勇者の日誌   作:Yuupon

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24(女神日記)

 

 

 

 百十一日目

 次の目的地、ユグノーシア。

 私にとっては思い出深い場所だ。

 あの温泉街も元は私の信徒の多い街だったし、どうなっているかが気になる。

 トンカー王国からの道なりは順調だ。

 武器や防具が新調出来て、魔法の威力も上々。

 初級魔法が辛うじて使えた頃が懐かしい。もうあれから百日以上経っている。

 ……トンカー王国を幹部が襲ってたりと動いては居るけど魔王軍の動きが妙に鈍いのが気になるところね。

 あの男の考えることだから、嫌な予感がする。

 とはいえ手の届かない場所を考えても仕方ない、か。

 とにかく早くオーブを手に入れて私の力を取り戻さないと。

 そのために打てる手は打っておこう。

 

 

 百十二日目

 イーエックスライム。

 それは、銀色に光り、一体倒せばたちまち強くなれると言われる魔物。

 まさか道中出会うとは予想外だったわ。

 どうにか仕留めようとしたけど物凄い逃げ足でまるで追いつけなかった。

 うう、あれを狩れたら美味しかったのに。

 というか勇者も手伝いなさいよ! 何で見てるだけなの!?

 聞いたら興味ないって言ってたけど、もー!

 

 

 

 百十三日目

 ……勇者の力。

 剣の刀身を黒く染めるあれ、一体どうなってるんだろう。

 勇者の力は感じるけど、絶対それだけじゃない。

 確かに勇者にしか使えない力はこの世界にあるし、それの一種だとは思うんだけどね。

 実際感じる力は勇者のそれだし。

 でも、それだけじゃない。

 あの力には何か、私の知らない力が混ざってる。

 原因は分からないけど、この世界自体に何か問題でも起こってるのかしら?

 んー、何にせよ女神の力が取り戻せないとそのあたりも分からない。

 せめてあと一つオーブが分かれば、少しだけなら女神の力を行使出来るような気がするんだけどなぁ。

 まぁ今のところは戦闘で役に立ってるし、害はないから置いておこう。

 

 

 

 百十四日目

 今日も歩いたー! 疲れたー!

 トンカー王国を出て、北の森を歩くこと三日。

 やっと森を抜けて川まで出られた! 

 これで今日は魔法で水を作らなくて済むわ。それに魔法だと少なくない魔力を食うから、タオルを濡らして拭くくらいしか出来てなかったけど、川なら水浴びも出来る!

 ……出来ればお風呂に入りたいけど贅沢は言えないのが悲しい。

 でもでも、ユグノーシアに着けばあそこは温泉街だから久々にゆっくりお湯に浸かれるわ!

 行程も半分は過ぎたし、もう少しの辛抱。

 

 ……旅は楽しいけど、やたら魔物に襲われるのが気になるわね。

 元々魔物が多い地帯じゃないし、多分私が原因だと思うけど。

 ……ゼメスが私に気付いた時点で、魔王側にアーシアという人間が女神だとバレていると考えるべきだし、もしかしたら既に監視とかいたりするのかしら?

 抜かりないやつだし、やっててもおかしくないと思うけど。

 今を楽しむのはもちろんとして、気を抜かないようにしないとね。

 

 

 

 百十五日目

 今日も一日魔物、魔物、魔物。

 よくもまぁ襲い掛かってくるものだと感心するくらい襲われた。

 ただ、ようやく火山にある街が目視できるくらいまで近づけた。

 それにしてもトンカー王国の戦いを越えてから、武闘家ちゃんもかなり強くなっている。

 正面から敵を殴りつけ、相手の攻撃は盾でガード。盾を投げつけたり、盾で殴ったり。

 龍の一族だけが使えるオーラ。

 ようやく使い方が分かってきてるみたい。

 あれは本人に合わせて何でも出来る力だから、彼女の芯は守ることなのかしら。

 何にせよ優しくて良い子だと思う。可愛いのも高ポイントね。抱きしめたくなっちゃう。

 まぁ、敵に対する容赦はないけどそこはご愛敬。

 にしても人生、もとい神生も分からないものだ。

 これでも女神時代はバリバリ魔王とやりあってたのになぁ。

 今じゃ天界は乗っ取られ、女神としての存在を消されてこの有様。

 女神パワー=信仰力な面があるし、全人類に忘れ去られてるのはかなり痛い。

 勇者は覚えててくれたけど、それ以外だと生き残りの天使くらいしか覚えてないだろうし。

 そのうち本格的に知名度を上げないと魔王には対抗できない。

 悩み事は尽きないけど、前向きにいきましょう。

 ポジティブシンキング、どうせならこの難局を楽しむくらいの気持ちで。

 

 

 

 百十六日目

 やーっとユグノーシアに着いた!

