東方project 霊夢、レミリア、妖夢、萃香、早苗、天子のハーレム
「………」
まだ明けぬ空の下、一人の男が刀を持ち佇む。年の頃は定かでないが青年程だろう。髪は若々しく艶のある黒色、長すぎずにさっぱりとした短髪。袴は灰色。紅色の羽織の下には黒の着物。名をシャドーと言う。
風が軽く凪ぐと同時に一閃する。
瞬間、空気が斬られた。空気の中に含まれる窒素や酸素と言った構成を全て斬る。普通は空気を斬るなどと言うのは、言葉の綾でだけだ。空気には形がない。形がないものは斬れない。確かにそこにあるし、なくなることもあるものだ。だが、斬ったという確証は誰もが持てないのだ。緻密に解析などすれば分かるかもしれないが、どう解析するかの術すら分からない。だが、彼には確かに分かる。独特の手ごたえがするのだ。それは、言葉にしようとすれば非常に難しい。感覚での問題だからだ。擬音を使おうが、学者のように言葉を羅列しようがいまいちぱっと来ない。自身の呼吸にムラがないか確かめているのだろうか。
返る風に続く二閃。
今度は音を斬る。空気に振動を与えることで音というのは発生する。けれど、自身の聞く音と他人が聞く音が同じであると言う確証は何処にもない。絶対音感がどうのという話ではない。本当に音なのか。音とは何かという概念まで話がいく。それは、難しいものだ。確かに聞こえるし、聞こえなくなるものだ。年をとれば高い音などが聞こえなくなる。元々聞こえないものもいる。それに対して音を感じさせるには、シャドーのように自身なりに感じるしかない。とはいえ、彼は聴覚が不自由なわけではない。自身の鼓動がはっきり聞こえるのと同時にその音もろとも音を斬る。生に触れているともいえる。
その後は、剣舞である。
剣舞と言うものは、芸事の一つだ。神事的な意味合いのあるものもある。彼の場合は己の高ぶりを静めるためのものだ。彼は、強い相手と戦うことが生き甲斐だ。そこらの妖精など弱者からは恐れられ、強さ筆頭の鬼と言った強者から好まれる男。怖がられているのは、様々な事柄に無関心な態度と戦うことに関しては好戦的であるからだろう。だからと言って、弱いものいじめをするわけではない。ただ強者と戦いたい。これのみだ。その男が、剣舞などと言うものをする。
一振り一振りに自身の中の燻りを払うために舞う。
『博麗の巫女』である霊夢や『幻想郷最強』の鬼とすら互角に渡り合うほどの戦闘能力を有するのだ。そうそう彼のお眼鏡に合う相手は現れない。【ありとあらゆるものを破壊するの程度の能力】を持つフランにさえ半分の本気で勝ててしまう。―強者と戦いたい―。これが叶うのは異変が起こるときでしか現れない。だからその邪念を払う。自身だけで終わればいいが、そんなことはない。今動いている自身とて、初めから一人で存在していたわけではないのだから。
ここまででお分かりだろう。このシャドーと言う男、ただの人間ではない。
例外として、そんな人間もいるかもしれないと思われるがそんなものはいない。シャドーの持つ程度の能力、「時空を越える程度の能力」・・・過去・未来・異空間を自由に行き来することが可能。自分で自在にコントロールも可能なもの。反則である。大事にとって置いた酒がなくなっても、この能力を使えば取り戻せる。そして、負けたことを無かったことにもできる。だが、そんなことはしない。前者はするだろうが、後者はしない。そんなことがあるのは彼が散るときだ。地獄へ行っていいいと許されるときのみだからだ。その日はいつか来るのだろう。
幼い頃、両親を妖怪に殺された。幻想郷に成る前の話らしい。その頃は、妖怪も活発だ。八雲紫もそんなに咎めたりしないし妖怪退治は今の幻想郷のように弾幕ごっこなどでない。文字通り、殺るか殺られるかだ。そのとき、彼もそれに殺されるはずだった。このときは、鬼と互角の力どころか程度の能力もなかったのだ。凶悪な妖怪に殺されたとなって、後々の退魔士が退治するであろうと言う流れになる、はずだった。それを変えたのが、茨木華扇である。彼女に救われ保護された。妖怪は彼女に半殺しにされた上、八雲紫の処罰により灼熱地獄の異世界に追放されている。
おかしい。それはそうだろう。
何故、茨木華扇が。何故、八雲紫が。ただの人間にそこまでするのか。
それはこの話の終わりに話そう。ここでは、彼に申し訳ないからだ。このようなこと、気軽に語るものではない。
とにかく、彼は命を取り留めた。そして、茨木華扇に弟子入りをする。「己を守るために強くなりたい」という一心で。武術と仙術の修行を積み、更に自ら修行に励んできた結果。成長し、「程度の能力」を自在に操れるようになったシャドーは過去――両親が殺される少し前の時代――に戻り、両親の仇の妖怪を斬殺し二人を救っている。
さて、こんなことが許されるだろうか。あることをないことにする。言うは易し、行うは難し。だが、それを簡単になしてしまう。誰もが羨んでならないこと。誰しもやってはいけないこと。それは、禁忌である。自身が、シャドー自身が理から外れるということ。
救われた両親は、人里でたまに帰ってくるシャドーと一家団欒の日々を送り続け、最期は自身らの愛息子である彼に見送られながら寿命をむかえ既に他界している。
ハッピーエンドだ。…このままなら。
幼い頃から仙人の修行をしていたため、霖之助と同様に人間と比べ寿命が長く、霊夢たちの「何倍も永く生きている」とのことで、歳を重ねても成長や老化といった変化が少ない。――本当に?
“強くなりたい”。自身の両親を殺されたのだ。そう思うのも無理はない。その仇はとった。他の誰でもない、シャドー自身の手で。しかも、両親と十分に思い出を作り最期まで看取った。これで十分である。十分すぎるのだ。でも、いまだに“強くなりたい”と一心不乱だ。自身に敵うものはいないと言っていい。本気の殺し合いをすれば、シャドーに軍配はあがる。何故なら、スペルカードルールが提案されるまで、幻想郷の規則―妖怪と人間の共存―を破り悪事を働く妖怪、人間を数多く斬殺してきたことで幻想郷中から恐れられた伝説の侍、
家のすぐ近くに作った大農園で育てた野菜を人間の里の八百屋、飯屋、居酒屋などに売ったり、たまに来る「香霖堂」の店主・森近霖之助の依頼――「外の世界」から流れ着いた道具や本を「香霖堂」へ輸送――の用心棒をして報酬を貰っている。この仕事で満足を覚えればいい。
それはできない。
シャドーは戦うことが生き甲斐なのだ。生き甲斐になってしまったのだ。
初めて見た死に恐れた。それを恥じる。昔の男だ。子供とはいえ、やせ我慢も意地っ張りも十人前。
初めて知った死に思ってしまったのだ。“強くなりたい”と。“殺してやりたい”の方がよかった。その暗い感情は一時だけの生きる動力源となる。それでいい。だが、それを超えた。“仇を取る”―取ったは取ったが―ではない。“己を守るために”。強くなるのは、もういない両親ではなくシャドーだ。“己を守るために強くなりたい”は当たり前だろう。それでいいはず。
違う。違うのだ。“己のために強くなりたい”は、程度の能力を使い討ち取ったその日に終わるべきものなのだ。
でも、何故今も強さを求め生き進むのか。
満足のいく先はあるのか? 頑張ったと誇れる足跡を持っているのか?
待っているのだ。自身が終わってもいいとも思える結末を。悲劇ではない。大団円を、欲しているのだ。きっと。
でなければ、このように推察してしまうではないか。
“己を守るために強くなりたい”とは己が、自分が、シャドーが死にたがっている。
そんなこと願えないだろう?
