頭ふっわふわな短編集   作:サラダ豆乳パン

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fgo ハーレムマシュ落ち(ぐだ子・マシュ、ジャンヌ【白】、沖田総司【桜セイバー】、清姫)の続編です。

ぐだ子は藤丸立香です。


上の続編  マシュ・ジャンヌ【白】落ち

 

 

  鈍い疼痛で目が覚める。

 

  シーツ越しにその部位を触ると、痛みの強さが増した。だが、耐えられぬほどのものではない。

 

  変質してしまった自身の心身を落ち着けるため、痛みに入ってしまった力を抜く。

 

  簡単に言うが、結構難しいものだ。疼痛はますます強くなり、その痛みに脳が危険と判断し警告として筋肉に緊張を指示するのだから。

 

  脳を騙す。

 

  〘これは痛みではない〙 そう思考する。   ――否、と判断し脳は緊張を指示するのをやめない。

 

   「これは痛みではない」 そう口に出す。   ――…否、と鈍く判断しだす。だが、まだ指示をやめない。

 

   「痛みではない」  また口に出し、痛みで引きつった表情筋の位置を動かし、笑みを作る。  ――………。鈍い判断をより鈍くする。

 

 

   痛覚、熱反応、心拍数、血圧―――。様々な体内で起こっているはずの異常を確認する。

 

   それにかかること瞬間。

 

   結果――体内での異常ではない、との判断。

 

   結果――体内での異常である、との判断。

 

  

   2つがまじり、脳は混乱する。そのせいで独特の気持ち悪さを感じ、口内が異様な味になる。

   

   少し心が壊れていくが、すぐに対処するので気にはしない。

 

   ビリビリと痺れ出す指先を内に集める。強く握り拳を作るのではない。あくまで、なにか潰さないよう優しく閉じ込めるように。

 

 

   呼吸を意識的にする。

 

 

  〘戻らない、止まらない、躓かない。――不可能と諦めない〙   そう息をゆっくりと吸いながら侵食してくるモノの足止めを。

 

  〘膝をつくな。背を向けるな。顔を背けるな。――不可能を許さない〙 そして息をゆっくりと吐きながら暴れるモノを押さえ込む。

 

 

   服越しに、皮膚越しに、筋肉と脂肪越しに、体内でより強く存在を主張するモノに理解させる。

 

 

  

  〘【不可能を可能にする半端者】(シャドー)は不可能という理解し得ぬものは決して認めない〙

 

 

 

   諦めたようにゆっくり収束していくモノ。

 

   不遜に在って、遠慮に成って、確かに交っている。

 

   なんとも形容の難しいもの。 人では異物、神では異物。 だが、シャドーの中では当然として在るソレ。

 

   

   シャドーはこうしてようやく、今日も生きることができる、と理解する。

 

 

 

 

「おはようございます、シャドーさん」

 

 

 各部屋に備え付けてある浴室でシャワーを浴び終え、部屋から出るとすぐそこにマシュとジャンヌがいた。

 

 

「うむ。おはよう、マシュ、ジャンヌ」

 

 

 ゲーティア戦で命を落とし、マシュと同じくフォウによって「人間」と「神」のハーフとして復活したシャドー。発声すら権能(チカラ)とさせかねない。身体能力は【人間】だった頃と同じだが、魔力と魔術回路は【神】の力が加わったことで大魔術も簡単に発動できるようになってしまった。たった一語だけでも、空を割る、海を割る、地を割る等容易くできてしまう。その制御に並々ならぬ苦労があろう。だが、それを自他共なんともなさ気にこなしてしまった。カルデア内には、オリオン(じゃない方)やイシュタル等の神のチカラ? 余裕でしょ? 勢や、メディアやマーリンなど魔術なら任せろーバリバリ 勢がいるのだ。彼らの能力を酷使すればできないこともない。

 

 つまり、発声にすら気を使っているのだ。

 

 

「どうしたのだ。いつもなら立香らもいるはずだが?」

 

 

 そう尋ねると、マシュが前に出る。すかさず押しのけてジャンヌが前に出る。

 

 その繰り返し、五度。

 

 

「同じ用なのだろう? 同時に申せ。」

 

 

 そこに存在するだけで、溢れる魔力。魔眼は今も昔も所持はしていないものの、その溢れて漏れたものが自然と周りのものを読み取ってしまう。体温や心拍数は勿論、時間をかける、もしくはより溢れさせれば、相手の心情、思考すらも読み取ってしまう。だが、それは常に存在するわけではない。いつの間にか気化のような現象で消え去る。

