頭ふっわふわな短編集   作:サラダ豆乳パン

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こちらは前編となります


月姫 アルクェイド・秋葉・シエル・翡翠・琥珀のハーレム(前編)

「おっ…」

 

 

 妹の秋葉と並んで登校する姿も、ようやく日常となった今日このごろ。教室に向かう途中で、幼い頃からよく知っている男の後ろ姿を見かけた。背は高すぎるわけでもなく低すぎるわけでもない中肉中背の青年だった。後ろ姿しか分からないが、今日は少し機嫌がいいようだ。遠野 志貴には要因までは分からないが、そのような感じだけはわかった。

 

 機嫌が良かろうが万が一がある。昔の過ちを繰り返さないように声だけかけた。

 

 

「よう、シャドー」

 

 

 ここは相変わらず周りがざわつくが気にしない。シャドー、と名を呼ばれた青年が振り返る。

 

 

「………」

 

 

 夜更かしのし過ぎだろう消えない目の隈の所為で更に近寄りがたくした顔の青年が無言でカバンを持っていない手をあげて返す。

 

 

「今日も秋葉と来たんだ」

 

「………」

 

 

 手を上げ返して、シャドーの隣に並ぶ。

 

 

「今日の朝、英語の小テストだろ? できそうか?」

 

「………」

 

「俺? ちょっと自信ないかな。文で来られると困る」

 

「………」

 

「文で来られると、単語の意味を考えて考えてで、今度はそれをうまくつなぎ合わせなきゃいけないだろ? それが面倒だよな…」

 

「………」

 

「英文は英文として読めって? どうしても日本語に変換しながら読んじゃうんだよなぁ」

 

 

 ここまで言葉を発しているのは志貴のみだ。だが、成立している。会話と言うには一方通行のようだが、シャドーは表情や手を細々と動かしているため一応、意思の疎通はできている。手は誰が見ても分かるが、表情の方を見るとよく分からない。微妙な変化なのだろう。傍から見ると勝手に喋る志貴がうるさいと手の動きで追い払おうとしているように見えるのだ。

 

 なにせ、シャドーという男。この学校で一部を除いて彼の声を聞いたものはいない。とんでもない美声だとか、顔に似合わず可愛い声とか色々噂されている。出欠確認でも喋らない。教科書の朗読などは目で教師らを威圧し指名を黙殺させる。元々喉に疾患があるとかそういうわけではないらしいが、まったくしゃべらない。声を出さない以外は素行良好、成績も高い所にいるため教師らは何も言わない。熱血教師などがなんとかしようと指導をしていたが、声を聞いたものはいなかった。

 

 

「………」

 

「ん。 体調は平気だ。お前は相変わらず心配症だな」

 

「………」

 

 

 教室の前までたどり着いて志貴の席で談話する。といっても話しているのは志貴だけだが。有彦は今日も遅刻のようだ。

 

 

「いや、カレーでこれは治らないから。タッパーを取ってこようとするな」

 

「………」

 

 

 どことなくしょぼんとした様子を醸し出しているシャドー。それに志貴はちゃんと礼を返した。

 

 

「気遣ってくれて有難うな」

 

「………」

 

 

 今度は誰でも分かる。気にするなという意思表示だ。

 

 

「ん? なんだ、これ?」

 

 

 ポケットから何かを取り出して志貴に渡す。長方形で包装紙に包まれている。

 

 

「ガム、か?」

 

 

 こくりと頷いて肯定の意を示す。そして頭を指差して、三回頷いた。

 

 

「へぇ、そうなのか」

 

 

 何がわかったのか分からないが志貴はシャドーを理解し、包装紙を開け口に含もうとして少し止まる。

 

 

「なぁ、シャドー」

 

「?」

 

 

 首を傾げ、どうした? と尋ねるシャドー。

 

 

「これ、何味だ?」

 

「…!」

 

 

