インフィニット・ストラトス 火力と愛と絆と for another answer   作:ディニクティス提督(旧紅椿の芽)

2 / 2
02.イセカイ

「ふぅ…………」

「な、なんだよ、龍之介。突然溜息なんかついちまって…………」

「いや、まぁな…………あれがあれでこうなんだよ」

 

おっす、おら龍之介…………って、ネタに走っている場合じゃない。現在、俺は相当鬱です。別に箒達が出かけてて、野郎が一匹いるのがホモホモしくて嘆いているわけじゃない。てか、一夏がホモォじゃなくてよかった。

 

「…………おい龍之介、俺の説明日に日に酷くなってないか?」

「メタ発言あざーす」

 

というか、今日が何の日なのか知っている人は少ないだろう。明日は七月三十日、俺の誕生日だ。それは嬉しい、それは嬉しいんだ。嬉しいんだよ、あれさえなけりゃ!

 

「とにかく、明日はお前の誕生日なんだから、主役はビシッとしろよな」

 

一夏は背中を叩いて活を入れてくるが

 

「いいよな、お前は。変態共のプレゼントという名の実験に使われなくて」

 

完全に僻んだ俺にはなんの意味もなさない。

 

「じ、実験て…………そんな事する筈ーー」

「…………」

「え、マジなの、それ」

「聞きたい?」

「いや…………遠慮しとく」

 

一夏が完全に俺の愚痴を聞いてくれなさそうなので、一人でブツブツ言わせてもらおう。

確かにさ、プレゼントを貰うのは嬉しいんだよ。親父やお袋はいい物をくれるし、企業連の皆は普通に祝ってくれる。ーー裏を返せば、普通じゃない祝い方をしてくる変態共もいるわけだ。

それが俺や一夏の機体を開発した超弩級変態技術開発部『第零課』だ。奴らの祝い方は普通に考えると、脳がいかれてんじゃねえのかってレベルの祝い方だ。

まず始めに祝い用のクラッカーがカール・グスタフM5だろ。この時点で何かがおかしい。一度だけグレネードキャノンでやらかして、親父に怒られた事があるから反省しているが、それでも十分イカれてる。

次に飯だ。会食用に出される食事は、各部署が持ち寄ってやる物なのだが、第零課は牛の枝肉を丸っと持って来て、現場で捌く。そして、目の前で焼いて食わせる。そういうやり方だ。一見楽しそうに見えるが、血抜きが不十分なのか、血が床に滴っているのだ。軽いホラーだぜ。

続いては、演し物だ。無論キサラギと共同しての、AMIDAを使った阿弥陀踊り。シュールだ。だが、これは比較的まともなやつ。まぁ、端から見れば変態以外なんでもないがな。

そして一番問題があるのが、誕プレだったりする。第零課フルハンドメイド品だから。何かを作っては俺で実験しやがるからな、あいつら。

去年は『主任! このコジマランチャーを差し上げます!』といって、榴雷のプライマルアーマーが消滅寸前になった。

一昨年は『主任! このカメレオンスーツ(完全なステルス迷彩)をあげるでゴワス!』といって、完全に持て余した。

ほかにも『サイコフレーム』だの『T結晶』だの『パラジウムリアクター』だの、なにに使うんだこれ? みたいなレベルの物を貰っている。うん、実際にほぼ使い道が無いに等しいんだが。まぁ、あいつらも本気でくるから嬉しいっちゃ嬉しいんだがな。

 

「だろうな。だから毎年、俺の誕生日は嬉しいのと恐怖の半々…………」

「…………すまん、俺かける言葉ねえや」

「ふぅ…………」

 

そして本日五十回目となる溜息をついてしまった。ここまで数えてられた俺を素直に褒めたい。

 

 

 

 

 

そんなこんなで迎えてしまった七月三十日。

 

「「「「主任、誕生日おめでとうございます!」」」」

「おう、ありがとうよ」

 

企業連の超大型フロアにて俺の誕生日パーティが開かられた。因みに親父とお袋も勿論参加済み。企業連はこうやってパーティするのが楽しんでるしな。既にカラードチームは酒を飲んでる。グローバルコーテックスチームは真っ先に飯。そして、我らが企業連第零課は

 

「うぉーい、これからマグロの解ショーを始めるぜぇ〜!」

「「「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ‼」」」

 

…………今年は比較的まともだった。マジで良かった。

 

「お前ら、俺の吊るし切りの技術、とくとみやがれ!」

「待てぇい⁉ 吊るし切りはアンコウだろうが‼ マグロのような大型魚は普通にばらせ‼」

 

前言撤回。やっぱり普通じゃなかった。

 

「主任主任、ちょっとしたネタっすよ。普通に解体しますって」

「…………マジでお前ら普通で頼む」

 

ある程度までなら許容範囲だったが、魚の捌き方だけは見逃すわけにいかん。捌き方一つで魚の風味も変わるもんだからな。

 

「…………龍之介のいう事、あながち間違っていなかったな」

「だろ? ところで楽しんでるか、お前ら」

「当たり前だろ。やっと祝ってやることの出来た龍之介の誕生日だ。これを楽しまずにいられるか」

「そうだよ。というか、僕達は企業連に助けて貰ったわけだし、恩を返したいと思ったからね」

 

俺の周りにいるのは、箒、一夏、シャルロットの三人。他は自分達の想い人と一緒にいるだろうよ。まぁ、これはこれでいいんだが。

 

『さあて、お待ちかねのプレゼントタァァァァイム‼ さぁ、皆さんご子息へのプレゼントは用意したかな?』

「当たり前だろ!」「忘れたら顔向けできねえよ!」「今年は最高の物を用意しましたぜ!」

 

…………とうとう来てしまった。このプレゼントタイムが。各企業が用意したプレゼントを受け取るだけだが、これが大変。何がくるかわからんからな。

 

『さて、まず始めは…………GA・インテリオルユニオンチーム!』

 

安心した。一番問題がないところだからな。信頼は一番高いぜ。

 

「へへっ、初っ端は緊張しますな。俺らが用意したのはこれです!」

 

そして、めくられる幕。そこにあったのは、ごついアーマーだった。

 

「これは武装化装甲(アームド・アーマー)。榴雷の両腕部ハードポイントに装備可能です。右手側に見えるフィン状のユニットがインテリオルの傑作[偏向荷電粒子砲(ビーム・スマートガン)]。従来のレーザー兵器とは一線を凌駕する威力があります。左手側にあるナックル上のユニットはGAの傑作[振動破砕爪(ヴァイブレーション・クロー)]。質量と振動による破砕を行います。是非主任に使っていただきたくて、用意させていただきました」

「うぉぉぉっ! こいつは浪漫だ! さすがGAとインテリオルだ。ありがたく使わせてもらうぜ!」

 

うん、やっぱり榴雷の追加武装系が多いんだよな。嬉しいけど。さらにこういう浪漫ウエポンだろ? これを喜ばない男がいるかっての。

 

「次は俺達だな」

 

次は…………って、親父⁉ ってことは、有澤重工⁉

 

「まぁ大したもんじゃないんだが、受け取ってくれ」

「この封筒は一体?」

「ペアの温泉旅行券だ」

「へぇー、そうなん…………マジで⁉」

「因みに四泊五日だ」

「親父、マジでありがとう! 親父の誕生日にいいもん用意しておくぜ!」

 

やべぇ、嬉しすぎて涙が出て来そうだ。

 

『さて、お次はご子息の学友達からです!』

「私達か。龍之介、改めて言おう、誕生日おめでとう」

「ああ、ありがとうな」

「それでな、こんな物を用意してみたんだが、気に入ってもらえるか?」

「これって、着物じゃねえか! すげえ高かっただろ⁉」

「龍之介に似合う物を探したら、これに行き着いたんだ。それに、そこまで高くもなかったから心配はいらん」

「そうか。箒からの初めてのプレゼント、大事にするぜ」

「箒のプレゼントがインパクト強すぎて俺たちのが霞んで見えるぜ…………」

「ん? 一夏達も用意したのか?」

「まぁね。といっても、こんな小さな手作りケーキだけど…………」

「その気持ちだけでも十分嬉しいぜ。そうだ、あとで皆で食おうぜ」

 

いつもの誕生日より、数段楽しく感じるのは気のせいじゃないだろう。多分それは、いつもの企業連メンバーに一夏を始めとする友人達、そして俺の大事な恋人である箒。こいつらがいるから楽しいんだと俺は思うんだ。

 

『そして、最後を飾るのは企業連第零課! 今年はどんな変態な代物を用意してるんだ⁉』

「おいおい、俺たちがそこまで変態もの用意してねえだろ」

(((いや、十分変態だろうが…………)))

 

だが、問題は奴らの時間がきてしまったことだ。今年は何がくるのかと考えると、マジの恐怖がやってくる。キケンな匂いがプンプンしているが、きっと気のせいだ、そう自分に言い聞かせた。

 

「…………んで、今年はどんなものを?」

「驚かないで下さいよ、主任。これが俺らの技術の結晶、[異世界転送機]です!」

(((こ、こいつら、とうとうやりやがった…………!)))

