頭ふっわふわな短編集   作:サラダ豆乳パン

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TOX ミラ・マクスウェル、エリーゼ・ルタス

 風呂は良くしてある。だが、食事は各自で作れという宿屋を取った一行。調理したものは、ミラやエリーゼといった食いしん坊なメンツを満足させる料理であるだろうか。それによる視覚と嗅覚といった感覚器から入る刺激には、唾液をよく分泌させるものだった。

 

 

「肉をたらふく食いたいぜ」

 

 

 見える緑に、そう呟くのは八百屋の息子のくせに野菜嫌いであるメックだ。

 

 

「メック、肉ばかり食べると体壊すよ?」

 

 

 医者の卵であるジュードは、いつものようにメックの分のサラダを他の人より多めにしながら注意する。

 

 

「……なぁ、エリーゼ。牛や豚、鳥は何食ってると思う?」

 

 

 それを嫌そうな顔をしながらも黙って受け取り、ドレッシングを探しながら同じ肉好きのエリーゼに尋ねる。

 

 

「えっと……草、ですよね?」

 

「そうだ。彼らは草を食っている。草は植物だろ? 野菜も植物だ。その植物を食いまくった彼らの肉、それ即ち、肉=野菜だ。俺は肉を食べるべきだと思うんだよ」

 

「でた、ま~たいつものメックの肉野菜理論。いいからサラダ食べなってば」

 

 

 エリーゼの回答によく分からん理論を展開するメック。そんな彼にため息をつきながら、ジュードの手伝いをするのはレイアだ。

 

 

「メックは相変わらず面白い発想をする。……ジュード、肉を食べて食物繊維を作り出すことはできるだろうか?」

 

「えっと……理論上は可能だけど、人体でできるかはまだ分からないと思う」

 

「そうか。メック、君は特異な性質なのだな」

 

「……メックさんよ。おたく、特異な性質お持ちなの?」

 

「……持たん。お前ら、よく分かんない視線いらんぜ。肉好きなだけだよ、ホントに」

 

 

 ミラの相変わらずの天然っぷりにつられるメンツ達。彼らに、メックはげんなりしていた。その様子をどう対応したらいいのか分からない感じに手を漂わせるアルヴィン。そんなみんなを見守るのはローエンである。

 

 

「ほっほ。メックさんに可能性を見出すのは置いといて、ご飯にいたしましょう。メックさんのご両親から頂いた、たくさんのお野菜はどんなお味なのか。とても楽しみです」

 

「じゅるっ……。そうだな、早く頂くとしよう」

 

「肉……」

 

「あるじゃない」

 

「こんなクルトンみたいな肉じゃ足りないだろう、普通」

 

「じゃあ、わたしの分けてあげますね、メック」

 

「いい子だぜ、エリーゼ」

 

 

 右隣のエリーゼの頭を撫でる。彼女の親切心だけもらって、メックは緑に立ち向うのだ。左隣のミラは、優しげにそれを横目で見てから食事に手をつける。山盛りな緑に立ち向かうメックは、声には出さずに心の中で、苦いまずいを何度も何度も連呼しながら、1つも緑を残さずにドレッシングの汁だけ残して食べ切った。ちょっと涙目になってうつむいているメックに、ミラとエリーゼは頭を撫でてあげている。メックと幼馴染であるシュードとレイアは、そんな様子を微笑ましそうに見ていたのだった。アルヴィンは昔のようにはいかずに何か言うタイミングを計ってはし損ねて、ローエンは料理を綺麗に丁寧に味わう。

 

 優しい空間である。

 

 

 

 

「ジュード、レイアと上手くいってるみたいだな」

 

「な、なんだよ、いきなり」

 

 

 宿屋のサウナの中でジュードにニヤついた顔で言う。アルヴィンとローエンは薬湯や電気風呂や露天風呂などに向かっている。

 

 

「お前たちは気づいてないだろうが、見えるんだよ、空気が」

 

「空気って」

 

「あま~いあま~いピンクな、な」

 

「そ、そんなエッチなことしてないよ!!」

 

「エッチな、なんて言ってないぜ。……した?」

 

「してない、してないよ、まだ」

 

 

 顔を真っ赤にしてそれっきり黙りこくってしまうジュードに、メックは微妙な顔をした。全然進んでいないのでは、と訝しんだのだ。

 

 

「キスは?」

 

「で、できてない」

 

「抱きしめたり」

 

「まだ」

 

「……手を繋いだりは?」

 

「そ、それなら」

 

「レイアからばっかだろ」

 

 

 無言が答えである。メックは全力でため息をついた。

 

 

「イル・ファンで何学んだんだ、お前は」

 

「医学……」

 

「男女の神秘、学んだんだろ?」

 

「そういうことを学ぶんじゃないんだけど」

 

「いずれはそうなりたいだろうが」

 

「それは、まぁ……」

 

 

 頬をかいてるジュードの頭を小突く。このままでは過程をすっ飛ばして子宝に恵まれそうだったからである。

 

 

「女心は自力で学ぶもんなんだ、分かりますか、ジュードくん」

 

「はい」

 

「男心が女に分からんように、女心もそうなの。だから、学び合うの、お互いに」

 

「はい」

 

「アピってんのわかってんならいけよ。はずかちいじゃないの、そういうのを捨ててイチャれよ」

 

「で、でもさ、やっぱりはずか」

 

 

 ジュードは幼馴染を頼りにしている。シュード、レイア、メックという3人だけの幼馴染。メックという大切な友人は、いつだって2人の兄貴分だったのだから。

 

 

「レイアはジュードが好きなんだよ」

 

 

 兄貴分は笑いながら言った。

 

 

「好きなやつにかっこいいとこ見せてぇし、かっこわるいとこ見られたくなんかねぇよな」

 

 

 ジュードはメックを見た。メック・ルウェンを見たのだ。

 

 

「安心しろ。ジュードのかっこいいとこも、かっこわるいとこも、全部好きなのがレイアだ」

 

 

 嬉しそうな顔のはずであった。

 

 

「レイアは、ジュードが、好きだからよ。ちゃんと、どうしても、好きでいるはずだぜ」

 

 

 メックはジュードの頭を掴んで髪を乱暴に掻き雑ぜる。その所為で視界がぶれてしまう。

 

 

「幸せにしてやるんだ、いいな」

 

 

 ジュードは雫を受けた。

 

 

「お前らが幸せだと……、たまらなく、嬉しいからよ」

 

 

 雫だけは、少しだけ冷たく感じた。それを受けて、ジュードは固くメックに誓う。3人とも大切であるから。

 

 

「うん、絶対に僕たち幸せになるよ」

 

「……おう」

 

 

 互いに笑いあえた。大切なのだから。

 

 

 

 

 ギリギリのぼせる直前で出られたメック達は水風呂を軽くすまして出た。少し後から女風呂から出てきたレイアを、ジュードが誘い出していったのを見送る。嬉しそうな二人の様子に、メックは心から微笑ましく思ったものだ。

 

 サウナと水風呂をキメた体はまだ熱い。更にコーヒー牛乳をキメても、まだ水分を求めている。なので、水を800ガルドで購入してしまう。小さい容器にぼったくりであったが、仕方がなかった。

 

 

「メック~」

 

「ふがっ!?」

 

 

 ゆっくり飲んでいた水をもう1口飲もうとしたら、ティポに食われた。なんとか零さなかったものの、息苦しいので早く解放してほしい。

 

 

「ボクたちにも水ちょ~だ~い」

 

