頭ふっわふわな短編集   作:サラダ豆乳パン

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ぐだ子の名前は藤丸立香です


fgo ハーレムマシュ落ち(ぐだ子・マシュ、ジャンヌ【白】、沖田総司【桜セイバー】、清姫)

 

 

 

 自身は人間の頂点で在るもの。

 

 そう理解したのは、自身を育てた父母でも、教育をなした教師らのおかげというわけではない。

 

 生まれた瞬間。母の胎内で新たな生命として誕生した瞬間から、神経一本一本の細部、DNAの全てに【人間の頂点で在る】ようにと設計された。

 

 俺の記憶は母の胎内から出る前から存在していたのだ。言葉として記録されたものではなく、映像として全て記録されていた。言語でも記録されていれば色々都合が良かったが、できぬのはしょうがない。“頂点に在る”としても【人間】でのスペックでだったのだから。

 

 【人間】の中での非凡は、神や神話に登場する英雄といった【人外】のなかでは凡。彼ら【人外】にとっては、俺は【人外】カテゴリーにすら入れない有象無象の一部にすぎないだろう。

 

 頂点で在ること。これは【人間】の中での話。俺自身が望んでいるものだ。誰もが望んでいるものだ。

 

 下にいるものは上を見る。上にいるものは更に上の「頂点」を見る。

 

 下に際限が必要なように、上にも際限は必要だ。

 

 底なし沼に喜んで入るものはいない。死んでしまうからだ。

 

 空気も何もない虚空へ喜んで飛び立つものはいない。死んでしまうからだ。

 

 死ぬことを恐れぬ【人間】はいない。死なないよう“頂点”が必要なのだ。

 

 【人間】の有象無象である貴様らには難しい話だったか? 仕方ない、要約してやろうではないか。

 

 つまりは、だ。

 

 俺が“人間の頂点で在る”のは、俺以外の【人間】である貴様ら有象無象のためだということだ。

 

 ん? あぁ、礼など気にするな。貴様ら【人間】のために生きることが俺の存在理由であり、生きる糧だ。

 

 だが、これだけで【人間】というのが生きていけるほど便利にはできていない。

 

 食事を取らなければ死ぬ。睡眠を取らなければ死ぬ。経緯は何であれ、何かしなければ死ぬ不便な生き物だ、生物というものは。

 

 【人間】の身に起こる死の例をあげるならば、生物として充実すればするほど起こること、それは娯楽がなければ退屈で自殺する、というものだ。これが、困ったことに俺にも存在する。食欲も睡眠欲も排泄欲も性欲も、【動物】としての欲は満たして生きてきたが一度これに殺されそうになった。

 

 「人間の頂点で在る」俺には【人間】の劣がない。全て【人間】の優でできている。そうでなければ、“頂点で在る”ことなど不可能ではないか。分かるか、ん?

 

 【人間】としてのだ。【生物】としてではない。【生物】は生きること“だけ”考えて生きる。【生物】のカテゴリーの中の一つ、【人間】は生きること“も”考えて生きることができる。

 

 この差はとてつもないほど大きい。どちらが無駄か否か、それは「生物」としての尊厳か、【人間】としての傲慢か。それに関する話は今回割愛する。

 

 話を戻そう。

 

 俺は、ある日、無意識に【再現】した破戒すべき全ての符(ルールブレイカー)を自身に刺そうとしていたことがあった。

 

 “劣がない”ということは非常につまらないのだ。なんでもできてしまうから、つまらない。 

 

 あぁ、今羨ましいと感じただろう? はっ、今は俺もそういう感情を理解することができるから分かってやるとも。

 

 だがな、できないことがないということは、できることに“何も感じることができない”ということだ。

 

 出来レースに喜ぶのなど最初だけ。俺も可愛い無邪気な時期があった。父母の喜ぶ姿に、できないことがなくてよかったと思うこともあった。だが、ずっとなら「生きることに飽きる」。

 

 だから、自分を終わらそうとした。【人間の頂点で在る】自分を終わる気は欠片もなかった。“できないことがない自分”を終わらそうとしただけだ。

 

 それも、止められたがな。止めたのは、他の誰でもない、また【人間の頂点で在る】自分で、“人間の劣がない自分”で、“できないことがない自分”だった。

 

 どこまでも人間である俺は、俺自身の手で【人間】を終わらそうとしていたのだ。

 

 【人間】である俺に【人間】をやめることは全人類に対する侮辱であると、“最も人間らしい”俺自身に止められた。

 

 なら、【人間】として【人間の頂点で在る】のをやめることはできない。

 