「ただし、転送できる世界はランダムですが」

「キケンだなオイ!」

「あと、見た目がスタングレネードに似てるので気をつけて下さい」

「アホか⁉」

 

こ、こいつら、とうとうとんでもないもんを仕上げてしまったようだ…………さすが、選りすぐりの変態共だ。やることが他と数段ぶっ飛んでやがる。

 

「ま、まぁ、少し面白そうだから受け取っとくわ」

「はっ! ありがとうございます!」

 

まぁ、こいつらも全力でやったんだ。無下にする事はできねえよ。結局、今年も受け取る事にした。暇があったら試しに使ってみるか。

こんな感じでパーティは過ぎ、気がつけば時刻は一時半(翌日)を過ぎていた。

 

 

 

 

 

「誤差0.0002ーーこれの照準誤差殆どねえじゃんかよ」

「さすがだな。きっとこれBFFも関係してるだろ」

「あ、お前も大体の企業名覚えたんだ」

「本当に大体だけどな。それもお前んところとGAグループ」

「バリバリ実弾系じゃん」

 

企業連の試験アリーナにて俺は昨日貰ったアームド・アーマーのビーム・スマートガンのテストを行っていた。観測担当は一夏。どうやら此奴も相当気になっていたようだ。

 

「しっかしビーム兵器ときたか…………」

「てか、それ振り回したらターゲット切り裂いちまうんじゃね?」

「さっき切った。厚さ一メートルの特殊合金が溶断されたぞ」

「企業連パネェ」

 

なんといってもこのビームの収束率が高い。拡散すると攻撃範囲が広いわけだが、一発当たりの破壊力は低下する。だが、収束率が高ければ、攻撃範囲は狭まるが、破壊力は格段に上がる。この武装はおそらく絶対防御すら突き破るかもしれない。

 

「さて、そんじゃヴァイブレーション・クローを使ってみるか」

〔はいよー〕

 

ルリアの起動ボイスで左腕に装着されたナックル状のユニットが展開、隠されていた四本の凶暴な爪がその姿を現す。その周りの空気は淀んでおり、とんでもない振動をしている事がわかる。

 

「そうらよっ!」

 

俺はそのクローを、先ほど溶断した合金の塊に叩きつけた。するとどうだろうか、一瞬で粉々に破砕されたではないか。その破壊力、シャレになんねえ。というか、若干コジマ粒子を垂れ流しているんだよね。あとビーム・スマートガンの荷電粒子もコジマ粒子に電荷を与えた物らしいし…………てか、コジマ粒子って電荷を与えると色変わるんだ。

 

「…………それ、絶対防御意味ないんじゃね? 大会使用禁止だろ、絶対」

「俺も思った。一応この合金なんだけど、榴雷のワンランク下の装甲と同じ材質…………」

「振動ってどんな破壊力を生むんだよ⁉」

「ある漫画では砂に還元する破壊力があるらしいが」

「シャレになんねえな、それ」

 

というか、砂に変える振動ってどんなレベルの代物だよ。それもう榴雷で取り扱い不可能なレベルなんじゃね?

とりあえず、本日のテスト稼働は一通り終了したということで、俺は残骸を片付けるべく、行動を開始『ピンッ』ん?

 

「おい一夏、お前今スタングレネードのピンを抜いたりしたか?」

「いやーーって、龍之介⁉ おま、お前、そのクローに引っかかってる物ってなんだ⁉」

「何ってーーマジかよ‼」

 

引っかかっていた物、それは第零課オリジナル異世界転送機。それの起動キーだった。因みに解除までのリミットは0.1秒。つまり、解除不可能。

俺は、眩い光に包まれていった。

 

「なんで、こんなとこに異世界転送機が引っかかるんだよ‼」

〔ごごごごめん‼ さっき中の整理中に落としちゃったの‼〕

「なんで俺まで巻き込まれちゃうわけ⁉」

〔光が…………逆流する…………‼〕

 

四者四様の状況の中、俺らはより一層眩しい光へと包まれた。異世界といっても、俺は一体何処へ流れ着くんだ…………

 

 

 

 

 

光が収まった時、そこは空中だった。

 

「って、解説している場合じゃねえ‼ ルリア、背面スラスター全開だ‼ というか、全スラスター起動‼」

〔了かーーって、左背部スラスターが動作不良⁉ なんで⁉ 正常だったはずなのに‼〕

「んな事知るか‼ 片肺が死んでんなら、AMBACでなんとかしてやる‼」

 

スラスターが死んでいるため、手足の動きを利用した慣性制御AMBACでの不時着を試みる。背部のスラスターは榴雷の重量でも十分な機動性を確保するために大出力となっている。裏を返せば、そこがやられたら飛行は不可能に等しい。PIC? そんなんで耐えられるわけねえだろ。

 

『龍之介‼ お前今どこにいるんだ⁉』

「知るか! レーダーのビーコンでも使って俺のところに来い‼ スラスターが片肺イカれた‼」

『マジかよ⁉ わかった、すぐにそっちに向かうぜ‼』

 

とりあえず、一夏が救援にきてくれるようだが、果たして持つのやら…………地面がすげえ近くなってきてる。もう、不時着以外の手段は取れないな。

 

「ルリア、この辺で不時着が可能な場所はあるか?」

〔近くに学校があるみたいだけど…………〕

「致し方ねえ、そこに不時着する! 一夏にもビーコンで知らせといてくれ!」

 

不時着ポイントである学校目掛けて、残されたスラスターを全開にする。オーバード・ブーストは使用しない。使ったらバランスが崩れて墜落しちまう。そんな事なったらとんでもねえ被害が出る。

そんなこんなでなんとか目的地が見えてきた。結構でかそうな学校だな。不時着はなんとかできそうだと思う。

 

「あれ? もしかして今下校時間? 人気が無いからまいいか」

〔そうでもないみたいだよ…………丁度不時着ポイントの先にお一人〕

「いるのかよ⁉」

 

よくよく見てみれば一人いる。服装と容姿から女子。困った、非常に困った。

だが、落下の速度はこれ以上抑える事はできない。スラスターが悲鳴を上げ始めているのがわかる。

 

「おいそこの奴‼ 聞こえんなら、そこから退避しろ‼」

 

そんな俺がとった行動は、叫ぶ。気づいてもらえるように声を出す、それしか考えられなかった。

それが良かったのか、その女子は俺に気づいてくれたようで、その場からすぐに離れてくれた。ルートが確保できた俺は、不時着する体勢へと入った。

その直後、地面に脚部がめり込む。それでも止まる気配はない。

続いて地面にアウトリガーとアンカーを打ち込む。こいつでなんとか止まれると思ったが、予想以上に速度が乗っていたせいか、アウトリガーとアンカーが地面を抉ってしまった。その衝撃でバランスを完全に失い、地面を転がる俺。

とっさに取り出したアンカーランチャーを射出し、地面に再度打ち込む。ワイヤーが切れるギリギリまで転がった俺は、なんとか止まる事ができた。し、死ぬ…………。まじで、死ぬかと思った。

 

「痛ってえ…………どこから血でも出たのか?」

〔バイタルサインからじゃ良くわからないけど、無事なようだね〕

「そうだな…………それが一番か」

 

どうも身体を動かそうにも、一気に負荷をかけ過ぎたせいか、動かせそうにない。困ったもんだぜ。とりあえず榴雷を解除し、いつもの対Gスーツ姿に戻る。その時、丁度さっきの女子が向かってきた。墜落して気になったんだろうな。というか、ここが異世界と仮定して、ISなんてあるはずも無いから、興味本位できただけだろうと思うがな。

 

「ちょ、だ、大丈夫ですか⁉」

 

あ、そういや、思いっきり声出して叫んだっけ。人が落ちてきたとも思われなく無いか。というか、この声、シャルロットのような感じがするな。

しばらくして、その女子は俺の元へ着いた。濃いめの茶髪を、左サイドだけ長めに伸ばしているといった、アシンメトリーな髪型が特徴。おそらく背は低いんじゃないだろうか。

 

「あ、あの、大丈夫ですか?」

 

その声から心配しているが、俺にはどうやら警戒を抱いているような感じだ。まぁ、そうだろうな。こんな平和そうなところで対Gスーツをきている奴なんてそうそういないだろう。てか、いてたまるか。

 

「…………ああ、なんとかな。そういうあんたは、怪我とかしてないか?」

「は、はい。怪我とかはないです」

「そうか、それならよかった…………ーーっ‼」

 

唐突に頭に痛みが走った。染みるような痛み、多分擦り傷のような所に汗が染みたんだろ、きっと。

 

「ど、どうかしましたか?」

「ちっとな、傷に汗が染みたみてえだ。何、なんて事はーー」

 

なんて事はない、そう言おうとしたその時には、女子が俺の額にあると思われる傷口に絆創膏を貼ってくれた。

 

「ダメですよ。傷口からバイ菌が入ったらどうするんですか」

「…………何故あんたは初対面の俺にここまで優しく出来る? 俺はもしかすると、あんたを殺すかもしれないぞ?」

「声を張り上げて、私に逃げるように言った人がそんな事すると思えませんよ」

 