「ひゃるよ。ひゃるふぁら、ふぁなれろ」

 

 

 ぐにょんぐにょんとティポを伸ばしながら引っこ抜く。この伸縮性と弾力性はどうなっているのだろうか。

 

 

「ほいよ、エリーゼ。こいつで買ってきな」

 

 

 ミラと話していたエリーゼがてこてこ来たので、ティポとガルドを渡す。けれど、売り子の方に行く気配がない。

 

 

「メックので……大丈夫です」

 

 

 お風呂上りなので、いつもより肌に赤みがかかったエリーゼはそんなことを言い出す。

 

 

「もう、少ししかないぜ。新しいの買ってきた方がいい」

 

「さっき値段聞いてました。高すぎです。節約ですよ」

 

「ケチる必要ないだろうに。これは俺の口がついちまってるし、新しい方がいいだろ」

 

「いいから、よこせよ~」

 

 

 ティポが圧をかけてきている。心なしか上目遣いでこちらの様子をうかがっているエリーゼも。

 

 量的に少ないので物足りないだろうし、エリーゼは分からないだろうが、メックは年頃の女の子的にまずいのではないかと思ったのだ。旅の中で水を分けることもあったが、基本的に同性同士でやることが暗黙の了解であった。旅の初めから、思春期真っ盛りのジュードとメックが気にするからだ。ジュードはまさに思春期爆発ボーイだが、メックは女の子が嫌がるだろうからというのが先にあった。人間力の差である。

 

 

「仕方ないな。ほれ、全部飲んでいいぜ」

 

「……はい!」

 

 

 エリーゼには分からないはずだが、メックの飲んでいた所に口をつけて飲んでいた。可愛いらしい女の子が自分の飲んだ後に口をつける。それは、思春期的に辛い映像であった。

 

 

「ふぅ……、生き返りました!」

 

「フルーツ牛乳もおいしいけど、やっぱり水だよね~」

 

 

 ティポの、のんびりとした声に意識が戻る。思春期はこれだから困る。異性の一挙手一投足が気になって仕方がないのだ。

 

 

「おいしいお水をいただいたので、メックにお礼をしようと思います」

 

「大げさな……。いつも戦闘で助かってるからいらねぇよ」

 

「メックは特別ですから、します」

 

「エリーゼの特別だよー」

 

 

 “メックは特別”。それはいつからか出るようになった言葉だ。深い意味はないのだろう。思春期的にはビビビっとくるものではある。思春期男子は女の子に惑わされまくるものなのだ。いつの間にか消えたコップのことなど気にすることができない。

 

 

「まず、あそこの椅子に座ってください」

 

「お座り、だよ」

 

 

 ラウンジチェアだ。丸い空間にゆったりできる椅子がついたものがある。座ると周りがすっぽりと壁に覆われるもの。防音性がよさそうで、ある程度密室感があり、人の視線を気にしなくて済むタイプのものだ。

 

 

「はいよ、って、お前も座るんかい」

 

「はい!」

 

 

 大き目の椅子だが、2人が並んで座るほどはない。腰かけたメックの上に乗るエリーゼ。ティポは外で待機。SPのつもりなのかもしれない。

 

 

 

 困った様子で膝立ちになったエリーゼを見上げる。何だかわからないがよく見られているようで落ち着かない。

 

 

「なんで、こっち向きに座るんだよ」

 

「頭を撫でるためです」

 

 

 よしよしと撫でられる。立てば165㎝少年と145㎝少女、20㎝の身長差。頭1つ分程の身長差とは言え、少女からは背伸びするほどの高さだ。座ってしまえばそれをする必要はない。とても近しい距離感になれるのだ。ある程度親しい感情を持つ仲でしか許されない近さだ。

 

 

「よしよし、です」

 

 

 なにが、よしよし、なのかは全く分からないが、されるがままになる。なんとも言えない微妙な気持ちになるが、そのままだ。

 

 今まであまり人に触れなかったせいで、距離感というものがわからないエリーゼ。メックたちと冒険するまでに友達が1人もいなかった少女である。メックは特に人間関係で問題など感じたこともない。苦労もそんなにない。当たり前のように仲良くなったり、喧嘩したり、仲直りする普通の人間であった。ミラのように上位存在でもない、ジュードのように依存しやすくもない、アルヴィンのようなトンでも人生など送ってもいない、エリーゼのように親がいないわけではない、ローエンほど濃い大人に成るまでの経験もない、レイアのようにひたむきに生きているわけでもない。

 メック・ルウェンは、パーティの中でレイアよりも普通であった。珍しい病気もなく普通に生まれ、普通に親に愛され、普通に友達を作り、普通に生きている。この旅だって、ジュードが軍に追われていたのを救出して、あとはそのまま成り行きであった。暗い過去もまったくない。そのようだから、パーティ内でしっかりしているのは誰かと言われれば、ミラかメックぐらい。だけれど、ミラは信念があるが、メックは特になかった。

 

 そうであるのに、芯が通っていたのはどうしてだろうか。 

 

 普通であったから。普通に自分を見られたのだから、しっかりできる。思春期モードもあるが、他者は他者、自分は自分と区別できる。それは非常に難しい。特に多感な時期だ。守られるべき子供から高くなった視点で、色々な情報を浴びまくり、様々なものに揉まれてしまう時期。自分にとって、受け入れやすいものと拒否したいものが顕著になる時期である。激しいものである。自分に対しても、他者に対しても破壊力をもつ言動や行動をしてしまう時期なのだ。

 メックはその中にいる。真っ直中にいる。旅の中で様々な情報を受信した。リーゼ・マクシアの中での争い、エレンピオスという外側の世界、精霊の存在、2つの世界が生きるための道行き。普通の少年であるメックには重すぎるものだ。綺麗ごとが通らない世界があることは知っていたが、手が触れるほど間近に感じたことはなかった。世界の方が先に汚れていたのか、人間の方が先かなどを深く考えるほど知識はない。白か黒かはっきり分けられるほど、世界も人間も上手くできていないのは理解している。そして、どっちつかずの方が多いものだということも。そのどっちつかずの中で自己を確立させることは難しい。だからこそ、王たるガイアスのような存在は奇跡である。強い自己を持ち他者を思えるなど、異常だ。彼もマクスウェルのような高い存在であるとも言える。

 

 では、メック・ルウェンという少年はどうなのか。

 

 高い壁に背を預ける少年である。

 

 彼はガイアスのような王たる存在ではない。他者を思えるが、ガイアスほどの規模ではない。助けて欲しいという手を選んでしまう少年。みんな助けられるならいいが、そうでないなら彼は、彼の大事な人だけを助ける。決して、善であるとは言い切れない、悪と断言できはしない。

 

 彼はガイアスのような王たる存在ではない。ガイアスのように自分が核として他者を牽くことは不可能だ。できれば手伝ってくれと、時間を与える少年である。強く引っ張れば千切れることを知っているからこそ、待つのだ。愚策とも言える、名案とも言える。

 

 メック・ルウェンは高い壁に背を預ける少年である。

 

 ガイアスのように誰でも助け牽いていく王ではない。メック・ルウェンという少年は、普通の少年なのだ。選び待てる少年だ。ガイアスは先陣を切れる。メックは場を整えることができる。ガイアスのような人もメックのような人も必要だ。どちらか欠くというのは効率的ではない。非凡もそうでなくとも生きられるということを体現するのが、この二人であるのだろう。

 

