勇者の日誌   作:Yuupon

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14(勇者日誌)

 

 

 

 

 

 八十一日目

 トンカー王国に到着して一夜が明けた。

 街のイメージを書くなら青だな。全体的に青い屋根で統一されていた。

 ノーランドは白亜の街って感じだったけど、こっちは水の都市みたいな感じだ。

 街中まで水路が引かれてて、当たり前のように街中を船が通っているのには驚いた。

 やっぱ、大陸が違えば生活も違うんだろうな。

 川に小船が並んでて、それが全部露店とか初めて見たわ。

 ドドラサンドっていうサンドイッチを買った。美味い。

 ただ、あれだな。

 武闘家やアーシアさんと一緒に国の中を歩き回ってみたけど、なんか物々しいな。

 兵士が街中をうろついているし、どいつもこいつも武器を持ってるから、余計に。

 話を聞いてみたら最近、魔物による王国襲撃が後を絶たないらしい。

 街の外に出るなら気を付けなよと兵士の人に言われた。

 ……まさかのガチ戦争中だったでござる。

 うん、来る時期を間違えたかもしれん。

 

 

 

 八十二日目

 アーシアさんに暫く行動を一緒にしないかと提案された。

 勿論、了承した。

 だってこの国、物騒だもんな。

 というか今、武闘家とアーシアさんが消えたらマジで困る。

 そういうわけで今後の方針を話し合った。

 結論としては状況が状況だから暫く、狩りはお休みして情報収集に徹しようということだ。

 うん、俺もそれが良いと思う。

 

 

 

 八十三日目

 武闘家にアドバイスを求められた。

 何でもオーラを使って新しい技が作りたいらしい。

 アドバイスと言われてもなぁ。

 とりあえず当たり障りのないことを言った。

 

 

 

 八十四日目

 街の中を歩いていたらいきなり魔物に襲われた。

 いや、マジでビビった。

 川の中から何匹かアイスクラゲとか、半魚人が出てきて、急に攻撃してくるんだもんな。

 とりあえずアーシアさんと武闘家が一緒に居てくれて助かったわ。

 あっという間に殲滅してた。

 二人とも強えー、俺が一匹倒す間に三匹は倒しやがる。

 つか街中でも襲われるとかマジで怖くね?

 もしかしなくとも早めにこの国から出た方が良いかもしれない。

 

 

 

 八十五日目

 昨日のことがもう街では噂になっているようだ。

 流石にトンカー王国でも街の中で魔物が暴れたのは初めてらしい。

 警備の兵士が増員されていた。

 ピリピリした空気というか、ちょっとなぁ。

 仕方ないので、宿の中で一日を過ごした。

 

 

 

 八十六日目

 兵士に拉致られて城まで連れてかれた。

 武闘家とアーシアさんも一緒だ。うん、意味が分からない。

 話を聞いたら二日前の街中に魔物が現れた例の事件。あれの解決者を探していたとかどうとか言ってたけど、せめて話を通せや。

 しかも王様が来るからしっかりとした所作で対応しろとか言われたけど、怒っていい?

 ……いやまぁ、権力に逆らう真似なんてしないし出来るわけもないけど。

 んで、案内された部屋に立ってたら王様が来た。

 トンカー王国の王様もまた、爺さんだった。ルッカ王国の王様は太ってたけど、こっちは枯れ木みたいな身体の爺さんだ。

 ただ、目つきがやばかった。明らかに過去に何人も殺ってきたような顔してた。

 しかもその爺さん、俺を見るなり黒の勇者とか言い出しやがった。

 何だその異名みたいなの、知らないんだけど。というか俺、身バレしてね?