優しさの塊。この女子にはその言葉が相応しい。

 

「…………あんた、名前はなんていうんだ?」

 

俺は自然とそんな言葉が出ていた。

 

「小野寺小咲です。あなたは?」

「有澤龍之介、この恩を忘れはしねえぜ」

 

簡単な自己紹介、彼女の名前を知る事ができた。小野寺小咲、まぁ小野寺さんで十分か。いきなり名前で呼んでも馴れ馴れしいだろうし。

そんな時だった。聞き慣れた音が聞こえた。

 

「…………え、なんで実弾が飛んでくるんだ?」

「あ、あはは…………多分それって」

 

小野寺さんがなんだか言葉を濁しながら、俺に言ってくる。

 

「貴様、小野寺様に何をしている‼ すぐにそこから離れろ‼」

「何⁉ なんで、あの男装女子は実銃を持ってるわけ⁉」

「鶫ちゃんが女の子ってわかるの⁉ 初見で⁉」

前例(シャルロット)があったからな」

「さっさと離れんか、貴様‼」

 

そんな中でも、鶫さん? が六連リボルバーやミニミ、P90まで放ってくる。幸いにもただのAP弾だから左腕だけ展開した榴雷の盾で防いでいる。

 

「…………なぁ、あの子っていつもこんな感じ?」

「い、いや? いつもはもう少し大人しいんだけど…………」

「もういい‼ 始末してやる‼」

 

そう言って鶫さんが取り出した物は…………RPG-7⁉ どこにそんな対戦車兵器がしまってあったんだ⁉ というか盾で受け止められても、爆風と破片の被害が小野寺さんに出るだろ、これ‼

 

「…………申し訳ないけどさ、小野寺さん、少し俺の近くに来てくれ」

 

そう言ったのち、榴雷を緊急展開。厚さ300ミリのプライマルアーマーを展開し、ロケット弾の爆風やらなんやらすべて防ぎ切った。ふぅ、セーフ。

 

「ちょっと、鶫‼ あんたなんて物を使ってるのよ⁉」

「お嬢、申し訳ありません。しかし、あの者が小野寺様に危害を加えようとしてように見えたもので」

「鶫ちゃん、待って‼ 誤解だよ‼ この人は何も悪いことしてないよ‼」

「…………証人いないから信じねえんじゃね、あいつ」

「小野寺ー‼ 無事かー‼」

「何あれ、舞子君知ってる?」

「んにゃ、いくら情報屋の俺でもあれは知らないよ」

 

わー、大変な事になっちまったじゃん。総勢六人? 結構な人数になってねえか、これ。てか、さっさときやがれ一夏‼

 

「ここにいたのか、龍之介‼」

「なんとか無事に不時着な」

「無事じゃなくね?」

「それよりもお前、あいつらと交渉してきて。俺、撃ち殺されそう」

「よくわかんねえけど、話し合ってくりゃいいんだろ? オッケー、ちょっといってくるぜ」

 

なんとか一夏がきてくれたおかげで助かるわ。

 

「知り合い? 似ている機械をつけているけど」

「あいつは俺のダチだから心配はないぜ」

 

数分後。

 

「お前、一条楽っていうのか。俺は織斑一夏だ。一夏でいいぜ」

「それだったら俺も楽って呼んでくれ」

「それにしても驚いたな。似たような声の人がいるんだからさ」

「俺も俺も。まさかいるとは思ってもみなかったぜ」

 

なんか仲が良くなっておるー‼ 何あいつのスキル、すぐに友達が作れるスキル装備してんの。

 

「龍之介ー、なんとか誤解は解けたぞ」

「おう、サンキューな一夏。俺らも行かせてもらうか、小野寺さん。あいつらと親友なんだろ」

「うん、そうだけど…………どうしてわかったの?」

「勘」

「あ、アバウトすぎる…………」

 

 

 

 

 

「そ、そういう事で、自己紹介タイムと行きましょう。俺は一条楽、よろしく」

「私は桐崎千棘。楽は私のダーリンよ。よろしくね」

「私は小野寺小咲です。その、よろしくお願いします」

「鶫誠士郎だ。先ほどは誤解して済まなかった」

「私は宮本るり。よろしく」

「俺は舞子集。よろしくな」

「俺は織斑一夏だ。まぁ、流れもんなのか? よろしく」

「俺は有澤龍之介。一夏と同じく流れもんだ。よろしく頼む」

 

はい、自己紹介タイムでした。うーむ、前世の記憶から拾ってこようとしても何も引っかからないな。この世界は俺の知らない世界かもしれない。てか、異世界の時点で知るはずもねえか。

 

「そういやさ、一夏も有澤さんも」

「龍之介で構わねえ。かてえのは苦手なんだ」

「んじゃ、俺も楽でいいぜ。それでさ、さっき身につけていたコスプレ衣装みたいな奴ってなんだ? 急に消えてなくなったけど」

『そうか、こいつらISについて知らねえんだ。どうする、説明するか?』

『した方がいいだろ。また変な誤解されちゃ困る』

 

という事でプライベートチャネルのジャンケンで負けた俺が説明する羽目に。

 

しばらくお待ちください。

 

「へぇー、そのISっていうのはそんなに強いの?」

「軍事力の一部だしな」

「だが、女にしか使えないはずのISが何故お二人には使えるのだ?」

「なんか、俺らにも適性があった」

「オカマ?」

「宮本さん⁉ さりげなく心傷つけてきたよね⁉」

「折角だから、そのISの戦いってのを見てみたいねえ」

「それは無理だ」

「どうして? さっきは危ない物何も出してなかったのに」

「そうだよな。ちらっとだけど盾みたいな物しか見えなかったし」

「外面だけで判断したらあかん。俺本気でやったら、街が地図から消えるかもしれないんだよ…………」

((((((どんな武器を積んでるの⁉))))))

 

とりあえずわかった事。この世界は平和だ。少なくとも、俺たちの世界と比べては、な。このメンバーの会話を見る限り、女尊男卑なんてないように思える。俺たちの世界もこんな感じになれたらいいんだがな。

 

「…………龍之介さん?」

「いや、少し考え事をしていた」

 

あかんあかん、俺の心が小野寺さんに読まれそうだった。

 

「そういやさ、俺ら帰れんの?」

「待ってろ、変態共(第零課)に問いただしてみる」

 

どうやら通信はつながるようなので、奴らを完全に脅迫するしかない。

 

『あ、主任。転送機なんですけどね、帰還用のユニットを組み込み忘れていたらしくて、一週間はそのままです』

「ブ チ の め す ぞ」

『まあまあ、落ち着いーーおい早くしろ、減給されるぞ!』

 

通信は切れた。

 

「一週間は帰れないっぽい」

「マジか…………俺らどうする? 泊まるアテとかないんだけど」

「それな。一応、榴雷の中にはテントとかあるけど」

「まぁ、白牙にも非常食は積んであるけどさ」

「お前は誰かの家に泊めてもらえば?」

「なら、俺の家にーーあ、無理だ…………」

 

楽が一夏を家に泊めようと考えたようだが、何故か無理宣言した。

 

「なんで?」

「あー、楽の家ってヤクザだからね。まぁ、私もギャングの家だから、人の事言えないけど」

「特殊な家系だな…………人の事言えないが」

「龍之介も、大型企業連合代表の息子だもんな」

「俺は傭兵だけどな」

((((逆らったら殺される⁉))))

「傭兵という事は腕は立つのか?」

「企業一つ焼き尽くした事はあるが」

((((やっぱり危険だー‼))))

「それはそうと、俺は別にいいぜ。ヤクザにもいい人はいるだろうし」

「おお! それなら一夏は俺の家に泊まる事で決定だな」

「…………おまいらホモくせえぞ」

「「誰がホモだ‼」」

「腐の界隈には高く売れるぜ、楽」

「集‼」

「あははー、冗談冗談、かんにんしてやー」

 

さて、一夏の方の問題は解決したか。問題は、

 

「俺がどうするかだけだな…………桐崎さんのとこはあかんしな、舞子はオッケーか?」

「俺? いや、俺ん家は無理だな。母ちゃん厳しいし」

「舞子は無理、桐崎さんはまず無理、と言って女子の家に泊めて貰うのも無理…………野宿か」

「待って⁉ 私の家が無理ってどういう事⁉」

「不倫しているように思われるぞ。楽はお前のダーリンなんだろ」

「あーーそ、そうよ、そうだったわ!」

 

楽と桐崎さん、何か裏の関係がありそうだな。あとで聞いて見るとしようか。

 

「はい、俺は野宿決定。時間も遅いし、帰った方がええんとちゃう?」

 

よくみりゃ、あたりは夕暮れというより日が沈んで暗くなり始めている。これは帰らねば家族にも心配をかけるだろう。

 

「そうね。それじゃ、私は先に帰るわ」

「あ、るりちゃん待ってくれー。俺も一緒にーー」

「うるさい、舞子君」

 

宮本さんと舞子は帰るようだ。本人達がどうかはわからないが、こちらから見る分には仲良さそうに見えるな。メガネ同士で繋がってたりするのか?