 一人駆けていく人か、皆と歩く人かの些細な違いである。

 

 どちらも人をよく見ているのだ。王になる前から色んな他者を“1つの視点で”見てきたガイアス、旅の中で色んな他者を“様々な視点で”見てきたメック。どちらが濃淡かなど比べる気はない。そんなものはどうでもよいのだ。違う見方ができるからこそ、彼らは人間代表として生きるべきなのかもしれない。

 

 生きていくためにはどうあるべきか。頂から見下ろす視点、下で見渡す視点。それぞれが見るところは満遍なくできはしない。たった1滴でも波紋を作ることを理解するために、小さな水溜まりが大海に続くことを理解するために。

 

 何を見、何を知り、何を思うのか。多種多様なものをどう選び、どう捨て、どう使うか。何のために生まれて、何のために生きていくのか。

 

 模索し続けるのだ。絶対的な回答などない、が、迷宮入りさせてはいけない問題。

 

 この優しくも厳しい世界を、誰でも普通に生きることを当たり前にするために、ミラが愛する人間は強くも弱くもある。

 

 

「頑張っているメックによしよし、です」

 

 

 だからこそ、普通じゃないエリーゼは、普通なのに頑張るメックが特別なのだ。

 

 

 

 

 

「いつまでするんだ」

 

「いや、ですか?」

 

「男心的にはずかちいの」

 

「大丈夫です。はずかちくないですよ」

 

 

 大分恥ずかしい様子だが、覗きに来ないと見られる様子ではない。思春期男心など生贄にしてエリーゼの満足感の犠牲になるしかないのだ。

 

 

「メックは、よく頑張ってるからよしよしするんです」

 

「普通にしてるだけなんだけどなぁ」

 

 

 風呂上がりのため、いつもの頭装備がない俺の頭部は撫でやすいだろう。撫でられている側も撫でられやすい。とても優しい手つきは、このまま眠ってしまっても怒られなさそうである。火照りが静まってきたのと心地よい揺れが、目蓋を重くさせる。

 

 

「ジュードとレイアのために、頑張りましたから」

 

 

 その言葉がなければ目を閉じて眠りにつけた。目蓋が痙攣する。

 

 

「2人を恋人にするために、頑張ってしまいましたから」

 

 

 体は冷めた。寒気がするほどに。頭は痺れる。目蓋の痙攣が脳にまで来てしまったかのように。

 

 

「1人だけ、仲間外れになっちゃいましたから」

 

「俺らは仲良し3人組だぜ」

 

 

 仲間外れ、という言葉が聞くに堪えなくて反射的に声を出す。もっと水分を取ればよかったと後悔する。喉が渇いてきたのだ。

 

 

「じゃあ、なんで3人で、じゃないんですか?」

 

「そりゃ、正しくねぇから、だろ」

 

 

 優しい手つきは変わらない。小さな手はゆっくり髪の流れに沿って動いている。心地いいのだ。瞬きができないほど。

 

 

「正しいものなんてないです。本で読みました。そういうのに正しいものなんてないって」

 

「……どんな本、読んでんだよ」

 

 

 眼球を懸命に動かしエリーゼを視界から外そうとする。けれども、彼女は視界に入ったままだ。

 

 

「好き、だったんですよね。レイアが」

 

「……っ」

 

 

 吐きそうになった。やっぱり野菜はダメだ。舌が拒否しているのだから。野菜恐怖症だ、これは。エリーゼに恐怖感なんか抱くわけがないんだから。

 

 

「今も、好きですよね。“ジュードの”レイアが」

 

 

 苦い。口の中が苦い。野菜の味は全部苦いと感じる。ジュードの親父さんが言うには味覚が鋭いかららしい。あぁ、やっぱり野菜なんか食べるんじゃなかった。口が苦い。口がまずい。なんでもいいから飲み物をくれ。食べたものを吐き出すなんて行儀が悪い。

 

 

「レイアはジュードのになっちゃったんですよ。ジュードのレイアなんです」

 

 

 優しい手つきだ。すっと眠りにつけそうなほどの優しい動きだ。悪夢を見せる動きであった。

 

 

「メックのではないんですよ、これから先もずっと“ジュードのレイア”です」

 

 

 喉が詰まった。声が出せない。息苦しい。呼吸の仕方がよく分からなくなる。だが、それは遠い出来事のようだった。

 

 だって、胸の奥がこんなにも痛い。

 

 

 

 

「メック、可哀そう(可愛い)です」

 

 

 自分より小さく見えるメックに笑いかけてあげた。特別だから。ちゃんとしてあげなくちゃいけないのだ。

 

 

「いつもご主人様を待つ子犬さんみたいな目をしてるんですよ、わかってますか?」

 

 

 いつも私たちに向いてほしいものだ。でも、レイアに向いているものだ。だから、ちゃんとしてあげなくちゃ。

 

 

「なんども相手にしてほしくてたまらない子犬さんみたいでしたよ、知ってましたか?」

 

 

 なんどでも私たちがしてあげるのに。けれど、レイアに強請ってしまう。だから、ちゃんとしてあげないと。

 

 

「でもね、無理なんですよ。わかりますよね?」

 

 

 子犬のようなメックを優しく撫でる。わからないのなら、ちゃんとするまで教えてあげるべきだ。

 

 

「“メックはレイアの特別じゃないんです”」

 

 

 特別なんだから、ちゃんとしてあげないといけない。

 

 

「メックは私にとって特別なんです。しっかり理解してくださいね」

 

 

 目と目を合わせてあげる。ちゃんとするように。

 

 

「とくべつ?」

 

「そうです。私の特別がメックです」

 

 

 いいこいいこをしてあげる。ちゃんとさせるために。

 

 

「特別です。ミラとジュード、レイアやローエン……おまけにアルヴィン、達よりも特別。メックが一番特別です」

 

「……そうか」

 

 

 嬉しそうに返してほしいのに、そう見えない。ちゃんとしてあげなくちゃ。

 

 

「すごい大事なことです。わかってください」

 

 

 メックは特別なのだ。

 

 普通に女の子扱いしてくれる。ジュードみたいにやたらちっちゃい子扱いしない、アルヴィンみたいにからかっていじめてこない、ローエンみたいに過保護じゃない。でもね、メックは、ちゃんと私がどう思うか、考えて話してくれるし接してくれるのだ。

 

 普通に男の子でいてくれる。ジュードみたいにナヨナヨじゃない、アルヴィンみたいにチャラチャラしてない。ローエンはおじいちゃんだもん。だけど、メックは、ちゃんと私がどう感じるか、理解して話してくれるし接してくれるのだ。

 

 そして、なにより。

 

 普通に好きにさせてくれる。ミラみたいにバリボーじゃないし、レイアみたいなお節介焼きでもない、そんな私が初めて普通に好きになれた。みんな、好きにならなきゃいけない人だった。ミラは頼れるところ、ジュードはお人好しなところ、レイアはお節介なところ、ローエンは賢いところ、アルヴィンはお母さん想いなところ。目を引いて、ここが好きになるところだって思って好きになった。でも、メックはそんなことで好きになったわけじゃない。

 目と目が合うことが嬉しいことだって、話すことが楽しいことだって、そういうのを感じていたら、いつの間にか好きになれた。一生懸命好きになろうとしてないのに好きになった。メックが笑うと楽しくなる。メックがしょぼんとした様子が可愛い。メックがご飯を作る手さばきに感心する。そんなメックの色んな所に目が行くようになった。

 