 

 神秘勢から言わせれば、星に馴染んだ。魔術師から言わせれば、マナと同化した。学者らには、キセノンと結合した。文学者どもは、世界と結ばれた。

 

 それぞれの詳しい論述は割くが、つまりホメオスタシスではないのだ。

 

 

 まだ、数分。そしてシャドーが表面上は涼しそうにしながらも、なんとかおさえこんでいるため意思を読み取れる程度だ。

 

 

 微妙な攻防をしていた二人は、シャドーの言葉にソレを止め同じ言葉、同じ速度、同じ音量で言った。

 

 

「一緒にお祭りに行きませんか!?」

 

 

 祭り。そう聞いて思い浮かべるのは、降臨祭や復活祭。又は、収穫祭や謝肉祭といったもの。これらが、シャドーにとって馴染み深いものだ。だが、彼女らは正確にどの祭りとはいっていない。そもそも、挙げたものを態々言いに来なくても自分で分かっている。そして、ここカルデアには様々な国・時代の英霊(一部神)がいる。あの国の祭りをやるなら、この国のも。この時代にはないが、あの時代にあったものをなどなど、キリが無くなるほど祭りをしなければならなくなる。その取捨選択はカルデアのマスター藤丸立香、まだ帰ってこないロマン、皆の美女ダヴィンチちゃんらが主だってしていた。何故、シャドーが主立ってなかったかは、彼が母国や宗派的なもので偏りが僅かなりとあるからだ。

 

 

「何処の国のものだ」

 

 

 基本的にカルデアにいるか、特異点にいるかの彼ら。時代も、国も、季節も、環境も、色々バラバラで過ごしてきたため、今現在の時代の季節での祭りといえば。

 

 

「日本です」

 

「日本の?」

 

 

 多様な文化を混ぜ入れ、これまた多様な祭りに手を出しまくっているあの国。コ○ケ的な方ではないだろう。

 

 

「ユカタなるものも用意しました!」

 

 

 ジャンヌが何処からか浴衣を出した。マシュは帯と下駄を。それぞれシャドーによく似合いそうである。

 

 

「準備万端だな」

 

「はい!」

 

「それで、貴様らも着るのだろう」

 

 

 うんうんと頷く二人。

 

 長く共に在りすぎた。心情の奥深いところにある欲も読み取れてしまう。

 

 そんなものに今更全員臆することもない。

 

 方や、身体を繋げた仲、方や、魔力を繋げた仲。

 

 その程度のもので揺らぐ信頼関係など築いていない。

 

 

「良かろう。行こうではないか、日本の祭りとやらに」

 

 

 相変わらず偉そうにそう言うと、女子二人は互いの手をタッチして喜んだ。

 

 

 

 

 

「ふむ」

 

 

 新しい特性【世渡】を使いレイシフトして日本に赴いた。

 

 

「これが、祭り…」

 

 

 マシュが薄い色合いの浴衣を纏い。

 

 

「屋台もそうですが、独特ですね」

 

 

 ジャンヌが濃い目の色合いの浴衣を纏う。

 

 

 そしてこの二人。両サイドに陣取っている。 誰の? 勿論、シャドーの。

 

 腕を組まれ男にはない、膨らみと柔らかさをもつ胸部をシャドーに当てている。

 

 

「………」

 

 

 カジュアルに浴衣を着こなすシャドーは目を細め、周りを見る。

 

 煩悩に負けぬための気をそらしているわけではない。そこかしこにある慣れた気配を感じ取っているだけであった。

 

 

「シャドーさん、ジャンヌさん。あれはなんでしょうか」

 

 

 機器から流れる祭り囃子の中でも聞こえる可愛らしい声を右腕にいるマシュが指差した。少し腕を彼女側に引かれたため胸が当たる。

 

 

「白くて丸いですね」

 

 

 左腕にいるジャンヌがマシュ側に身を乗り出す。胸がより当たる。

 

 

「あれは確か、わたあめだ」

 

「わたあめ、ですか」

 

「あぁ、知っています。砂糖菓子ですよ、あれは」

 

「そうなんですか」

 

 

 三人はそのままの形で呼び込みをしている屋台に近づく。

 

 

「いらっしゃ~い、いらっしゃ~い……って、マシュッ!?」

 