 

「それじゃ、私達も帰るわよ。行きましょう、楽、鶫」

「お嬢、了解しました」

「へいへい。あ、一夏お前も来いよ。俺の家に案内するからさ」

「おう、サンキュー。んじゃ、龍之介、また明日な」

「おうよ、またな」

 

一番の大御所も帰ったので、残されたのは俺と小野寺さん。流石に小野寺さんの家に泊めて貰うのは、何かとまずいしな…………それに、嫁さんにばれたら石棺が待っている。

 

「どーれ、この辺にテントを設営しますか。あ、小野寺さんは遅くなるから帰った方がいいぜ」

「そ、それなんだけどさ。流石に野宿はまずいと思うよ」

「え? なんで?」

「一応、警備員さんも夜になるとくるみたいだし…………下手にしたら捕まっちゃうよ」

 

捕まるのだけは勘弁。そんな事したら、銃刀法違反と爆発物取扱違反と薬物法違反とかそういう系の奴に全部引っかかって、無期懲役じゃん。というか、薬の類、あとどのくらいの備蓄あるっけ?

 

〔バースト薬が六十回分、回復薬が百五十一回分、毒物は二十三回分。こんな物かな。流石にハイドロキノンとかテトロドトキシンとかベンジゾアセミド混合薬はないみたいだけど〕

「大丈夫だ。企業連の、それもキサラギ製薬のしか使うつもりはねえよ」

「こ、今度は小さな人⁉」

〔あ、どーもはじめまして。霧島ルリアです。あっくんのネクストIS榴雷のコア人格です。よろしくね、小野寺さん〕

「よ、よろしくお願いします」

〔でも本当にさ、あっくんどうするの? 山に逃げちゃう?〕

「都会のどこに山があるんだよ」

「やっぱり泊まるアテないんだ…………」

「それだけは言わないでくれ…………」

 

はぁ、マジでどうするかな。寝る場所もないし、食料だって不安がある。

 

「それならさ、私の家に来ない? 一条君の家みたいに広くはないけど。お父さんもお母さんも出かけていて、しばらく帰ってこないし」

「へ? マジで?」

「うん。少し有澤君達の事も聞いて見たいと思ったしね」

「うーむ…………それじゃ、頼むわ。一宿一飯の恩義はする」

 

という事で、何故か小野寺さんの家へと拉致られる羽目に…………まぁ、いざとなりゃ倉庫とかに雑魚寝すりゃいいか。

 

 

 

 

 

小野寺さんの家に着いた俺。今驚きを隠せないでいる。

 

「お、小野寺さんの家って和菓子屋なのか?」

「そうだよ。そんなに驚くことかな?」

「いや…………俺が知り合った人間は、家がすげえとこのパターンしかないと思っただけだ」

 

きっと普通の家ではない事は予想していたが、和菓子屋という不思議な方向とは想像できなかった。というか、菓子類とはあまり触れ合ってきてない俺にとって、和菓子はとても思い入れのある品だ。あの上品な甘さは洋菓子ではなかなか味わう事ができないからな。

ちなみに既に対Gスーツから着替えており、ルリアが用意してくれた衣類を着用している。一般的な高校生が着るような服らしいが、眼帯と義手のせいで目立ちそうだ。最も、未だ誰もその事に気づいてはいないようだが。

 

「それじゃ、着いてきて。案内するから」

「お、おう。頼みますぜ」

 

小野寺さんは家の中を案内してくれるようだ。助かる事なんだろうが、いささかまずいような気もしている。てか、まずいだろうよ。

 

「ここが私の部屋。有澤君はこの部屋に泊まってもらおうかな」

「待て⁉ なんでそうなる⁉」

「?ーーあ、わ、わわわわっ‼ な、なな何を言っているんだろうね、私は‼」

「落ち着けー、深呼吸しろー」

「だだだって、わわわ私には一条君という、ここここころに決めた人がいるのに‼」

「…………おーい、自分の好きな人暴露してんぞ?」

「はうぅぅぅぅぅ…………(ボンッ)」

 

…………小野寺さんェ。大丈夫なのか?というか、自分から楽が好きって言っちゃってるし。もしかして、落ち着いている様子をしていたのは仮の姿? それでもって、これが本来の姿? 暴走やべーな、とりあえず落ち着いてもらいたい。

 

「とりあえず、落ち着け。話がまともに伝わらん」

「う、うん…………もうやだ、恥ずかしい…………」

 

小野寺さんは顔を真っ赤にして俯く。まぁ、何処の馬の骨かわからねえ人間の前で、一番大切な事を言ってしまったわけだからな…………恥ずかしいのも当たり前か。

 

「で、でも、有澤君にはここに泊まってもらうから」

「ま、マジで?」

「こ、これは決定事項です!」

 

顔は真っ赤だけど、言葉に偽りはない。どうやら、俺はこの部屋に泊めて貰う事になった。って、元の世界に戻ったら、惨殺エンドじゃね⁉

 

「はぁ…………」

「ど、どうしたの? 溜息なんかついて」

「いや…………帰ったら、嫁に殺されそうな気がしてな」

「よ、嫁⁉ あ、有澤君って結婚してるの⁉」

「まだだけどな。交際中の身だけど、俺の親が婚姻届作ってな。嫁もノリノリで書いちゃてさ、そう呼んでいる」

「へぇ〜、そうなんだ。でも、びっくりしちゃったな、高校生で結婚なんて聞いたことがなかったから」

「法律の関係でできないから、普通は」

 

まぁ、いろいろあるんだと言ってこの話題を切り上げる。

 

「そういえば、そろそろ夕ご飯の時間だね」

「そうだな…………腹も丁度減っているしな」

「ちょっとなにか作ってくるよ。待っててね」

「おう。申し訳ないが、頼んます」

 

小野寺さんの飯か…………和菓子屋の娘さんだから料理もうまいんだろうな、きっと。

だが、そんな甘い希望は、虚しくも砕け散ることとなった。

 

「ひゃあっ‼」

 

ボンッ

 

「⁉ 爆発⁉」

 

その爆発音を聞いた俺はすぐに階段を駆け下り、一階にあると思われる台所へと向かった。

そこには、黒煙をあげながら炎上する鍋と涙目で慌てふためく小野寺さんの姿が…………一体何があったんだ?

 

「はわわわわわわ…………!」

 

さらに俺に見つかったのが恥ずかしいのか、さらに慌てふためく始末。もう、何がなんなのやら。というか、何を作ろうとしていたんだ、何を。俺の足元に、何かになり損ねた物体が転がってはいるが。

 

「も、もしかして、小野寺さんって、料理下手?」

「ごふっ‼(心に突き刺さるナニカ)」

「あ、すまん、ストレートに言いすぎた…………俺の知り合いにも料理下手な奴がいるからよ」

 

言わずも、セシリアである。多分、小野寺さんはそれよりかまし…………なのか?

 

「…………私、勉強も料理も運動も全然ダメで…………本当、どこに取り柄があるのかなんてわからないし…………幻滅した?」

「いや、別に人それぞれなんだから、個性があっていいんじゃないか?」

 

俺にはかける言葉が上手く思いつかねえ。というか、ここまで苦手スキルを持ってる人もそうそういない気がする。シャルロットは不幸スキルの持ち主なようだが。

 

「とりあえず、今日は俺が飯を作ろう。材料、適当に使わせてもらうぜ」

「う、うん…………どうぞ」

 

あちゃー、これ落ち込んでるんじゃねえの?

 

「まぁ、俺が言うのもなんだがな、料理教えてやるよ。楽に食わせたいんだろ?」

「‼ な、なんでわかるの⁉」

「先ほど大暴露」

「っ〜〜〜〜〜〜〜‼」

 

小野寺さんは、さっきと打って変わって顔を真っ赤にして悶えた。やっぱり、女持ちとなるとこういうことには敏感になるんだよ。何故だかは知らんが。

 

「あっはっはっは。んじゃ、今晩は肉じゃがにするか。糸こんにゃく抜きで」

「糸こんにゃく嫌いなの?」

「なんか、好きになれん」

「私はこんにゃく全般無理」

 

まぁ、軽くコツとかそういうのをしっかり教えながら、肉じゃがを作っていく。小野寺さんは、どこか危なげな包丁使いではあったが、ジャガイモの皮を剥く事ができたので問題はなかろう。俺はまな板は基本魚を捌く以外に使わんから、空中で向いて角切りにした。

 

「ど、どんな技術なの?」

「暇だからやったらできた」

 

そんでもって、煮物系には必ず落し蓋が必要だ。ここで俺はお手製の落し蓋を取り出す。乾燥こんぶを使ったダシを同時に染み込ませる事が可能なアイテムだ。ちなみに、五枚一組セットで六百円で販売中。お求めは企業連食品部まで。

 

「煮物系は落し蓋をする事で旨味が行き渡る。肉じゃがも例外じゃない。まぁ、しない人もいるけどな」

「そうなんだ。よし、メモしておこうっと」

 

まあいろいろあったが、肉じゃがは完成。あとは、小野寺さんに盛り付けを任せてっと。

 

「って、庶民の料理が高級料亭の一品になっとるー⁉」

「あはは…………私、飾り付けだけは得意だから、ね。ここの和菓子の仕上げも私がしているし」

「スゲぇ」

 