 そして気づいたら特別になっていたのだ。

 

 友達に憧れていた。ずっと一人だったから。だけど、旅をして友達ができた。優先して助けてくれないこともあったから嫌いになりかけたけど、そういうこともあるんだということを知って友達を大事にできるようになった。友達はいいものだ。寂しくなくなるんだから。

 

 ドロッセルのところにいたとき相手にしてくれなくて、暇で本を読んでいたけど、ここに友達がいてくれたらと何度も思った。その時、寂しいのと退屈なのとで読んでいた本の中で友達を超えるものがあるのを知ったのだ。なんとしても欲しいと思った。

 

 親友と恋人という言葉を知ったのだ。親友は男の子と女の子では成り立たないらしい。なら、恋人だ、と思った。寂しくならない特別な仲がこれだったのだ。

 

 恋人がどうであるかはジュードとレイアをみれば分かる。男の子と女の子が友達を超えるほど特別仲良くなるとなれるのだ。

 

 私はメックが特別だ。友達以上になりたい。

 

 だから。

 

 

「メック、私たちで恋人になりましょう」

 

 

 メックも私のことを特別にしてほしい。

 

 

 

 

 とんでもない申し出だった。チカチカ明滅する視界の中でエリーゼが笑っている。

 

 

「エリーゼ、お前……」

 

 

 胸の奥が痛い。口の中は苦くてまずい。異常を告げる体の反応をよそに、耳と頭がはっきりしている。何と言ったか、どういう意味か、よく聞き取れたし理解もできてしまう。

 

 

「ふふ。じゃ、次です」

 

 

 これ以上何かあるのか。エリーゼの可愛らしい声に身が竦んでしまう。体が勝手に固くなるのが分かった。

 

 

「ティポ、行こ」

 

 

 すぐさま何かするわけでもないらしい。俺から降りて外のティポとともに何処かへ行った。遠ざかる気配はそんなに遠くには行かないらしい。もう色々辛いので許してほしい気気持ちでいっぱいだ。

 

 心臓の音がうるさい。その音の大きさと苦しさは、レイアの母親と同等の実力を持つ、自分の母親のしごきでル・ロンド中を朝から晩まで走らされたときのようだ。すごく苦しいしきつく辛いのだ。だが、そんなアホみたいな運動をしたわけではない。ただ、お願いをされただけ。そのお願いが、なんとも苦しいしきつく辛いのだ。最後のたった一言を言えば済む話が、あのようにすることで上手に俺を悩ませる。

 

 エリーゼを傷つけたくはない、ということは頭にある。エリーゼは、人との付き合い方が分からない女の子だ。これからそれを学ぶ必要がある。正しい距離も間違った距離、どちらも偏りすぎないように学んでいかなきゃならない。学んで成長して世界に壊されないようにならなければいけないのだ。特にこれからの世の中には必要なのだから。だけれど、その前に、俺にあんなお願いをしてきた。悩むのは当たり前だろう。

 

 エリーゼは、俺が俺自身のことも傷つかないように悩め、とお願いしているのだから。結ばれるなら悔いの残らぬように、断るのなら未練が残らぬように。そういうこと以上を要求されている。下手糞なことをするのは絶対に許されない。悔いを残して未練タラタラな俺に、随分惨いことをするものだ。あまりにも早い女の子の成長にめまいがする。

 

 エリーゼへの回答を悩む。可愛い女の子のちょっとした突っつきが、脳みそをぐちゃぐちゃにしていく。

 

 好き、という言葉のあまりにもな複雑さ。失恋男が軽々しく言うことのできなくなった言葉だ。そして、聞くことにひどく嫌悪感を覚えてしまったもの。好きになれてよかったと、まだ心が落ち着いていない。好きになりたいとは、まだ心が冷静になりきれていない。

 

 普通に好きになれているのに、その先が難解だ。

 

 

「メック」

 

 

 声が聞こえた。答えなんて難しすぎて、永遠に出てきそうにないというのに。

 

 

 

 

 

「……ミラ、か」

 

「あぁ。なんだか、とても疲れているようだが大丈夫か?」

 

 

 できればこのまま一人になっていたい。そういう気持ちと、誰でもいいから近くに居てほしい気持ちがあった。あれから、口が苦くてまずいのは全く変わっていないだ。

 

 

「………」

 

 

 心配そうなミラに大丈夫と言おうとしたが、声が出ない。疲れすぎているのだ。声を出す気力すらない。

 

 手を出してきた。男の俺とは違って柔らかそうである。エリーゼの小さな愛らしい手と違って、ミラは剣を握っているからか、女性にしてはしっかりとしている。けれど、男のようにごつごつと武骨には感じず、舐めてみたらほのかに冷たい甘みを感じるような手、思春期には毒そのものだ。

 

 その手が、俺の顔に近づく。動きからして頭部へ行きそうだった。

 

 とっさに、その手を掴んで止める。エリーゼがフラッシュバックしたのだ。否定したい恐怖が表れていた。

 

 

「……っ」

 

 

 痛かったのだろう。ミラの綺麗な顔が少しつらそうだった。それには気づくことができたので手を放そうとする。が、今度はこちらが掴まれた。

 

 そのまま引っ張られ、椅子から立たされる。倒れるかもしれないと思ったが、ミラが支えてくれたのでそうはならなかった。とりあえず、感謝の言葉を言おうと口を動かそうとして見たのだが、ミラのつらそうな顔に何も出てこなくなる。重たいからか、とか、さっきのがまだ痛かったから、とかの表情ではないのが分かったからだ。しかし、では、どうしてそんな表情をしているのかは、分からない。悩むことは、もうエリーゼだけでいっぱいいっぱいだというのに。

 

 

「少し、夜空を見に行かないか、メック」

 

 

 問いかけだったのだろうが、こちらの返答も聞かずに、俺を引っ張りながらテラスに連れていく。先ほどのつらそうな顔はなくなり、まともに足を動かせない俺を優しく誘導してくれる。ミラは医療ジンテクスがないと足が動かないというのに、俺が倒れないように注意しながら誘導してくれるのだ。そのことを理解すると、少しだけ体に力が入るようになる。手を離してはくれないが、あまり気にしないようにして歩く。

 

 口の中の味は少しだけマシになっているのを感じた。ミラ様様である。頭はあまり軽くはなっていないが、さっきまでと比べれば雲泥の差だ。意識の換気が必要だったのだろう。勉強が得意でないくせに悩みまくるのはよろしくなかったのだ。ホントにミラ様様である。

 

 

 

 

「さんきゅ、ミラ」

 

 

 テラスにつく。だから、メックはミラにそう声をかけた。その言葉でミラは手を離すべきであった。が、離す気は欠片もなかったのだ。手首を掴んでいた手を、男の子の手へ滑らせ握る。メックはそれに驚いて、手を見てはミラを見るを交互に繰り返した。

 

 

「ちょいっ、ミラ、手」

 

「うむ。嫌だろうか?」

 

「いや、つーか、はずかちいよ、これ」

 

「私は恥ずかしくないぞ」

 

「俺が、なんだけど」

 

「私は君の手を握っていたいんだ。許してほしい」

 

「許しを請うほど? いや、俺の手でよければいくらでもいいけどよ……」

 

 

 じっと繋いだ手を見ながら困ったようにするメックに、ミラは優しく微笑む。純粋に嬉しかったのだろう。

 

 

「メック。人間はどうして生まれてくるのだろうか」

 

 