舞が終わる頃には、小さく薄くなった月がシャドーを見ていた。まるで咎めるようで、嫌だった。
「霊夢ー、酒ー」
「朝御飯に酒なんか飲ませるわけないでしょ」
通い妻その一である霊夢はシャドーの家にいる。ついでに萃香もいる。前者は侘しい神社にいつもお賽銭をくれる、そして異変時に手を貸してくれるシャドーに恩を返すため彼の意思関係なく。後者は、シャドーが半分本気になるほどの力を出させた鬼―萃香―に興味を持ち、修行と言う名の模擬戦に協力すると言う条件で同居している。
勝手知ったるなんとやら、シャドーが程度の能力込みで丹精こめて作った野菜などを使った料理の乗った皿を人数分並べる。
「おう、いつもすまんな」
「いいのよ、これくらいしかしてないし」
朝稽古で流した汗を風呂で流してから戻ったシャドーに霊夢は返す。彼に付き合った萃香は大分体力を消耗したからか、塩気の強い漬物類を先に食べている。それをいつものように無関心に見てシャドーも席に着く。
「あんた、先に食べるんじゃないわよ」
おひつから茶碗へ各人分の米をよそいつつ萃香を叱る。それを何処吹く風と、今度は煮物に手を出す。
「
「お、さっすがシャドー。話がわっかる~」
「一升までよ」
「えぇ~…、霊夢はケチだな~。だから参拝客いなんだ」
「うるさい」
一升をケチとは、流石鬼である。ぶつくさ言いつつも、食べる手は止まらない。寝ながら食べているので行儀が悪い。汁物にも手を出そうとしているが、どう頑張っても寝たままでは零れるだろう。
「しゃんとせい。酒なら夜も飲めるぞ」
「わわっ」
丸いちゃぶ台を囲むようなので、すぐ手が届く。胡坐をしたままシャドーが萃香の両脇に手を入れ持ち上げ座らせた。
「お前な~。やるならやるって言えよ」
「胃に悪いぞ」
「そうじゃないよ」
「はいはい、じゃあ『いただきます』」
霊夢の声を合図にシャドーも食べ始めた。萃香を羨む霊夢の視線と、若干嬉しそうな萃香を無視して。
少しの小話を交えながら朝食を食べ終わる。甲斐甲斐しく、シャドーの湯飲みにお茶を入れて渡すと同時に何かを手渡す。
「そう言えば、お母さんからコレ預かってきたわよ」
霊夢の母、博麗
「先代から?」
余波、と昔は名を呼んでいたが彼女が母親になってからはそう呼んでいる。特に理由はない。自分が気分で言ったものを、相手が気にも留めなかったからそう呼んできた。シャドーとは若い頃から知っている。年で言えばシャドーのほうが年上なのだが、彼女は彼を実の息子のように思っている。霊夢の母親だからか、彼女もマイペースな性格である。
湯飲みを置いて、霊夢から渡されたものを開く。仮にも神社なので少々堅苦しい文節が並ぶ。
「お~? なんて書いてあんだ?」
ちゃぶだいに顔を乗せていた萃香が顔と首だけを動かし、シャドーへ渡された文を覗く。
「ほぅ…」
シャドーのめったに動かない表情筋が動く。怒りや悲しみといった負のものではなく、好感触を抱いたそれだった。
「あ~、こりゃ…」
「………」
二人して思い当たる。異変時に、彼は強い相手―異変を起こす側―との戦いを求めて介入することが多い。たとえ戦うチャンスを逃しても、能力で過去へと戻り戦うという有様。
萃香も昔は鬼らしく、力比べや知恵比べなどで強者と渡り合うことを楽しみにしていた。力比べではシャドーに負け、今は居候し稽古付けの毎日である。本望といえば本望なのだが、もう少し甘酸っぱそうな何かがほしいらしい。
霊夢は少し呆れたようにため息をついて、自分も茶を飲んだ。
そこへ、玄関が乱暴に開かれる。
「シャドー!! 遊びにこの天子様がやってきてあげたわよーーー!!!」
やだ、帰って。
異変解決ごっこで本気を出さなかったシャドーに負け、その強さに惚れたチョロい女の子 比那名居 天子 がやってきた。こうしてくるのは稀ではない。三日に一度は居座る。異変後は、度々来るほどお熱なのだ。衣玖さんは置いてきた。
「………」
深いため息を霊夢が吐く。彼女もなんだかんだ突っかかられることも多い。彼女は被害者なのに。異変解決ごっこは博麗神社を倒壊させて起こったのだから。あの時の母は恐ろしかった。思い出し肩を震わす。
「おう、上がって良いぞ」
「えぇ! お邪魔してあげるわ!!」
と、今日も元気にやってきた天子はいつものようにシャドーの近くに座る。
「ちょっと小鬼、もっと詰めなさいよ」
「悪いね、満員だよ。天人」
「あんたもよ!」
「ほんとずうずうしいわね、こいつ」
萃香がどかないので、仕方なく霊夢が退く。そもそも、朝食の片づけやら何やらがある。どいてもいい、いや、どかなきゃ面倒だと思ったのだろう。
「ねぇね、それなに?」
無邪気に問うので毒気が抜ける。退屈で異変を起こす問題児ではあるが、基本は子供らしい子供。それが天子である。
「お誘いだ」
「何の?」
「肝試しだそうだ」
「あたしも行っていい?」
「良いぞ」
「やったぁ!」
肝試し。
幻想郷で、幽霊など皆見飽きている。外の現代では夢幻の類の存在である妖怪が隣人であるのに、いまさら幽霊に会った程度でなんだというのか。ただの里人ならそれも恐怖の対象でしかないだろうが、ここにいる面子でもう恐ろしいのがいる。鬼である萃香だ。彼女がいるのに、幽霊が怖いなどありえない。
「なら、あたしも行ってみるか」
「そう。わたしは洗濯とかあるし、どうしましょうかね」
「それなら藍に任せちゃいなさい」
「そうね。…って、またあんたか紫」
神出鬼没。冬は冬眠してるとの噂。冬眠中お風呂どうしてるの? と疑問が浮かんでやまない【妖怪の賢者】八雲紫がいつものように突然現れた。
「よう、八雲紫。今日も煎餅食うか?」
「うふふ。ありがたく頂くわ」
「っていうか、紫。なんで来たのよ」
「それは貴女のお母様から伝言を頼まれたからよ」
「なによ」
「え~っと…、今日の味噌汁はナメコがいい」
「そう…」
それだけで【妖怪の賢者】をパシるな。夕飯は、もう一人の通い妻がいるのでシャドーのご飯は何とかなるのだろう。母のマイペースっぷりは霊夢自身もついていけない。
「あ、これは私が藍にお願いするやつだったわ」
「痴呆?」
「おほほ、二度と常世を歩けなくしてやりましょうか、天人の小娘?」
天子の酷い言葉に圧をかけるが、さっとシャドーの後ろに隠れてしまう。笑顔のまま威嚇する紫に、霊夢があらかじめ多めに持ってきておいた湯飲みに茶を注いで渡す。多く持ってきているのはいつものことだ。もう一人の通い妻も同じことをする。
「それで、なんなのよ」
「霊夢にお仕事よ。異変になりそうなものを潰してほしいの」
「異変じゃないのに? で、それがシャドーのこれと関係あると?」
「そう」
文の内容までは知らないものの、先ほどの彼の様子である程度は把握はしている。
「下手をすると、幻想郷が崩れる。これは、危険よ」
「なんで、あんたらまでいんの?」
お呼びがかかったシャドー、それに追随する形であの時紫以外の面子がその場にいるのは分かる。萃香は面白そうだということで、天子は誘われて、霊夢は異変になりそうなもののため。
「私は幽々子様が行けというので…。ついでに、というかこちらが本命でしょうが美味しい物があったら持って帰って来いと」
「そう。あの女はどうしようもないわね」
幽々子は基本的に外へ出れないから妖夢に外を見させ、その話と物を聞いたり味わうのを楽しむつもり。紫はいつも胡散臭いので知らない。
「シャドーさん、暑くないですか? 暑いなら羽織持っていますけど」
「平気だ、お前さんのほうはどうだ?」
「はい! 大丈夫です!! あ、のど渇いていたりしませんか?」
「問題ない」
通い妻その二である早苗が甲斐甲斐しくシャドーを世話する。こっちはいつも通りであった。朝や昼は流石に自身の神社で諏訪子と神奈子や参拝客の世話などで来れることはめったにないが、此度は異変らしいということで彼女も参戦している。
「で? あんたは?」
「私の執事が赴くなら、主人を通すものでしょう?」
ふふ、と笑う小さい吸血鬼。小さいながらも、常人では圧倒される空気をかもし出す。それも彼女の独壇場である今時分の夜ならば猶のこと。
「いつも断られてるだろう。馬鹿だねぇ」
「……ふぇっ」
萃香の言葉に少し泣きそうになるレミリア。カリスマ何処行った。咲夜がいてもいなくても、カリスマが剥がれてしまう。カリスマとは剥がれるものなり。
「泣きやるな、レミリア。ほれ、金平糖をやろう」
「うん…、ありがとう」
ぽんぽんと帽子の上から頭を軽く叩き、レミリアの手に金平糖を三粒ほど落とす。それを即座に、自慢の牙で噛み砕くとまたカリスマぶる。
「シャドーのために一肌脱いであげる。光栄に思いなさい、お前たち」
霊夢は無言でため息をつく。もうすでに疲れていた。咲夜はここまで連れ添っていたが、レミリアの命によりすでに帰ってしまったのが悔やまれる。
「あんたでかいわねぇ~」
問題の庵までの道に堂々と座り込むがしゃどくろに向かいのんきに話しかける天子。今日は幼稚園のお散歩であっただろうか。
「おまんら、はよぅかえり。わしらでとめるのもつかれるんでなぁ」
カタカタ全身の骨を鳴らし巨体のどくろが話す。彼だか彼女だか知らないが、それは大きな手に何かを持っている。
「それ、何なの?」
いつものように好奇心旺盛な天子が問う。
「なんでもねぇ、はよぅかえり」
「がしゃどくろ、あたしらはこの先に用があんだ。どきな」
痺れを切らし萃香が言うと、がしゃどくろは首を振る。その度にカタカタという音がする。怯えているときの擬音のようであった。
「おら、どけねぇ」
「何故です」
「…いえねぇ。いったらきられる」
刀を持つものならこの場に二人いる。その一人である妖夢が問うも要領を得ない。
「しょうがない。押し通るわ」
「やめぇ、おらとうしない」
霊夢が臨戦態勢に入る。他もそうだ。だが、何かを隠し持っているのと、どかないだけでがしゃどくろは何もする気はないようだ。
「大丈夫です。守谷神社のこの東風谷早苗が貴方をお守りします!」
「…なら、それしまってくんろ」
説得力なく、彼女もスペルカードを構えている。がしゃどくろが突っ込むもしまう気はない。
「なぁ、がしゃどくろ」
