平和を願う巫女   作:やかん

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第1話 はじマり

 桜色に咲く花々が、舞い散って地面に落ちる。 地面に落ちながらもその美しさを保てると言うのだから、花はとても素敵な存在だろう。

 庭先の景色を眺めながら、私は平和というものを強く噛み締めた。

 

 自分の手を、赤く染めた事は一度もない。 それは私が巫女になってから「弾幕ごっこ」という、正式な弾幕を使った戦いがもたらされたからだ。

 

 しかし、先代は自身の手を赤く染めながら妖怪の悪事を裁いていた。

 それならば本当に、私は巫女なのだろうか。 これが正解なのだろうか。

 私は────―

 

 そんな考えを吹き飛ばすかのように、私の視線は一点に釘付けになった。 春だというのにちらりと舞う1つの白雪。 季節外れの寒さとこの雪から、私は1つの答えを出す。

 

『異変』、ね。

 

 私がどれだけ頑張ろうとも、異変が無くなることはない。 だからといって見送りにするというのは私のすべきことではない。

『平和』たったその二文字を創り上げるのにはどれ程の年数が必要なのか。 考えたこともないし、考えたくもないような話。

 だからこそ私は、見かけた妖怪は誰かれ構わず退治しに回るし、どんな相手だって容赦はしない。

 

 それが鬼や神だと言われても。

 

 覚悟を決めて立ち上がった視界の隅に、何か丸い物体があるのが分かった。 妖精か何かだろう、と特に気にする事なくその物体を見る。

 

「……え?」

 

 思わずおどけた声が出る。

 それほどまでにそれは理解し難いものだった。 常人には、いいえ()()である私ですら、その物体が何の意味を持ってここに現れたのかが分からないほどに。

 

 結論から言えば、それは白と黒を合わせた勾玉、正確には「陰陽太極図」の球体。 大きさは直径約二メートルぐらいで、見るからに異様な雰囲気であり、この距離からでも何かの力を感じ取れる。

 巫女である私ですらも理解できないというのはそこにあった。

 

 紫を呼ぼうかしら……いえ、今は朝だからまだ起きてないか。 魔理沙を呼ぶ……? ダメね、下手に触れられて何か起こったらたまったもんじゃないわ。 それじゃあ……

 

 どうしようかと私が頭を悩ませていると、突然、例の物体は音を立てた。

 それも、「ピシッッ」という何かが割れるような嫌な音。 そう、何かが。

 

 嘘……でしょ? 

 

 思わず生唾を飲み込む。 今まで何度も異様な光景は目にしてきたが、こうも不気味で不可解なものは初めてだった。

 

 球はヒビが増えるとともに光を放ち、私の目はだんだんと細まる。

 

 

 丁度、眩しすぎて目を閉じた頃だったろうか。

 

 

 その球は、「パリンッ……」という音を歪ませてついに割れた。

 

 

 ゆっくりと目を開けると同時に、私は警戒心を全開にする。

 

 周りに変わったことはないか、私の身に変なことは起きてないか、空はどうなっているか。

 

 が、それらに変わった様子は特に無かった。 取り敢えずホッと一息つき、視線を元に戻す。

 

 しかし、あの勾玉は既に無くなっていた。 何故かと思ったが、今はそれ以上に気になるものがあった。 一歩ずつゆっくりと近づき、私はその気になるものを確認する。

 

「っ……!」

 

 私は思わず言葉を失った。

 それが生きていたから、人間だったから、そして何より私と同じ巫女服を着ていたから。

 

 

 

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