「え?」

 

 

 屋台の親父がいきなりマシュの名を呼んだ。

 

 

「知り合いか?」

 

「いえ、知らないのですが…。えっと、貴方は」

「はっ!マ、マシュマロのような食感のわたあめだよ~。ま、うぅん! お嬢ちゃん達もいかがかな~?」

 

「まぁ!? そんなわたあめがあるなんて…」

 

 

 屋台の親父は焦ったようにそう言うとマシュから顔をそらしつつも、自分の店の商品を勧めてきた。

 

 

「マシュマロのような食感ですか…」

 

「いるか?」

 

「はい!」

 

「ラ…親父、二つほどくれ」

 

「あいよ~。八百円、確かに頂きました~」

 

 

 ラがつく誰かの笑顔がピシリと硬くなるが、気にせず八百円を渡すシャドー。そして、溢れる魔力で彼の思考に触れた。

 

 

(折角、マシュも楽しんでいるのだ。邪魔はしないほうがいい)

 

 

 肩を大きく動かしたたため、変な形のわたあめを作ってしまう。まるで、剣のような形である。とある湖の騎士的な。

 

 

「わぁ、面白い形ですね」

 

「あ、あ~、ちょっと失敗しちゃったなぁ~。新しく作るからちょっと待っててね~」

 

 

 親父が商品にならなくなってしまったものを何処かにやろうとすると、マシュが止めにかかった。

 

 

「あ、それがいいんですけど」

 

「どうしてです?」

 

「お父さんのみたいで、なんか欲しいんです」

 

「………っつ!!」

 

 

 親父が固まる。糸目だった目が開眼された。

 

 

(この言葉が取引だ。いいだろう?)

 

 

 親父は頷くと、歓喜に満ち溢れたものを隠さずにマシュに渡した。

 

 

「お父さんは嬉しい!!」

 

「え?」

 

「と、言うと思うよ!!」

 

「なんかこの人変ですね」

 

「気にするな、ジャンヌよ。さて、親父もう一つもぱぱっと作ってやれ」

 

「あいよ!!」

 

「私は普通の丸いのでお願いします」

 

「お任せを」

 

 

 ぱぱっと作る。大きめのを。

 

 

「あいよ! そっちのお嬢ちゃんの分、こっちにおまけさせてもらったからね~」

 

 

 ジャンヌに渡る。それは彼女の顔より大きいものであった。

 

 

「食べきれるかしら」

 

 

 そう呟く。と、ジャンヌは何かを思いついたのか、それを少し千切るとシャドーの口元に。

 

 

「あーん」

 

 

 ぱくり。こっそり指をシャドーの口内に入れたのは気の所為のはず。

 

 マシュがわたあめに夢中になっている最中に起きたもの、阻止のしようがなかった。

 

 

「ふむ。本当にマシュマロのような食感がするのだな」

 

 

 食感はしつつもわたあめであったのだ。口の中に入ったそれはすぐに溶けてしまった。

 

 

「シャドー」

 

「この通りだ。できんよ」

 

 

 ジャンヌが何か催促するも、両腕とも女性陣に取られてしまっているので何も出来はしない。

 

 

「では、またあーんできますね」

 

「そうだな。が、あまりここに居ては親父の商売の邪魔になる。行くぞ、ジャンヌ、マシュ」

 

「はっ! はい、シャドーさん」

 

「分かりました」

 

 

 ようやく夢中になっていたわたあめから戻ってきたマシュと聖女? なジャンヌとともにわたあめの屋台から離れるのであった。

 

 

「まいどあり~!!」

 

 

 メジェド様人形と親父の声に送られて。

 

 

 

「むぅ…。私のをあーんが出来ませんでした…」

 

「ふふ。楽しかったですね」

 

 

 マシュは、あーんする部位を食べ尽くしていたためシャドーにすることが出来ずにジャンヌから借りてしていた。

 

 

「では、あれでするが良い」

 

 

 シャドーは楽しそうにマシュに語りかけ、顎と目で屋台を指した。

 

 

「あれは…?」

 

「まさか…。TAKOYAKI!?

