勇者の日誌   作:Yuupon

25 / 25


 2020.05.23
 展開を変えました。すまぬ、すまぬ。


25(女神日記)

 

 

 

 洞窟生活一日目

 昨日から多分、一日は経ったと思う。

 ……寝て起きたくらいには時間が経ったはずだし。

 まぁ、太陽の光が届かないから日を跨いだのかも、今が何時なのかも分からないけど。

 

 魔法陣を解析してみたけど、やっぱりブレイクスペルが使えないと壊せないみたい。

 ブレイクスペル以外で無理やり壊したら爆発するようになってるし、こりゃお手上げだわ。

 洞窟内も隅々まで見て回ったけど、脱出口は無いし。

 それなりに大きな広場になってるから酸素不足になることはないと思うけど。

 それと所持品も全部改めて確認した。

 ポーションが三本、あとは飴とか、そんな感じの携帯食料5個と一食分のご飯。

 うーん、心もとない。

 私自身が回復できるから割とポーションケチっちゃうのよね。

 それにいくらポーションでも、どんな怪我でも直せる代物じゃないし、回復量は魔法の方が高い。

 おまじない的に持ってきてはいるけれど……うーん。

 これだけの物資だと、活動限界は一週間もない、か。

 今頃、武闘家ちゃんが私が帰ってきてないことを騒いでる頃でしょうけど、行き先伝えてないから見つけてくれると考えるのはやっぱり甘い考えだろう。

 あー私の馬鹿! せめてメモくらい部屋に残しとけっつーの!

 ……とはいえもう後の祭りなのよね、生きて帰れたら次回からはちゃんと残すようにしよう。

 

 さて、とにもかくにも脱出計画を立てなきゃいけない。

 ここで沈んでても死んじゃうだけだしね。

 とりあえず状況把握的な意味でも洞窟内の状況を書いておこうと思う。

 

 洞窟のサイズ:非常に広い

 出入口   :崩れた場所のみ

 洞窟内の特徴:火山だからか、蒸し暑い。空気は問題なさそう。魔法陣が発光しているため明るい。

 備考    :地面に魔法封印の魔法陣があるため、ブリザードを撃ってようやくアイスにも届かないような氷が出せる程度に魔法が弱体化する

 

 大体こんな感じ。

 魔法も本気でやれば出せなくはないけど、威力が極端に下がるから脱出にはあまり使えない。

 生きるための水としては使えそうだけどね。

 今後の予定としては基本は土砂を片付けて洞窟を出ること。

 あとは長期戦になることを考慮して食糧問題とかの解消を考えること。

 大体こんなところだろう。

 こんな場所、さっさと抜け出しておさらばしないとね。

 

 

 

 

 

 洞窟生活二日目

 作業するとお腹が空くのは仕方ないこと。

 ましてや今の私の体は女神のものじゃなくて、人間だからなぁ。

 信仰力を取り戻さない限り、女神化は難しいし体のケアもしないといけない。

 と、そうだ。

 昨日の方針を達成するための方法を考えたから書いておくわ。

 

 まずは食べ物ね。

 長期戦になると携帯食料じゃ足りないから、ちょっと考えてみたんだけど。

 ……結構広い洞窟だから、何か食べ物になるものは無いか探してみたら、ネズミを見つけた。

 流石に生は不味いけど、これ、焼けば食べれるんじゃない?

 ただ、洞窟の中で火を起こしたら、酸素が大丈夫か怖いけど。

 そもそも洞窟も不思議なのよね。

 見た感じ広場みたいになってて、明らか自然に出来た洞窟じゃないし。

 ……ただ、見た感じかなり長い間放置されてるみたいだけど。

 でもその割には魔法陣だけがやたら新しいから、余計に不釣り合いに見える。

 もしかしなくても、嵌められた?