「おまえさんははなしつうじてくれるかの?」
と、淡い期待をこめて7人の中で唯一の男に期待を寄せる。だが、意味はない。
「お前は強いか?」
「………」
「強いのか?」
「…おまえさん、おらきりたいだか?」
「強いなら斬る」
「よわいからやめてくんろ」
そう言うも強さはなかなか有りそうである。文を読んでから気が高ぶってしょうがないシャドーはただただ斬り合いたくてしょうがない。彼もスペルカードルールにのっとり弾幕ごっこをするが、一番は侍らしく斬り合いを好むのだ。
「じゃあ、どきなさいよ」
「どいたのばれたらきられるだ」
「誰にです?」
「……いえねぇ」
埒が明かない。
「霊夢、貴方がここに残ってこいつを守ってやりなさい」
「はぁ? あんたがやんなさいよ、レミリア」
「いいこと? ここは入り口にして出口にもなる。そこでこの門番。…続きは分かるわね?」
「何も考えてないでしょ?」
「…シャドー、れいむがいじめる~」
と、シャドーに甘える。他の女性人は怒る気がうせる。天子は退屈そうにがしゃどくろの脛の骨を蹴っているし、萃香は自身の能力を使ってがしゃどくろの手の隙間から中身をこっそり見ている。妖夢は辺りを生真面目に警戒し、早苗はいつでもシャドーのお世話ができるようにしている。
シャドーはポンポンとまた頭を軽く叩いてやる。
「ここでお前さんが待っていれば、『お前さんは通さなかった』ということにできる。全員通せというのでないし、良かろうさ」
「そんな屁理屈通るの?」
「いざとなったら、お前さんが何とかしてくれるだろう?」
「………」
そういう期待を込めて笑うのはずるい。女の沽券の関わる。
しょうがないと諦めたのか、がしゃどくろに語りかける。
「『わたしは通らない。あんたはどかない』でいいわね」
「でも…」
「全員通るわけじゃないの。たった六人が通るだけ、一人はこうして通せんぼできるのよ。それでなんとかしなさい」
「もう、なんなんおまえさんら」
「いざとなったらわたしが守ってやるわ。さぁ、通せ。わたしは通さなくていいから」
逡巡するがしゃどくろ。しばらくするとしぶしぶうなづいて少しだけ道を空けた。
「霊夢、強い奴に会ったら呼べよ」
「はいはい。分かったから、早く行きなさいよ」
シャドーは、いつも持っている六文銭の一枚を霊夢に渡す。それを受け取りながら悪態をつく。結局、女の自分の心配よりそれか、と内心で呆れて。
シャドーらが先に進んでから一匹の妖怪と霊夢の間には沈黙が下りる。間違いなく楽ができる霊夢は少々退屈であるものの少しは安心だ。けれども、シャドーのあの様子はどうだ、といつものように呆れのため息が出る。別に好戦的なのはいいのだ。たまにこっちに向かうそう言う視線が、そうなのは勘弁してほしいが。けれども、基本的に何事にも無関心なのはいけない。自身も、母もマイペースな性格だが、年頃らしく化粧や着物や甘味などに興味は湧く。三つのうち、化粧や着物は異性であるシャドーのためにと、意識しているふちはあるのだ。褒めてはくれる。可愛いだの、綺麗だのと。それだけだ。話を広げる気がないのだ。男と女の思考が、対処か共感かなどの違いによるものだけでの話ではない。
「あんおとこ、こわい」
「そうね」
「よういっしょにおるな」
「………」
そう言えばそうだ。お賽銭はありがたく頂戴している。異変時に協力してくれる。これはありがたい。けれども、後者は彼が強者と戦いたいだけだ。そういう様を見てきたし、本人もそう言っている。恩を返すために宴会に呼んだりする。これはいいだろう。でも、通い妻までする気は必要だったか? そう言われると困る。最初は、母が真面目にふざけて言っただけだ。霊夢もシャドーもそれを本気にせず、適当に流していた。でもいつからだろうか。彼のために美味しいご飯を作ることに頑張るのは。修行で汗を流してそのままでは気持ち悪いだろうからと気にしてお風呂まで焚いてあげるのは。それを普通にこなしてしまう。参拝客がめったにこない神社で掃き掃除するのも日常の一部ではある。でも、いつしかシャドーとともに暮らすことが日常になっていた。
代々そうだったように、母も自身も血が繋がらない親子。博麗の巫女は、めったに血縁が継ぐというころはない。啓示というのだろうか、そういうのでピンときた捨て子の自分をシャドーと母になる余波が見つけて今になる。仕草や性格は母譲りだと思うものの、根本の、シャドーに惹かれているというのは母とは違うところだろう。冗談なのか本気なのかいまいち分からない母はシャドーに霊夢を嫁にどうかと宴会でよく言う。それで騒ぐ輩がうっとおしいが。母も、独り身だし彼女の方が彼と付き合いがあるのだからそっちが付き合うほうがいいのではないかとも考えるのだ。それもすぐに否定したくなる。なぜかは言葉にしたくないが、きっと嫌だからだ。シャドーの隣にいるのは母では嫌であるからだ。自分が、霊夢が“いたい”と思ってしまっている。いつしか自然とこうしてこれからも隣にいると想像できてしまうのが悪いわけがない。
だから、がしゃどくろなどに言うのは鼻で笑われるだろうが。
「わたしが一緒にいたいのよ」
眼球のない目が異常だと告げるも、構わない。女というのは意地と愛嬌でできているのだから。
だいぶ草木が生い茂ってしまっているし、苔も生えてしまっているが道なりに進む。
「ちょ~と待ちなさいな。そこのお団体さん!」
「あたしらと女子会としゃれ込みましょうよ!!」
「うわ、なにこいつら」
天子が思わず引いた声を上げる。そこには女物の派手な着物を着た金魚の妖怪が二匹、よく分からないポーズをとりつつ話しかけてきたのだ。はっきり言ってキモイ。
「あたしらは、恋に恋するレジェンド金魚!」
赤い色の方が決め顔? をしながら告げる。そして、黒い方が続けて。
「ここを通りたいなら、あたしら恋のキング…じゃなかった、クイーンズと弾幕ごっこなさぁい!!」
「男、ですよね?」
声が頑張って高い声を出そうとしている聞くに堪えない感じ。引きつつも妖夢が尋ねる。
「ノンノン。あたしらはアナタたちと同じ乙女よ!」
「地獄の火すらなんのそのの赤ともうこれ以上愛に染まれない黒の、麗しき兄弟、じゃなく姉妹!!」
二人は両のヒレでハートを作りそう語る。キモイ。
「キモ…」
「何か言ったか、おらぁ!!」
天子の素直な言葉に、二匹はドスを効かせた声で怒る。その迫力に思わず、シャドーの背後に全員隠れた。恐るべきレジェンド金魚。
「あら、あんた不細工な声が出たわよ」
「あ~、もうやだー。せっかくの美声が台無し台無し!!」
二匹は、自身らを除く女性陣が怯えたのを感じ取り、おほほとむりやり取り繕った。
「あー、あー。ぬぷんっ! 美声オッケイ!」
「ら~ら~ら~! うぷんっ! 美声オッケイ!」
何がいいのか分からないが、オッケイらしい。埒が明かないので、ただの傍観者をしていたシャドーが話しかける。
「で、やるのか?」
「そうね、やりましょ!! で~も!!」
「うふふ、アナタはまたの機会ね!!」
「なに?」
「どういうことですか?」
恐る恐る早苗が尋ねると、二人はダイヤのマークを再びヒレで作り語る。
「好みじゃないし~」
「だんな様の頼みだし~」
「だんな?」
「そう、あたしたちの運命のお方よ!! もう頭がとってもセクスィーなの!!!」
「それにね、とってもオ・ト・コ・マ・エ。やだ~、もー何言わせるのよー!!」
おかまの言う男前は、たいそう男前なんだろう。萃香がなにか思いつくことがあるのか、少々頭を悩ました。
「次はあるのか?」
「えぇ! だんな様がお許しくださればね!!」
「あたしたち、だんな様の言うことは何でも聞いちゃうの!!」
「な、なんでも…?」
「あら、半人半霊ちゃん。興味ある~?」
「い、いえ!!」
などとじゃれあっているが、シャドーをざわつかせるほどの強者なのは間違いない。先ほどから隙だらけのような気がするが、この妖怪たちはできる。大げさに動き回り口調もアレだが道化を演じているだけだろう。さりげない足の運びができるもののそれなのだ。纏う空気も、シャドーほどの強者ならではしか感じ取れない隠した強者のそれ。
「さっき、きも・・・っていった小娘と、半人半霊ちゃんとするわね!!」
「なんで、あたしなのよ!!」
「あたしたちのガラスのような心を傷付けた、バ・ツ!!」
「な、なぜ、わたしまで」
「そこの霊が雄弁に言ってるからよ、あたしたちをいじめる言葉をね!!」
「そんな~~~!!!」
軽い悪口でもナイフになる。天子と妖夢は今日この日に刻んだ。そして、おかま怖いとも。
「シャドー、どうする?」
「簡単にノせるでしょうけど…」
萃香は実力が分かるだろうが、早苗はそんなことを言う。シャドーはいささか不服そうな顔をするがため息を一つつき、六文銭を一枚づつ天子と妖夢に渡すことにした。
「頑張れ」
「シャドー…」
「天子、お前の強さならばすぐ追ってこれるだろう。天子ならできるさ」
「やってやるわ!」
チョロい。だが、そのチョロさがいい。惚れたというに詳しい理由は必要ない。必要あるなら、惚れてからの理由だ。一目惚れであっただけなら、そんなものすぐ目が覚めるよう水をかけたりビンタするなりした方がいい。お互いがそれなら少しはマシだが、片方だけがそれならそうするのが太陽は東から昇るという摂理と同じような摂理であるからだ。だが、天子はそれだけではない。基本的に無関心なのがシャドーなのだ。異変のときは強そうだからと戦ったものの、彼の期待はずれであった。戦いの最初は互いしか目に入らぬほどお熱なさまであったが、結局彼が本気を出さすに軽々と勝ってしまった。それに思うことがないわけではない。悔しいと思う。でもそれを超える、嬉しさと恋が芽生えた。自身の退屈を解消するために起こした異変で、自身を倒しに来て“くれた”。天人ではあるものの、他の天人からは冷めた目で見られることが常。それが嫌であったし、ルーチンワークをこなすいつもが嫌だった。胸どころか全身を昂らせる熱がほしいのに、それがないいつもに辟易する。そのときに現れた、人。しかも、男。天人界にも男はいるが、どいつもこいつも口が回るだけでつまらない。口説き文句ならば彼らの方が上手いし上等のものがあるだろうが、そんなもの天子は欲していない。そう気づいたのはシャドーに惚れてからだ。