 

 

 マシュの疑問の声に答えたのはジャンヌであった。少し慄いたような声である。

 

 

「ジャンヌは食えんだろうから、貴様がやってくれるのだろう」

 

「え!? いいんですか?」

 

「ぐぬぬ…」

 

 

 フランスではタコを食べる地域もあるが彼女の出身地域に海はなく、そもそも彼女の国ではタコは“海の悪魔”と称される生き物。確かに見た目はアレであるのだし、しょうがないものもある。

 

 

「知識として知っている貴様には、少々荷が重かろう」

 

「タコ焼きでなければ…、タコ焼きでなければ……!」

 

「美味しそうな匂いですけど」

 

 

 確かにソースの香ばしい匂いが近づくたびに香るので胃袋を刺激し、空腹感が満ちる。ジャンヌにとっては中身がヤツなのが問題では在る。

 

 

「いらっしゃ~い! お、外人のかっこいい兄ちゃん。随分なべっぴんさん達連れてるねぇ~」

 

「うむ。二人共美人であろう? 俺の自慢だ」

 

 

 屋台の親父の台詞に、赤面もせず堂々と言う。

 

 

「………!!」

 

 

 屋台の親父の台詞よりシャドーの言葉がたまらなく嬉しいのだろう。左右から頬を染めた美女たちにより強く抱きつかれつつも、シャドーの不遜な様子は微塵も変わらない。

 

 

「ははっ、兄ちゃん、おっとこまえだね~。で、どうだい。うちのタコ焼き買ってくかい」

 

「あぁ、二つ頼む」

 

「あいよ~。バイトの嬢ちゃん! タコ切ってくれ~」

 

「は~い! わっかりました~!! まったく、なんでアイドル勇者の(アタシ)がこんなことをしなくちゃなんないのよ…。そもそも子イヌがしっかり子ガメを見張っておけばよかったのよ。 って、あぁ!! ぬめっとした!! ぬめっとしたぁ!! あぁ~気持ち悪~いぃぃぃ!!

 

 

 どこぞの何度も出てきて恥ずかしくないんですかの声が聞こえたが気のせいだろう。

 

 

「シャドー、何故二つも?」

 

「生まれ変わってから、前より燃費が悪くなってしまってな。食べなければ持たんのだ」

 

「つまり、こういうことですよ。ジャンヌさん」

 

 

 後ろのバイトに檄を飛ばしつつ生地を作る屋台の親父の前で三人が話す。要領を得ないジャンヌが得た方のマシュの方を見た。

 

 

「“食べさせてくれ”ということです。ね?」

 

「うむ。そういうことだ。なに、この通り手が塞がっていてな。食べようにも食べれん。貴様らの手をまた借りるぞ。…構わんだろう?」

 

「………はい!」

 

 

 照れ隠しで長々と号していると思われるが、別段照れているわけではない。魔力で触れて感じてしまったジャンヌの心境がプラスになるよう動いただけである。

 

 現に、さっきまで“海の悪魔”に怯えていたジャンヌはおらず、嬉しそうに更にシャドーにくっつく。マシュも同じく。それにシャドーは微笑みを浮かべた。“実に愛い”という感じのもので。

 

 

「ほい、ほほいっ、ほいほいほいっと。あいよ~、兄ちゃん達、出来ましたよ~!!」

 

 

 ちょうどいいタイミングで親父がタコ焼きを笹舟に似た箱に入れて出来たてをシャドー達に渡す。お金はすでに払い終えていた。

 

 

「ありがとうございます」

 

「感謝する、親父」

 

 

女性陣二人のと違った感謝の仕方で意を表すと、三人は屋台から離れた。

 

 

(その子イヌとやらに貴様の頑張りを教えといてやろう)

 

「ひゅわっ!?」

 

 

 魔力で混沌・善の誰かに伝えるのを忘れずに。

 

 

 

 

「あふっ、あふひふぇふふぇ(訳:あついですね)」

 

「舌が痛い」

 

「す、すいません。加減がわからないもので」

 

 

 すこし冷ませば大丈夫だと思っていた外人三人は、中のほうがより熱いというのを知らなかったようだ。これがニンジャトラップ…!