 魔法陣の効果もピンポイントに私を無効化するようなものだし。

 …………考えても答えでないし、可能性として頭の片隅に置いておこう。 

 

 話を戻してまぁ食べ物に関しては、ネズミとかが早めに食べられるかどうかをチェックしましょう。

 そのために捕獲方法を考えないとね。

 

 で、もう一つの方針。脱出についてだけど。

 実は作業はかなり難航している。

 手作業で岩を動かしたり、土砂を掘ったりしてるけどどうしても時間がかかるわ。

 他の脱出口も検討したけど、さっきも言ったようにこの洞窟、人が作ったようで岩肌がガチの岩肌だからとても掘れないし。

 やっぱり崩れたところを掘るしかなさそうだ。

 魔法が使えればすぐに出れるからもどかしいけど、その辺りは気合とか根性とか意地でまかないましょう。

 

 

 

 

 洞窟生活三日目

 意を決してネズミを食べてみた。

 いや、捕まえるのマジで苦労したわよ。

 素手じゃどうしようもないから罠を作ったけど、考えるのも、作るのも時間がかかった。

 上手くいったから結果オーライだけどさぁ。

  

 ただ、捕まえたといっても流石に生だとどんな病気持ってるか分からないし、調理もしっかりした。

 魔石を燃料に、炎魔法で着火して焼いたけど、匂いは普通の焼いた肉の香りだったと思う。

 で、味だけどなんていうか……豚肉に近かった。

 というか美味しかった。

 いや、思った以上にいける。食べてて調味料が欲しかったけど、全然いける。

 ……一応、毒とかがある可能性もあるから一部位だけを食べて残りは保存してるけど。

 とりあえず明日まで経っても体に異常が無さそうなら食料にするのは有りね。

 ちょっと希望が湧いてきたかもしれない。

 食料の心配がなくなるかも、と思ったからか元気出てきたわ。

 

 そのお陰か今日の掘削作業は結構はかどった。

 作業自体もちょっとずつ慣れてきたしね。

 ただ、筋肉痛だけすっごいけど。特に腕と足と腰。

 岩とか持ち上げるときに前傾姿勢になるせいで腰が痛くてたまらない。

 ちょっとだけ希望が見えてきたわ!

 明日も頑張るぞー!

 

 

 

 

 洞窟生活四日目

 ネズミを食べてから一日経ったけど特に体には影響はなさそう。

 多分だけど、食用にしても問題はないと思う。

 というわけで今日からネズミ料理パーティを開催するわよ!

 空腹は最高のスパイスって言うけれど、そのせいか余計に美味しく感じる。

 無事に帰れたら勇者と武闘家ちゃんにも食べさせたいくらいだわ。

 こんなに美味しいんだから、誰かと食べたらもっと美味しくなると思うし。 

 

 ……それにしても空腹を感じないのも久々だ。

 お腹が満たされてると活力があふれるというか、全身から力が湧いてくる。

 こんなことでも無ければネズミを食べることなんてなかったし、そういう意味ではラッキーだったのかもしれない。

 うん、なんか気分もポジティブになってきた。

 作業スピードもぐんぐん上がってきたし、もう少しで脱出出来たりするのかしら?

 なんかもう何も怖くなくなってきちゃった。

 いけるいける頑張れ頑張れ出来る出来る私!

 掘って運んで掘りまくるわよーっっ!!!!

 

 

 

 

 洞窟生活五日目

 ポーションの力、舐めてたかもしれない。

 というのも掘ってるとき素手だと、結構怪我するのよね。

 爪がガッって岩にぶつかったり、破片が手の皮に突き刺さったり。

 これを放置したら傷口から菌が入って病気になるけど、ポーション飲めばこのくらいの傷なら治るからマジで脱出における生命線だ。

 だから水分は基本的に水を飲むことにして、怪我したとき以外はポーションに手をつけないようにすることにした。

  

 それと掘削の方もやっと。

 やーっと穴を開けられた!

 まぁ、まだ指先も通らないような小さな穴だけど、それでも洞窟の向こう側が見える。

 ……やった、やったやったやったやったーっ!