 再び頷くだけのシャドー。嬉しいものをもらったのでおすそ分けしたかった、と表情と仕草で分かった志貴は困った。これがミントとかそういったメジャーな味でないことが分かったのとシャドーにこれだけ好意的に相手にされる人物からのものだということがわかったことと、シャドーは悪意も何もないということ。

 

 

「カレー、味か…」

 

 

 美味しいからはやく食べてみろ、と善意しかない目で言うシャドー。美味しいと感じる彼の舌と志貴の舌、それぞれの味覚が合っていればいいが。

 

 

「………」

 

 

 ためらう。どう考えてもネタ商品なゲテモノなそれを口に含むことにためらいが生じる。冗談で渡されたなら適当に濁して遠慮すればいいが、これは圧倒的善意からのものであるため断れない。

 

 また首を傾げ、どうした? と尋ねられる。全身から溢れる善意に志貴は意思を固めた。

 

 

「い、ただきます」

 

 

 翡翠の料理並でないことを願って口に入れて咀嚼した。

 

 

 味はわりかしイケた。

 

 

 

 一時限目の英語の授業は小テストから始まった。筆記用具を置いて志貴は小さく息をつく。黒板のとなりにある時計を見るとテスト終了の合図があるまで、いつもより時間があった。

 

 ガムを噛みながらシャドーのヤマを当てにした勉強は成果を出した。ガムを噛む事で顔と顎の筋肉を動かし、脳内の血液量が増えて脳の神経細胞が活性化して集中力が上がったため、テストの出来は中々よかったらしい。

 

 シエル先輩のものだろうアレはゲテモノではなかったらしい。あのカレーマニアのシエルのものなのだ。流石にゲテモノを渡すわけがない。彼女のカレーへの情熱ゆえもそうだが、好きな相手にゲテモノを渡す嫌がらせの行為を「いいひと」を地でいく彼女がするわけがない。

 シエルとは、お互いカレー好きなこともあるためシャドーの校内での数少ない好意的な交流がある一人だ。校外でも仲がいいのだが、仲の良さをアピールするときに限って混ざる人物が多くいるため。どのくらい深い仲なのかは、志貴にも他の生徒や教師もよく分からない。

 

 時間を持て余した志貴は、テストの解答を確認もせずに自身の斜め前に座るシャドーを見た。背を真っすぐ伸ばし手は行儀よく膝の上に置き目を閉じて、寝ていた。寝息は聞こえないものの寝ていた。その姿は武人が鍛錬の一環として精神を集中させるために瞑想しているような、そのような研ぎ澄まされて凛とした姿。だが、実際はただ寝ているだけだった。

 

「(相変わらず上手いなぁ…)」

 

 志貴は知らずに笑みを浮かべる。シャドーは彼にとってかけがえのない日常の象徴であり続けている。昔も今も。ただ一つ変わってしまったことは可愛げというものがごっそり抜けてしまったことだ。いや、年頃の男に可愛げがあっても気持ち悪いだけなので別にいいのだが。人間的に欠けつつも満ちているようにみえるのは何故か。そんなこと志貴は考えたこともない。執着が薄い志貴にとって、今も昔もいなくなったら凄く困る、そう口にも出させる稀有な存在。それは、堂々と居眠りをしている。

 

 

「よーし、終わりだ。エンピツおけー」

 

 

 教師が終了を告げる。クラスメイトは様々な様子で、達成感、絶望感、安心感、などなど身体や表情で表している。シャドーは、今目が冷めたであろうにそんなこと感じさせずにパチリと目を開けた。

 

 

「じゃあ、隣と交換して赤ペン持てよー」

 

 

 教師に言われた通り隣と交換する。シャドーが隣と言葉はいつも通りかわさない。志貴も特に隣とは話さなかった。

 

 

「まず、第一問の答えは――――」

 

 

 答えをまず言い丸つけをする。その後、答案用紙をそれぞれ返して教師がっぽい発音で英文を読んで解説する。

 

 

「(8割いったか…。サンキュー、シャドー)」

 

 

