平和を願う巫女 作:やかん
桜色に咲く花々が、舞い散って地面に落ちる。 地面に落ちながらもその美しさを保てると言うのだから、花はとても素敵な存在だろう。
庭先の景色を眺めながら、私は平和というものを強く噛み締めた。
自分の手を、赤く染めた事は一度もない。 それは私が巫女になってから「弾幕ごっこ」という、正式な弾幕を使った戦いがもたらされたからだ。
しかし、先代は自身の手を赤く染めながら妖怪の悪事を裁いていた。
それならば本当に、私は巫女なのだろうか。 これが正解なのだろうか。
私は────―
そんな考えを吹き飛ばすかのように、私の視線は一点に釘付けになった。 春だというのにちらりと舞う1つの白雪。 季節外れの寒さとこの雪から、私は1つの答えを出す。
『異変』、ね。
私がどれだけ頑張ろうとも、異変が無くなることはない。 だからといって見送りにするというのは私のすべきことではない。
『平和』たったその二文字を創り上げるのにはどれ程の年数が必要なのか。 考えたこともないし、考えたくもないような話。
だからこそ私は、見かけた妖怪は誰かれ構わず退治しに回るし、どんな相手だって容赦はしない。
それが鬼や神だと言われても。
覚悟を決めて立ち上がった視界の隅に、何か丸い物体があるのが分かった。 妖精か何かだろう、と特に気にする事なくその物体を見る。
「……え?」
思わずおどけた声が出る。
それほどまでにそれは理解し難いものだった。 常人には、いいえ
結論から言えば、それは白と黒を合わせた勾玉、正確には「陰陽太極図」の球体。 大きさは直径約二メートルぐらいで、見るからに異様な雰囲気であり、この距離からでも何かの力を感じ取れる。
巫女である私ですらも理解できないというのはそこにあった。
紫を呼ぼうかしら……いえ、今は朝だからまだ起きてないか。 魔理沙を呼ぶ……? ダメね、下手に触れられて何か起こったらたまったもんじゃないわ。 それじゃあ……
どうしようかと私が頭を悩ませていると、突然、例の物体は音を立てた。
それも、「ピシッッ」という何かが割れるような嫌な音。 そう、何かが。
嘘……でしょ?
思わず生唾を飲み込む。 今まで何度も異様な光景は目にしてきたが、こうも不気味で不可解なものは初めてだった。
球はヒビが増えるとともに光を放ち、私の目はだんだんと細まる。
丁度、眩しすぎて目を閉じた頃だったろうか。
その球は、「パリンッ……」という音を歪ませてついに割れた。
ゆっくりと目を開けると同時に、私は警戒心を全開にする。
周りに変わったことはないか、私の身に変なことは起きてないか、空はどうなっているか。
が、それらに変わった様子は特に無かった。 取り敢えずホッと一息つき、視線を元に戻す。
しかし、あの勾玉は既に無くなっていた。 何故かと思ったが、今はそれ以上に気になるものがあった。 一歩ずつゆっくりと近づき、私はその気になるものを確認する。
「っ……!」
私は思わず言葉を失った。
それが生きていたから、人間だったから、そして何より私と同じ巫女服を着ていたから。