シャドーの無関心な様が身近になった今でも天子はそうだと感じる。今日はなになにしにきたと突撃しても、そうかといって片す。それは退屈のそれであり、天子の嫌うものである。それなのに、そういうところもいいと思ってしまう。恋は盲目であるから。それもあるが、何も言わず付き合ってくれる彼だからいいのだ。言葉を使わずに好きにさせるという技を持っていた。シャドー本人はそんなこと分かっていないしで、意図して行っているわけではない。自分に関わることでもよく無関心な様を見せるが、対応しないとはしていない。彼のすることに天子がくっついてなんだかんだしている。その有様は恋人といったものとは遠い兄妹のようだが、それでも天子の目も口も空気も前者の方を目指している。それを気づいているのか知らないが、真っ直ぐ受け止め天子に接する。
何も言ってくれない、何もしてくれない。でも、“一緒に”何かするという共同作業が天子はとても嬉しくなってしまう。余計惚れこんでしまう。自分も混ぜてくれるのがいいのだ。無関心の癖に関心があるというのを見せてくるようなのがいけない。とんだ魔性の男である。
そんな共同をできないが、まぁいい。これらを倒し追いつけばいつものようにいっしょにやってくれるから。そう思って、ぎゅーと抱きついていたのを更に強く抱きついてから離れる天子。
そしてシャドーは妖夢にも渡すため彼女の方へ行く。
「お前さんの力はあいつらに敵うと思うか?」
「…難しいでしょうね」
春雪異変の後は、シャドーの弟子となった妖夢は彼女らの強さに気づいていた。下手をすると、スペルカードだけでの戦いでなくなる可能性もあることを二人は気づく。だが、彼女らには殺気というものが感じられない。けれども、妖怪であるならばいつ豹変してもおかしくはない。理性が薄く本能に忠実なのが当たり前であるからだ。少々不安げにシャドーを見上げるので、シャドーはにやりと笑って妖夢と半霊の一部を撫でた。
「ひゃぁ!! そ、そこは敏感だと、何度申せば…!!」
不敵ともいえる、妖夢を誇らしげに見るシャドーに思わず口ごもる。
「俺の弟子が負けるわけないだろう?」
「……あた、りまえです!!」
胸を張れ、彼の弟子であることを。誇ろう、彼の弟子である自身を。そう思い直す。
春雪異変で自身を圧倒した彼に興味を持ったのが、彼との関係を始めるきっかけだ。妖夢は自身がまだまだとも思いつつもそこそこできるとも思っていた。妖忌という師匠がいて、その人に妖夢は二代目の警護役を任されたという誉がある。だが、それはいともたやすく砕かれた。シャドーに圧倒されてしまったからだ。スペルカードルールでの戦いであったが、それだけでも圧倒できる。それは異常である。博麗の巫女など例外はいるものの、彼女らすら互角の腕。しかも聞くところによると、剣の腕でも並外れたもの。自身も剣の使い手である。興味を持たないわけがない。そして、彼の弟子として、たまに彼が来たとき剣の修行をつけてもらっている。強さに興味を持っただけだったのだ、最初は。徐々にそれがシャドー自身にへと変化する。
仕草や口調といったものにその人の人となりが映るというように、剣にもそれが映るものだ。単に癖というのではなく、その人の生き方や心境など雄弁に語るものなのだ。そして修行で感じたのは、彼という人物は「強くなりたい」という気持ちが強いということ。後々に何故そんなに強いかと聞いたところ、同じようなことを言っていたので合っているのだ。妖夢も彼のような強さのために其れを目指そうと思ったことはあったが、すぐ止めた。方向が違うのだ。シャドーのは言わば戦いたいという自己満足のための攻撃性の強いもの、妖夢のは幽々子を守る自己犠牲の庇護に近いもの。方向が違うものになってはいけない。それで修行を止めようと思ったこともあった。だが、今日まで続いている。それは、魅入られてしまったから。彼の剣と、彼の為人に。前者は交えることで雄弁に語るも、後者は普段の無関心なさまもあって難しい。雄弁に語る「強くなりたい」は、極端に言えば己のために自分を消費する、生産性のうまみがない自己犠牲。そう気づいて、彼の為人をみると齟齬が湧く。
戦いのときと、修行のときは雰囲気が違う。前者は、楽しもうというプラスのもの。後者は、言い難いマイナスのもの。後者がアレすぎる。自身の技を盗まれるというのが嫌だということかと思えば違う。
気づくのだ。シャドーは「自身に近づく」ことが嫌なのだと。“強さ”ならば問題ないと気づいた。シャドーの中の弱い部分。それを見つけて思う。
守ってあげたい。
保護欲からの愛だ。それは弱いものに抱くべきもの、正反対すぎる彼に抱くものではない。だが、女というものはそういう精神的なもろいものに弱い。好戦的であり消極的なその齟齬に、悟る。間を作らなければ消えてしまうと。
だから、彼女らにはそれのために犠牲になってもらう。そう決め、妖夢はキッと彼女らを見つめ気合を入れる。
「じゃ、ど~ぞ。お行きなさいな!」
「だんな様によろしくね~!!」
「シャドー、あたし勝っちゃうからね!! 余裕で。 もう超余裕で!!」
「…ご武運を」
天子の様子と妖夢の様子は正反対だったが、それでもシャドーを心配するような様子は確かにあった。それにひらひらと手を振って返すと、怒鳴られたときにビビッて固まってしまったレミリアを抱えて残りの四人は先を急ぐ。
「じゃあ、いっくわよ~!!」
「いざ、尋常に!!」
「あんたらなんか御造りにしてやるんだから!!」
「あたしたちを食べていいのはだんな様だけよん~!!」
「おいらのが先だい!!」
「おいのが先や!!」
「今度はなんなんでしょうか」
三毛とキジトラの猫の妖怪が言い争っている。ふてぶてしく太った二匹で取っ組み合う寸前の睨みあい中。着物を着ているものの顔まで猫なので愛嬌はある。
「あら、ドラネコさんたちのお見合いかしら」
またカリスマぶる。その声に二匹が振り向き大声を上げた。デジャブるんだよ!!
「おいらは三毛猫だい!!! 死体になるまで追い掛け回すぞ!!」
「おいはキジトラや!!! 腹が膨らむようにしたろうか!?」
「ひぅっ!!」
シャドーの後ろに隠れた。猫科の動物はライオンや虎など肉食獣。牙を剥き出し威嚇する顔は、生物的本能で危険を察知するものだ。怒鳴り声がまたおっさんくさいガラガラ声なのもいけない。
「は、はらがふくらむってなんなのよぅ…」
それは、オメデタ的なそれのことである。妊娠である。お前の卵子、受精させてやろう。赤ちゃんできたよ、おめでとうだ。
本来異種間同士では子供は生まれないが、妖怪ならばそんなもの関係ないのだろう。こっそり恐ろしいことをのたまう猫妖怪、[#ruby=火車_かしゃ#]。葬式や墓場から死体を奪う妖怪である。
「まぁまぁ、落ち着きなよ、あんたら。で? この先に死体でもあんのかい?」
「そうだよ、いいのがでそうなんだよ」
「おいが頂くがな」
「なんだと!?」
「“でそう”、か。正確には分からんのか?」
「う~ん。出そうな出なさそうな…」
「きさんの屁の話じゃないが」
「そんなことじゃないよ!!!」
シャドーの含む意味は、“これから”死体出るのかもしれないということだ。自分たちのものか、この先で待つ異変を起こさせるような奴のか。それは分からない。生死を賭ける斬り合いができるのか、という期待に彼の空気が必要以上に怖くなる。
「な、なんだ?」
「きさん怖いぞ?」
思わず二匹の妖怪は尻尾を股の間に隠し怯える。元は動物であったのだから、自身の危険察知には長けているのでそう反応した。萃香は慣れているものの、早苗も少々びくついている。
二匹の様子はともかく、早苗の様子に気づくとそれを少し治めた。少ししかできないのは、やはり昂っているからだろう。
「すまぬな、早苗。怖いなら離れても良いぞ」
「い、いえ、大丈夫です」
「そうか」
「大丈夫なんです。大丈夫なんですから…っ」
「ふむ」
自身にもシャドーにも言い聞かせるようにそう呟いて顔を上げた早苗。その眉は少し情けなくハの字だが、目にはシャドーに恐れを感じたりしないというような意思の現われがある。口も力を入れて歯をかみ締め、強張っている。
シャドーは神奈子とも諏訪子とも互角に戦いあったことがある。この二柱の神の強さを知っていたつもりだったが、霊夢に譲渡を迫ったことで起きたある騒動でその強さを見ている。【現人神】である自身の力もそこそこあると思ったが、やはり彼女らは別格中の別格。そんな彼女らを誇らしいと思う中、互角に渡たったシャドーには怯えが走る。当時は幻想郷に信仰心がなく力があまりなかったが、それでも十二分に強い彼女らと互角に渡り歩いた。後に聞けば、【幻想郷の剣神】と言われる規格外の人物であった。人も妖怪も悪事をなすなら、斬り殺してきたという男なのだ。今はスペルカードルールが広まり、彼がその殺意を振りまくことはなくなったが、早苗は[自分も切り殺される可能性]を僅かにでも考えてしまう。二柱の神に誓って言うが、悪事を働こうという気は博麗神社がシャドー以外のお賽銭が入る可能性ほどない。それでも、幻想郷入りする前に外の世界にいた早苗は、穏やかに見える現代で凶悪極まる事件をテレビなどで知っている。そういう犯人は決まって、普段は普通を装っていることも知っている。シャドーも基本は様々な事柄に無関心である。普通に修行するし、ご飯も食べるし、仕事をするし、寝る。その普通がいつなくなるか、誰もわからない。ふとした弾みで、魔がさすことはだれにでもあるからだ。
それでも、シャドーを監視するのではなく通い妻までする心は彼に魅入られてしまったからだ。