 いつものミラの突然さ。最初は戸惑いもあったが、メックは手の状態の所為で今も戸惑っている。気を紛らそうとガラス窓越しの夜空に、顔を頑張って向けて応える。

 

 

「親になる人間が欲しいって頑張ったから、かな」

 

「君のご両親みたいに?」

 

「ミラ……この年で、弟か妹が生まれるよ宣言されるのは、キツイんだぜ」

 

 

 息子が指名手配犯にされるほどの旅をしている中、メックのご両親はとても仲良くしていたようだった。精霊のように、人間はそう簡単にポコジャカ生まれてくるものではないのである。

 

 

「めでたいことだろう」

 

「いや、そうだけど。キツイんすよ。特に俺、思春期だぜ」

 

「多感な年頃、だな。弟か妹に、ご両親が入れ込むのがよりキツイのか」

 

「あー……、うん、そうね」

 

 

 逆セクハラというものがある。男が被害者側にいるものだ。つまり、これ以上、話を続けたくない。猥談などするけども、それは男同士で行うだけで女性など入れられるはずもない。女の子が男の視線に敏感なように、男の子も女の子の視線に敏感なのだ。バイキン扱いされたくないということである。

 

 

「ともかく、人間が生まれるには、父親になるやつと母親になるやつが必要で、そいつらが生まれてくる子のためにあくせくすると、できます」

 

「ふむ。メック、では、父親はどうあるべきだろう」

 

「んー、家族を守れる強さがあるべきかな」

 

「具体的には?」

 

「衣食住揃える甲斐性とか、純粋にパワーとか、優しさとか」

 

 

 メックは自身の父親を脳裏に浮かべながら語る。レイアの親父さんと親友で、【八百屋ルウェン】の店主。がっしりとした肉体に違わず、身体能力と武術に優れている。普段は無口だが、根は優しい。一家の大黒柱として、メックや母親が全力でもたれ掛かってもビクともしない頑強さを、精神面でも肉体面でも持っている。メックが父親になるならこうなりたいと思える素敵な父親なのだ。

 

 

「では、母親は?」

 

「子供の絶対的な味方でいること、かな」

 

「味方?」

 

「子供がクソ野郎なことしたら叱り飛ばすのはいいけど、ちゃんとあんたは大切だって分からせてくれるとこ」

 

 

 メックは未だに自分たちを『パパ、ママ』と呼べと強制する母親を思い出す。優しい性格だが、ソニアとア・ジュールの武道会で優勝をかけて激戦を繰り広げた逸話を持つ実力者だ。それに並ぶほどに、料理の腕前も一級品である。だが、やはり、怒らせると目が全く笑わないほど恐ろしい。メックにとって母親はこの人しかいないと思える自慢の母親だ。

 

 

「人間育てんの大変なんだ。うまくいかねぇことが多いだろうよ。でも、投げ出すなんてことしちゃいけないんだ。生まれてきた命にとって、初めて大切に思えるのが両親のはずなんだから」

 

 

 親に愛されて育ったメックは、ちゃんとそういうことを理解できている。父親は無口でもちゃんと愛していることを伝えていた。母親はしごきがきつかったけれど大切に愛してくれていた。彼らは、メック・ルウェンという人間が生まれてくることを望み、大事に大事にして今でも愛している。

 

 たくさん愛されたことを誇りに思い、他の人をそのように愛せる人間、メック・ルウェンが、今、ここにいる。

 

 

「大切さを理解して色々手を伸ばしていく。欲しくなっちまうんだよ、幸せなものがたくさん。で、伸ばしては掴んで抱えて、まだ足りないって、また伸ばして。生きることを精一杯し始める」

 

 

 小さな手。まだ、まともに掴めないものを、ちゃんと掴めるようになるには死の間近かもしれない。それでも、確かにある眩しい生き様。間抜けと嘲笑されても、愚かだと嘆かれても、それは決して汚されていいものではない。

 

 

「幸せかそうじゃないかは他人なんかじゃ決められない。同じ目線なんてのは幻想だから」

 

 

 同じ高さにいても、視線が重なることはあろうとも、見える世界はみんなそれぞれ違うのだ。

 

 

「でも、そういうの寂しいじゃん? そんだから、人間は手を取り合って幸せを掴んでくんだろうな」

 

「このように、か」

 

 

 ミラは握った手を自分に引き寄せて、何度もぎゅっぎゅっと強く握る。

 

 メックは意識して口に出していた言葉ではなかったが、そのような行動をされてしまったため、果てしなく困った。思春期には刺激的過ぎる。

 

 

 

 

「メック」

 

「あ、はい。なに?」

 

 

 声に反応はできる。反射であった。意識的にミラに応答するには、何もかも整っていないのだ。経験不足である。

 

 

「君は今、幸せだろうか?」

 

 

 やはり、逆セクハラなのだろうか。加害者側が意識してなくても、被害者側がそう意識したらそうである。思春期な男の子を手籠めにする気に傍からは見えるのだ。先ほどの会話と、あのような行動の後に、このセリフ。

 

 邪推するまでもなく、今、ミラと手を取り合っているメックはどのような状態か聞いているのである。パワハラも含まれるかもしれない。

 

 

「………」

 

 

 幸せに感じる、べき場面だろう。大人の美人なお姉さんに熱く手を握られている、という羨ましがられる場面だ。嫌っている相手ではない。好悪どちらかというならば、間違いなく好である。普通に好きであった。世間知らずなところも、まっすぐなところも、腹ペコキャラなところも、色んな所が好きであるのだ。メックの大好物である肉を欲しければ分けるぐらい、普通に好きである。

 

 けれど、メックは“ミラではない相手”を渇望した。その相手となら、絶対に幸せだと即答できる。だが、その人はもう他人のものだ。メックはもう叶わないことをよく理解している。だから、諦めようとしている。まだブスブスと燻ぶる熱が、ちゃんと消えるのを持っているのだ。一瞬で消えるものではない。何年も引きづるかもしれない。だろうが、それぐらい許されてもいいはずである。必ず、消して見せるだろうから。

 

 しかし、ミラもそれを許す気はない。そんなもの待てるわけもないのだ。

 

 

「私はな、幸せと感じるよ。手を繋ぐという行為だけでも、君としていると、なんだか胸がポカポカするんだ」

 

 

 エリーゼのように、ミラも許す気がない。2人とも、許されていいものではないと断言できるほどである。早く消えるべきであると思っているのだ。そもそも、そんなもの無ければよかったとも思っている。ポカポカの温かさを感じる以上に、抉りだしてしまいたいぐらい心臓が嫌な鼓動をするのだ。どうしようもない不快の情動だった。

 

 

「……私の手、だよ」

 

 

 許さないのだ。ミラの手であるというのに別の誰かを夢想する、メック・ルウェン、という少年のことを。このような場面で、ミラではない誰かのために心臓を動かしてしまう少年だ。

 

 

「今、繋いでいるのはミラ・マクスウェルだ。メックと繋がっているのは、私なんだよ」

 

 

 許してほしいのだ。狂ったままでいたいほどメック・ルウェンを想う、ミラ・マクスウェル、という女を。何度も何度も、メックに寿命が縮んでしまうほど鼓動を速めてほしいと切望する女だ。

 

 人間の幸せをミラが求めることを、どうか許してほしいのだ。

 

 

 

 

「メック」

 

 

 私の声を何度も聞いてほしい。メックが、私だと一番に思い出せるぐらいに。何度でもメックの名を呼ばせてほしい。メックが、私だと一番に気づいてくれるぐらいに。

 