小野寺さんよ、ちっとも不器用じゃねえじゃんかよ。その技能は普通に誇れる事だ。俺はそう思わざるを得なかった。

 

「どれそんじゃ」

「「いただきまーす」」

「今日も我ながら上手くいったな」

「ま、負けた…………完敗だよぉ…………」

「小野寺さんには、これに近い物を作ってもらうから」

「む、無理! こんなに美味しくなんて、一万回に一回の奇跡でも起きないとーー」

「この世界に奇跡なんてない。全て必然なんだ。努力次第で道は拓かれる、俺はそう思っているけどな」

「その言葉…………深いね。有澤君は私達よりも大人びているのかも」

「そんな事ないさーー…………皆と比べたら、俺の手は汚いから」

「? 何か言った?」

「冷める前に食っちまおうぜってことだ。ーーところでさ、あの炎上鍋で何を作ろうとしていたんだ?」

「…………味噌汁」

「ファッ⁉」

 

 

 

 

 

「さて、ご飯も食べ終わったことだし、そろそろ寝ようか?」

「早くね? てか、俺は聞きたい事があるし」

 

時刻はまだ九時だ。寝るには早すぎる。それに、俺は確認しておきたい事項がある。まぁ、小野寺さんが知っているかどうかは別として。

 

「例えばどんな事?」

「桐先さんと楽の事だよ。あいつら、付き合ってないだろ」

「気づいたの?」

「現在交際中だからな。なんとなくはわかる」

 

というか、あのわざとらしい態度に、謎の間とか、怪しい点はいくらでもある。その気になれば一般人でも見破るのは可能だろう。

 

「実は、あの二人付き合ってないんだけど、もしその事がばれたらーー千棘ちゃん曰く、街が一つ消えるとか言っていたよ」

「…………ギャングとヤクザの抗争? どんなレベルの兵装を使用するつもりなんだ?」

 

ていうか、もはやそれって戦争じゃね? 街が一つ消えるとなったら、アサルトアーマーを使うか、コジマ兵装を撒き散らすか、OIGAMI級の榴弾で絨毯爆撃するかしかないが。

 

「でも、そんな事にはならないと思うよ」

 

そんな事って、抗争のことか。小野寺さんは言葉を続けた。

 

「だって、千棘ちゃんの家の人、みんな優しいから」

 

…………どうやら、俺の思考の中にはあの御所河原組が残っているようで、印象が少々悪くなっているようだ。ヤクザやギャングといっても、皆が悪行三昧の連中じゃない。心やさしきものだっている、その事を今ひとつ理解していなかった。

 

「まぁ、それなら心配もいらねえか」

「うん。あ、一つ聞いてもいい?」

「おう、なんでも聞いていいぜ」

「なんで有澤君は眼帯をしているの? 病気かなにか? それに、左手だけ手袋つけているし」

 

…………まずい! もしここで『俺、右目と左腕ないんだよー』と言ってみろ。ドン引きされて、生活が厳しくなる。それだけはなんとしてでも避けたい。

 

「こ、これな。お、俺さ、目の病気で他人に見せられないんだよ。ひ、左手も、昔の火傷がケロイドのような感じになっているからさ。ははは」

 

小野寺さんは目を丸くして驚いている。うん、全部嘘なんだけどさ、それっぽく言ってみると、案外騙す事はできるんだな。罪悪感はあるけど。

 

「…………ごめん、嫌なこと聞いちゃったね」

「気にすんなって。よく聞かれる事だし、今更どうも思ってないぜ」

「そうなんだ…………」

「んじゃ、俺からも質問。小野寺さんってさ、楽のどこが好きなの?」

「っ〜〜〜〜〜〜〜‼」

「うおっ‼ 脳回路がショートした⁉」

「だ、だって、そんな事言われたって、そんないきなり言われると、わ、私だって、なんて答えたらいいのか、わからなくなって…………」

(俺がわかるはずねえだろ…………)

 

結論から言おう。小野寺さんは、かなり純情な恋をしている。

まぁ、楽がどうかは知らんけど、案外両思いだったりするのかもな。俺と箒、一夏とシャルロットのように、思いさえ伝えられれば可能性はある。

この後、一時間近く話していたわけだが、俺は疲れていたのか、小野寺さんよりも先に寝てしまった。

 

 

 

 

 

こっちの世界にきてから二日ほど経った。第零課からの報告ではあと三日で仕上げるとの事。皆徹夜で仕事しているらしい。まぁ、減給はするつもりねえけど。

そんな事で、日々を過ごしている俺だが、現在海にきている。一人で。

というのも釣りのいい時期なんだ。鰻とか鱧とか、長い魚は今の時期が旬。そしてスタミナをつけるにはもってこいの、栄養価が高い魚たちであるのだ。

勿論、俺は一本釣りしかしないがな。あ、早速かかったっぽい。

 

「さぁーて、何がくるかなーーって、ラブカじゃねえかよ、こいつ‼」

 

鰻かと思ったらラブカだった。まぁ見た目は似ているかもしれないが、種類上は違うものだしな。ラブカは希少なので、海に返してやる事にした。

 

「せめて鰻とかかかってくれるとな…………あの料理を御馳走できんのに」

 

俺の創作料理には鱧か鰻が必要だ。小野寺さんにはかなりの恩を受けた。俺はそれに感謝し、恩返しをする義務がある。そのためには、これくらいは必要だろう。

 

「お、来たな。次こそはまともな奴かかってくれよ」

 

俺はこの時、とんでもないものを釣り上げてしまった。まさか、この時期にあれが釣れるとはな…………。俺はついているのかもしれねえ。

 

 

 

 

 

そんなこんなで、楽や小野寺さんが住む街へと戻ってきた。少し遅くなりすぎたか? 一応、夕方までには帰ってくるとは言っていたが、もうそろそろで日が沈む。早いところ帰るとしよう。

その帰り道、一夏と楽に会った。

 

「おう、一夏。どうだ、そっちは?」

「まぁ、普通だぜ。ただ、皆の勢いが凄くてな…………」

「いや、マジでスマン‼ 家のもんが、あそこまで酒盛りするとは思っていなかったから!」

「でも、楽しかったぜ。あそこまで騒いだのはいつ振りだろうな」

「向こうでは毎日騒いでんだろうが」

「いや、毎日じゃねえよ」

 

そんなこんなで他愛もない話をする。

 

「おーい、楽に一夏に龍之介〜」

「あ、集。どうした、急に」

「いや、るりちゃんと小野寺知らない? 途中まで一緒に帰っていたんだけど、後ろ向いたらいなくなっていたんだよ」

「なにぃ⁉ 小野寺が消えただと⁉」

 

楽が声を張り上げる。

 

「まぁ、途中で道が別れるから、そこをすぎたのだと思うけどな」

 

本当にそうなのだろうか? 俺はこの時、嫌なざわめきが心の内で起きていた。

 

「ちょ、ちょっと楽!」

「な、なんだよ千棘、いきなりーー」

「こ、小咲ちゃんとるりちゃんが、誰かに連れていかれたのを、アルフリードが見たってーー」

「ダニィ⁉ そ、そ、そ、それは嘘じゃないのか⁉」

 

嫌な空気が俺ら五人を包む。

 

「ーーアルフリードは嘘をついた事はないわ。今、鶫がおっているらしいけど」

「…………申し訳ありません、お嬢。二人の行方を掴めませんでした」

「…………ありがとう、鶫」

 

何故だ、何故こんな平和な世界で誘拐じみた事が起こるんだ。俺は怒りを抑える事ができない。小野寺さんにはまだ恩を返していない。

 

「…………ルリア、この辺一帯をサーチかけられるか?」

〔全力作業中! かかったら教えるよ!〕

 

俺は俺なりの方法を試してみる。

 

〔…………ごめん、無理だった〕

「仕方ない。お前にも無理かけたな」

 

ルリアの強力な広範囲のサーチもかからなかった。

 

「なぁ、こういうときってさ、よくテレビであるじゃん、港の倉庫とか、廃工場とか。そういうとこに連れていかれたとかない?」

「一夏! そいつだ! ちょっくら行ってくるぜ!」

 

俺は榴雷を展開、一気にオーバード・ブーストを起動する。死んでいた片肺も今は快調だ。

 

「ルリア! この辺の廃工場をリストアップしてくれ!」

〔任せて!〕

 

一夏の言ってくれたキーワード。それを頼りに、小野寺さんと宮本さんを探す事にした。願わくは、何事もない事を祈る。

 

 

 

 

 

「龍之介…………お前ってやつは、何処でも正義だな」

「…………俺は、無力だ」

「楽?」

 

ふとした楽の呟きを一夏は聞き逃すことはなかった。

 

「俺は小野寺が好きな事、昨日話したよな」

「ああ、がっつり聞かせてもらった」

「俺は小野寺を守りたい…………でも、喧嘩も弱い、力もない! そんな事でいいのかって思うと、自分が情けなくてーー」

「ーー本当にそうか?」

 

楽の言葉に、一夏は言葉を続けた。

 