妖術の類ではない。たまに見せるやさしさ。最初は早苗にではないところでは見たのだ。里で子が泣き止まなくて困っている婦人を助けているところを。子供をあやし、婦人にアドバイスし、しばらく親子のために手を尽くしたのだ。それを見てから、徐々にいいところが見えてきてしまう。それからはもう彼に敬愛心を抱いていき、今では通い妻までしている。人の見せる一部だけでしかないが、もう偏った思考ではなくなる。一本の木に森の様子が見て取れる、という大げさなものではないがそれに近い。他人にいいところを見せたいという見栄っ張りかもしれない。それはそれでプラスに働くことが多いからいいが、そう言う類ではないのは今まで彼と共に過ごしてきてちゃんと分かっている。自然とやさしくできる。並大抵のことではない。【幻想郷の剣神】という側面もあろうがそれだけではないから、誰かにやさしくできるというのは尊いから、早苗に特別というのは今のところないけれども。
やさしくできるのは、強いから。同時にとても弱いから。その強弱をおかしく思うもそれでいい。完璧すぎては気後れしてしまう。そのおかしいが、良いのであって東風谷早苗がシャドーを敬愛し、彼に魅了されている理由になるのだ。
ならば、この程度で気後れするなど笑止千万だろう。
「大丈夫ですよ、シャドーさん」
「良か良か」
そんな彼女をくんだのかしらないが、抱きしめも頭も撫でず目と目を合わせて笑うだけだった。
「で、通すのかい? やるのかい?」
「鬼はやだ」
「そこの男もいやや」
「で、あればどうするというの?」
カリスマぶるお嬢様と早苗をそれぞれ指差す。見た目的にロリコンで捕まるようなことを言ったのは、もちろんレミリアを指す。
「おまえらがおいらたちと勝負だい!!」
「こりゃ、おいたちがどっちが先に死体を取れるかも競うかんの」
「泥棒はいけませんよ!」
「盗人には罰を与えなくてはね…」
また無言で凄まれるも、今度はなんともない。これは彼女の本来からの実力ゆえの余裕からである。先ほどから、【誇り高き吸血鬼(笑)】や【カリスマ(笑)】などと揶揄される描写があったが、基本的にそれに見合う実力をレミリアは有している。それは紅霧異変のときに十分に知らしめた。彼女の異変を発端として、スペルカードルールが広まったのだ。それをあらゆる弱小の有象無象は感謝すべきなのだ。性格は見た目相応の子供っぽく我侭であるが、紅魔館の主人らしく館の秩序として在る。異変後、吹っ切れたフランに色々やられているが、姉としてスカーレット家の末裔として、そのプライドを守り続けた意志の強さはシャドーも感嘆するものだ。それは、自慢するものでない。プライドを高く持つものほど実力がなく口だけだ、と曲がり物は言うだろう。それは悪いことか? 誇れるものがあるというのは強みだというのに。純血種であるレミリアの強さは、見栄っ張りなだけだと彼女の中身を知らぬものが口さがなくいうのだ。それだけで、500年間も生きれるほど彼女も吸血鬼というものも強くない。後者は本に記されたりする弱点の伝承がある。前者のとっておき弱点は? はっきり言おう。“ない”。“あるわけがない”。
プライドとは誰しも簡単に持ちえるもので、同じく簡単に折れてしまうものだ。成長しなかったのは見た目と性格の“一部”。一部だけだ。性格が子供っぽく我侭。大いに結構なことだ。フランのためと、今は姉妹以外無き一族のためと、その守りたいが為の誇りを異変の後でたやすく折れてしまうはずのものを、今も持てる。なんと強いことだ。傍目から見ればカリスマ(笑)だろうが、それだけで紅魔館の者たちが彼女に慕い敬愛する理由にはならない。
一人だけで頑張って行く姿が、尊すぎるから。
それに尽きた。普段シャドーの元へ訪れては、自分のところに執事として永久就職しないかなど言っては、彼に「職には就いているし、そんなものに興味はない」と断られている。それども諦めずに勧誘を止めない。軽すぎる一部をあげたが分かっただろう。彼女のホンの一部の魅力が。諦めず、一人で頑張り、より良い運命を引き寄せる。彼女の程度の能力のせいもあるが、これが彼女の
シャドーのフランと互角に渡ったという強さに惹かれるのは、同じように一人で諦めずに頑張っていた姿に共感したから。それは危ういものだが、すぐ良い方に彼女が無自覚に消化させるから良いのだ。
二人で頑張ればよりよくなる。そう考え出しているから勧誘を止めないし、自分を彼女は曲げない。それをとやかく外野が言うことではない。本人たちが許容しているならばそうであればいいものだから。
繋がりつづける運命が見えるから、途切れないよう二人のために頑張って行く。そう、心に刻むレミリアが何かから本気で恐れる必要があるものか。
四人が構えを取る前にシャドーが残り一枚は取っておき、六文銭の二枚をレミリアと早苗にそれぞれ手渡す。その都度、彼女らに渡す手をぎゅっと一度強く包まれた。
「いくぞ!!」
「遊んであげるわ!! シャドー、早くお行きなさいな」
「いきますよ!! さぁ、シャドーさんたちはお先へ!!」
彼女たちの声を背にシャドーと萃香は先へ進む。あともう少し。
「よぅ…。遅ぅかったな」
切り株に腰掛けた頭の長い妖怪がそこにいた。ぬらりひょんである。
「お前生きてたのか、てことはこの異変はお前が…?」
驚いたように目を丸くする萃香。シャドーといえばそんな彼女の様子など見向きもせず、ぬらりひょんから漂う強者の空気に当てられ興奮が隠せない。そんな彼をぬらりひょんはどうでもよさそうに、持っていたキセルで奥を指す。
「
「俺はお前とやりあいたい」
ぬらりひょんはキセルを口に持っていき深く吸うと、同じように深くため息をつくように吐き出す。煙が辺りに舞い、独特の臭さが満ちる。
「てめぇの相手はいつかやってやる。今は邪魔だ。てめぇの先はここじゃねぇ。向こうだ」
めんどうそうにそう言う。ぬらりひょんはシャドーと戦う気は欠片もなさそうである。それにイラっとくるものの、口約束だけだが彼がそれを破棄する気が無いのも悟る。胸中、ふつふつと燃え燻らせる熱を、この先に庵で待つ相手にぶつける気満々であった。全力で戦う気であるのだ。それに見合う相手かどうか、シャドーには分からないがぬらりひょんよりヤバそうなのが庵にいるのは間違いない。腹のそこに粘つき溜まるような暗い何かを感じる。それに楽しみと苛立つ中口角を上げてみせる。
「………」
それに相変わらずだなと横目で見て、萃香はぬらりひょんを見る。シャドーが確実に行くまで動く気は無いようだ。なら、催促してやるべきだろう。
「シャドー、行きな。こんなのより強そうなのがいるの、あんたも分かるだろ?」
「あぁ、すごく楽しそうだ。だが、こいつともやりあいたい」
「鬼であるあたしと約束させて必ず戦わせてやるよ。だから、早く行きな」
残り一枚の六文銭をこっそり奪い取り、それをシャドーに見せ付ける。それを見てむぐむぐと口を動かしたシャドーだったが、諦めて彼に見合うだろう強者の方へ急ぐ。
彼の姿が足音すら聞こえなくなった頃、ようやく切り株からぬらりひょんが立ち上がる。キセルは仕舞い、構えを取る。
「お、いきなりやんのかい?」
「吾ら妖怪には言葉よりこっちのほうがあってるだろう」
僅かに焦る萃香にぬらりひょんはようようと歌うように語る。
「あとで、ってできないか?」
「できねぇな」
「あいつの危うさわかんだろ?」
萃香はシャドーの危うさを知っている。ひたすらに人と交流しようとして、結局人に裏切れてなにもかも嫌になっていた自分と重なるから。シャドーの求める「己のために強くなりたい」の先は、どうようもなく虚しく寂しい孤独だ。あんなところ誰だって居たくない。人の興味がほしくてたまらない妖怪は、鬼は、そう強く思う。人だってそうだ。生まれてくるときも育つときも一人ではいられない。母がいて父がいて、そのそれぞれにまた母がいて父がいて、と繋がりがある。それを無くしてしまうのが【孤高】という馬鹿な言葉だ。気取る言葉とも言うが、萃香達強きものたちには此れほど残酷な言葉はない。隣に誰かが居るという、当たり前の安心が手に入らないのはとても辛いのだ。一人で全て完結できるものなど神でもいない。神だって、信仰心が無ければ“いたかもしれない”という想像上でしか存在できず霧散するのだから。独りでいるのことは慣れるわけが無いし、独りに成れるわけも無い。
強くなるのは独りであると決めること。
そう今までの生で萃香が感じたことだ。人に恐怖されていたのは、人と交わる術をそれしか知らなかったから。その恐怖という彼らの興味心は妖怪にとって自分が独りではないと安心できる生きる上で必須なものだ。人は鏡などを見て自分がそこに居ると安心できるが、妖怪は鏡に己が映らない。自分がそこに確かに存在するか、実はいつも不安なのだ。そういう不安もいい塩梅になればいいが、そういうことはあまりない。自分を肯定するのは非常に難しい。もしかしたらというIFを考え出したらキリが無く、仕舞いには自己崩壊なんて恐ろしい【孤高】になるから。
【孤高】とは、独りであると決めること。
強くなるのとなんと似ている意味だろう。だから、萃香は焦る、怖くなる、とめたくなる。自分はシャドーが居て「孤高」にならずに済んでいる。ちゃんと存在して生きて、今日も美味しく酒を飲んだ。でも、自分を越えた先へ、ずっとずっと行ってしまったら。そう考えると、美味い美味いと飲む酒が一滴も味わえなくなる。
だから、早く追いついて枷になってやりたい。その萃香の思いが表れているのか、それを感じ取ってぬらりひょんは口を愉快気に曲げた。
「男ってのはな、自分勝手で“ずるい”もんだ」
「ずるさなんて必要ないだろうに。あたしら鬼がそういうの嫌いなの知っているだろう?」
ひょっひょっひょっと低く笑うぬらりひょんに萃香はイラついたように舌打ちする。それを見てまた笑う。
「“ずるさ”。男の基本よ。吾もあいつも持ってるもんだ。ちゃんと持ってるもんだ。無くせねぇもんよ。それがなくちゃあなぁ…」
構えを取る。
「男なんてやってらんねぇんだよ!!」
あまりの迫力に尻込みそうになるも、口角を上げるだけで余裕を見せる。
「来な、妖怪の総大将!! あんたに、シャドーにはそんなものいらないってこと教えてやるよ!!」
「はっ!! 良くぞ言ったぁ!! 情けない女らしく“立てる”じゃなく、てめぇらしく“並ぶ”ならなぁ…その道、地獄の道としれ!!!」
「――――――」
