【完結】とある再起の四月馬鹿(メガロマニア)   作:家葉 テイク

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終 章 未来は常に不確定

   終章 未来は常に不確定

To_the_Tomorrow.

 

   1_??/?? 5:00

 

 

「はぅぁっ!?」

 

 

 ────目が覚めた。

 

 勢いよく上体を起こして、周囲を見渡してみるとそこはやはり、よく見慣れたレイシアちゃんと俺の部屋だった。……んん? ()()()? 何言ってるんだ俺。昨日そこで寝たんだから、レイシアちゃんと俺の部屋で起きるのは当然じゃないか。

 うーん、何か寝惚けてたかな……。

 

 時計を確認して見ると、朝五時。

 開会式は八時に入場開始なのでまだまだ時間はあるが、女の子の身支度には時間がかかるものだし、開会式の前にはGMDWの打ち合わせもある。もう起きておいた方がよさそうだな。

 

 

《レイシアちゃん。レイシアちゃーん》

 

《……む、朝ですの?》

 

《うん。もう起きて準備しちゃおっか》

 

《ですわねー……》

 

 

 レイシアちゃんはまだ眠そうなので、代わりに俺が身体を動かして、ベッドから立ち上がる。

 

 

《あ、そうだ。シレン、おはようございます》

 

《おはよう、レイシアちゃん》

 

 

 これは、役割分担の話だが。

 俺達の一日の分担は、朝の身支度やお風呂などはレイシアちゃんが、日中の雑務は俺が担当することになっている。

 

 理由は単純で、俺はまだレイシアちゃんの身支度を整えるのに十分な経験値がないのである。一応、手続記憶はあるからやろうと思えばできなくはないのだが、それでもレイシアちゃんの目から見たらけっこうおっかなびっくりらしいのだ。

 一応、暇を見てお化粧の勉強はしてるんだけどね。まだまだレイシアちゃんのお許しが出るレベルではない。レイシアちゃん曰く、大覇星祭が終わったくらいになれば大丈夫そうらしいけど。

 

 日中の雑務が俺担当なのは、俺でもできるようなのはそういう方面になるということ。レイシアちゃんは面倒くさいのをやらなくて済むし、俺もちゃんと仕事ができるしでWin-Winなのだった。

 

 で、お互い相手が主導権を握っている時は意識を休ませたり、別のことを考えたり、その様子を見ていたりしている。

 俺は、基本的にお化粧とかはちゃんと見て、お風呂の時は意識を休ませることにしてる。やっぱデリカシーとかそういうのが、ね。こないだレイシアちゃんに『お風呂のやり方もちゃんと見て勉強なさい』って怒られたけど。

 

 

《さあ姐さん、今日も勉強させてもらいやす》

 

《そうやってじっくり見られると恥ずかしいんですが》

 

《あっごめん》

 

《……シレン、そのボケるときも綱渡りでやってる感じ辛くありません? べつに謝らなくていいんですのよ??》

 

 

 いやいや。デリカシーは大事ですのよ。なんだかんだで中身は男と女だからね。

 

 適当に話しつつ、身に纏っていたモノトーンのネグリジェを脱いで脱衣籠に入れ、常盤台指定の体操服を着ていく。

 いつもは常盤台指定のサマーセーターとかなんだけど、今日は朝からずっと大覇星祭だからね。

 ちなみに、能力者がぶつかり合う競技ということで体操服の替えはたくさん用意していて、レイシアちゃんなんかは今回の為になんと二〇着も購入したんだとか。

 『そんなに要らなくない?』と最初は俺も思ったのだが、レイシアちゃん曰く『自分の替えとしてもそうですが、色々な事情で体操服がない人に貸してあげる為のものでもあるんですわよ』とのことらしい。

 

 

《だいたい、シレンはデリカシーとか気にするんならもうちょっとオタク文化の享受に対して慎重に──》

 

 

 そこからお小言を始めたレイシアちゃんは、そのまま洗面台の前に立ち、

 

 

《レイシアちゃん。待った》

 

 

 そこで、俺はその先を遮った。

 

 

《……なんですのシレン。こっちは切実なんですのよ》

 

《そうじゃなくて。鏡》

 

 

 洗面台の前に立つレイシアちゃん。洗面台には大きな鏡があり、そこには当然レイシアちゃんが映っている。

 それはいい。俺が目を惹いたのは、その鏡に映ったレイシアちゃんの──右目。

 

 

《目が…………()()?》

 

 

 その右目が、目が覚めるほど鮮やかなエメラルドグリーンに染まっていた。

 

 

 何か。

 何か大切なことを、忘れている気がする。俺は一度、答えを見たはずだ。この眼を、どこかで──。

 

 

《……目? 何言ってますのシレン。いつも通り綺麗なアクアマリンではありませんの》

 

 

 呆れたようなレイシアちゃんの声に我に返ると、鏡の中に映るレイシアちゃんの瞳は、確かに両目とも碧眼になっていた。

 綺麗に潤んだ蒼い瞳は、胡散臭いモノを見たように細められている。

 

 ……あれ、ホントだな。

 

 

《シレン。大丈夫ですの? 色覚異常は二重人格でも人格ごとに発生するとかって研究をどっかで見たことがありますわ。一度先生にかかります?》

 

《いや、大丈夫。今はもうしっかり蒼く見えるもの。多分見間違いだね……》

 

 

 うーん、光の反射か何かで見間違えたかな……。やっぱりまだ少し寝惚けてるのかもしれない。まぁ、顔洗ったら目も覚めるだろう。

 

 今日は大覇星祭なんだ。

 レイシアちゃんと俺のこれからの為にも、しっかり頑張らないと。

 

 

 ────この時の俺は、まだ知る由もなかった。

 

 これから始まる一連の戦いが、あの日の『四月馬鹿(メガロマニア)』で見た未来、()()()()へと繋がる、始まりになることを。




エイプリルフールはとっくに終わりました。

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