 

「ミラ、俺」

「私はな」

 

 

 メックの声は聞いていて心地いいものだ。声変わりしたばかりの軽めな低い音程の鼓膜を震わすその音は、ずっと聞いていたくなる。だけれど、今は、何か言われるのが、とても怖いと感じた。愛するべき人間に対して持っていい感情ではない。そもそも恐怖を感じる対象でないのは確かなのだ。剣だけの実力であれば拮抗するだろうが、精霊の主としての力を行使すれば赤子の手をひねる様なもの。ということを理解しているのに、今の私には言葉だけでも怖いのだ。大切なものを失くしてしまいそうで怖いのだろう。

 

 

「君と、幸せを感じたいのだ」

 

 

 捲し立てるのがいい。メックは待てる少年だ。話し終えるまで、きっと待ってくれるだろう。話し終えれば、何をするべきか即座に考え実行してくれるはずだ。メックは、主体性があり、自分の意志で行動することが多い。彼の意志で理解し、彼自身の為すべき行動を決められる。メック自身が考え抜いたことを、彼の願う未来のために行動するのだ。

 

 だから、待てる。待ててしまった。期待があったのだ。期待を持ってずっと待てたということ。この事実を理解しなおすと喉がひりついた。吐き出してしまいたい激情が喉奥で蠢くのだ。だが、そんなことはしてはいけないのだ。私の今に、そんなことは必要ではないのだから。

 

 

「君と幸せになるためにはどうあるべきだと思う。幸せな人間であるためには、どうあるべきなんだろうな」

 

 

 答えを聞く気はない。全て、今の私が求める回答ではないのだろうから。

 

 

「簡単だ。幸せだと、感じるように生きていけばいいんだ。君のご両親のようじゃなくてもいい。伸ばす手が折れて使えなくなってしまっても構いやしない」

 

 

 強くメックの手を握る。私のとは違う手だ。身長は私の方が少しだけ大きいが、手はメックの方が大きい。それが、なんだか胸に来る。

 

 

「君の言う通り、同じ目線なんてものはないのだろう。なら、ずっと手を繋いでいようじゃないか。一人ぼっちではないと、一緒にいると、繋がっていることを忘れないために」

 

 

 人間が必ず幸せに過ごせることはないということは旅の中でよくわかった。それは、誰も彼も、一人っきりでいいと意識的にも無意識的にも理解して行動したからだ。自分が良ければいい、他人なんてどうでもいい、という悲しい生き方をした。皆も、メックもそうなってほしくはない。いや、メックだからそうなってほしくない。

 

 なによりも愛おしい男だから。

 

 人間は差別なく好きだ。良いところもあれば悪いところもある。優しく見守れるようなところや苦々しく感じてしまうところ、どちらの面があろうとも、私が人間に抱く愛情は揺るぎはしない。大切にしてあげたい存在達である。

 

 しかし、メックは、違うのだ。愛のベクトルがの話ではない。枠組みは確かに同じであるのだが、メックの対するものだけは違うのだ。

 

 メックに対して抱くものは、優しいものではない。何重に包んでも優しいと言い繕えるものではない。

 

 ミラ・マクスウェルはメック・ルウェンに欲情しているのだ。肉欲という言葉ですら上品に感じるほどの獣欲を抱いている。メックを切望している。精神も肉体も私に溺れてほしくてたまらない。受肉した肉体からだけの欲求ではないことは確かだ。ジュードにもアルヴィンにもローエンにも、それほどの情は抱いていない。ミラ・マクスウェルという存在自体がメック・ルウェンという少年を辱めたいと思っている。

 

 綺麗ではないし優しくもない、欲望を持て余している。私だってできるのなら綺麗に恋して優しく愛したい。このような禁書指定されるだろう展開は考えたこともなかったのだ。童話のように恋愛小説のように甘く口蕩けるような恋愛をしてみたかった。でも、そうはなれない。メックは私を恋愛対象として見ていないのだから。していたのなら、あの二人のように微笑ましい関係を段階を踏んでできただろうに。メックは私とそうなることを幻想の中にすら描けていない。

 

 ずぶずぶと奥深く、もう身を立てられないほどに溺れてほしい。この欲望は、正しいはずなのだ。間違っていると理性が喚くが耳障り程度で力を持たない。この欲動は、正しいのだ。

 

 だって、メック・ルウェンのことを間違いなどあるはずもなくミラ・マクスウェルは愛しているのだから。

 

 

 

 

 

 欲情していると自覚したのは、メックの首から鎖骨までのラインを見つめていたときだ。その前段階では、メックの肌の色が好ましいと感じていたことだろう。複雑なことはない、ただ欲しくなったのだ。触れたいが、なぞりたいになり、舐めてみたいになる。段階は時間をかけはしたが欲求は止まなかった。だが、それを実行に移すことはなかった。思春期の子供は難しいと書物を読んで理解していたのだ。学術書や俗物的なものにも、それはよく書かれていた。“拗れる”らしいのだ。具体的に書いてあっても、よくは理解できなかったが、まずいのだろうことは理解できた。だから、私は我慢することにしたのだ。

 

 何度、欲求に従ってしまおうと思ったか分かるだろうか。御馳走を目の前にして、おあずけを食らっていた私が、どのような思いでいるか分かるだろうか。

 

 自分の新鮮な欲求を楽しむことなど少しだけだった。欲しい欲しいと暴れそうになる自分を抑えていた私を褒めてほしい。無邪気に無防備にしているメックを、少々恨みもした。人の気も知らないで。そう人の気も知らないで君は恋して愛していたのだ、私ではない人を。

 

 目で分かる。声の調子で分かってしまう。言葉にはしないけれど、好きだ、と言っている。脈などないというのに。ずっと声に出せない、好きだ、を言っている。応えてくれないことを分かっているだろうに。必死に隠していたのだろうが、私たちにはよく分かっていたよ。嫐ってしまいたくなった。二人がかりで幸せにしてやりたくなったんだよ。

 

 

「君が求めていい幸せは2つだけだよ」

 

 

 選択肢は2つだ。妥協するか完走するか。幸せな未来があるはずなのだ。そのことを思うと甘く腹の奥が痛む。

 

 

「よく聞いてくれ」

 

 

 その痛みに足が耐えられなくなってメックに向かって倒れる。立派なもので、片手は繋いだままなのにしっかり抱きとめてくれた。そういうところも甘く痛むのに。

 

 

「1つ、君は手を離さないこと」

 

 

 メックの手は2つあるから、両方とも私とエリーゼで占領する。力尽きる日が来ようと離してはいけないのだ。幸せは独りよがりではいけない。はぐれないように、どこかに行かないように、逃がさないのだから。

 

 

「2つ、君が君を失くさないこと」

 

 

 私はメックがどうなろうと愛し続けるだろう。エリーゼも同じようにそのはずだ。だけれど、メック自身が自分を無くすのは頂けない。幸せは独りよがりではなれない。揺蕩っても、壊れそうになっても、逃げてはいけないのだから。

 

 

「だから、選んでほしいんだ、メック」

 

 

 怖いと思う感情が爆発してしまいそうだ。それを何とか我慢すると、目が熱くなってしまう。

 

 メックに欲情している。彼の気の強い性格は好ましい。溺れてくれても変わらないだろう可愛さだ。メックに欲情している。私より3cmだけ低い身長が好ましい。口づけがしやすそうで興奮する。メックに欲情している。成長途中の肉体から伝わる青い熱と鼓動が好ましい。体を重ねてみたくなってたまらない。