庵に着いたとたん、弾幕が来る。頭を吹き飛ばす危険球を全力で持ってこられるが、シャドーは妖夢の持つ【楼観剣】より優れた切れ味と耐久力を持つ、見た目は普通の刀でなんなく対処する。
少し手ごたえのある切れ味。それに全身粟立つ。
――強者だ。紛れも無く強者だ。にやにやとする自分の表情筋を止められない。
騒ぐ自身の燃え滾る熱の衝動に任せ、庵に躍り出る。
そこに居たのは、正体が把握できぬ謎の固体であった。
「俺はシャドーと言う。お前は?」
言葉を話すときすら弾幕が来る。全て、当たれば即死間違いなしのもの。それほどのものを嬉々として斬り捨てるシャドー。
「――――-‐」
言葉なのかため息なのか雑音なのか、どれが正しいのか分からないが音を出しては正体不明のそれは隙無く弾幕を繰り出してくる。
意思疎通が不可能な何かであった。だが、それだけであろう。こうして弾幕ごっこもできるのだ。戦いのルールを尊ぶ理性がある。それは、必要なくしてしまうけれど。
「
全身にまとった覇気により自ら青い龍となって敵をのみ込むシャドーの得意にして最大の切り札。それを即座に用いる。めったに最初には使わないスペルカードだ。それをもう使ってしまう。強者である相手への敬意とかそんな上等なものではない。ただ、強くあってくれ、強くなりたい自分のためにと、自己満足のためだけのもの。
正体が割れる。
何度斬りあっただろう。
いつしか、正体不明のそれは刀か剣か、はたまた別の何かを使って弾幕ごっこではなく斬り合いをしている。十合、二十合。そこから先は夢心地だ。
こうくればこう返す。そういう稽古事ではない。次は何が来る、と楽しみながら死線を互いに生きる。
すでに少し深めに互いに体に斬りあった痕がある。互いに致命傷にはなりえないが、体を動かすたび脳が[動くな]と命令する電気信号を流すほど。それを互いに無視する。気合で何とかする戦闘狂いどもだからこそなしえる
右手の指が斬られそう。ならば、程度の力で過去に戻りやり直す。 だが、それも上手くいかない。過去に戻っては、過去からすれば未来の出来事である指が斬られそうな瞬間に陥る。それならば程度の力を使い未来に行ってそれをなくす。それでも、上手くいかない。今度は同じ事態ではないが、同じように危機に陥る。
まるで、同じ能力を持っていてそれを互いに行使し合っているような感覚さえ起きる。
「楽しいな…。なぁ?」
そうシャドーが声をかけ笑うと、正体不明のそれは全部がそうであるが、不恰好に同じように笑う。
「強いな。楽しいなぁ…」
「本当にな…。さぁ、
異常な言葉に正体不明のそれも同じような声音で答える。
「俺の
そして同口同音。同時に謳い上げる。
「来や、来や。お主が進めば俺も進もうぞ。お主が止まっても進もうぞ。退いても知らぬ、進むぞ。――なぁ、俺よ!!!」
正体不明――。歪になったシャドーと、今はまだしっかりと形をなしているシャドーが斬り合う。
歪になったシャドー。能力の使いすぎで、時の狭間に忘れられてしまった未来のシャドー。それが、ここにいる。今現在のシャドーのおかげで今は割りと意思疎通ができるものの、先ほどはどう見ても気が触れていた。それも無理は無い。何も無い空間で身動きもできない。能力を使ってもそこから、いままで出られなかったのだ。何故、今こうしてもう一人の自分と相対しているのかは分からないが、久しぶりの自由だ。存分に味わう気なのだろう。僅かに臭う、この自分を殺してここに居ようとする空気。未来のシャドーの【孤高】の果て。
弱いくせに強い。【孤高】であると諦めてしまった弱い未来の自分に苛立ちがたつも、こうして今の自分とやり合える強さに感服する。未来の自分は磨耗しすぎてしまって自分が誰なのかすら忘れたからだろう。だからか形がめちゃくちゃであったが、今は割りと自分に似ている感じがしないでもない形を成している。形すらなくした哀れな自分。けれども。
“己のために強くなりたい”。確かにある、強い意志。
ならば、今、ここに存在するシャドーがそれを魅せねば、示さねばならぬ。
「俺よ」
語りかける。
「強くなれたか?」
油断を誘ったわけでも、弱点をついたわけでも、そんな下賎な思考があったわけではない。けれども、その言葉を言うと、未来のシャドーは隙だらけになってしまった。
それをあえての隙と見て斬り進む。残り僅かになった己の力を振り絞っての一撃。コレが決まればいい。決まらず、今のシャドーが斬られてもいい。強くなるために【孤高】、誰に縋ることなく独りであっても高みに強く在れるべき、だと思っているから。
あえてではない。応える気が起きないほど堪える未来のシャドー。
袈裟切りにされ仰向けに倒れこんだ。
こんな終わりが来てしまうとは。そう思うとやるせない。もっと斬りあいたかった。もっと楽しみたかった。もっと強くなりたかった。今のシャドーは呆然と佇む。
「俺よ」
未来のシャドーの形がまた不確かになりつつある。今の自身と同じものなのか分からないが、刀らしきものを支えにひざを突いて立ち上がる。彼はもうハズレビト。自己修復など意識もせずしてしまう。
「強くあれ」
「己を守るために強くなれ」
もう一人の、果ての、シャドー。独りのシャドー。
彼の後ろで渦巻く何か。紫の境界のようであって、それよりも不気味な何かを感じる。それを今のシャドーは思わず後ろに下がって気圧される。
未来のシャドーは祝ってくれている。ならばこちらも返さねばならぬ。そう思い直し、丹田に力を込め自身に送る言葉を継げる。
「お前も強くあれ」
なんという呪いの言葉を吐くのか。思わず未来のシャドーは笑ってしまう。聞くものが聞けば、悲痛の極みのもの。自分はこんなに馬鹿だったのかと、こんなに強かったのかと。馬鹿なのは未来の自分でも昔からそう自分のことを理解していた。時の狭間などという場所に押し込められるまで、誰にも届くことなど無くなるまで【孤高】になってしまった。ならば、未来の自分の方が強くあるはずだ。だが、今の自分の方が圧倒的に強かった。それが“ずるい”。未来の自分はこうなってしまったのに、こうなるまで強くなったつもりだったのに。振り返った足跡が誇らしげにあるのを見て涙が出そうだった。辛いからか、嬉しいからかはもう考える余裕は無い。また、あの場所に押し込められるのだ。だが、敗者である未来の自分がここにいることはできない。だから、警告を過去に贈ってやった。
そうして、今の自分の強さをちゃんと理解する前に彼は再び時の狭間に閉じ込められてしまった。
そして辺りは静かになる。何も無い。かつて暮らしていた庵以外は。
自分の未来がああなる。そう思うと尻込みするも、彼の強さは間違いなく今の自分を超えていたものがあった。なら、今の自分は未来の自分ほどの強さを身に付けられる未来があるのが確定しているということ。それがとても嬉しい。未来の自分がどういう状況にあるなど露ほど興味は無いが、それは確かである。なら、今のシャドーが目指す最短の道はなんだと毎晩悩みながら眠る必要はなくなったのだ。最短でなくていいことに気づいた。理想は最短であるが、最長でも別に構わない。仙人の修行により長く生きれるのだから、一日にぎゅっと詰め込むだけの苦しみを長く楽しめるから。
愛刀は粘つく何か―おそらく未来のシャドーの血―に塗れてしまっている。だが、軽く振るうって落とすだけだ。本来は懐紙などで清めなければならないが、それだけで十分だった。それは刀から剥がれ落ちると暗い色の粒子となって下の草木に落ちずに空中で溶け堕ちるように消えていったから。
『己を守るために強くなれ』
無論である。誰よりも何よりも強くなってやる。
そう思い直すと、後ろから複数人の足音が聞こえてきた。
「シャドー!!」
「シャドーさん!!」
がしゃどくろに通せんぼされた霊夢まで居るようだ。その声たちにぼろぼろのシャドーは振り返ると彼女らに満面の笑みを浮かべる。
「………っつ!!」
息を呑む。あまりの壮絶な笑みに。足が止まる。このまま彼の元へいけるほどの強さが自分たちには無いのではと懐疑を抱いてしまったから。
染み込むように顔に付着したままの血らしき何かもその要因だが、自分たちのことは指先にもかからないほどするりと零れるほどの狂喜と狂気に尻込みする。
「強くなるぞ、俺は」
萃香の苦慮が、浅慮なだけだと吐き捨てたい【孤高】がシャドーのすぐ近くにあると感じてしまう。
女性陣は慄然とする。未来のシャドーからの警告。それが今目の前で起きようとするのが手に取るように分かる。
それぞれ、あと一歩のところで負けそうだったのを未来のシャドーが自身の程度の力を使い干渉してきてようやっと勝利できた。霊夢といえば、がしゃどくろが全身を余計震わせる音に驚いて構えたところ彼が着ての警告だ。
『シャドーから目を離すな』
誰だか分からないが、切羽詰ったその泣きそうな声に胸が締め付けられた。その声が聞こえるや否や、すぐ本来の自身らの力以上のものを出しそれぞれ片した。霊夢のほうはそんな彼女らより先である。時間軸がごちゃごちゃしている中、がしゃどくろが手を開いて中身がなくなったことを確認すると通してくれた。それからは、全員全速力でシャドーに追いついた。全員の心が彼を心配する気持ちでいっぱいになりながら。
だが、そこまで思いつめたものの彼に相対して臆する。彼女らの中で実力者であり、今のところ彼と互角と言っていいほどの力を持つ霊夢と萃香でさえそうだ。
「…っ、シャドー、さん」
早苗の声だ。怯え交じりのそれに、シャドーはいつものような無関心なそぶりの目だけで返す。目で見ているはずなのに早苗どころか、他の女性陣も眼中になさそうだ。
それが非常に悲しく腹立たしい。
早苗は口をつぐみそうになるも、引けそうになる足に力を込め声を発する。
「強くなるなら、わたしたちも傍に居させてください!!」
「………?」
「独りで、強くはなれないですから」
何を当たり前のことをといった顔をするシャドー。彼が強くなれたのは、自分の努力もそうだが師匠である茨木華扇の教えもある。それだけではない。今まで戦ったものたちとの研鑽もある。自分一人だけで強くなれたと嘯くことはできない。
「そ、うよ! このレミリア様が隣に居てあげる!! 私達の強さがいつか貴方の言う強さに並ぶから!!!」