 貴様らが感謝する必要はない。 俺こそが、貴様ら有象無象の【人間】達に感謝を言おう。 心から言おう。 ありがとう。

 

 

 

 

 さて、前置きが長くなったが、そんな俺の【人間】として生きている一部を見せてやろう。 なに、気にするな。 言葉だけではなんだから、俺の記憶を少しだけ開示してやる。

 

 さぁ、存分に鑑賞するがいい。 “人間の頂点で在る”俺の生き様を。

 

 

 

 レイシフト前、シャドーの部屋にある人間がやって来た。

 

 

「へへへ…、お邪魔します。シャドーさん」

 

「よく来たな、立香。まぁ、座れ」

 

 

 人類最後のマスターである藤丸立香は勝手知ったるなんとやら、いつも通りの位置に座る。

 

 

「えと、話ってなんです?」

 

「なに、少し力を抜いてやろうと思ってな」

 

「へ? どういう意味ですか?」

 

 

 質問に答えず、茶を淹れるシャドー。シャドーにはそんなに馴染みはないが彼女の故郷である日本でよく飲まれているという日本茶をいつものように淹れてやる。

 

 

「とりあえず、それでも飲め。この俺の茶が飲めないとは言わないだろう?」

 

「は、はぁ…。………うん、おいし」

 

「はっ、当たり前だ。俺が不味い茶を淹れる劣は存在しない」

 

 

 そう、いつも通り偉そうに言うと彼も座る。

 

 

「さて、立香。貴様気負っているな」

 

「いきなりなんですか、もう。そんなことないですよ」

 

「ふん。貴様、緊張すると令呪の宿った手をやたら触る癖があるぞ」

 

「それは、なんか痒い感じがして…」

 

「精神に異常が起きると身体が痒くもないのにかいてしまう現象がある。それだろうな」

 

「大丈夫です。平気ですもん」

 

 

 お茶のおかわりの催促をする立香に注いでやる。

 

 

「俺の前で言う、貴様が言う『大丈夫』が『大丈夫』なことは一度もないが。どうだかな?」

 

「大丈夫です」

 

 

 手を触りだした。

 

 

「それは、なんだ?」

 

 

 テーブルの下にあって見えないはずだが肩の動きでわかったのだろう。いつも通りガス抜きをさせるために、わざわざ指摘した。

 

 

「あ、えと…これは」

 

 

 指摘に慌てて手を離すも自身の気持ちは晴れてはいない。

 

 

「不安であろう」

 

「………」

 

「怖いであろう」

 

「………」

 

 

 立香が顔をこわばらせてうつむいていくのを見ながらシャドーはお茶を飲んだ。立香が来てから飲む頻度が多くなったそれは相変わらず美味である。

 

 

「辞めたいか」

 

 

 黙ったまますこしの時間を置いてゆっくり首を横に振った。

 

 

「苦しいか」

 

 

 黙して首を小さく縦に振る。

 

 

 シャドーは立ち上がり立香の元へ行き、優しく抱きしめた。

 

 

「吐き出すがいい。【人間】が無理をするな」

 

「ぅっく…」

 

 

 立香は頭をシャドーに押し付ける。湿っていく服。気にせず抱きしめて藤丸立香(人間)を泣かす。

 

 

「一人で背負い続けるのは辛かろう。どんな能力を使っても、貴様のそれを斬り捨てられん。やれば貴様が【人間】ではなくなってしまう。守れなくなる」

 

 

 喉を引きつらせながら泣く藤丸立香(人間)を抱きしめる。

 

 

「泣け、泣け。【人間の頂点で在る】俺が貴様の有様を守ろう」

 

 

 苦しそうに泣き言を言う立香に叱咤はしない。したことがない。こういうとき【人間】なら泣くのを理解しているのだから。

 

 

「また随分と溜め込むな、立香。貴様の悪い癖だ。俺の所で泣くのは悪くないのだぞ」

 

「でもぉ…っく、でも、だって。だ、だってぇ…」

 

 

 意味をなさない言葉を言いつつ泣く立香。それに【人間の頂点で在る】シャドーはただ泣かし続けるだけであった。

 

 

「貴様は【人間】なのだ。泣けるのだから泣いておけ、泣きたいのなら泣け、泣くことは悪いことではない。【人間】らしい証拠だ」

 

 

 強く抱きつき泣く立香はそれで更に泣く。藤丸立香(人間)を泣かせるのがカルデアでのシャドー(人間の頂点で在る者)の役目だ。

 

 

「シャドーさん…」

 

