超特急恋愛バラエティ すぱろん!Rebirth   作:