 

 シャドーは魔術でやけどした己の口内とマシュの口内を治す。

 

 漏れ出る魔力で魔力が枯渇しないのかというとそういうことはない。何故なら、【魔増】という新たな特性によって消費した魔力を自動回復させるからだ。オートポーション(MPバージョン)を搭載していると言っていい。

 消費したら補充する。彼が生きている限り、彼の中でその永久循環はなされるだろう。ただし、食事など取らないと人間として摩耗して壊れていくので食事はこまめに取る。さっき、より食べるようになったと言っていたのは、自身の人間としてのアイデンティティが歪んでいくのを本能的に恐れていての身体反応である。腹がより減るのは、生物的構造で言えば長くもたない欠陥。だが、【不可能を可能にする半端者】と自身を称するようになり、半分は人間であるということの自負と少なからずある半分は神であるということへの焦燥感からの、絶対的価値。欠陥でありつつ、絶対的な価値である空腹感、あるいは飢餓感、それを持つことを“彼女”は咎めはしない。

 

 

「でも、美味しいです」

 

「うむ。美味い。このソースもいいが、生地に何かダシを使っていて更に美味い」

 

「そんなに美味しいのですか…」

 

 

 三人は仮設した長椅子に座り食べていた。ジャンヌは少し興味が湧いたように後四個ほど残ったタコ焼きを見つめる。

 

 

「あ、の、二人共」

 

「どうしました、ジャンヌさん?」

 

「ふむ…」

 

 

 分かったシャドーは楊枝より太い、けれども串より短いそれでタコ焼きを一つ取る。

 

 そして。

 

 

「ほれ」

 

 

 フーフーはしなくてもいいぐらい外側は冷めているし、二の足を踏ませぬよう魔術で中の方もそんなに熱くないようにしたるそれをジャンヌの口元へ。

 

 

「あっ!」

 

「あ、あーん…」

 

 

 マシュが声を上げてもシャドーは行動をやめず、ジャンヌは恐る恐る口を開き。食べた。

 

 

 目をぎゅっとつむり、生地とともに“海の悪魔”を食べる。

 

 咀嚼。咀嚼、咀嚼。

 

 

「おいしいです…」

 

 

感激したような様子でシャドーに残りを催促する。

 

 

「シャドー、もっとくだ、さい」

 

「いいだろう。貴様にくれてやる」

 

「むぅ~~…」

 

 

 傍から見ると謎のエロ空気を醸し出す二人。マシュは頬を膨らましながら残りの自分が持っているタコ焼きを食べるのであった。

 

 

 

 

「はー…、楽しかったですね……」

 

「ほんとうに、そうですね…」

 

 

 タコ焼き後、カチワリを飲んだり射的で密着しながら的を撃って周りから嫉妬の視線を浴びたり、らくがきせんべいでせんべいにカップル臭がパない落書きをしたものをつくったり処々でメジェド様に見守られていてたり、と色々として祭りの最後。

 

 

「この辺りでいいか」

 

「そうですね」

 

「あ、ちょうどベンチがありますよ」

 

 

 一部分だけ空が見える少し葉が生い茂った場所にポツンと三人ぐらいなら座れるベンチがあった。

 

 

「草木がここが穴場だと教えてくれてな」

 

 

 人だけに有らず草木の声も聞こえる。蚊やら何やらの虫も近くにいるが、虫よけの魔術を行使しているのでそれらは寄り付かない。普段、SAN値を削られるようなモンスター達と戦っているとは言え、生理的に受け付けないものは存在する。そうした考慮もできる。虫たちには申し訳ないが、ここは愛おしい彼女たちを優先することに決めた。

 

 

「花火、実際見るのは初めてです」

 

「私もよく覚えていると言えば、最近の映像のほうですね」

 

「………」

 

 

 二人の間にいるシャドーはしばし目を閉じる。体力的にはそんなに疲れていないが、精神面で少し疲れていたのだ。かつては【人間の頂点で在る】ことが絶対的な自身としての在り方であり生き方、但し人の声をこれほど聞こえるというものではなかった。無意識にも、有意識にも聞こえてくるあらゆる声。負のものもあれば、正のものも、ごちゃまぜのものもある。勿論、受け止める気概もチカラもあるつもりでいる。それでも、器は矮小なる者のまま。歯がゆく思うことは多々ある。あらゆるものを救いたい、などと言う気はない。“ある程度なら救える”のだから、それで今のところは我慢しているのだ。

 

 欲深くなってはいけない。欲深ければ欲深いほど、“【不可能を可能にする半端者】()【人間】()でなく【神】になってしまう”。

 

 ナカが蠕く。

 

 

 

「シャドーさん?」

 

「シャドー、そろそろですよ」

 

「あぁ」

 

 

 二人の声に意識が戻る。少し気絶していたようだ。丹田に力を込め身体を食い破り出てこようとするソレの動きを封じる。

 

 

「あっ」

 