「あぁ、なんだ。立香」

 

 

 ずりずりとシャドーの服と自身の顔をこすらせてシャドーを見上げる。可愛らしい顔が涙と鼻水で大変なことになっているが、シャドーは気にしない。見慣れているのもあるが、そんな彼女の【人間】らしさを彼が誰よりも覚えていなければならないからだ。

 

 

「わたし、好きです」

 

「うむ」

 

「好きだから、生きてたいです」

 

「うむ」

 

 

 シャドーは綺麗な空色の瞳で立香を記録する。【人間】の生き様を見るのが【人間の頂点で在る】者の義務なのだから。

 

 

「シャドー、さん」

 

 

 人類最後のマスターではなく、ただの【人間】藤丸立香という少女は【人間の頂点で在る】シャドーに本心から告げる。

 

 

「一緒に生きて、くれますか?」

 

 

 未来の不安にまた涙を溜めるオレンジ色の瞳、言っているそばから怯えで震える唇。

 

 

 

 【人間】の果てを観るのが【神】ならば、【人間】の生き様を魅るのは【人間の頂点で在る者】。

 

 

 

「勿論だ。貴様と生きよう。【人間】として」

 

 

 

 華が咲いたように笑ってまた涙を零す立香に今度こそ涙を拭ってやった。

 

 

 【人間】を分かるのは【人間】だけだ。

 

 

 藤丸立香にはシャドーしかいない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 あの後、今度は嬉しさでグズグズ泣いていた立香が眠るまで抱きしめ続けたシャドーは切羽詰まりまくった彼女に気づかれなかったフォウと語らっていた。

 

 

「フォーウ、フォウ」

 

「ん? 立香のことが好きなのかだと?」

 

「フォウ」

 

 

 シャドーがカルデアにいる間は何処であろうと、ずっと頭の上にいるフォウに用意してあった菓子を与えた。

 

 

「俺は【人間】というものの頂点で在る者だ」

 

「フォーーウ」

 

「答えになっていないだと? 他に相応しい言葉はないのだ。諦めよ」

 

 

 腕の中で立香が身動ぎをした。が、起きる気配はない。化粧で誤魔化してはいたが顔色が良くなかったのが良くなっていた。

 

 

「フォウ、フォーウ、フォウゥ!」 

 

「いい加減誰か決めろだと? ふん、俺は【人間の頂点で在る】のだ。決めるというなら〘全員〙になる」

 

「フォーウ!!」

 

「極端? 馬鹿を言うな。これが俺の【人間の頂点で在る】者として最も適した解答だ」

 

「フォーウ……」

 

 

 ダメだコイツ、とでも言いたいのかシャドーの頭の上で体を丸めるフォウであった。

 

 

 

 

 

 【人間】藤丸立香の依存愛を【人間の頂点で在る】シャドーも共依存であるのかは開示されていない。。

 

 

 

 

 

 

 

 とある日、個人個人での嗜好品の購入のため何人かのサーヴァントとともに買い物する日。

 

 

 時期的に秋になりかけて過ごしやすい季節になった。そんな時期に薄着では少々肌寒い、かといって冬服類の厚着では暑くなる。夏場より控えめに肌を露出し外に出る。

 

 

 「ふむ」

 

 

 普通のスマートフォンより丈夫に加工されているそれを片手で弄りつつ、もう片方の手で雑誌をめくる。

 

 

 「シャドー?」

 

 

 マリーに連れられ紅茶に合う茶菓子を見繕いに行っていたジャンヌが声をかけた。いつも地味めな服装で良さが減ってしまっているが、今日はマリーのおかげで良さが増す服装になっている。

 

 

 「あぁ、ジャンヌか。良いものはあったか?」

 

 「ええ、日持ちするものが多い所で助かりました」

 

 「俺もここで少々試食をしていたが、これどおり中々美味でいい」

 

 

 雑誌の特集を指差す。女性誌だが、シャドーは気にしていない。【人間】を知ることは【人間の頂点に在る】ために必要なことなのだから。

 

 

 「ふふ、シャドーもお菓子が好きなのですね」

 

 「甘味は荒んだ心を癒やす魔法だ。【人間】にとって必要であるのなら俺にとっても必要なのだ」

 

 「つまり、好き、ということですね」

 

 「そういう解答でいいだろう」

 

 

 回りくどい言い回しを慣れたように解釈したジャンヌはシャドーの隣りに座る。その時、紳士らしく椅子を引いてあげたのはシャドーだ。

 

 

 「いるか?」

 

 「お願いします」

 

 

