【完結】とある再起の四月馬鹿(メガロマニア) 作:家葉 テイク
第一章 多分これは悪い夢
1_??/?? 07:00
翌日。
何の変哲もないその日の朝は、
明確な違和感があるわけではない。だが何か……ここ数か月でかなり見慣れたはずの部屋が、どこか見慣れなくなっていた。
「……なんだ……?」
何か違和感をおぼえて、俺は上体を起こした。
掌を見つめる。レイシアちゃんの身体は、ぱっと見どこも異常はないが……やはり、ここにも不思議な違和感がある。なんというか、全体的に身体のバランスがとりづらいような……?
……風邪かな? それなら認知能力が微妙におかしいのも納得だし……、……いやいやいやいや!! 風邪かな? じゃないだろ! 今日大覇星祭だぞ!? 大事な大一番だぞ!?
風邪なんて引いてる場合じゃ──、……そうだよな。風邪なんて引いてる場合じゃない。
落ち着いた俺は、自分のおでこに手を当てる。寝起きでまだぽかぽかしている指先だったからか、おでこは微妙にぬるく感じた。……なんにせよ風邪がある感じではない。
悪寒とかもない。寝汗も……ない。……胸の谷間はちょっと汗ばんでるけど。
っていうか、おっぱい重いなあいつにも増して……。身体のバランスがとりづらいのとか、大体ここのせいなんじゃないの? まぁ、レイシアちゃんに悪いからあんまり触ったりはしないけども……。
そう思いつつ、なんだかちょっといつもより重い胸を持ち上げた、ちょうどそのときだった。
《……シレン、何してますの? そういうことをするならわたくしが抜けてる間にやってくれないかしら……》
《どわっほほほわほわい!?!?!?!? いやいやいやいやいやいやややいやいや、れれれレイシアちゃんこれは違うんだただちょっとなななんか違和感があるから確認をっていうかそもそも部屋もおかしいし身体もおかしいしこれはきっと何かの魔術の仕業なんじゃないかなそうだよきっとそうだよ!!!!》
《……シレン。落ち着いて。ビークールですわ》
《………………はい、すみません》
とりあえずの落ち着きを取り戻した俺は、精神的正座体勢に入って沙汰を待つ。
どういう意図があったにしても、起き抜けにおっぱいを持ち上げてたことに変わりはないわけだからね。まずはそこだけ見たレイシアちゃんの感情は受け止めねばなるまい。
《……はぁ、シレン、どうしましたの? 今更
《えっ》
……と思っていたのだが、レイシアちゃんの温度感は意外にもぬるま湯並だった。
いやまあ、俺もそんなボコボコに叱られるとは思ってなかったが、それでもからかいの一つや二つや三つはあると思ってたんだけど……。
《いや、そこでなんでキョトンとするのかしら……。ちょっとシレン、しっかりしてくださいまし。寝ぼけてるんですの? 口調もおかしかったですし》
《? 口調???》
態度が挙動不審すぎる、というならまだ分かるけど……口調? 口調は別におかしくなかったような。
《やっぱりおかしいですわね……。何かありましたの? まさかまたぞろ
《パッケージ? レイシアちゃん、何言って、》
『よいしょっと』
と。
そこで俺は、度肝を抜かれる光景を目にする。
俺の目の前に────レイシアちゃんの背中があった。
いや、背中なんてなかなか見る機会もないが、仮にも自分の身体だ、後ろ姿だけでも分かる。これは間違いなく、レイシア=ブラックガードという少女の背中だ。……
「えっ、あっ! いや……」
──そこで、『レイシアちゃんの背中が目の前にあるということは、俺は?』ということに気付いて身体に触れてみるが、俺の身体はしっかりと生身だった。少なくとも、感覚はそうだった。
とすると、目の前のレイシアちゃんは一体……?