 解説を聞き流しながら自身の名前を書いた隣の欄の数字を見て心のなかでシャドーに感謝を言う。シャドーは綺麗な姿勢のまま黒板を見ては自身の答案用紙に何か書いている。真面目な彼のことだから落書きをしているのではなく、解説で気になったことをメモしたりしているのだろう。

 

 

「この問題は、定期試験でも似た感じで出すから覚えとけよー」

 

 

 集中力を途切らせてだらけていた連中が、はっとして答案用紙に印をつけたりした。志貴も彼らに習って印をつける。そこの問題は丸がしてあった。

 

 いくつか定期試験のヒントなどを言ってから昨日の授業の続きに入る。教科書の朗読は日付で決まるのが、この教師のマイナスポイントの一つだ。そして、その当番はシャドーである。

 

 

「じゃあ、ここを…。きょうはぁ、えっと……? あ」

 

 

 面倒そうにシャドーを見る教師。シャドーは気にしていないのか教科書を見たままだった。

 

 

「お前、読むか?」

 

「え? あたしですか?」

 

 

 シャドーの隣の席の女生徒に声をかけ読ませることにしたらしい。女生徒は大人しめな性格なので、嫌だとしても嫌と言えず横目でシャドーを睨むと立ち上がり英文を読み始めた。シャドーは動じず教科書の英文の朗読と同じスピードでエンピツの後ろでなぞる。志貴は苦笑いした。社会に出てシャドーは絶対苦労するな、と。

 そうして英語の授業は終わり他の教科も滞りなくすんで、昼食である。

 

 

「シャドー、学食行こうぜ」

 

 

 シャドーはタッパーと米だけ入った弁当箱を持って志貴の後に続く。

 

 

「お前料理創れるのにそれなんだな」

 

 

 悪いか? とでも言ってるのだろうか。よくわからないがシャドーは横目で志貴を見返す。

 

 

「いや、そのカレー美味いの分かるよ。そこらのカレーより美味いしハマるのは分かる。俺も好きだし」

 

 

 無言で左上あたりを見るシャドー。

 

 

「こう、普通は卵焼きーとか、えっと、きんぴらごぼうーとか色々考えないか?」

 

 

 視線を下に下げて片目を瞑る仕草をするシャドーにしょうがないと理解した。

 

 

「なるほど。面倒くさい、か。なら、しょうがない」

 

「あら、お二人とも学食ですか?」 

 

 

 階段上からよく知った声がかかった。二人は同時に後ろを向き軽く頭を下げる。

 

 

「こんにちわ、先輩。先輩も学食ですか?」

 

「ええ、そうです。ここのカレーも私は好きですから」

 

 

 と、そこでシエルはシャドーの手元を見る。

 

 

「もしや…、手作りcurryですか?」

 

 

 何故、若干本場っぽい発音でカレーといったのかは分からないがシエルがシャドーに問いかける。それにただ頷くだけで返す。

 

 

「分けて頂けたり…してくれますか?」

 

「先輩なら、いい」

 

 

 初めて今日シャドーの声を聞く。何故か人払いがしてあるので聞いたものはシエルと志貴しかいない。学校の伝説は守られた。

 

 平坦な声は年頃らしく変声期を迎えており志貴よりも声が低い。冷たいというよりも冷めているといった表現が似合う声質であった。

 

 

「本当ですか!? いや~、今日はなんていい日なんでしょう。シャドーさんとご飯を食べられるだけでなく、愛情もりもりのカレーまで頂けるなんて!」

 

「先輩先輩。俺、俺忘れてる。俺も入れて、抜かないで。せめて添えて」

 

「ふふふ。こうしてはおられません。電子レンジは割りと皆さん使いますから急がないといけません。急ぎましょう!」

 

「………」

 

 

 シャドーが転ばない程度に引っ張り急かすシエル。特に反対しないからか大人しくシャドーはついていった。

 

 

「やれやれ…。モテるってのは大変だ」

 

 

 志貴は階段を少し早く降りてついていく。

 

 

 

 

「あら、皆さん」

 

「うげ、秋葉…」

 