 店員を呼ぶ鈴を鳴らし追加の注文をする。この短い会話の中には色々言葉が略されていた。

 

 

 同じ紅茶がいるか?   ――同じもので。   茶菓子の追加はいるか?  ――シャドーが食べていたものと同じものを。  一緒にいるか? ――一緒にいたいです。

 

 

 たった三文字と七文字で三説でる。まだ他にも意味があるだろうが、我々ただの有象無象の【人間】には開示されていない。

 

 

 

 

 「美味しいですね」

 

 「うむ、このナッツの食感がいい」

 

 

 茶を蒸らしている間に茶菓子を食べる。グルジアに合わせて甘さは控えめであった。

 

 

 「ところで、唐突ですが」

 

 「なんだ」

 

 

 布巾で手を拭いてからジャンヌはポシェットから一枚の紙を取り出した。

 

 

 「貴方は、ネックレスならどのようなものがお好きですか?」

 

 「本当に唐突だな」

 

 「私は、こういうリボンのものが気に入りました」

 

 「ふむ」

 

 

 様々なモチーフのネックレス。その下に値段。手頃な値段であった。

 

 

 「貴様は月も合うだろう」

 

 「そうですか? あ、ならお揃いのを選びましょう。如何でしょうか?」

 

 「かまわんよ」

 

 

 楽しく選ぶ。流れる言葉のそれらは祝福の言葉でもl祈りの言葉でもない、ただの恋に踊る少女の楽しむものである。

 

 

 

 

 

 「やはり、リボンがいいのではないでしょうか」

 

 「ふむ」

 

 「ハートも恋愛という意味でいいですし、クローバーも愛という意味でいいです。華も愛という意味合いでいいですが、やはりここはリボンの」

 「もうわかった」

 

 

 長い話をしだそうとするジャンヌをそう言って止める。自分が語るならいいが、誰かに長々と話されるのは苦手なのだ。勇ましく太めの眉を眉間に寄らせ紅茶を含む。

 

 

 「結局、貴様はこのリボンのネックレスを送ってほしいのだろう」

 

 「はいっ!」

 

 「今から行くか」

 

 「もう少しここにいたいです」

 

 「よかろう」

 

 

 この後、ネックレスを買った二人はお互いにネックレスを着け合いあった。

 

 シャドーはジャンヌの後ろから、ジャンヌはシャドーの前から。 

 

 後ろからあえて恋人を甘やかすように、前からまさに恋人に甘えるように。

 

 

 ネックレスを送る心理は“あなたを自分のものだと束縛したいから”。リボンのモチーフのネックレスの意味は“縁結び”。

 

 「フェイト」によりシャドーに召喚されたジャンヌ・ダルクは恋する乙女であり愛のために戦う【人間】の女である。彼女はシャドーを想っている。恋愛対象として、より深いに仲になりたいと望んでいる。

 

 

 “私と愛し合ってください”

 

 

 ジャンヌは無言でシャドーのネックレスのモチーフに口を落としながらそう願った。

 

 

 【人間】らしさを魅せていた。

 

 【人間】ジャンヌ・ダルクの深愛に対する【人間の頂点で在る】シャドーの心情は開示されていない。

 

 

 

 カルデアの沖田の部屋にて。

 

 本人の部屋であるのに、もじもじとする沖田。それを頬杖をついて見るシャドー。彼の頭の上はフォウが相変わらずいるが存在を彼女から知覚されていない。

 

 

 「あの、シャドーさん…」

 

 「あぁ、どうした。沖田」

 

 「えっとぉ…、その…。沖田さん的にはこの状況美味しんですけど、不味いといいますか…」

 

 「長い話は苦手だ。端的に申せ」

 

 

 足の間でもじもじとする沖田。それを見る。【人間】沖田総司を見る。

 

 

 「あ、の。もっと、その…」

 

 

 せっかく見つけた羽織を脱いで、くのいちのような格好をした沖田は普段の勢いはどうしたのか、抑え気味であった。

 

 

 「ぎゅー、を希望するでありますです」

 

 

 口調がおかしい。体調は先程からおかしいのでどうしようもない。

 

 

 「よかろう」

 

 

 胡座をかいて座っているシャドーの上に乗っている沖田を抱きしめた。

 

 

 「はーっ! ふぇーーぇい!!」

 

 

 変な声を上げたと思えば、そのまま固まった。

 

 

 「いいです…。すごい、いいです。シャドーさん…」

 

 「はっ、当たり前だ」

 

 

 シャドーに包まれ悦楽に浸る沖田。

 