『……確定ですわね。
……。…………狂った身体のバランス。どこか違和感のある自室。気持ち身長が伸びているレイシアちゃん。
なんとなく、現状起こっていることが……分かりかけてきた。
「いや。レイシアちゃんの感覚で言えば────今話してる俺は、『過去のシレン』の意識だよ」
どうやら俺は、未来に来てしまったらしい。
2_??/?? 07:15
『なるほど。理解しましたわ』
ふわふわと宙に浮かびながら、レイシアちゃんは腕を組んでそう頷いた。
今までずっと一緒の身体にいたのに、こうして内面ではなく実際に対面して話せるというのは、どうにも奇妙な感覚だが……。
『要するに、原因は不明だが意識が未来に飛んでしまった、と。本来のシレンの意識がどこへ行ったか気になりますが……
「あ、あはは……」
あながちあり得ない話じゃないだけに、なんともいえねぇ……。
もしそうなったら、この時代のレイシアちゃんにも、俺にも、かなりの迷惑をかけてしまう。まぁ俺だったら別にいいけど、レイシアちゃんに迷惑をかけるのは絶対にマズイ。
「あ、そうだ! それなら──」
テレビを確認してみれば一発だよ、と言いかけたところで、俺は寸でのところで口を噤む。
あ、危ない。そうだ、この街には
ん? あれ、そういう意味だと、レイシアちゃんが今とんでもないことを口走っていたような……?
…………っていうか俺、さっきからお嬢様口調忘れてたな!? いや、動揺していたとはいえ今までちゃんと貫き通してたのにそんなことあるか!?
『
「んんん!?!? 辞めっ、いや最低野郎!?」
『あ。アレイスターのことですわ。またの名を歴史的ド変態』
「歴史的ド変態!?!?!?」
な、なんでアレイスターがそこまでボロクソに言われてるんだ……。いったいアレイスターに何が起こったんだ……?
ていうか一回理事長辞めてるって、何がどうなってそうなったんだ……? また理事長になったのか……?
…………うーん、良く分かんないけど、バレる心配がないなら口調を取り繕わなくてもいいかぁ。
『ちなみに、今のシレンはもう口調取り繕ってませんわよ』
「えっマジで!? どういう経緯で!?」
『今とは口調も違いますけどね』
……ま、マジで何があったんだ……。
『もう大分前の話ですわ。
「さんねんまえ!?」
えっ……三年前。……三年後? ってことはレイシアちゃん今…………高校二年生!?!?
こっ、高校……高校二年生。二年生。二年生、か……。
「そ、そうか。高二、高二かぁ……」
『今は四月一日ですから、まだギリギリ高校一年生ですけれどね。この間上条当麻と
「か、上条さんが……卒業……!?」
なんていえばいいのか分からない。
嬉しいような、寂しいような、誇らしいような、感慨深いような。目の前の大切な少女が、様々な体験をしてきた──その大切な思い出を共有できないことに、何か少し、置いて行かれたような感覚がする。
「なんていうか、時間が経つのって早いんだなぁ……」
そこはかとなく感傷に浸りつつも、気を取り直して、俺はテレビのリモコンを探す。
「──さておき。状況把握をするなら、テレビを確認してみれば多分一発だよ。確か正史でも、テレビの人達が軒並み入れ替わってたし……」
早めに安心を得たいということもあり、俺は備え付けのテレビをつけようとリモコンを探すが……場所が分からない。しまう場所変えたのかな……。
『此処ですわ。……そういえば去年、リモコンの置き場所決めてましたわねぇ』