「こんにちわ、秋葉さん」

 

 

 シャドーは弁当を持ち上げて返答する。

 

 

「こんにちわ、シャドーさん、兄さん、シエルさん。ところで…、うげ、とはなんでしょうか、兄さん?」

 

「あ、いや、その…」

 

 

 思わず出た声に秋葉が半目で睨みつけ追求する。

 

 

「兄妹仲良くていいですね。さぁ、シャドーさん、私達には使命がります。電子レンジへ早く行きましょう」

 

 

 その声に頷き返し二人でレンジへ向かう。温めて帰ってくるまで席を確保した志貴は公衆の面前で説教を受け続けていた。

 

 

「ああ、お茶はそこの金色と青いのだけに淹れてくれればいいわ」

 

「ちょっと、妹」

 

「青い…」

 

 

 二人から自身らの扱いに文句が上がるが無視される。シャドーはぼんやりと皆を見ていた。

 

 

「え? ですが」

 

「私とシャドーさんは今喉が渇いていないの。欲しいときは淹れてもらうから、今はいいわ」

 

「はい。わかりました」

 

 

 習った手順通りに紅茶を淹れる。いい匂いだ。味も申し分ないだろう。何か仕掛けられてなければ。

 

 

「で? 妹、なんかあったの?」

 

「何の話です」

 

 

 唐突に話し出すアルクェイドに不機嫌なのを隠さないで返す。

 

 

「翡翠にさっき聞いたじゃない」

 

「特に話すようなものではありません。お気になさらずに」

 

「ふ~ん……。まぁ、いいや」

 

 

 本能的に何かを察したのか紅茶に手を付けずにシャドーの方を向くアルクェイド。

 

 

「ねぇ、知ってる、シャドー? 最近、子供がいなくなっちゃうんだって」

 

「あぁ、あの噂ですか」

 

「どんな話ですか?」

 

 

 いつもなら食いつきもしない秋葉が食いついた。アルクェイドが茶菓子をつまみながら話し出す。

 

 

「夜になると青い灯が灯るんだって」

 

「青い灯?」

 

「そう、なんかばーっと」

 

「一面にというより一部らしいです」

 

 

 それで と目でシャドーが続きを促す。

 

 

「灯る時は夜の十二時、ぐらいかな? そのぐらいに子供が泣き出すんだって」

 

「確か七五三ぐらいの年の子たちがなくそうです」

 

「そして、朝起きると子供がいない。家の中を探して回る。でも見つからない。それぐらいの子供だからそう遠くへは行けないはず、かといって誰かが連れ去ったあともない」

 

「ニュースとかでも最近子供が行方不明になっているのが流れてましたね」

 

 

 秋葉はアルクェイドの話の後、思い詰めた顔で言う。

 

 

「で、見つかったんですか?」

 

「見つかったわよ」

 

「何処でですか?」

 

「墓地」

 

 

 嫌な場所で見つかるものだ。

 

 

「正確には無縁墓地です」

 

 

 シエルが補足する。

 

 

「あぁ、最近そういう所に行く方が増えたと聞いたことがありますね」

 

「続けるけど」

 

 

 シャドーは翡翠が怯えてないか確認する。その翡翠はいつでも給仕ができるように秋葉の傍に立っていた。とくに怖がっている様子はない。シャドーの視線に軽く首をふることで返した。

 

「見つかったのはいいんだけど、ちゃんとしてなかったのよ」

 

「ちゃんとする、とは?」

 

「飾りになってたって」

 

「飾り?」

 

 

 秋葉はアルクェイドの次の言葉に期待した。別のものであってくれと。でないと面倒なことになっていると理解して対処しなくてはならないからだ。

 

 

「骨で作った飾り」

 

 

 確信して秋葉は頭が痛くなった。それをまったく見せずに、いつものすまし顔で話の続きを聞く。

 

 

「骨の飾り、ですか…」

 

「なんか丸いの」

 