 【人間】であれば、シャドーは極上のものである。男であっても女であっても。但し、シャドーの性的嗜好は女が対象である。

 

 

「胸が高鳴って苦しいんですが、それもなんか心地良いていうか。吐血するときの苦しさじゃないんですよね」

 

「ならばよい。さて、団子を食べるか?」

 

「はい~~」

 

 

 テーブルから団子の刺さった串をとって沖田に食べさせる。

 

 

「シャドーさんも」

 

「うむ」

 

「あ~ん」

 

 

 沖田はシャドーの手に自分の手を重ねてシャドーに団子を食べさせ返す。

 

 

 まるで恋人同士の睦み合いであった。

 

 

「シャドーさん、美味しいですか?」

 

「美味だ」

 

「えへへ~、美味しいですよね。美味しいです」

 

 

 満面の笑みで言う沖田。人斬りである沖田総司は今はいない。ジャンヌ・ダルクと同じくシャドーに召喚された、彼と同じ【人間】沖田総司である。ノッブ涙目。

 

 

「幸せすぎて吐血しそうですぅ……」

 

 

 何故か鼻も抑える沖田を存分に甘やかすシャドー。

 

 普段はシャドーのことを“マスター”と呼ぶが、この造愛の間は愛しい人を名で呼ぶ。【人間】の女らしい、特別感を表していた。

 

 

「造るのは色々消費するだろう。存分に蓄えよ」

 

「はい。えへへ~」

 

 

 身体を反転させシャドーを全力で蓄える沖田。それに甘く応える。

 

 

「シャドーさん、手をください」

 

 

 お互い血に濡れた手。方や善悪など気にすることをやめてしまった人斬り、方や善悪を両方等しく飲み込んで戦う人間。このようなこと気にすることなど今はない。

 

 【人間】名称:沖田総司、性別:女は気にしたがそれをやめさせられた。抵抗などしても意味がなかった。ただの【人間】として扱われ、気にするということがわからなくなった。名を呼ばれることの悦びを知ってしまった。女であることを誇りに思ってしまうようになった。

 

 交わす言葉に男女の愛を。触れる脂肪と筋肉越しに男女の愛を。【人間】同士の行動に男女の愛を。

 

 感じてしまう。

 

 

「………」

 

 

 手のひらに口づけしつつ無言の中に感じる幸せ。頬を桜色に染めつつ噛み締めた。

 

 

 沖田総司はこの幸せを感じていたい。女の幸せを叶えたい。

 

 

 

 

 【人間】沖田総司の夢に対する【人間の頂点で在る】シャドーが成就させる気があるのかは開示されていない。

 

 

 

 

 カルデアのサーヴァント用のある私室。

 

 

 首に喰い込む龍牙。甘噛ではなく、息の根を止めようと強く咬み付く。

 

 

「…っぬぐ」

 

 

 痛みに声を上げるのは男の方。令呪で相手を止めればいいというのに、やる気配がない。

 

 がぶり、というまだ可愛らしい音を立てるのではなく、皮膚を裂き中の筋肉とこれらから出てくる血液と彼女自身のの唾液とが混ざ合い、ぐちゅりぐちゅり、と不快な音を立てる。

 

 

「旦那様ぁ…」

 

 

女の甘い声は男の獣欲を掻き立てる。そして、男の苦痛に喘ぐ姿は女の本能を騒がせる。

 

だが互いに行う行動は一つだけ。

 

【人間】の愛情表現であるのは間違いない。これは女の表現だ。

 

 

「ぐぅが…」

 

 

本能的に痛みを和らげようと首を動かす。伸縮する首の筋肉。血に塗れ、そこからも血を出して損傷している事実を明らかにする。赤々と輝く固体と液体に嘘の形と色がない。

 

むせ返る男女の行為のそれではなく、血臭と肉を焼く匂い。

 

口に含んでねっとりと味わい喉に滑らせ胃の中に抱く。たまらない空腹感を肉で、喉の渇きは血で。深く味わい満足へ。

 

 

男の表現。男はひたすら女の逆鱗を撫ぜる。爪で時折掻き、手全体を使って愛撫する。快感を促すそれは性交へ導くためのものではない。ただ、愛を撫でた。

 

愛を享受し合う。

 

歪な、異常な………なんと綺麗な愛交渉。

 

 

男が痛みに喘ぐ。女は喰らい続ける。

 

声を上げる度に女が過敏に反応する。男から離れようと男を拘束する四肢の力が一瞬だけ止まる。

 

それに男が撫でる。女を離すまいと、より敏感な逆鱗の一部を撫でる。

 