「楽は決して無力じゃねえ。お前の本当の力は、優しさだろ? 荒仕事は龍之介と俺がやるから、小野寺さんを助け出したあとは任せるぜ」

 

そういうと一夏は、白牙を展開。龍之介のあとを追うかのように飛翔した。

 

「優しさが俺の力…………」

〔その通りだ〕

「誰だ!」

「ね、ねぇ楽、後ろにいるの、何?」

 

楽が後ろを向くと、そこには全身を蒼に染めた一機のISがいた。

 

「ん? これ、一夏達が言っていたISじゃね?」

「確かに似ているな」

〔一条楽〕

「お、俺?」

 

その蒼いISは楽の名を呼ぶ。そして、唐突にもこういった。

 

〔俺に乗れ。彼女を助けにいくぞ〕

「待て待て⁉ 俺乗れないはずだろ⁉」

 

一夏や龍之介の話によれば、ISは女にしか動かせない。そう聞いていた。だが、目の前のISは楽に乗れと言っている。

 

〔乗れるさ。俺の相棒になるからな〕

 

そう言って、そのISは楽の手に触れた。するとどうだろうか、楽の体はISの装甲に覆われたではないか。

 

「ま、マジかよ!」

〔よし、行くぞ!〕

 

蒼のISーーペイルライダーは一気に飛翔し、夕暮れの空に蒼き軌跡を残した。

 

「お嬢、こちらも手配はすみました。お急ぎください」

「オーケー、鶫。舞子君も乗って!」

「俺も男だからねえ。いっちょやりますか!」

「アルフリード、いいわよ!」

「了解」

 

その軌跡を追うかのごとく、残った三人も動き出したのであった。

 

 

 

 

 

場所は変わって、山の近くの廃工場。俺はそこに着地した。というのも、ここに小野寺さんと宮本さんがいると、俺の直感がそう言っている。

 

「ルリア、システム、スキャンモード」

〔了解、システム、スキャンモード〕

 

その瞬間、視界のディスプレイは少しエネルギーが抑えられ、代わりに熱源反応やら、爆発物やらの情報が表示される。スキャンモードの際は火器や武器の使用は不可能。でも、殴る蹴るならできる。

俺はそのまま歩みを進める。重量のある榴雷がコンクリートの床を割りながら進む様は、まるで巨人。もしくは破壊者。そうにしか見えないだろう。

 

「さてー、熱源反応はあるか?」

〔ビンゴ。ただし、全部で二百人近くいるよ〕

「なんでそんなにいるんだよ?」

〔ちなみに、小野寺さんと宮本さんはここから六百メートル先の柱の陰ね〕

「細かいサーチありがとよ」

〔他は殲滅する? 虐殺する?〕

「…………お前、最近過激になってきたな」

 

とりあえず、彼女達を救い出すのが最優先だ。俺はブースタを起動し、ホバーで移動した。

 

「なんでこんな事になっちゃったの…………?」

「というか、私達完全に誘拐されたわよね?」

「るりちゃん、冷静すぎるよ…………」

「そう? 少なくとも小咲よりはビビってないわよ」

 

しばらくして、二人の会話が聞こえてくる。間違いない、あのヒビが入りまくって、中の鉄筋が一部むき出しの柱の裏だ。…………って、あの柱折れそうじゃね?

 

「二人とも、無事か?」

 

俺は二人に話しかけた。

 

「あ、有澤君? どうしてここに…………」

「それよりも、よくここがわかったわね」

「二人を助けにきたぜ。場所は相棒が探し出してくれた。とにかく、ここから逃げるぞ」

 

俺は二人の手を取り、PIC作用範囲を拡大しようとした時だった。

 

「そうは行きませんな、旦那」

 

見つかっちまった。おそらく、二人を誘拐したやつの可能性が高い。てか、そうとしか考えられへん。

 

「二人には、ある取引の材料になってもらわないといけませんからねえ」

「…………なんのつもりだ?」

「集英組とビーハイヴのシマを我々に渡してもらう、そのためには彼女達が必要なのです」

「彼女達は関係ないはずだ。何故巻き込む必要がある?」

「彼女達の学友にそれぞれの跡取りがいるじゃありませんか?」

「てめぇ…………楽と桐崎さんの情に漬け込むのか! 貴様ら、名前は何だ⁉」

 

多分、ここまでキレているのは久しぶりかもしれん。最近の俺は怒りっぽくてダメだ。だが、ここで怒りをあらわにしなければならない。何故か? 一日だけど、俺を助けてくれた、その恩をまだ返せていねえしな。

 

「御所河原組、といえばいいでしょうかね」

 

その名前を聞いた途端、俺はビーム・スマートガンを躊躇いなく撃っていた。わざと当たらないように外して。

 

「済まんな、突然撃っちまってよ。でもなぁ、俺はあんたらと同じ名前をしたヤクザ共に左腕と右目を取られたに等しいんだ。恨むなら、そいつらを恨んでくれ」

 

俺はビーム・スマートガンの照準を、男の頭に合わせる。次外すつもりはない。

 

「右目と左腕を失った…………」

 

小野寺さんが何か言ったようだが、あいにく俺の耳には届いてこない。

 

「そうですか…………では、貴方には死んでもらうしか他はありませんねぇ‼ やれ、お前らァァァァァァッ‼」

「「「ウォォォォォォッ!」」」

 

おいでなすったな、連中共。使いたくはないんだけど、二人に何かあったらと考えると、一気に叩いた方がいいな。

 

「恨んでくれるなよ…………二人とも、耳と目を塞げ‼」

 

俺は背部にOIGAMI2を呼び出す。そして、躊躇いなくトリガー。OIGAMIを撃った際の二倍近い反動が俺の体に襲いかかる。そして、中に詰まった強力なゴム製榴弾は二発同時に着弾、あたり一帯を殲滅したかと思われた。

 

「こ、これは何なの…………」

「街が一つ燃え尽きるのも嘘じゃなさそう…………」

 

だが、この威力を持っても全員を気絶させるまでには至ってない。盾持ちとか、ゴリラボディとか、そういう連中が百近く残りやがった。こいつらにゴム弾は効かない。俺はそう直感で判断した、

だが、どうする? 俺の火器類は破壊力が高すぎる。下手すれば、後ろの二人まで巻き込む。別に御所河原組を殺さないってわけでもないが、近接兵装に切り替えると、二人を守れなくなる。さぁ、どうする俺!

 

「龍之介! 来たぜ!」

「無事か! 小野寺、宮本!」

 

そんな時、援軍が来た。白牙と…………ペイルライダー⁉ 誰が乗っているんだ⁉ あいつは、俺の拡張領域内に保管していたはずだが。というか、声からして楽じゃん。

 

「助かる! お前らは二人を安全な場所まで頼む!」

「お前はどうするつもりなんだよ?」

 

ペイルライダーを纏った楽が聞いてくる。ん? そんなの決まってんじゃねえかよ。

 

「撤退を援護する。殿は任せろ!」

「頼むぜ、龍之介! さぁ、宮本さん、早く!」

「お願いするわ、織斑君」

「小野寺も早くしてくれ!早いとこ、ここから逃げないと!」

「う、うん。でも、有澤君はどうなるの?」

「龍之介はそんなにやわじゃねえから、心配いらねえよ」

「まだなのか⁉ 早くしないと、スモークが切れるぞ!」

「お、おう! んじゃ、後で必ず合流な!」

 

一夏達はすぐに飛び立つが、スモークが切れるのが少し早かった。

 

「逃がさねえ‼」

 

その中から見た一人のゴリラボディがロケランを一夏達にめがけて放つ。まずい、あいつらは二人を抱きかかえる形で飛んでいる。防御なんて無理だし、シールドだって、非IS装備の人間には適用されない。

 

「させるかァァァァァァッ‼」

 

俺はブースターを全開にし、弾頭めがけて飛び立つ。そして、追いついてすぐに、ヴァイブレーション・クローを起動。ロケット弾を砂に還元した。圧倒的振動数のこのクローにかかれば、砂に還元するのは余裕だ。

一方、俺の怒りは今の一発で限界点に達したため、

 

「お前ら、やっぱブッ殺す」

 

ビーム・スマートガンとNUKABIRAを地上に撃った。勿論、実弾で。そこから先は、一方的な蹂躙であったのは確かだ。

 

 

 

 

 

「何よこれ…………まるで戦場じゃない」

「そう言われるんだよな。俺の戦闘の痕」

「私も一人で組織を壊滅させた事はあるが…………ここまでのは初めて見た」

「ひょー、見事な焼け野原にしちゃったねえ、旦那」

 

はっきり言おう。やりすぎちゃった。まさか、ビーム・スマートガンの一撃でこんな焼け野原になるとは想像できなかった。まあNUKABIRAを撃ち込んだのもあるとは思うけどさ。それでも、非武装の人間にはオーバーキルだったかもしれん。肉片一つ残さず消し去ったもんな。

 

「やっぱりさ、俺はただの破壊者だ。何かを守るにも多くを破壊していく、俺には壊す方が向いているのかもな」

 