 久々の街! 到着が深夜だったから宿をとって、すぐに就寝態勢なのが悲しい。

 武闘家ちゃんも疲れたみたいで早々に寝ちゃったし、私も早く寝よう。

 温泉が楽しみだわ。

 

 

 

 百十七日目

 ユグノーシアに来るのも久々だ。

 街の中を歩いたけど見た感じは変わらない。

 私の記憶だとこの街は私の信徒の多い街だし、ドドラ火山には私のための祭壇とかもあったはず。

 そこに神器を収めてた記憶がある。

 この大陸に来たのも神器を回収するためだし、早めに行っちゃおう。

 それと街には女神像もあったけど案の定、街の人はこれが何か分かってないみたい。

 火山の祭壇の方も聞いたけど、守り神とかわけ分かんないこと言われたし。

 恐らくは人々の認識が改変されてるんだろうけど、あれは元々私の神器を収める社なのに。

 まぁ、地域ごとの風習とかそんな感じに認識してるようだし、そういうことにしときましょう。

 

 それはともかく温泉よ温泉!

 武闘家ちゃんと一緒に露天風呂に入ったけど気持ち良かった。

 温かいお湯なんて数日ぶりだし、ましてや露店風呂なんて数か月ぶり。

 はぁー、心が落ち着く。

 にしてもあの子を見て思ったけど、あの子はやっぱりまだ目覚めてないみたい。

「ひゃっ、ど、どこを触ってるのですか!?」

 軽く触れてみたけど反応は感じなかったし。そのあと本人にポカポカされたけど。

 白くて綺麗な肌してたし、この子を見た時に龍の一族と見抜ける人はほぼ居ないでしょうね。

 まぁこればかりは才能だし、彼女は遅咲きなんだと思う。

 いつかは目覚めるときが来るはずだし、焦ることはないでしょう。

 

 

 

 百十八日目

 昨日一日ゆっくりしたから、今日は色々頑張った。

 乗っ取られた天界も気がかりだし、散り散りになってる天使達も放っておけないからね。

 というわけで今日は一日かけて街で情報収集した。

 私を崇めるための、アルテミシア教会にも足を運んでみたけど、やっぱり女神アルテミシアについて知る人は居ないみたい。

 それと教会の蔵書も見せてもらったけど駄目だった。

 全部の蔵書から私の名前だけが読めなくなってるのよね。

 で、この教会では誰を崇めてるの? とも質問してみたら神官の動きが止まった。

 やっぱり覚えてないみたい。

 誰を信仰しているかすら分からなくて、酷く混乱してたから申し訳ないけど魔法で忘れてもらった。

 申し訳ないことをしてしまった。

 図書館でも蔵書を調べてみたけど、私に関する記述の載った本はあるのに名前だけが無い。

 やっぱり、『アルテミシア』という存在は完全に消えてしまったみたいだ。

 ……でもそうなると新たな疑問が浮かんでくる。

 なんで、勇者は私のことを覚えていたのか?

 思えば私、あいつのことだけ分からないことだらけなのよね。

 勇者、あいつは一体……。

 

 

 

 百十九日目

 今日はドドラ火山や付近の魔物についての調べものをした。

 知らない間に火山の山頂に火竜が住み着いたようだ。

 神器があるのも山頂だし気を付ける必要があるわね。

 ただでさえ登山は危険だし、遭難に備えて準備は万全にしましょう。

 勇者もこういう時はしっかり準備してるし、私も見習わないと。

 それと今日は早めに寝て明日に備えよう。

 おやすみなさい。

 

 

 

 百二十日目

 まずい、まずいまずいまずい!

 途中までは魔物と戦いつつも安全に登山を進めてたのに、まさかこんなことになるなんて!

 いや、冷静になりなさい私。

 とりあえず経緯だけ書いておこう。

 ドドラ火山を登山中に、大きな鴉に杖を奪われたの。

 杖が無きゃ、今の私じゃ魔法も安全に撃てないし、私はそれを追いかけた。

 あの鴉、最低限制御出来る初級魔法を何発かぶち当てたのに全然止まらなくて困ったわ。

 それでもどうにか追いかけて、ようやく諦めたらしい鴉が杖を捨てたことで取り返せたんだけど、気が付いたら洞窟の中まで来てしまってて。

 で、その洞窟内の地面に魔法陣が描かれてて、気を取られたのが最大のミスだった。

 急に洞窟の入り口の方から激しい振動が聞こえて、慌ててそっちに向かったら崩落したのか入り口が完全に埋まってて、魔法で脱出しようにも洞窟内に描かれてた魔法陣の効果が魔法封印だったから、魔法も使えず。

 ……平たく言えば閉じ込められてしまった。

 もしかしなくてもこれ、やばいわよね。

 見た感じ他に出口もないし、魔法陣を破壊しようにも今の私じゃブレイクスペルは使えないし、それに魔法が使えないんじゃ素手で岩を片付けるしかない。

 幸い、水とか食べ物はある程度あるし、魔法陣のお陰で本来真っ暗になる洞窟内なのに明るい。

 助けを待つにしても、私武闘家ちゃんに行き先を伝えてたっけ?  

 もしかしてやらかした?

 …………ひ、悲観するな私!

 こういう時こそポジティブシンキングよ!

 とにかく助けがくる見込みがないなら、自分で助かるしかない。

 やることは単純、土砂で埋まってる洞窟の入り口を片付けて、脱出!

 そうと決まれば、えいえいおーーーーっ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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