 この調子なら脱出の日も近いわね。

 

 

 

 

 洞窟生活六日目

 死ぬところだった。

 あと少しで脱出出来る穴が作れそうなくらい掘って、あと少しだーって作業した瞬間にまた洞窟が崩落しやがったのよ。

 直前に魔力を感じたから、多分だけど罠が仕掛けられてたんだと思う。

 触れたら起爆するようになってるとかそんな類のやつね。

 

 これで確信したけど、やっぱりこれって人為的なものだったんだわ。

 犯人も多分あの鴉で間違いなさそうね。

 大方、悪魔か何かが変身してたんでしょうけど。

 それにしても、天井が急に崩れるから、危うく圧死するところだった。

 ……でも、かなりやばい。

 圧死はしなかったけど、降ってきた石が直撃して、大けがはしてる。

 しかも意識を失ってたみたいで、かなり血を流したみたいだ。

 起きてすぐにポーションを全部使って治したけど、頭が痛い。

 身体もフラフラするし、視界がぼんやりする。

 今書いてる文字も少しにじんでるような、そんな感じ。

 駄目だ、今日はちょっと作業出来なさそう。

 

 

 

 洞窟生活七日目

 まずい、身体があんまり動かない。

 だるいし、吐き気がある。

 服が血とか土とかで汚れてて気持ち悪い。

 崩落したといってもそこまで大きくじゃないから、もう少し掘れば出れるのに、力が入らないのがもどかしい。

 ……ちょっと、寝よう。

 ……起きたら治ってるといいな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 百二十八日目

 目が覚めたら、知らない天井だった。

 なんだろう? 病室?

 よく分からないけど助けてもらったのだろうか?

 身体の痛みも引いてるし、多分そうなんだろう。

 窓の外を見ると星空が見えた。

 久しぶりの外の景色、だけどまだ現実感が無い。

 

 

 

 百二十九日目

 目が覚めると朝になっていた。

 硬い地面でばかり寝てたからか、ベッドの柔らかさに感動を覚える。

 様子を見に部屋を訪れた看護婦さんが私を見るとすぐに医者の先生を呼びに行っていた。

 お爺さん先生だ。

 で、話を聞いた感じ私は勇者と武闘家ちゃんに助けられたみたいだ。

 二日前に病院に運び込まれたらしい。 

 その後、勇者達がお見舞いに来てくれた。

 何があったのかを凄く真剣に聞いてくれる姿を見て、心配させてしまったんだなと凄く感じて、謝った。

 いや、うん。連絡を入れなかったのは本当にごめんなさい。

 あれはどう考えても馬鹿だったと自分でも思う。

 

 

 

 百三十日目

 洞窟内でどう過ごしていたかをお爺ちゃん先生に聞かれて話したら驚かれた。

 だけど、同時に納得もしたみたい。

「通りで九日も洞窟内に居た上に、大けがをしたと思えないくらい健康なわけだ」

 生き残っていたのはちゃんとご飯を食べていたお陰のようだ。

「症状的には貧血だったようだが、食べてなかったら失血死してたかもね」

 と言われて改めて怖さを感じた。

 ともあれ、無事に退院を告げられたことでようやく普段通りの生活に戻れそうだ。

 勇者にも改めて次からは何も告げずに消えないこと、と念押しされた。

 はい、その節は大変ご迷惑をおかけしました。今後は必ず連絡します。

 

 あと、その後久々に宿屋に戻ったけど、驚いたわ。

 まさか、リステが居るなんて。

 天使の子に会えるなんて思ってなかったから凄く嬉しかった。

 その後、あの子の話を聞いた。

 

 どうやら私の命を狙う為に悪魔が派遣されたらしい。

 それも悪魔はリステと同じ姿をしているとか。

 もしかして私を生き埋めにしたあの鴉がそうだったのかしら?

 ただ、今後は注意して行動しようと思う。

 とりあえずは、勇者達にお願いして一緒に神器を回収しに行こう。

 あれがあれば今後の役に立つはずだから。

 

 

 

 

 

 


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