言いながら、レイシアちゃんがふわりとリモコンを掴んでテレビの電源を入れる。……あ、幽霊っぽいけど物理干渉可能なんだ、その身体。
……あれ、いったいなんなんだろうな? 薬味さんや……名前忘れたけど、上里勢力の幽霊の子みたいな流体思考体の亜種かと思ってたんだけど、そもそもどういう経緯でレイシアちゃんがアレをやれるようになったのかも分からないし、どういう原理かも分からないし……。全体的に謎だ。
『シレンもできますわよ?』
「えっ」
そんな風にふわふわ漂うレイシアちゃんをぼうっと眺めていたからだろうか。
不意に俺の方へそう言ったレイシアちゃんは、イタズラっぽい笑みを浮かべる。
『原理はシレンも薄々感づいていると思いますが、薬味久子が使っていたAIM思考体の理論そのままですわ。自分の放つAIM拡散力場を媒体にして、学園都市に充満するAIM拡散力場に自我を移しているのです。食事もできますわよ』
「そ、そうなんだ……」
二乗人格どころか幽体離脱までマスターして、いよいよ人間という枠組みの限界に挑戦しているレイシアちゃんは、そのままピッとテレビの電源を入れる。
そこに映っていたのは──
『
「む、結標さんが
……はっ! 違う違う! きちんと結標さんの姿で結標さんが紹介されてるから、
「────っていうかレイシアちゃん、第四位だったの!?!?!?!?!?」
『うわっ、今日一番のリアクション。しかし、そこに食いつくとはさすがはシレンですわね』
レイシアちゃんは肩を竦めて、
『
「ああ……研究分野自体が大きくなれば、『工業的価値』も必然的に大きくなるもんね……」
考えたなあ、レイシアちゃん。そして冷静だなあ。俺の時代のレイシアちゃんなら、こうあっさりと自分が四位であるという立ち位置に納得したりはしなかったろうに、それを受け止めるだけじゃなく、前向きに変えていこうとできるあたり、凄く立派だと思う。
成長したんだなあ……。
『……ま、誰かさんの受け売りですけどね』
レイシアちゃんは何事かをボソッと呟き、
『ひとまず、このテレビの様子を見る限り
3_04/01 08:30
朝の身支度を終えた俺達は、そのまま街へと繰り出した。
春休み終盤だからか、街はけっこう賑やかだ。
「でも……レイシアちゃん、未来を見せるって言っても、何を見せてくれるの? いや、普通に三年後の学園都市がどうなっているかも気になるところだけど……」
『そりゃもう、一番オモシロ……もとい面白い変化をしてるのはあの女ですからね。お待ちあそばせ。今呼びつけますわ』
言いながら、ふわふわ浮遊中のレイシアちゃんは何やら両手を広げてどこかに交信を始めた。
どうでもいいんだけど、そのままの姿で往来に出ていいんだろうか、レイシアちゃん……。不思議存在らしく服装はネグリジェから白と黒のチェック模様のドレスになっているけれど……。
あと、オモシロって言い直した後やっぱり面白いって言ったよねレイシアちゃん。よくわかんないけど心の底からその女の人のことナメくさってるよね。そういうのはよくないぞ。
『今連絡しましたわ。あの女、色々無茶して例のネットワークに窓口作ったから、総子経由で呼びつけやすくなりましたのよ』
「総子って誰さ……」
『ミサカネットワークの「総体」ですわ』
「なんでそんなビッグネームとめちゃくちゃフレンドリーになってんの!?」
そしてミサカネットワークに窓口作っちゃったってことは多分『あの女』って美琴さんのことだよね!? 確かにいかにもできそうな人だけど……あの人はあの人でいったいこの先どんな無茶をやらかすのさ!?