続行。魔術や秘薬での肉体の強化は一切ない。互いにありのままで動き続ける。

 

 

ただの純粋な【人間】の愛情確認だった。

 

 

お互い吐く息が熱い。

 

片方は失われる血液のせいで青白い。死に近づく身を自ら近づけるその姿は、明らかに黄泉人のはず。

 

片方は吐く息に少々火炎を混ぜるので体内温度だけでなく室内温度も熱くさせる。血肉を貪る姿は、まさしく化生の類のはず。

 

だが、どうしても愛に狂う【人間】らしさを誰もが目に焼きつけるだろう。

 

 

「シャドーさ、ま…」

 

 

女の啼き声に男は口を女の耳元に近づける。

 

 

「存分に嘘を喰らえ(愛を知れ)

 

 

男はそう言う。血液とともに水分と発声するための筋肉が奪われたので歪んで渇いたそれは、どうしようもない程に【人間】清姫を思うものであった。

 

 

「清姫」

 

 

先程よりもたっぷりと甘さを含んで女の名を呼ぶ、

 

 

ぐちゅり、と生理的嫌悪を催す音が響く。

 

 

【人間】で、その【頂点】で【在る】のならば、どんな【人間】でも等しく愛す。どこまでもイカれた思想を持つシャドー。だが同時に、どこまでも正常だと思わされてしまう。

 

生きるために喰らうのではなく、ただの愛のためにお互い傷つけ合う。

 

愛、という言葉の中でおかしいとされるそれは、二人の【人間】のなかでは、もっとも正しい形だった。

 

嘘がないか、今日も清姫はシャドーの嘘を喰らう(愛を知る)

 

 

【人間】清姫の認知行動に【人間の頂点で在る】シャドーの正常に理解できているのかは開示されていない。

 

 

 

 シャドーの私室。

 

 今までの絆よりのサーヴァントや【人間】からの貢物が所狭しと飾られる中、男女がベットの上がいる。

 

 これから魔術供給でもするのか、それはこれからの流れによる。

 

 

 

 「………」

 

 

 上半身裸で胡座をかいて座るシャドーの腹に顔を埋めるマシュ。

 

 シャドーの令呪は腹にある。そしてシャドーの三属性をよく感じれるのがそこだ。

 

 目を閉じ、シャドーを感じるマシュ。

 

 ゴツゴツとした広大な地に、軽やかに吹く風、最後に全て包み込まんとする水。広く生きよ、自由に生きよ、そして共に生きよ、と語る。

 

 地の特性「記録」。風の特性「再現」。水の特性「回帰」。

 

 それぞれ能力は高いものではない。強烈なまでに【人間】として在り続けるシャドーの生き様らしからぬ地味なものだ。

 

 

「はぁ……」

 

 

 マシュが漏らす吐息は劣情を催したものではない。顔が緩んでいるのは、心の底から安心しているからだ。

 

 

「マシュよ」

 

「はい」

 

 

 目を閉じたまま応えるマシュ。その体にシャドーの脱いだ衣服を纏っている。それ越しにシャドーは彼女の背に触れた。

 

 

「しっかり摂るがいい。俺も貴様を録る」

 

「はい…」

 

 

 属性の通り、本人とは違って穏やかな形の令呪を指でなぞるマシュ。シャドーは、くすぐったさからか少々身じろぎしたが黙って受ける。

 

 

「シャドーさん…」

 

 

 舌も加わる。鍛え上げられた身体は脂肪が薄く、より鋭敏にその熱さが這い回る感覚が分かってしまう。だが、そこから来る快感よりもそこから出ていく魔力の喪失感からうめき声が出る。

 

 時折、肌に強く吸い付く音がする。肌の白いシャドーに、そんなことをすれば痕が残り、しばらくそのままになるだろう。分かっていてしている行為、なのだろう。

 

 

 シャドーはただ背を撫でているわけではない。子供もあやすようでもあるし、女を愛撫するようでもある。だが、それは指で背に描く魔術式。

 

 どこまでもどこまでも、【人間】で在れ、という祝福の魔術式を描く。

 

 道具もなしに指で描くだけでは、特に効果もない。【人間】らしい、何かに頼る行為、それをシャドーがマシュのためだけに行っていた。

 

 

「マシュよ」

 

 

 その声に(ねぶ)るのをやめ、シャドーを見る。

 

 

「生きよ」

 

 

 疲れなど感じさせぬ、強い声。

 

 