「強くなりたいなら、よりいい相手が必要だろう? あたしらを置いて行くことは強さから遠ざかるんじゃないか? 隣にいさせろってんだよ!!!」
レミリアは強がる。萃香も強がる。見たくない果てが見えてしまうから。それを何があっても見たくないから。
「弱小の身を鍛えていきます。共に強くなれます。追いつきます!!」
「わたしを置いて行くなんて許さないからね!!」
身勝手な女達。妖夢はすぐさまそうはなれない。天子はすぐさまそうなるわけではない。ただ、一人にさせたくない一心で我侭を言う。
「あたしたちの居場所作るぐらいの強さ作れんでしょ?」
「………」
「できるの? できないの?」
霊夢は圧を込める。これで臆せばいい。だが、そうならないのは分かっている。だから、次の言葉で女も“ずるくなる”。
「強くなるのに、理由も意義も、意味もあんのよ。ねぇ、シャドー。あんたを
だから、とそこまで言って息を吸う。そこから出る言葉が、誰の口も同じ言葉を言うのが自然と分かる。彼にこの恋情が届くか分からないが、届けばいいなでは終わらせない。届かせるんだ。
彼女たちが異口同音に言って聞かせた。
「好きだから。隣にいるから、離れてなんかやらないから」
しばしの沈黙。
シャドーの顔は無表情だ。刀を鞘にゆっくり納め、彼女らの背後を目指す。
届くことはなかったのか。そう諦めそうになるも、彼女らの持つ六文銭に勇気付けられる。
『シャドーから目を離すな』
その誰かの声がそれから聞こえた気がしたから。なら、諦めてやるもんか。こうも、この男が“ずるい”なら、自分たちももっと“ずるくなる”。
そう思い直し、暗くなっていた目はそのまま先に行ったであろうシャドーに行く。
彼は、丁寧に立ち止まってこちらを見ていた。
「帰ろうぞ」
言葉が告げない女性陣に先ほどとは違う、照れたのを不器用に隠せずに笑ってシャドーは。
「“お前さん達のために”強くなるぞ」
全力で皆で抱きつきに行った。その言葉は命尽きようと、永遠に忘れる気はないと教えるために。
「で、結局アレはどうなったの?」
妖怪の山の天魔の個人用会議室に、博麗余波、八雲紫、茨木華扇、天魔が集う。口火を最初に切ったのは、霊夢の母である余波だ。博麗の巫女の座はすでに娘である霊夢に譲りのんびりと暮らしているが、こういう面倒ごとの後始末を娘でなく彼女が任されることが多い。
「時の狭間に戻ったようよ」
境界をいじくり覗いていた紫が告げる。詳細が記された書を各人に配る。作ったのは勿論彼女の式である八雲藍であるが。
「………」
シャドーに『師匠』と呼ばれている華扇が難しい顔でそれを睨み読む。
「これで人心地つけるな」
天魔がほっとしたため息をついて言う。それに、キッと華扇が睨みを利かせる。
「何も終わっていません」
「時の狭間に封じられたならば、もう手の出しようがない。こちらにも、あちらにもな。それを分かっているだろう」
「何か、術があるはずです。皆さん、彼がこのままでいいと思っているわけではないでしょう?」
華扇の問いに余波と紫はうなづくも天魔は黙ったまま首を振る。
「ちょっとあんた、彼のおかげでここも今があるのにそれを無碍にする気?」
不快気に眉を上げ余波が言う。
「確かにそうだな。彼の“所為”でここの今がある」
天狗の長である天魔は博麗の巫女との和平を会談をしている間に【スペルカードルール】と和平を認めず、博麗神社を襲撃しようとした反対派の妖怪達が「幻想郷の剣神」に一匹残らず斬殺されていたため、彼の力を恐れている。それで、風通しが良くなった面、自分たちにそれが向き根絶やしにされるのではないかという懸念は捨てきれくなった。スペルカードルールを受け入れ、博麗の巫女と和平を結び、その後は、天狗達に『“幻想郷の剣神”には決して手を出してはいかん』と言い聞かせ、山の平穏を保ち続けてきたものの妖怪も人も何がきっかけで何をするのか誰も分からない。今日の天気が気に入らない、という至極くだらない理由でやられる場合がある。そういうものを恐ろしく思う、天狗の長である天魔。ここに居る面子も、少なからず自身らの下につくものがいて彼らの尻を持っている。生き死にを握られているのに、何もできないのは恐ろしくないか。下のものには、家族が居るだろう。少なくて自分一人。それでも、大事な、上に居る自分たちのための資産だ。下がなくてはピラミッドは成り立たない。
「そちらが悪いものではなくて?」
「今も怯え暮らすものの気持ちが貴女に分かるか? 『今日も目が覚めることができて幸せだ』などと、心の底から言ってしまう連中の気持ちが分かるのか?」
「………」
妖怪とはいえ、それは哀れすぎる。人の恐れで妖怪は生きていると言っていい。だが、これでは逆だ。それは流転してはならないものであるのに。
不穏な空気が満ちる。どちらもまともな意見だけに対応と対処が難しすぎる。
危険はあるが、それは先延ばしである。でも、対処法を思案することができる時間は確保した。だが、問題はある。再び、あの未来のシャドーがなにかやらかすことはないが、今のシャドーがそこに行かないとは限らないからだ。あのまま、未来のシャドーが此方に居続ければ、時間というものがなくなる。それは、生物が壊れてしまう。概念的な話、時間というものは存在しないと言われるが、そんなことはどうでもいい。人も妖怪も成長や老化がなくなる。後者はいいと余裕ぶる輩が居るだろうが、前者はまずい。どんなものも成長なくしては未来を作れないし、今しか生きれないという停滞は腐心、憂悶である。そして一番いけないのは、新しい命が生まれないことだ。受精後、時間と共に胎内で“成長”し生まれてくる。今回は短い間だったが、母体に少なからず悪影響はあった。永琳が緊急手当てをしなければ流産した人数は全員だったろう。そんな恐ろしい事態になっていた。それならば、より長く此方にあったなら? 被害は考えたくない。
そこへノックが聞こえた。
「誰だ」
「あたしだよ~、シャドーのことで映姫さまからの書状だよー」
不穏な中にのんびりとした小野塚小町。じつは今の今まで渡すのを忘れるほどサボっていた。今日は、気分的に預かっていたのを思い出しちょうど首脳会議的なものをしているのを知ってここへやってきたのだ。
「入っていいぞ」
「あいよ。お邪魔しま~す…。おや、みなさん怖い顔ですなー。老けるぞー」
「余計なお世話」
女性陣がその言葉に凄んでくる。怖い怖い、と言って自身の身を抱く小町だが本気ではない。女性に老けるぞなどとは、同性であっても言ってはいけないのだ。彼女も同じことを言われたら、同じように凄む。そういうものだ、女性というものは。
「ほいよ」
「ありがとう」
まず、華扇が読む。丁寧に施された包装を解き、中身を。序列で言えば、この中で小町よりは上なだけで下から二番目だが、シャドーの総監督は彼女が握っているといってもいい。
眉が強く寄り、書状が軋む。堅苦しい挨拶から始まったそれは、彼女にとって不快極まりないものだったからだ。
「小野塚さん。これは、どういうことです…?」
静かな殺気が満ちる。この場の連中は慣れているものの、漏れ出したものに当てられれば呼吸ができなくなる。こっそり余波が結界を張り、紫が境界をいじらなければ外にもれ出て被害が及ぶだろう。
「そのまんまだよ」
「こんな、こんなこと…っ」
思わず書状を破きそうになるも、紫が程度の能力を使い奪い取ることで大事にならなかった。
「どうしたのよ、茨木」
「!? こ、れは……」
「紫?」
余波が問うても華扇は顔を下に向いてしまって表情が窺い知れない。そして読んだ紫は思わず立ち上がってしまう。
「どうしたのよ?」
「余波も読めば分かるわ」
「……?」
いつものような余裕のあるそぶりを見せず、書状を余波に渡す手が僅かに震えている。
簡単にまとめると、こう書かれていた。
『シャドーの輪廻転生を許さず』
「はぁ!?」
思わず声が出てしまう。幻想郷以外は知ったこっちゃないが、ここではそれが確かに行われ妖怪も人も貴賎無く許されているものであるのに。
「小町、どういうことよ!! これ!?」
「ん~…?」
のんきにお茶請けをほお張っていた小町に余波が怒鳴る。
「どうって、そのまんま。シャドーは輪廻転生させないってやつ」
「そんな贔屓、あの堅物閻魔が許すわけ無いでしょ?」
「余波の言う通りではなくて? これは間違いとか」
「間違いなんかじゃないさ。ほら、映姫さまの印もその上のほうのやつの署名もあるだろ?」
僅かな期待を、のんびりとした小町の声で打ち砕かれる。
「何故だ? そうなるものは今まで出たことが無いぞ」
「許されないでしょ、こんなこと…。どうしてよ、小町!!」
「あたしが決めることじゃないんだけど…」
小町に詰め寄る余波を手で納めながら説明する。
「あいつの能力のせいさ」
シャドーの能力、時空を越える程度の能力。それは最初にも言ったが、禁忌であるのだ。
「あいつが神様ならよかったんだけどね。それなら、他の神が教育して力の使い道を示唆できる。でも、あいつがやってんのは私欲が多すぎるんだよ」
強いだけならよかったのにねぇ、と言って小町は誰も手をつけていなかった湯飲みを一つ奪って飲む。時間がたって少々酸味が強い。
「映姫さまがなんとか地獄で償わせてやろうとか言ったらしいんだけど。償わせるには、幻想郷中の徳を集めたって無理って見解でね」
「なら、この世で善行を積めばよいのではなくて?」
紫の淡い期待を、小町はゆるく首を振ってまた壊す。
「幻想郷の最高神である龍神様がそう下したんだ。絶対なのは分かるだろう?」
災害をもたらす破壊の神であるが、同時に創造の神でもあり、自然の豊かさも自然そのものが存在することも全て龍神のおかげである。その神がそう下した。
絶対の条理ではないか。
「………」
「どこ行くんだい、茨木の?」
「あの子のところへ」
「このことを知らせちゃいけないよ? あんたを罰さなくちゃいけなくなるからね」
「………」
「罰してもいいけど、シャドーとおんなじことにはならないよ。あんたは輪廻転生できるからさ」
「…っ!」