「──ったく。面白いもの見せてやるって聞いたからとりあえず来てみたけど、春休みにいきなり呼びつけてくるヤツがある? ちなみにこの後用事があるから手短に済ませるよーに」
と。
そんなことをレイシアちゃんと言い合っていた俺の頭上から、聞き慣れた声が聞こえてくる。
見上げると──止まった風車のプロペラの上に立っていたのは、茶色いショートヘアの少女。
白いシャツに、デニムパンツの活動的な出で立ちなので、見上げる体勢でも視線のやりどころに困らないのがありがたかった。
『知りませんわよ。それよりこっち来なさい。
「はぁ? シレンさんに? 今さらすぎやしない? なに、今度はシレンさんが記憶喪失? 取り戻す方法とか見つけてんの? また例の大冒険は勘弁してほしいんだけど」
『そうじゃありませんわ、もっと愉快な方。……よし。さあシレン、紹介しますわよ』
その容貌は──俺にとって見覚えのあるものだった。
記憶にあるものより少しだけ大人びたその顔立ちも、背丈も、三年という月日を考えれば妥当だろう。
だが一つだけ、俺の理解を阻む『とある違い』があった。
その違いとは。
『こちら、わたくしと同じく、上条当麻と同じ高校に通う同級生。──御坂美琴ですわ』
「美琴さんが巨乳だ!?」
「誰が疑乳かッッッッッ!!!!!!!!!!!!!!!!」
4_04/01 08:35
「改めて、失礼しました……」
『おーっほっほっほ! それでこそ、この成り上がり乳と引き合わせた甲斐がありましたわ!』
「成り上がり乳って何よ!? なんで私はデカくなってまで乳でイジられてんの!?」
それ、多分美琴さんのリアクションが良いからだと思うよ……。
…………さておき。
どうやら美琴さんはこの三年で劇的に成長したらしく、今となってはレイシアちゃんや食蜂さんにヒケをとらないバストサイズになったのだそうだ。
いや、咄嗟とはいえとても失礼なことを口走ってしまった。申し訳ない。
「──んで、シレンさんの意識だけが過去から飛んできたってことなのよね。確かに、言われてみれば今よりちょっとノリが若いかも」
「え、えぇ……。今からさらにノリが老けるの……?」
今でさえちょっと若者のノリについていけてないなって思うことあるのに。いやだなあ、精神だけどんどんオッサン化してしまう。
「あーいや、老けるというか老成するというか、どっちかというと列聖されてるような……」
『はいはい美琴。ネタバレ厳禁ですわよ。まだ未来の話なんですから』
「気になるなぁそのノリ!」
まぁ無理に聞き出すのもアレなのでほどほどに流すけどさ……。未来の俺は一体どうなってるのさ……?
『はー……面白かったですわ。あ、美琴はもう行っていいですわよ』
「最後まで私の扱いひでぇな!!」
「ウチの主人格がすみません……」
用事があっただろうに、最後まで付き合ってくれた美琴さんを見送り、俺達は春休みの街を歩きだす。
『ウチの主人格、ねぇ……』
アイスが惑星みたいにくるくる回っている『公転アイス』を食べながら、レイシアちゃんはふとそんなことを言った。
「あ、何かまずかった?」
『いえ。ただ、その言い回しも懐かしいな、と思ったまでですわ』
……含みのある言い方だなあ。
『ですが、これで分かったでしょう。三年後の学園都市も、なかなかに面白いと』
「レイシアちゃんは全体的に上から目線で楽しんでるよね」
『そりゃ当然ですわ。わたくしですもの』
なんか、『向こう』のレイシアちゃんに比べると自信が揺るぎ無くなってるなぁ……。
「……しかしそのアイス、凄いね」
公転アイスを食べながら俺の周りを公転しているレイシアちゃんを見て、俺はぽつりと呟いた。
過去の時点で学園都市のトンデモグルメは相当なものだったが、未来の学園都市グルメはなんかこう……味だけでなく、見た目もトンデモになっている気がする。それだけ技術が発展したってことなんだと思うけど……そういう発展のさせ方ってあるか???