 

 

「メック・ルウェンを焦がれてやまない、ミラ・マクスウェルとエリーゼ・ルタスの恋心。これらを、いつから結び合わせることができるのか」

 

 

 愛欲が静まってはくれないようだ。双眸からも、溢れてくる。静かで、熱く、柔らかな、真っすぐの愛情が。

 

 

 

 

「………」

 

 

 ミラが去って行ってから、まだそんなに経ってない。あの熱烈な宣告の後、彼女はさっと身を翻して行ってしまった。

 

 

「どーすんのよ、これー……」

 

 

 体が重たいが頭の方が重たかった。体も頭も休憩を欲している。具体的には、睡眠という心身共に一番疲れが取れる素晴らしいものをすべきだ。でも、寝たらきっと悪夢を見るだろう。野菜を口に突っ込まれまくるというものよりも恐ろしい何かを見るに違いない。そんなことを思っていると、口の中がまた苦くてまずくなる。先ほどまでは無味であったのに。麻痺していたからだろうけども。

 

 

「いつから、こんな地雷原に突っ込んでたんですかねー……」

 

 

 普通に幼馴染を好きになって、あえなく失恋して傷心中なのに、あの二人の極上な刑務執行宣言。容赦無さすぎるのではないだろうか。

 

 好意を伝えられて否定的な感情は沸いていない。けれど、だから応えるというのは、男としても人間としても欠落がありすぎる。そもそも、2人とも、ということが既に不誠実でしかない。だが、ミラとエリーゼはセットでの選択肢しか寄こさなかったのだ。俺がどのような選択肢を選ぼうが離れる気がないらしい。一般的男子にとって、あまりにもハードすぎるもので、より口がまずく感じる。

 

 ミラもエリーゼもいろいろとカッ飛んでいたが、つまりはだ。俺、メック・ルウェンが好きなので付き合うから早く応えろ。という、前提として付き合うことが決まってしまっているのだ。どういう理論なのかは、旅当初なら欠片も分からずに唸っているだけだっただろう。火達磨にされそうなほどホットな彼女らの恋事情は分かる気がする。

 

 “好きになったから離れたくない”

 

 シンプルだ。詰めれば、こんなにもシンプルだというのに、二人のあの血が凍るようなプレゼンテーションが複雑怪奇にさせる。

 

 エリーゼは親もおらず友達もいなかったのだ。そうだから、誰かが離れていくのが嫌なのだろう。少し可愛くいってみたがごまかすのは悪手か。本当は許さない、ということだ。エリーゼは、自分を一番に大事にしてほしいのだ。何よりも優先し誰よりも近くに居てほしいのだ。愛情を受け損ねてしまったのだから、そうなってしまうのだろう。だから、自分が大事にしたいものができたとき、そのような思考をなぞってしまう。何よりも優先するし誰よりも近くに居る。じゃないと、自分を含めたあらゆる人間や事象、全てを許さない。好きになるから好きになりたい、と切羽詰まった意識がある。その意識で今までそうなろうと涙ぐましい努力をしてきたのだ。だけれど、その意識なく好きになれる存在ができたなら、エリーゼ・ルタスという女の子は、好きだから好きになって、という普通の女の子になれる。拗れた感情が思考を小賢しく蝕むが、結局は普通の可愛い女の子でしかない。

 まだ成長途中なので矯正していくことはできるだろうが、付き合うのなら苦労することは免れないだろう。可愛らしい女の子が泣いてしまうところなど見たくはない。どうせなら、幸せたっぷりな笑顔を見たいと思う。きっと、それをよく見ることになるのは俺なのだろう。

 

 ミラは生まれも特殊だし育っても特殊だった。ニ・アケリアの連中に尊敬の対象として崇め奉られていたのだから、普通に人と触れ合うことが分からない。今では割かしマシになったが、最初は眉を顰めることも多かった。そんなミラは、自分だけで愛したいのだ。精霊と人間を守るものだなんだと肩書を背負い邁進していたものの、いつもそれらは愛す“べき”という義務感があった。実際、義務感がなければ見捨ててしまいたいこともあったろう。でも、きっと、彼女はその義務感を俺に対してだけは持てないでいるのではないか。幸せを感じたいと言っていたのだ。欲求ではないか。傲慢で不遜でいいものではないか。初めてのことに暴走しているのだろう。まっすぐなミラらしい女の子としての欲望。おそらくだが、俺が予想だにしないほど我慢するものがあるに違いない。我慢して好きでいる、という意識が俺以外に。我慢できないほど好きでいる、という意識が俺だけに。上位存在が、こんな普通の女の子らしくてどうしろというのだろうか。

 ある程度育っているから相応な身にできるだろうが、付き合うのなら苦労することは間違いないだろう。美人さんに迫られるだけなのは情けなさすぎる。やっぱり、嬉しい楽しいを感じ合ってみたいと思う。きっと、それをよく見ることになるのは俺なのだろう。

 

 2人が提案した出していい選択は2択だ。

 

 2人が好きになれるから付き合う、妥協案。2人が好きでいるから付き合う、完走案。

 

 好きではいる。心も動かされもした。ぐらぐらと崩れそうになるほど、動きまくった。可愛らしい女の子とミステリアスな美人に、あんなに情熱的に口説かれたのだ。普通の男なら、そりゃ動くモノだろう。だとしても、確実にミラとエリーゼに愛を語れるほど、俺の心は単純になれない。俺の心の中に、まだあるのだ。ミラとエリーゼに対してではなく、アイツへの恋心が。我ながら情けないが、すぐさま乗り換えるのも、それはそれでクズ野郎なので頂けない。

 

 

「好き、なのかねぇ……」

 

 

 なんとか軽く言おうとした言葉は、自分でも聞いたことがないほどの低い声音で吐き出された。口が苦くてまずい。思わず吐き気もするほどにキツイ。

 

 

「好き……、なんかなぁ」

 

 

 構わず舌を動かし喉に空気を通す。相変わらず重たいものだ。歯を意味もなく噛みしめてしまう。思ったよりも力強かったのか頬も痛くなる。

 

 

「……好き、なんだよなぁ」

 

 

 心が悲鳴を上げている。無視して言葉を絞り出すことに没頭するのだ。

 

 

「好きに、なってほしいんだ」

 

 

 誰にか。アイツは俺のものになってはくれないのだ。幻想を見てはいけない

 

 

「好きが、つれぇわ」

 

 

 誰に対してか。俺は誰を好きでつらいのだろう。幻想が恋しい。

 

 だとしても、もう誰も好きなれないわけではないのだ。ちゃんと思い返す。

 矯正するのはエリーゼ・ルタスではない、メック・ルウェンだ。初めからそう意識できているのに、戒めようとはしなかった。相応な身になるのはミラ・マクスウェルではない、メック・ルウェンだ。元からそのように解釈しているのに、適合しようとはしなかった。2人の恋情を無遠慮に放り捨てられないほど、俺は2人のことをずいぶんと思っているということだ。

 見てみたい顔は何か。思い浮かぶのは俺が心から望み、必ずしも叶えて、見飽きることなどありえないものだ。

 

 結局、俺は2人に心底参っているのだ、と理解できる。普通の男なんだからノックアウトされて当然のなのだ。直接的にも間接的にも、ミラとエリーゼに無作法にはできはしない。こんなにしっかりと自分だけでなく、付き合いたい相手のことも考えてくれるいい女が、しかも二人もいるなんて。俺が母親に勝てる確率ぐらいありえなさすぎる。