 これを行う前にカルデアでの仕事も行っていた。書類、と一言だけで済むものではなく人件費や施設維持費などは勿論のこと、レイシフトのたびにレポートなども提出する。書類は、たとえレイシフト先から帰り疲労困憊であろうと、何十人分のものを即座に片す。他に手伝ってほしいものいれば、奪い取り片す。まだ、カルデアの人員は少ない。どの職員も猫の手を借りたいほどの忙しさ、そして抜けない疲れ。そこに総ての分野をこなしてしまう人物がいたなら頼るだろう。藤丸立香やマシュ・キリエライトよりも長くスタッフとして大活躍もしていたのもある。頼りになる、なりすぎる。

 そして、これ以外にも体がなまると戦闘訓練をしたいサーヴァントの相手をしていたのだ。

 

 それをしても疲ていない。いや、疲れていることが分からない。

 

 【人間の頂点で在る】ということは、【人間】ではないということではないと言うのに。

 

 

 閑話休題

 

 

 マシュは即座に答える

 

 

「はい」

 

 

 お互いがマシュの余命が僅かなのを知っている。どんなに残酷か、そんな言葉二人は解る気はない。

 

 

「生き様は最高に決めろ、でしたね」

 

 

 マシュが言う。探索の時、ボスキャラと呼ばれる面々にいつも告げた説教の一部を口に出す。

 

 

「その方が“生きていた”と覚えていられる、ですね」

 

 

 いきなりシャドーが強くマシュを抱きしめた。

 

 

「シャドーさん?」

「俺は、“生きよ”と言ったのだ、マシュ」

 

 

 マシュがシャドーの名を呼ぶのと被せるようにそう言う。意図がつかめないのか、シャドーの空色の瞳を見続けた。

 

 

「生きよ」

 

「………」

 

「どんなことがあろうと生き足掻け」

 

 

 いつも偉そうな口調は少し泣きそうになっていた。

 

 

「俺は…。マシュ、貴様に生きていて欲しい」

 

 

 【人間の頂点で在る】者が【人間】として言う。

 

 

「生きよ。生きよ…。貴様と共に生きたいのだ……っ」

 

 

 個人的な願望など持ってはいけない、と自身を律してきた【人間の頂点で在る】者が初めて【人間】として願ったものだった。

 

 更に強くマシュを抱く。デミ・サーヴァントとなったマシュといえども痛みを感じるほどの抱擁。それは、彼女を強く想ってのものなのが伝わる。

 

 マシュは笑った。泣きそうなまま、嬉しそうに。

 

 

「シャドーさんがいる未来なら喜んで」

 

「どんなときも共にあろうっ。貴様が健やかなるときも、病めるときも…。共に生きよ、マシュ」

 

 

 まるで結婚の宣誓のような言葉を言うシャドー。全力で愛人(あいびと)【人間】マシュ・キリエライトを愛しているがゆえの言葉だった。

 

 

「はいっ」

 

 

 幼さを纏う顔が、ようやく女性に近づいた。シャドーは愛おしそうに、己のファーストキスを愛しい人マシュに捧げた。

 

 

「シャドーさん、私もっと」

「俺から言わせよ」

 

 

 マシュのメガネを外し、体勢を変える。

 

 

「マシュ・キリエライト。貴様を俺にくれ」

 

 

 ひたすら、その時が来ても愛し合おう。

 

 

 【人間】マシュ・キリエライトと【人間】シャドーとの“愛”は終わりを迎えることがない、そう明示されている。

 

 

 

 

 

 スマートフォンで予めセットしておいた【英霊転身システム】。起動に少々時間がかかる。

 

 これは第五次聖杯戦争時に召喚された全サーヴァントに変身し能力を使えるようになっているシステムである。【人間】の身から【人外】へ向うことは心身ともに多大な負荷がかかる。それを全て起動する。

 

 負荷などどうでもいい。"生き抜いて魅せた”彼女に負けてはいられないのだから。

 

 

「ゲーティア…」

 

 

 唸るように出た声に心の隅で驚く。

 

 俺は何に怒るのかに対するのではない。俺が怒れるのかということだ。

 

 

「誇れ。貴様は、俺と今まで生きた。貴様の生き様を俺に魅せた。ずっと覚えていてやる。死に絶えても、生まれ変わってもずっと」

 

 

 先程からの戦いで疲れた身体に鞭を打つ。変身し魔槍を構える。いつもは精神も染まるものが、今回は俺の意思が顕著であった。

 

 神速で魔槍をゲーティアに突き刺す。手応えはある。が、まだ消えぬ。いきなり宝具を使ったことで変身が解けた。腕の筋肉どころか全身の筋肉がズタズタになったのだろう。声が出せないほどに脳に響く停止の声。だが、そんな痛みがなんだ。