ドアが乱暴に開かれ華扇は出て行く。
のんきにあくびをしている小町とは裏腹にその場の空気は最悪だった。
時の狭間に戻ったシャドー。見慣れた何も無い場所。気がまた触れそうだ。
手に戻った六文銭を握る。そこに先ほどあったもう一人の自分に付き合ってくれた、彼女たちのぬくもりは無い。彼が来るまで、おとなしく待っていたわけではない。気が触れながらも、“戻りたい”と願っていたのだ。
たまたま未来のシャドーの六文銭を拾ったがしゃどくろのお陰かどうかは分からないが、それを指標にあちらに存在できていた。喜び勇んで言葉すら忘れていた自分は、刀であったそれを振り回してがしゃどくろにそれを持ったままで居ることと誰かを通すなと命じた。他の化生、ぬらりひょんも同じように脅した。さきの奴とは比べ、妖怪らしく人を食った態度で結局シャドーは利用されたことになったが、こちらも少しは用が成せたのでいいとする。
…いいわけがない。
もういやなのだ。ここに居るだけなのは。
“己を守るために強くなりたい”から、突き進んできた。何がいけなかったのか、龍神に挑んだことか。それとも、自身を止めに来た師匠を斬り捨ててしまったことか。
もっと細かく考えると、頭がまたおかしくなりそうだった。生まれたことが間違いだったなんて、だれも思いたくは無い。見取った両親に誇れる自分でいたかった。
最後に見た彼女たちを思い出す。自分のときとは違う選択をしてくれたろうか、と期待する。
同じように未来の自分と戦ってあの場で彼女たちと対した。彼女たちはそれから自分から離れていってしまった。
何故と、そこで憤ることは無い。今も無い。強くなるために、独りであるほうが都合が良いと持っていたから。
けれど、何故、と苦しみながら思う。
自身を支えてくれれば、俺はここにはいなかったのに。またお前さんらと生きれたのに。
子供のようなぐずり。誰も居ないから吐き出したかったが、ここは音すら発せられない場所だった。
頭の中で、無意味な駄々をこねる。
それがもう全身にまで渡る頃、思い出した。
両親のことを。他愛の無い暖かい家族の日々を。師匠である茨木華扇を。辛くも楽しかった修行の日々を。
いままであった大事だったものを。
霊夢を、レミリアを、妖夢を、萃香を、早苗を、天子を。思い出す。
そしてまた消えるであろう理性の中で、最後の言葉を呟いた。
「大好きだった……」
そしてまた終わらぬ中で涙やよだれをこぼしながら気が触れていく。
もう、そこから出れることはない。
何故、華扇がシャドーを助けたのか。
未来のシャドーが、彼女に願ったから。
何故、紫がそこまでするのか。
未来のシャドーが、彼女に願ったから。
詳しく誰かは分からない、二人とも龍神のお告げかと思っていたが違う。
言葉は単純で。
“
独りで生きれない。
独りぼっちではいけない。
ようやく気づいても、遅かった。
主人公設定
幻想郷に住む侍
一人称:俺
特技:武術、家事全般、畑仕事
武器:日本刀・・・見た目は普通の刀だが妖夢の「楼観剣」より優れた切れ味、耐久力を持っている
容姿:年齢は不明だが「香霖堂」の店主・森近霖之助と同様に「青年」である。髪の色は黒色で、髪型は短髪。服装は主に黒色を基調とし、上は黒の着物、下は灰色の袴を着用している
能力:時空を越える程度の能力・・・過去・未来・異空間を自由に行き来することが可能。自分で自在にコントロールも可能。
性格:冷静・・・様々な事柄にも無関心な態度を見せている。戦いに関しては好戦的で、強い相手と戦うことを生きがいとしているため、強者からは好まれているが、弱者からは怖れられている。(FF7のクラウドのような感じ)
生業:家のすぐ近くに作った大農園で育てた野菜を人間の里の八百屋、飯屋、居酒屋などに売ったり、たまに来る「香霖堂」の店主・森近霖之助の依頼(「外の世界」から流れ着いた道具や本を「香霖堂」へ輸送)の用心棒をして報酬を貰っている(報酬額は、生活費に使っても充分余るほどの金額)。
人間の里から大分離れた場所にある一軒家に住んでいる侍
「博麗の巫女」である霊夢と「幻想郷最強」である鬼と互角に渡り合えるほどに極めて高い戦闘能力を持っている
弱者には全く本気を出さず、異変の張本人には若干本気程度
鬼やEXボス(フランや萃香など)には半分本気を出すことで勝てるほどの実力を持っている
普段は仕事の他はほとんど修行の毎日を過ごしている(今の強さに慢心せず、さらに上をめざすため)
先代巫女(現在は博麗の巫女の仕事を霊夢に譲り、のんびりと神社で暮らしている)と森近霖之助とは、昔からの知り合いでもある
正体はかつて、スペルカードルールが提案されるまで、幻想郷の規則(妖怪と人間の共存)を破り悪事を働く妖怪、人間を数多く斬殺してきたことで幻想郷中から恐れられた伝説の侍「幻想郷の剣神(げんそうきょうのけんしん)
(当時は黒い狐のお面を着けて顔を隠していたため、正体を知っているのは先代巫女・八雲紫・茨木華扇・天魔(妖怪の山の有力者 兼 天狗の長)のみ)」
幼い頃に両親を妖怪に殺され、自分も殺されそうになった時、茨木華扇に救われ保護される
主人公の両親を殺した妖怪は、華扇に半殺しの状態にされた後、八雲紫の処罰によって灼熱地獄の異世界に追放されている
今ある主人公の強さは、「己を守るために強くなりたい」という一心で華扇の弟子となる
武術と仙術の修行を積み、更に自ら修行に励んできた結果。成長し、「程度の能力」を自在に操れるようになった主人公は過去(両親が殺さる少し前の時代)に戻り、両親の仇の妖怪を斬殺し二人を救っている
救われた両親は、人里でたまに帰ってくる主人公と一家団欒の日々を送り続け、最期は主人公に見送られながら寿命をむかえ既に他界している
幼い頃から仙人の修行をしていたため、霖之助と同様に人間と比べ寿命が長く、霊夢たちの「何倍も永く生きている」とのことで、歳を重ねても成長や老化といった変化が少ない
異変時は、強い相手(異変を起こす側)との戦いを求めて介入することが多い
◯主人公のスペルカード
翔符(しょうふ)『蒼龍飛天(そうりゅひてん)』(全身にまとった覇気により自ら青い龍となって敵をのみ込む主人公の得意にして最大の切り札。)
キャラ設定
◯博麗 霊夢の設定
数々の「異変」を解決してきた博麗神社の巫女。毎回、来たとき必ず、お賽銭(霊夢の生活に困らない程度)を入れてくれたり、異変時に協力してくれる(主人公は、ただ強い相手と戦いたいだけ)主人公への恩を返すために、彼を宴会に招待したり、本人(主人公)の意思に関係なく通い妻をしている。
◯レミリア・スカーレットの設定
紅魔館の主人で吸血鬼のお嬢様。「誇り高き吸血鬼」とか「カリスマ」と自称しているが、性格は見た目通りの子供で非常にわがままである。「紅霧異変(紅魔郷)」でフランと互角に渡り合った主人公の強さに魅入られ、異変後は、彼を紅魔館の執事として雇いたいと持ち掛けてみたが、「職には就いているし、そんなものに興味はない」と断られるが、めげずに何度もアプローチを続けている。
◯魂魄 妖夢の設定
西行寺家の専属庭師 兼 西行寺幽々子の警護役の半人半霊の剣士。主人である幽々子が起こした「春雪異変(妖々夢)」にて、自分を圧倒した主人公の強さに興味を持ち、異変解決後は彼の弟子として、たまに来たときに剣の修行を指導してもらっている。
◯伊吹萃香の設定
幻想郷に現れた鬼。「萃夢想」で、半分本気を出させるほどの鬼の強さに興味を持った主人公の誘いで、一緒に同居している(修行(模擬戦)に協力する条件付き)。
◯東風谷 早苗の設定
守矢神社の風祝(かぜはふり)で、「現人神」や八坂神奈子の巫女でもある少女。霊夢に譲渡を迫ったことで起きた「ある騒動(風神録)」で神である八坂神奈子と洩矢諏訪子の二人と互角に戦った主人公に最初は怯えていたが、たまに見せる優しさに魅入られ、次第に敬愛心を抱いていき、霊夢と同様に主人公の家に通い妻をしている(同じように主人公の元を訪れる霊夢にライバル心を燃やしている)。
◯比那名居 天子の設定
天界に住む天人。博麗神社を倒壊させて起こした「異変解決ごっこ(緋想天)」で本気を出さずに自分に勝った主人公に惚れてしまい、異変後は度々、主人公の元に訪れることが多い。
◯茨木華扇
妖怪の山に住む「仙人」。主人公の命の恩人にして彼の師匠である。山に大きな道場(修行場)を構えている。最初は彼に普通の生活を送らせようとしたが、「強くなりたい」という言葉と偽りのない決意を固めた眼で華扇を見る主人公の意志を優先し、彼を弟子に迎え様々な武術と仙術を教え込み、一人立ちするため山を降りる彼を心から見送った。そのため主人公からは「師匠」と呼ばれ、敬愛されている。
◯先代巫女の設定 博麗余波(なごり) ※名前はこちらが考えさせていただきました
霊夢の母親。博麗の巫女の座を霊夢に譲り、博麗神社で霊夢と二人で暮らしている。主人公とは若い頃からの知り合い。最初は名前で呼ばれていたが、彼女が母親になってからは「先代」と呼ばれるようになった。性格はマイペースで主人公を振り回すことも多いが、彼を実の息子のように大切に思っている。
◯八雲紫
「境界を操る程度の能力」を持つ妖怪。「妖怪の賢者」という二つ名を持っている。主人公と先代巫女の知り合いでもある。普段は余り動かず長時間の睡眠を取るか、博麗神社か主人公の家に遊びに行くことが多く、仕事は全て式神の八雲藍に任せきり。そのためか主人公からは名前ではなく苗字かフルネームで呼ばれている。
◯天魔(天狗の長)
妖怪の山の有力者。スペルカードルールを受け入れ、博麗の巫女と和平を結んだ。その後は、天狗達に「「幻想郷の剣神」には決して手を出してはいかん」と言い聞かせ、山の平穏を保ち続けてきた(天狗の長が博麗の巫女との和平を会談をしている間に「スペルカードルール」と和平を認めず、博麗神社を襲撃しようとした反対派の妖怪達が「幻想郷の剣神」に一匹残らず斬殺されていたため、彼の力を恐れているからである)。
以上が、リクエストしてくださったシャドー様ご考案の設定です。
どれぐらいのヒロイン数がいい
-
一人
-
二人ぐらい
-
ハーレム