 

 俺は幸せじゃないか。2人を幸せにしてやりたくてたまらない。3人そろって幸せでいたいだ。そのようなことを自然に考えつけることなど、普通出来ないというのに。

 

 だから、冷え切った両手を頬にぶつけた。しっかり、想い正す。

 

 手を離してはいけないことを想い正す。大切なのはこれからなのだ。自分を失くしてはいけないことを想い正す。大切にしたいのはたくさんあるのだ。

 

 自惚れてもいいくらい俺を特別にしてくれる誰か達に、飾られた言葉など必要ない。シンプルにいこう。シンプルに幸せを掴んでいこうじゃないか。

 

 

「好きだって、言うんだよ、メック・ルウェン。幻想なんかも抱えてみっともなくいよおうぜ」

 

 

 気持ちは決まったのだ。

 

 最終試験を突破して見せてやろう。

 

 

 

 

 男部屋とは違う階に女部屋はある。夫婦で泊まったり家族で泊まったりする場合も階が違う。騒音問題が関係するというのもあるのだろう。いろいろと、従業員が気持ちを分けて疲れるようにした作りは、レイアの宿屋でよく見たものだ。

 

 向かったのは女部屋、ミラとエリーゼ、レイアがいる部屋である。最終試験を合格しに行くのだ。

 

 “レイアの前で、ミラとエリーゼに告白する”

 

 心も体も震える。過度の興奮と微量な恐怖の所為だろうが、非情をもって無視する。俺はただの八百屋の息子だが、ミラとエリーゼだけの男になるのだ。そのような嬉しき出来事の前に無様をさらすのはどうかと思うのだ。

 

 部屋の前にたどり着く。おしゃべりをしているのだろう、男のとは違う高めな声が微かに聞こえてくる。内容は詳しく聞き取れない。盛り上がっているのだが、俺を無視することはないのは分かっている。

 

 ノックをする。4回。運命が出す音だ。

 

 

「はーいって、わ、ホントにメックだ」

 

 

 幼馴染が出てくる。

 

 

「ドーモ、お部屋に入れてくれや」

 

 

 幼馴染が出てくる。

 

 

「もう寝たいんだけど、まぁ、いいよ、入って」

 

「メック・ルウェン、入りまーす」

 

 

 ミラとエリーゼの男を出す。試験官に印象付けするのは当たり前だろう。軽くても、しっかり発声した。

 

 

「来たか、メック」

 

「意外と、早かったですね」

 

 

 試験官方は好印象を与えているようだ。バッチリ決めてハッピーにする気満々なのは彼女らもだ。

 

 

「明日に備えて寝なきゃね、って、話してたんだ。でも、なんか盛り上がっちゃってさぁ」

 

 

 相変わらず小さくてもいろんなことを楽しいと思えるレイア。そういうところも好きだった。

 

 

「で、何しに来たの?」

 

「告白だな」

 

「え、やっぱりっ!?」

 

 

 俺の言葉にレイアはミラとエリーゼを見る。2人はじっと俺たちを見ていた。色々話したのだろう。レイアの反応は少しウケ損ねているものだったから。

 

 

「俺さ」

 

 

 レイアに、好きな人に。目と目を合わせ、1音1音、聞き逃させないように発生する。

 

 

「レイアが好きだ」

 

 

 レイアは絶句している。そりゃそうだ、恋愛相談なんか腐るほどされていたんだから。そんな相手が意識などされることは一度もなかったけれど。

 

 

「でも、ごめん」

 

 

 レイアの返答が怖くてこう言ったのではない。正しく、俺から絶ちたかったのだ。俺が、メック・ルウェンがレイア・ロランドに送りたかった恋心に。本当に、本当に、好きだったから。

 

 

「だから、よ。ミラ、エリーゼ」

 

 

 レイアに固定されていた体ごとミラとエリーゼに向ける。まだまだ好印象を抱いている様子だった。

 

 

「俺と結婚を前提に付き合ってください」

 

 

 二人は満足そうだ。もう一つやれば、もっと満足してくださるだろう。

 

 

「上手く好きになれるかは、まだ全然分からねぇけど」

 

 

 少し不満そうになる。マイナスな印象を与えたようだ。上手に。

 

 

「俺は、ミラもエリーゼも、どっちも離してやんねぇから。だって」

 

 

 上手に、シンプルに。

 

 

「俺はどっちも、大大大好きなんだからよ」

 

 

 通じていることは肌でも分かる。それほどまでの熱量が発生しているのだから。

 

 けれど、やはり成果は自分で確かめたいものだ。

 

 動けなくなった2人に近寄る。当たり前のように、2人の手を取り優しくも強く握って跪く。

 

 

「どうか、ミラ・ルウェンとエリーゼ・ルウェンになってくれ」

 

 

 落として上げる。その作戦はやっぱり成功する。大合格だ。だって、見たい顔を見せてくれているのだ。

 

 

「はい!!」

 

 

 後ろで甲高い悲鳴が聞こえる。この声で他のメンツもやってくるはずだ。

 

 何事だって突撃してきたら、あっさりと言ってやろう。

 

 

“好きな人に告白した”と

 

 

 祭り並みに騒がしくなると良い。静かすぎると思うパーティなのだから、近所迷惑になるほど騒ぐのは悪くないだろう。

 

 幸せになれるように。大切なものを大切だと分り合うために。

 

 好きになれたことを誇ろう。好きになってくれたことを誇ろう。

 

 そう思える明日を作ってみせるから。

 

 どのような選択肢を選んでも幸せになれる明日なんて、最高じゃないか。






○主人公設定

名前:メック・ルウェン

年齢:15歳

身長:165cm

武器:拳銃×2

戦闘タイプ:二丁拳銃使い

 ジュード・マティスとレイア・ロランドの幼馴染で、両親が経営している「八百屋ルウェン(八百屋)」で働いている少年。久しぶりにジュードに会うためにラ・シュガル国のイル・ファンに来ていたが、彼が港で軍に追われているのを目撃して救出、そのまま成り行きでジュード達と行動を共にする。ジュードと対称的に気の強い性格だが、エリーゼのような優しい女の子に対しては優しく接する事もある(『ガンダムSEED DESTINY』のシン・アスカのような感じ)。主体性があり、自分の意志で行動することが多い。幼いころから鍛練が趣味なため、実力と身体能力はジュードとレイアより優れている。基本は射撃による遠距離戦を用いるが、接近戦にも長けている。


◇主人公の両親の設定

◆主人公の父親
 ウォーロック・ロランド(レイアの父親)の親友。ル・ロンドで「八百屋ルウェン」を営んでいる。身体能力と武術に優れている。普段は無口だが、根は優しい。
◆主人公の母親
 優しい性格だが、ソニア・ロランド(レイアの母親)と互角の実力者。料理の腕前は一級品。怒らせると目が全く笑わないほど恐ろしい。ソニアとア・ジュールの武道会で優勝をかけて激戦を繰り広げた逸話を持つ。


 ちなみにジュードとレイアは幼馴染という事で終盤辺りで付き合っている設定


以上がリクエストしてくださったシャドー様の設定です。


以下はこちらが勝手に考え付いた設定です。


捏造設定

・レイアに惚れてた
・野菜嫌い
・注意しないと肉しか食べない

どれぐらいのヒロイン数がいい

  • 一人
  • 二人ぐらい
  • ハーレム

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