 

 三人の内の誰かの声が漏れたと同時、空に昇る光が。

 

 

 華が咲く。

 

 

 何度も咲く。遠くても響く、破裂音とヒューという笛のような音、三人の感嘆のため息とともに。

 

 

「綺麗…」

 

 

 ジャンヌが思わずシャドーの腕を離してしまうほどの綺麗さ。

 

 

「………」

 

 

 マシュは花火と同じようにキラキラした目で口をぽかんと開けたまま空に咲く華を見る。

 

 

 思わず愛しさが漏れた。

 

 

 そっとマシュを抱き寄せ口付けを落とす。

 

 

 「……っつ!?」

 

 

 ふいの口付けに声を上げそうになったマシュだが、ジャンヌから開放された方の人差し指で止める。

 

 ジャンヌは全く気づかない。

 

 

 「善き日だったな、マシュ」

 

 

 顔を真赤にしたまま黙って頷くマシュに花火をせにしたシャドーが薄く笑う。

 

 

 「お前達とともに在れて楽しかった。今度は俺から誘おう」

 

 

 あとは花火を楽しむことにした。

 

 

 (愛しい人よ、共に在ろう)

 

 

 二人の意識にそう触れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 おまけ

 

 

 

 無言で帰宅中。

 

 

 シャドーの顔はなんともないが、女性陣二人の顔は赤いままだ。そして無言である。

 

 事後…?

 

 

「遅かったですねぇ…、シャドーさん達」

 

 

 人気のないところでカルデアに戻ろうとした時、彼女たちが現れた。

 

 

「旦那様ぁ、何処にいってらしたのですか…?」

 

「シャドーさぁん、探しましたよー」

 

 

 全員声のトーンが低い。辺りが暗いせいで顔がよく見えないが、不穏な様を悟る。よくよく見ると彼女たちも浴衣姿だ。

 

 

「せ、先輩!?」

 

「それに、清姫さんに沖田さんも…」

 

 

 立香がにこりと笑ったような気がした。好意的なものは含まれていない。

 

 

「シャドーさんを誘うのは二人に任せました。えぇ、それは確かです」

 

 

 清姫もニッコリと笑う。好意的なものは含まれていない。

 

 

「でも、おかしいですよねぇ。沖田さん達も一緒に行こうってことにしましたよねぇ?」

 

 

 沖田がへラリと笑う。好意的なものは含まれていない。

 

 

「どういうことですかねぇ…?」

 

 

 三人の重なった声の真意は意識に触れなくても分かる。これは怒りである。

 

 

「落ち着け、三人共」

 

 

 三人の怒りを孕んだ目がシャドーを凝視する。選択をミスったらBADENDであった。

 

 

「今度、俺の国でも祭りがるのだ。それに行かないか?」

 

「行きます!!」

「何処までもお供します!!」

「絶対に行きますとも!!」

 

 

 三人共即答。

 

 マシュとジャンヌには意識に触れて、別の祭りに行くことになっているので一旦放置である。

 

 

「だが、そのユカタとやらは着てくるなよ」

 

「え、まぁ、着ませんけど、どうしてです?」

 

 

 立香の問に軽く頬を掻いた後に応える。

 

 

「マシュやジャンヌもそうだが、立香も清姫も沖田も、それが似合いすぎる。他の奴らに見せるのは、どうも嫌なのだ」

 

 

 女性陣は固まる。そして続けて言うにはこうだ。

 

 

「俺以外に魅せてほしくないのだ。貴様らの可愛らしい姿は」

 

 

 

 このあと無茶苦茶無言で帰宅した。

 

 

 

 

おまけのおまけ(スルー大歓迎)

 

 

 

「うふふ。愛子(めご)、愛子。今日は楽しかったようですね」

 

 

 寝たはずなのに、起きているような不思議な感覚。

 

 ここでは、あらゆる姿をとれるのだ。

 

 現実でも使える【英霊転身システム】。【人間】と【神】のハーフに生まれ変わったため、システムの使用時の負荷は一切かからず、いつでも自由にサーヴァントの姿に変身・能力・宝具が使用可能になった他、変身後の精神は彼のままでいられるようになった。

 

 だが、今の彼はどの姿でもない。

 

 現実の姿で相手取るには不遜すぎる。英霊らの姿では無礼すぎる。だから、彼女の好みの姿に。

 

 

「えぇ、とても楽しかったです」

 

 