ふと呟きが漏れる。もう時刻は夜だ。月明かりが榴雷の装甲に反射する。なんか、こっちの世界に来てまでこんな事に巻き込まれるとは…………つくづく不幸なのかもしれん。

 

「ところで、小咲ちゃんとるりちゃんは? 見当たらないけど…………」

「二人なら一夏と楽が安全な場所へ連れていった。あいつらの所在ならこっちでもわかる」

「それって…………何処?」

「楽ん家」

「よし、みんな行くわよ! アルフリード、出して!」

「了解です、お嬢」

「待って下さい、お嬢!」

「桐崎さぁん、俺をおいていかないで〜」

 

まぁ、いろいろあったけどこれで良かったのかもな。今回の事態もらくーに解決(物理)できたし、後はあいつらの元に戻るとするか。

 

「ルリア、オーバード・ブースト」

〔了解〕

 

俺はオーバード・ブーストを起動、翡翠の煌めきを撒きながら、楽ん家を目指した。

 

 

 

 

 

「楽ん家すげえ広いな」

「だよな。俺も初めてきた時驚いたぜ」

 

という事で、現在俺は楽ん家の、それも厨房の方に来ている。というのも、いい魚が上がっていたことをすっかり忘れていたから、それを調理するためだ。まぁ、拡張領域内に保存していたから、鮮度は落ちていないが。

 

「ところでさ、龍之介。お前、料理とかできるのか? 俺にはそう見えないんだけど」

「楽、人は見かけによらないんだぜ」

 

さて、作業を始めるか…………っと、その前に

 

「一夏、楽を退室させた方がいいんじゃね? 俺、アレ晒すし」

「そうだな。ってことで、楽、ちょっと席を外してくれないか?」

「いや、それは断る。俺は見てみたいんだよ、龍之介の料理を」

「覚悟しておけよ。一応、R-15レベルな」

 

俺は上着を脱ぐ。すると、今まで隠して来た義手があらわになったではないかーーって、当たり前か。

 

「え、ちょ、腕が機械⁉」

「龍之介は生の左腕ないぞ」

「ちょ、ま、マジかァァァァァァッ‼」

 

楽の叫び、それはこの建物いる人間にも聞こえているわけで

 

「どうしたのよ、ダーリン。いきなり叫んーーって、あんた、腕どうしたのよ⁉」

「一条君? 何かあったーーあ、有澤君、そ、その左腕は…………」

「一条楽、少しうるさいーーお前…………腕が義手じゃないか‼」

「「」」唖然二名

「坊っちゃん‼ 何かありましたか⁉」

 

桐崎さんに小野寺さん、鶫さんに宮本さん、あと集と竜さん(集英組の方)が厨房に集まってしまった。あーあ、説明めんど。でもなぁ、魚捌くのには義手がむき出しじゃないとやりにくいんだよ。

 

「あー、腕に関してはな、前に事故でポロっとやっちゃった」

「「「「「軽ッ⁉」」」」」

「んでもって、腕に関しては以上。眼帯に関しては聞くな、ということで解散」

 

何とも言えない表情で厨房を出ていく各々方。だって説明できないじゃん。確かに事故で失ったけどさ、義手自体が血液中のナノマシンを使って動いているんだぜ? だから義手は取り外し不可。

さて、人も散ったし作業しますか。

 

「よぉーし、こいつでいっちょ美味いもんつくってやるか」

 

俺が取り出したのは

 

「ウナギ⁉ しかもでけえし、黄金色⁉」

「こいつはな、産卵を控えたオオウナギだ。偶然釣りしてたらかかってさ、産卵期になるとこんな感じの色になるんだ、稀だけど。だが、こいつの味わいはな、どんな特上のウナギでも勝てないぜ」

 

今日釣った黄金色のオオウナギだ。全長が二メートル近くある。しかもまだピンピンしていやがる。生命力強えな、おい。

 

「よし、捌くとするか。まず、目打ちしてまな板に固定」

「え⁉ 義手の指先から釘が打ち込まれた⁉」

 

あ、言い忘れた。俺の義手、人差指に工具が仕込んであるから。ネイルガンとか、レーザーカッターとか。

 

「次に、エラの後ろくらいから背骨までに切れ込みいれてっと。それにしてもでけえな、鰻用に作った包丁じゃなきゃ捌くの無理じゃね?」

「捌きにくいウナギをあんなにも楽々と…………龍之介って何者?」

「ん? 釣り好きの男子高校生だけど?」

「な、納得いかねえ…………」

 

さてさて、ギャラリーが何か言っているようだが、俺はもう背骨の処理まで終わって、蒲焼とかにできる用意はできたぞ?

 

「ところでさ、ウナギ料理、なに食いたい?」

「シンプルにうな丼で良くね?」

「んじゃ、米は任せるぜ一夏」

「おう。楽、御釜ある?」

「釜? おう、あるぜ。こいつだろ?」

「さんきゅ。龍之介、米はどうする?」

「有澤米使おうぜ。ほらよ」

「了解。ウナギは頼むぜ」

「誰にいってやがるんだか」

 

有澤米。有澤重工が生み出した究極の米。生の米は非常に硬く、金槌でも砕けないが、御釜で炊き上げると、白金の米に変わり、柔らかい舌触りと、モチっとした食感、そしてほのかな甘みがでる。そのまま食っても美味いが、こいつの最も美味い食い方は丼もの。何にでも合う、まるでACのパーツのようにね。

 

「なぁ、楽。ここから先は完全な企業秘密だから、退室願いたいんだが…………」

「ん? あ、ああ。悪いな、料理下手そうとか思ってさ」

「別にいいってことよ。その代わり、とびきり美味いもん食わしてやるからな? 覚悟しとけよ」

「楽しみにしてるぜ!」

 

どれ、楽も退室したところだし、俺はアイテムボックス(拡張領域に入ってた)からウナギ焼き用のコンロを取り出す。無論、炭火でやらなきゃ意味がねえ。あの香ばしく焼けたタレの香りは炭火でなきゃ、出せねえもんだ(俺の持論)。

 

「米はあと二十分くらいでいけるか?」

「ああ! てか、有澤米ってなんでこんなに硬いのに、早く炊けんだよ」

「知らね」

「おい…………」

 

さて、ウナギを焼くとしよう。まずは適当な長さに切り分けて、串を回しながら刺し、コンロに乗せる。コンロと言っても、U字型の側溝とかに使われるやつなんだけどな。

炭火で最初に白焼きにする。ここで火の通し方が甘いと、ウナギの血に含まれる毒素を完全に消すことができないからな。まぁ、血抜きをしっかりして酢で〆れば刺身でも食えるがな。

そして、その白焼きした身をタレに浸し、また焼き上げる。その途中、ハケでもう一度タレを塗る。焼き上げの最後に、色を整えるためにもう一度塗れば、蒲焼は完成だ。

 

「おーい、そっちはどうだ?」

「今までにない、最高の仕上がりになったぜ。ウナギはどうなんだよ?」

「こっちも仕上がる。アイテムボックスから丼を出せ! 新香の用意もだ!」

「おうよ!」

 

一夏が丼に飯を盛り、その上に俺がウナギをおき、山椒を軽くふりかけてから蓋をする。この作業を繰り返すこと十分。最高のうな丼が仕上がったぜ。

 

「ふぅ、完成したな」

「よし、冷めないうちに持って行こうぜ」

「あいよ!」

 

俺と一夏で手分けして、丼を持つ。まあ、義手がある分安定して多く持てるしな、一気に全員分持っていけるぜ。

ただし、持ってく場所が場所だ。楽ん家に来た時、竜さんにな宴会場貸し切ってもいいよ、と満面の笑顔で言われたから、使わせてもらったんだがな、とんでもなく広かった。二百人は入れんじゃねえのってレベル。驚いたぜ。

 

「おーい、飯ができたぞ」

 

無論そこにいるのは、

 

「うな丼! 私食べるの初めてだから楽しみ!」

「私もあまり食べたことないからとても楽しみなんだよ」

「うな丼とは一体どのようなものなのだ? 気になるな」

「高級品よ。それも、七月土曜の丑の日にしか食べれないもの」

「うひょ〜、ウナギなんて何年ぶりなのかなぁ〜」

「坊っちゃんの友達が作った飯…………あっしが食べてもいいんですか?」

「おう! 龍之介は美味いもん食わせてくれるって約束したからな!」

 

上から順に桐崎さん、小野寺さん、鶫さん、宮本さん、集、竜さん、そして楽。どうやら、そこまで楽しみだったらしい。期待に添えられるかはわからんが、早速食わせてやろう。

 

「こいつが、俺らの作ったうな丼だ!」

 

一人一人、お膳にうな丼とお新香をおいていく。

 

「どんな感じなんだろ…………」

 

一番最初に蓋を開けたのは小野寺さん。

 

「うわっ! す、すごい蒸気…………」

 

でしょうな、出来たてやし。軽く蒸らして米にもタレがしみてないといかんねん。

 

「じゃあ、早速一口…………こ、これは‼」

「ど、どうした⁉」

「うなぎがとても柔らかく焼けていて、それでいてタレが香ばしくて、その上このご飯にも味が程よくしみていて、美味しい、とても美味しいよ!」

 