『こんなの珍しくありませんわよ。最近は能力開発も進みましてね。
「え、そうなんだ! それはすごい」
『なんでも、わたくし達のケースを元にしてどっかの木原が編み出した科学の平和利用とか加群は言ってましたが……』
「加群さん!? そうだ、加群さん大丈夫なの!?」
『どの口が言ってるんですの……? ……ああ、そうでした。今のシレンは経験してないんですのね』
「え? 俺?」
未来の俺、色々やってるなぁ……。
でも、加群さんが無事なのはよかった。あのへんは本当に悲しいからね……。読んでても悲しいんだから、当事者になるんなら絶対回避したいよな。よくやったぞ、未来の俺。
「あとそうだ。能力ときたら魔術。朝もなんかパッケージとか言ってたけど、あれっていったい、」
『ああ、それはですね、』
アイスを食べ終えたレイシアちゃんが俺の問いに応えようとしたところで、その手にあった端末から着信音が鳴る。
『……む。上条からですわ。美琴と話してるときに既に連絡は入れておいたんですのよ。オティヌス経由で』
あ、美琴さんと連絡してるときから何かスマホいじってるなーと思ってたら、オティヌスだったのか。
「そういえばレイシアちゃん。こっちだと上条さん関連の恋模様ってどうなったの」
『………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………』
……うっ、凄い沈黙。聞かなきゃよかった。
『……負けましたわ。完敗。普通にインデックスに取られました。記憶まで復活させられたらもう素直に祝福しないと女が廃るってもんですわよ』
「あ~……やっぱそこはそうなるのね……」
……そっか……。上条さん、インデックスと一緒になるんだ。そっか。そっか………………。……よかったなぁ。インデックスとなら、上条さんはきっと幸せだろう。色々と大変な人生を歩んでる人だから、幸せになってくれればそれだけで嬉しい。
『……シレン? 何ヘタレてますの? 確かに!! 確かに遺憾ながらわたくし達は負けヒロインとなりましたわ! 「こちら」のわたくしはシレンと一緒に生涯独身養子縁組ルート! ですが……「そちら」はまだ決着がついていないでしょう!? 所詮この世は本線から
「えっ、あっうん」
な、なんかめちゃくちゃ熱い激励を受けてしまった……。この世界の俺、やっぱそのうち乗り気になってたのかな。
「あ、いたいた。おーいレイシア、シレン!」
「!」
振り返ると、そこには見知ったツンツン頭の少年と、金髪に魔女帽の少女がいた。
「事情は聞き及んでいる。──お前とは初対面、ということになるか。何か奇妙な感覚だが」
「あ、どうも初めまして……」
一応、会釈をする。
そんな当たり前の対応しかできないくらい、俺は驚愕に襲われていた。
金髪に、魔女帽の少女。
目の前の少女を、本当に素直に言い表した表現だ。
──そう。
目の前にいる神様、隻眼のオティヌスは────何故か、普通の少女の大きさとなっていた。
「……ああ、そうか。そういえば
オティヌスはふっと微笑み、
「『こちら』の私は『どこかの誰か』のお節介のお陰で多少事態が好転してね。……結果的に例の在りし日の銀の星のような状態になったわけだが」
「…………???」
「『勝つ可能性』と『負ける可能性』の話ですわよ。『負けたオティヌス』と『勝ったオティヌス』、どちらかをモードチェンジして魔神として振舞うのがヤツの方式でしたが、シレンが横槍を入れてアレイスターよろしく『勝ったオティヌス』と『負けたオティヌス』を同時に内包させて、オティヌスの魔神性を破壊したのですわ」
「…………???????」
ご、ごめん何を言ってるのかさっぱり分からない……。
アレイスターよろしく? アレイスターもそんな色んな可能性を内包してるってこと? し、知らない……。そんな話まだ読んでない……。新刊ネタバレやめてください……。
「ま、お前のお陰で今の私があるということだ。神の感謝だ。素直に受け取れ人間」
「あ、はい」
記憶にないところで感謝されてもなあ……。それは多分、『こちら』の俺が受けるべき感謝だし。
まあ、オティヌスはオティヌスで元気にやってるみたいでよかった。スフィンクスに食べられる心配もないしね。
『しかし、よく来ましたわねオティヌス。わたくしは上条だけ呼んだのに』
「馬鹿野郎。お前のような雌狐のところに人間をひとりでやるわけがないだろうが」
『失礼ですわね! わたくし、もう上条は諦めたと言っているでしょう! 美琴と操祈とアナタとで一斉にフラれたんですから!』
「ええっちょっと待ってそんなことになってたの!?」
「…………えーと、上条さんもう帰ってもいいですか? その話は……未だにちょっと、トラウマなんで……」
「あ、上条さんはそこでちょっと待ってて」
「まぁ、半分は冗談だ。色々と聞きたい話もあるだろうが……どうやら、その話を続ける時間はもうないらしい」
「え?」
話が呑み込めない俺を置いて、隻眼の神様はさらに続ける。
俺にとっては、殆ど破滅の宣言のようなセリフを。
「『魔神』だよ。連中、お気に入りに面白イベントが起きたからっていきり立ちやがった」