 

 

「死に様を気にするなら、生き様を気にしまくってから死ね」

 

 

 近づいたせいで攻撃が来る。即座にライダーに変身し、幻想種を召喚して皆を守る。魔術回路がイカれる感覚。脳は停止を進言し続ける。そんなもの気にする気はない。

 

 

「死に様は最低に無様でいい。格好悪いほうが覚えていられる」

 

 

 二の指輪を使われたが、すでにキャスターに変身した俺に意味はない。その使用を破戒する。四肢に力が入らなくなってきた。まだ感覚が僅かに残る指先でどうにかすればいい。

 

 

「生き様は最高に決めろ。格好いいほうが“生きていた”と覚えていられる」

 

 

 虚勢を張って、自身の力を振るう。呪殺はできないが、ダメージは重ねた。指先からの感覚が絶えた。血液を巡らす。管はまだ形を成しているはず。心臓をさらに動かして無理を重ねる。

 

 

「さぁ、最高に生きてみせろ。そして、最低に無様に死ね」

 

 

 狂うのは誰かという個人のためではなく、あらゆる【人間】のために。心臓が何度か止まる。脳からの電気を増やし、動かす。

 

 

「生きるのは楽しかったろう? 死ぬのは怖かろう?」

 

 

 世界を作り、物量で攻める。心臓が止まる。動かず、呼吸もままならない。脳に血液がいかないが、まだ動く。

 

 

 “仲間”。

 

 共に戦う連中を感覚だけで感じて、そんな一番嫌いな台詞が脳裏によぎる。藤丸立香も、ジャンヌも沖田も清姫も、マシュも、どんな連中もその台詞を喜んで使うだろう。その台詞は嫌いだが、貴様らは嫌いにはなれない。

 

秘薬など飲んでいる暇はない。停止しようとしている自身を必死に稼働させた。

 

 

藤丸立香のサーヴァントも俺も瀕死。だからこそ、最後の力を互いに吐き出す。

 

 

「これは、貴様の願いだったのだ。そして、俺達の願いだったのだ」

 

 

聖剣にありったけのチカラを込める。心臓は停止した。脳もそろそろ思考も停止させるだろう。

 

 

「生きたい、それだけだろう?」

 

 

ホワイトアウトする視界の中、マシュがいた。

 

 

―――――(アイシテル)

 

 

なんという言葉を言ったのか、薄れる意識は覚えられなかった。ただ、マシュだけに言いたかった言葉だったような。そんな気がした、のだ。

 

 

 

 




主人公設定



○一人称は俺
○性格は典型的な俺様キャラで、自分が世界で一番偉いと思っている


●理継続保障機関カルデアで、ぐだ子やマシュより前にスタッフとして居候している
●ぐだ子と同年齢の青年


◇7つの聖杯探索(グランドオーダー)を巡る、ぐだ子の護衛兼サポートをしている
◇ぐだ子と同様に「フェイト」を使用するが、ぐだ子の「英霊召喚システム」と異なりセイバー~バーサーカーまでの全クラス(Fate/stay nightに登場する英霊のみ)のサーヴァントに変身する「英霊転身システム」が搭載されているスマートフォンを使っている
変身したサーヴァントの武器や能力、宝具を使用することができる


■偉そうな性格だが総ての分野をこなしマシュと同様にフォウと意志疎通ができる完璧超人
■敵を生身であしらうほど人間離れした身体能力を持っている


△長い話が苦手で、少し聞いて「もうわかった」で済ませる
△仲間という言葉を「一番嫌いな台詞」と称しているが、ぐだ子達を大事に思っている
△探索を巡るごとに遭遇するボスキャラに対して説教する癖がある


▼ガルデアにいる時は主人公の頭上には、いつもフォウが乗っている



以上がリクエストして下さったシャドー様がご考案した設定です



以下はこちらが勝手に考えた設定です

後付け設定

・属性は「水」と「地」と「風」の三属性
・特性は「記録」と「再現」と「回帰」
・「記録」は自身の経験や見たものを全て(一秒、一瞬まで)覚えていることができる(但し、視力が無くなっていく)
・「再現」は「記録」から行動を文字通り再現できる(但し、魔術回路が歪になる)
・「回帰」は何度も繰り返すことができる(コンティニュー機能。但し、色々削れる〔寿命だったり、肉体だったり、人間性だったり)

どれぐらいのヒロイン数がいい

  • 一人
  • 二人ぐらい
  • ハーレム
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