に入らせてもらう。前に来た時は特に何も変哲も無かったが、今は枕が変わっていたり、ベットカバーのデザインが変わっていたりしてた。やっぱり女の子なんだなー、と思った。
俺はベットの方に座らせてもらった。
「おう、んで何の用なんだ? 突然呼び出したりなんてしてさ」
「う、うん。と、ところで今日って何の日なのか知ってる?」
「二月十四日…………バレンタインデーか?」
「そう。だ、だからね」
ん? なんでシャルはそんなにモジモジしてるんだろ? それに心なしか頬がほんのり赤い。
「は、はい、これ。昨日作ってみたんだけど、上手くいかなくて…………。それでも、受け取ってくれるかな?」
ま、待て。状況の整理が追いつかない。これって、バレンタインチョコでせうか? 男の夢とも言える代物でしょうか?
…………マジだぁぁぁぁぁ‼ 最愛の人からバレンタインチョコをもらった俺のテンションは一気にメーターを振り切り、アサルトアーマーが起動してもおかしくない状態だ。やべ、嬉しすぎて涙出てきた。
「ちょ、一夏⁉ な、何で泣いてるの⁉」
「…………嬉し涙だよ。ところで早速開けてもいいかい?」
「うん‼ もちろんだよ‼」
俺はリボンをほどいて箱を開ける。中にはハート型のチョコが五つ入っていた。上手くいかなかったとか言ってるけどさ、凄く上手にできてるぜ。ハート型って何気作るの大変だからさ。
「おお…………‼ 美味そうだ」
「もちろん、食べてもいいよ」
という事なので、一つ口の中に入れる。甘さが控えめなんだろうが、ほどよい苦味がそのほのかな甘さを引き立てていて、とても美味い。そっか、あの日の買い物はこのためだった訳か。
「うん、美味いぜ、シャル」
「よかった…………そう言ってもらえて、僕は嬉しいよ」
「どれ、じゃもう一つーー」
「ちょっと待って。一夏、一回目を閉じて」
「あ、ああ」
俺はシャルに言われたとおり、目を閉じた。一体何を始める気なんだろうか。
「い、いいよ」
ん? なんか声がこもっているように聞こえるぞ。何故だろう。それを確認する事を兼ねて目を開けた。
だが、そこにあったのは、
「た、食べていいよ?」
あからさまに桃源郷であった。ベットの上に四つん這いになったシャルが、チョコの端っこを咥えて俺に食べさせようとしているではないか。しかも、四つん這いという体勢上、何故かセーターからは肩口は見えるし、胸の方もギリギリだ。スカートの方からは美しい脚が見える。もし、足元の方がハイソックスで隠れてなければ、俺は死んでいたかもしれん。さらに、その上目遣い。明らかに反則です。
「そ、それじゃ、いただくぜ」
無論、断るなんて事は出来ず、俺は咥えているチョコを手で取らずに直で食べた。その時、自然と物凄く近い距離で視線が合い、互いに恥ずかしさが臨界点を突破した。
とにかく、この二月十四日は忘れる事が出来ない、それだけ俺の記憶にはしっかりと焼き付けられた。ほんのりビターなチョコと共に。
最後のシャルは、カレンダーのやつを思い浮かべてもらえると想像しやすいです。