おっしゃァァァァァァッ‼ 素材は本当に運で手にいれたようなもんだからな。そんなに作ったこともないものだから自信なかったけど、ここまで絶賛されたら嬉しいもんだ。

 

「そんなに⁉ じゃあ、私も…………〜〜〜〜っ! すっごく美味しい!」

「これは、確かに美味です!」

「うなぎって、ここまで美味しいものだっけ? 今までのが霞んで見える…………」

「ひょ〜〜〜〜っ! こいつはうめえ!」

「うなぎも去ることながら、この付け合わせの新香もいいものですなぁ、坊っちゃん!」

「ああ。本当に最高の料理だよ、これは。すごい、すごいよ、このうな丼! 流石、二人の料理だ!」

「へへっ、そこまで言われるとな…………」

「なんか、恥ずかしいな…………」

 

俺と一夏、板前の服を着て同時に頬をかく。

 

「俺らも食うとするか!」

「おう! そんじゃ」

「「いただきます!」」

 

一口、口に入れると

 

「「ハラショォォォォォォォッ!(ロシア語で素晴らしい)」」

 

あまりにも旨くて感動したのは言うまでもない。

 

 

 

 

 

「あ、楽。言い忘れてたけどさ」

「ん?」

「ペイルライダー、蒼いISな。あれ、お前にやるわ」

「ブフォッ‼」

 

楽にペイルライダーをプレゼントしたら突然吹き出した。

 

 

 

 

 

『主任、帰還用ユニットが完成しました。帰還の用意をして下さい』

「そうか…………もう完成したのか」

『少し残念そうですね。何かありました?』

「少し名残惜しい、かな」

 

とうとう帰還の日が来た。こっちの世界はこっちの世界で、学ぶこともあったし、楽しいこともあった。きっとな、この世界で学んだことは、俺が元の世界ででも使える気がする。だが、戻ってしまうと、あの楽しい仲間に会えなくなる、それだけが寂しいな。

まぁ、小野寺さんにはうな丼で恩を返せたと思うし、人なんて別れを越えて成長するもんだからな、仕方ないか。

だが、写真くらいはいいよな?

 

「龍之介?」

「一夏、帰る用意が整った。準備はいいな?」

「ああ。でも、その前に龍之介、お前みんなと写真撮りたいんだろ?」

「なぜわかったし…………」

「お前の考えはわかるもんだ。幼馴染、だろ?」

「よく言うぜ、お前も」

 

ってなことで、写真を撮ることが決定した。

 

「もう帰るのか…………」

「ああ。いつまでもここにいるわけにもいかんしな」

「二日しかあってないけど、楽しかったわ」

「俺もだ。こんなに楽しかったのは久しぶりだったぜ」

「向こうでも元気に頑張りなよ、旦那」

「集、お前もな」

「とても楽しい日だったわ」

「ああ、別れるのが惜しいな」

「仕方ないさ。運命ならな」

 

まぁ、全員揃って…………ない?

 

「あれ? 小野寺さんは?」

「なんか、自宅に向かっていったわよ、全力で」

「何をしに行ったんだ、小野寺は?」

 

ちなみに帰還するまであと一時間くらいあるから、まだまだ余裕はあるんだが、その時間もみんなと過ごしたいと願う俺がいる。

 

「ごめ〜ん! お待たせーーひゃぁっ!」

「「「何もないところで転ぶ⁉」」」

「小咲、不器用だからね」

 

って、傍観してる場合じゃない! 俺は榴雷を展開、クイック・ブーストを起動し一気に距離を詰めて小野寺さんを拾い上げる。流石00-ARETHA、ブーストの出力が違う。

 

「大丈夫か?」

「うん、ありがとう、有澤君。なんか私、昨日から助けられっぱなしだね」

「その前は俺が助けられっぱなしだったけどな」

「そうだね」

 

ふぅ、何とかセーフ。怪我させたら大変だもんな。俺は榴雷を解除し、小野寺さんと共に皆の元へ戻る。

 

「ところでさ、小野寺はなんで家に一回戻ったんだ?」

「そ、それは…………」

「ん? おやおや、小野寺〜、その後ろに隠した物は何かな〜?」

「ま、舞子君!」

「小咲、それ何?」

「る、るりちゃんまで…………」

「なんか怪しいわね…………」

「千棘ちゃん!」

 

どうやら何か持ってきたらしいが、何なんだろうか?

 

「お、織斑君、あ、有澤君」

「ん? どうした?」

「お、俺もか?」

「こ、これ、受け取ってくれますか?」

 

そう言って差し出された物は、包装紙に包まれた箱。もしかして、こいつは

 

「和菓子、か?」

「そ、そう。偶然帰ってきていた妹に手伝ってもらって作ったの」

「ありがとうな。そうだ」

 

俺はふと思い出して、拡張領域よりある一冊の本を取り出す。

 

「こいつ、やるよ」

「これって…………レシピ本?」

 

俺の作ったレシピ本、その予備。オリジナルのほうは俺が厳重に保管してるし、予備はまだ他にもある。

 

「そうだ。普通の素材で作れる料理ばっかりだから、練習してみ。…………ついでにその料理で楽の胃袋をがっちりつかんじまいな(ボソッ」

「な、な、ななななにを、いいいってるの⁉ 有澤君‼」

「別にー。まぁ、頑張れよ」

 

さて、小野寺さんが顔を赤くした他に変わった事は特にないな。

 

「ペイルライダー、お前はこっちに残るんだな?」

〔ああ。俺が認めたやつがここにいる限りは、な〕

「了解。お前の任を全うしろな」

 

ペイルライダーはこっちの世界に残るつもりだ。まぁ、楽の専用機になってしまったわけだからな。まさか、死を呼ぶ第四騎士が誰かを守る蒼騎士になるとは、想像できなかったぜ。

 

〔あっくん、残り三十分〕

「ああ、わかった。よし、みんなで写真撮るか!」

 

てなわけで、皆で写真を撮る事にした。まぁ、記念写真だよ、記念写真。

 

〔どうする? 私達もIS状態で写った方がいいかな?〕

「任せる、自由にしろ」

〔歩ー、せっかくだから写真に写ろうよ〜〕

〔そうだね。せっかくだもんね〕

 

そういう事で、IS状態で出てきたルリアと歩。というか、榴雷と白牙だな。二機は俺たちの後ろに並び立つ。

俺にはやりたい事が一つあった。想像なんて簡単にできるだろ? 小野寺さんと楽を隣同士に並ばせる、それだけだ。

 

「よし、撮るぞー。皆、撮ってもいいかな?」

「「「「「いいとも!」」」」」

 

ネタに付き合ってくれてありがとう。俺はカメラのタイマーをセットし、クイック・ブースト級の速さで俺の位置に戻った。

そしてきられるシャッター。無論、隣同士にする計画は成功。写真も撮れたし、名残惜しさはない。

 

「さて、俺らはそろそろ戻らなきゃなんねえ。別れんのは辛いが、まぁ、願っていりゃいつかは会えるだろ」

 

俺らの足元に翡翠色の粒子が集まり始める。帰還用ユニットが起動したのだろう。てか、これコジマ粒子じゃねえか。どんだけ便利な粒子なんだよ、おい。

 

「あ、あとさっきの写真な。ペイルライダーにデータ送ってあるから、現像頼んどいて。あと、ケータイとかパソコンにもデータ送れるからな」

 

粒子の濃度はどんどん高くなる。そろそろだな、本当の別れは。

 

「じゃあな、皆。元気でな」

 

その一言と共に俺と一夏、ルリアと歩は翡翠の煌めきに包まれた。

 

 

 

 

 

「お帰りなさい、主任」

「ああ、ただいま」

 

何とか無事に帰ってこれた俺は、第零課研究開発室にいた。

 

「あ、減給の件だけどさ」

「「「‼」」」

「ナシにするわ。こっちもいい思いさせてもらったし」

「「「あざーす!」」」

 

もちろん、減給なんてするわけないだろ。あんなにも楽しい思いをさせてもらったんだから。責めるのはおかしいだろ?

 

「あれ? 後ろにあるあの装置は?」

「あれですか? あれは異世界道と言いまして、主任が行った異世界をつなぐトンネルです」

 

あまりの事に俺は顎が外れそうになった。まさかの俺がいった世界をつなぐトンネルだと? やはりこいつら

 

「変態技術者共が」

「「「最高の褒め言葉です!」」」

 

 

 

 

 

企業連にある俺の自室に戻った俺は直様ベッドにダイブした。そして、榴雷のコンソールをいじってデータサーバーを呼び出す。中には、あの時撮った写真がある。小野寺さんと楽を隣同士にしたのは良かったが、あの瞬間、俺の腕は小野寺さんに引っ張られた。何故なのだろうか? 俺はそれが不思議でたまらない。

 

(でも、まあ悪い思い出じゃないからいいか)

 

ふと額を触る俺。そこにはまだ絆創膏が貼ってあった。




まさかの初の二万文字超え………
それでも文はやっぱりブランクを感じる…………
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
一言
0文字 一言(任意:500文字まで)
※評価値0,10は一言の入力が必須です。参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。