 年上でもめったに敬語を使わず、カルデアにいる英霊にさえあまり使わない。だが、彼女相手には使うべきだった。

 

 

「きちんと皆を愛でれて素晴らしい。こうして私は貴方の姿を見れて嬉しく思いますよ」

 

「有り難き幸せでございます、フリッグ様」

 

 

 北欧神話において、主神オーディンの正妻とされる女神。それが彼女の正体である。うっとりとした様子の女神にシャドーは、微笑み抱える。

 

 

「あぁ、あぁ。あまり微笑みかけないでちょうだい、愛子。思わず私の所へ攫っていってしまいそうなるのです」

 

 

 女神は乙女のように恥じらい両手で顔を隠す。だが、隙間から見ている。

 

 

「今はまだ、半分は人間です。それはお許し下さい。俺はこの生を終えたら貴女様の元へ行くことがお決まりなのはご存知でしょう?」

 

 

 フォウの力によって復活したものの。それに【神】のチカラが入ったのはなぜか。それはこの女神がそのチカラをこっそり入れたからだ。シャドーの魂を彼が生まれたときから見つめ続けてきた。人間の胎内で命として出来たときからずっと。そのときに入れられればよかったが、生憎のことにそのスペックは人間程度。神のチカラなど入れたりしたら、間違いなく四散していた。どこまでも貴方らしく生きていて、と願うしかなかったのだ。だが、ゲーティア戦で命を落とした。皮肉なことに、生きていてと願ったのに、あの時死んでしまったシャドーにチカラを入れるのはあの時しかなかった。溢れる魔力は、彼女由来。北欧神話系の英霊が来たら一発で分かるほどの濃密さをもつ。

 

 不敬に思わない程度に彼女に近寄り頭を下げる。決まっていることであり、決めていることであった。フォウのおかげもあるが、彼女のお陰で生きていけるのだ。今少しだけ人の世で生きることを許されているのだ。これ以上欲深くてはいけない。

 

 

「えぇ、えぇ。でも、どうしましょう。待ちきれそうにないのです。愛子どうしてしまったら良いと思いますか?」

 

 

 シャドーは満面の笑みで答えた。彼女の美しさに堪えたのもあったが、全力で抗う。彼女の洞察力は夫であるオーディンに匹敵する。見破られているだろう。だが、彼女は頬を赤らめただ待ってくださっていた。

 

 

「俺の世界へ来てくださいませんか?」

 

 

 乙女は悲鳴をあげた。嬉しさの悲鳴である。甲高いそれは喜びしか無い。

 

 

「愛子、愛子よいのですね? 言質は捕りました。えぇ、この最新鋭のカメラとボイスレコーダーで録りましたからね! あぁ、待っているのですよ、愛子。いい依代を探して貴方の元へ行きますからね!!」

 

 

 女神の声が空間に木霊する。

 

 

 意識が上がってくる目がさめるようだ。耳の中から体の隅々に女神の声が響く。純粋に嬉しかった。

 

 そうして今日も目が覚める。

 

 

 

 

 




設定




・ゲーティアとの戦闘に勝利後、全サーヴァントの力の使用によって心身に大きな負担がかかり命を落とす。
・しかし、フォウの力で【「人間」と「神」のハーフ】として復活。身体能力は【人間】だった頃と同じだが、魔力と魔術回路は【神】の力が加わったことで大魔術も簡単に発動できるようになった。


☆「英霊転身システム」

・【人間】と【神】のハーフに生まれ変わったため、システムの使用時の負荷は一切かからず、いつでも自由にサーヴァントの姿に変身・能力・宝具が使用可能になった他、変身後の精神は主人公のままでいられるようになった。


☆特性

・「記録」→自身の経験や見たものを全て(一秒、一瞬まで)覚えていることができる
・「魔増(まぞう)」→消費した魔力を自動回復させる
・「世渡(せいと)」→レイシフトなしで異世界を自由に行き来することが可能


☆二つ名

【人間の頂点で在る者】から、【不可能を可能にする半端者】に。

由来:半分は人間。半分は神。普通の人間の寿命を持ちながら神の力も持っているという意味で主人公が考えた名


以上がリクエストしてくださったシャドー様ご考案の設定です



◎あとづけ設定


北欧神話の最高位の女神のチカラが入っている。

どれぐらいのヒロイン数がいい

  • 一人
  • 二人ぐらい
  • ハーレム
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