「アバウトすぎますよ…。丸いとっても円状なんです。骨をくっつけて円状にして飾る、そして妙なのがまだあります」

 

「妙?」

 

 

 そこでシャドーがぽつりと言った。

 

 

「念仏」

 

「そうそう、なんだ知ってるんだ」

 

 

 アルクェイドが言葉を続ける。

 

 

「なんだっけ、なむあみだぶつ~ってのがびっしり書いてあるんだって」

 

「仏教関係…」

 

「宗教のものが出てきましたからね。界隈では色々問題になっています」

 

「噂というだけではないのですか?」

 

「筋では、本当にある事件だという話で進んでいますね」

 

 

 シエルの言葉に秋葉は頭痛と胃痛を感じた。そこで琥珀が戻ってきた。

 

 

「何をしていたの、琥珀」

 

「新しいヤク、いえ、お薬を調薬してまして遅れました。申し訳ありません」

 

 

 さらりと危ない言葉を言う琥珀。秋葉は呆れたように息を吐くことで自身の胸中の淀みを含ませて隠すことに成功した。

 

 

「喉が渇いたわ。琥珀、お茶を」

 

「はいは~い」

 

「お茶なら私が…」

 

「翡翠はいいわ。琥珀に給仕を代わってもらいなさい。立ちっぱなしで疲れたでしょう」

 

「でも」

 

「秋葉様のお言葉に甘えましょうよ」

 

「………翡翠、休め」

 

 

 ペットに命令するかのようなシャドーだが他意はない。

 

 

「じゃあ、淹れますね~。蒸らして~……、コポコポ~」

 

 

 秋葉とシャドー分の紅茶を入れ給仕する。他の二名は翡翠が淹れてくれたが一滴も減っていない。

 

 

「美味いな…。流石だ、家政婦」

 

「ふふ、ありがとうございます。ところで、シャドーさん。今日はお泊りになられますか」

 

 

 飲んで一息つき感想を言うシャドーに嬉しそうに答えて翡翠がずっと聞きたかったことを聞く。

 

 

「泊まるの? じゃあ、私も泊まる」

 

「なら、私も」

 

「部屋がありません。お帰り下さい」

 

 

 シャドーの返事はまだなのに手を上げていう二人に、秋葉はすげなく断る。

 

 

「こんな広いんだから空き部屋なんていくつもあるでしょー」

 

「貴女達を泊まらせる場所はないです」

 

「そこをなんとか」

 

「無理です」

 

「私は大丈夫ですよね?」

 

「貴女"達”です。貴女も泊まれるなんて思わないで下さい」

 

 

 ぶーぶー言い争う三人を無視し、琥珀が再び問いかける。

 

 

「シャドーさんのお部屋は確保してありますので。どうですか?」

 

「………」

 

 

 琥珀の横で翡翠が無言で泊まって欲しいとアピールする。

 

 少し考えた後、無言で首を振った。その様子に姉妹は残念そうに肩を落とす。

 

「そうですか。まぁ、いいです。もうしばらく此処に居てくださるだけだけでも嬉しいです。ね、翡翠ちゃん」

 

「! ……はい」

 

 

 シャドーは、姉の言葉につられて翡翠を見たため目が合ってしまった。それを慌ててそらし顔を赤くして頷いた。

 

 

「これぐらいまでいていいか?」

 

 

 学生服の袖をまくり腕時計を見せ指で数字を指す。長居するという時間ではなかったが、もうしばらく遠野邸に淹れる時間帯だった。

 

 

「はい。いつまでも居て下さい」

 

「家がある」

 

「ここを家にしましょうよ」

 

「自宅はあっちだ」

 

「ここを自宅に!」

 

「ここは志貴とアキと家政婦と翡翠の家であって、俺の家じゃない」

 

 

 ぽんぽん言い合って時間は流れた。翡翠はさり気なくシャドーが飲み干したカップにお茶を注ぎ自分のお茶も褒めてもらおうとし、秋葉たちはまだ言い争っていた。

 

 

 

 

→中編(スルー推奨)に続く

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