 とか思ったら王様が知ってただけみたいだ。ルッカ王から聞いているとのこと。

 まずはお礼を言われた。良くぞ魔物を退けてくれたと。

 望みのものがあれば言うがよいと言われたけど、正直俺はほぼ敵倒してないからなぁ。

 とりあえず一番倒してたアーシアさんに振った。

 魂のオーブを探している旨を伝えていたが、残念ながらトンカー王国には無いようだ。

 代わりに情報を話していた。

 三か月くらい前に、空から降り注ぐ光を見たという話が上がってきたことがあるらしい。

 その光はトンカー王国の北西の森の方に消えていったという。

 王様との謁見が終わって宿に帰ってきたけど、街の外かぁ……。

 とりあえず明日また方針を決めないとな。

 

 

 

 

 八十七日目

 三人で方針を話し合った。というよりも確認だ。

 アーシアさんはやはり北西の森に行きたいらしい。武闘家も同意見のようだ。

 ……二人は強いから魔物に襲われてもどうにか出来ると考えてるんだろうなぁ。

 俺としては行くにしてもまずは調査をすべきだと思う。

 ここら辺の魔物の強さも分からんし、それくらいは調べてからじゃないと不安だ。

 そう提案したら、二人とも受け入れてくれた。

 とりあえず明日一日でその確認をしよう。

 その上で再度協議だ。

 

 

 

 

 八十八日目

 図書館で周辺の魔物について調べてきた。

 大体出てくるのは六種類くらいのようだ。

 

 ワーウルフ:二足歩行の狼。爪や尻尾での攻撃などがシャドウウルフと似ているが、関係性は不明。

 ハーフマーマン:半魚人の姿をしている。水辺に住み、銛を持っている。魔物にしては知能が高く、物の使い方を理解して使うことが出来る。

 かおまじん:顔だけの魔人。転がることで移動する。巨体での体当たりや、口から吐く炎のブレスは強烈。

 ブルーゴーレム:青いゴーレム。ゴーレムに比べ、少し小さく素早い。しかしそのパワーは岩をも砕く。

 スライム :人の顔にはりつき、窒息させる。体内にある核を潰すことで倒すことが出来る。

 まどうじょ:幼い少女に見えるが魔物。見た目で油断した冒険者の隙をついて、フレアやアイスなどの魔法で的確に殺す。

 

 で、これを踏まえて三人で狩りに行ってみた。

 遭遇できたのはワーウルフとスライムだけだが、レビューしていこう。

 まずは新顔。ワーウルフ。

 戦った感じだが、群れで行動するみたいだ。出会ったときは常に二匹から三匹の群れだった。

 戦闘スタイルについてだがゴルドの街で戦ったシャドウウルフとよく似ていた。

 動きも、攻撃方法も、素早さも。

 ……パーティならともかく一人じゃキツイな。普通に事故ったら死ねる。

 危険度:八点。一人で群れに遭遇したら逃げるべし。

 

 続いてスライム。

 こっちはノーランドのスライムと同じかと思ったら、ちょっとでかい。

 そのせいで刃が通りにくいな。水に向かって剣を振ってるようなもんだし、でかけりゃでかいほど核を斬るのが難しい。

 しかもでかい分、体積があるからのしかかられたりしたら息が出来なくなって死ぬな。

 危険度:七点。殺し方がエグいからやばい時は逃げるべし。

 総評、ノーランド周辺よりやばい魔物が多い説を提唱します!

 というかあれよ。普通に強いし、キツイ!

 それにまだ出くわしてないけど個人的には最後のまどうじょが怖いしな。

 もし見た目が本当に童女なら殺せる気がしない。

 武闘家とアーシアさんもそうだと思う。

 いざとなったら逃げることも考えなきゃな。

 

 

 

 八十九日目

 パーティ内で話し合って、二日後に北西の森に行くことなった。

 仕方ない、準備しよう。

 いつもなら逃げだすけど、この国にいる間は二人から離れてる方が怖いからな。

 頑張ってついていこう。

 

 

 

 

 九十日目

 森の中に行くのは久々だ。

 ジャイアントフライを討伐に行ったとき以来か。

 とりあえずポーションは五個ほど買った。

 今日のところは早めに寝て、明日に備えるとしよう。

 

 

 

 

 

 

 

 


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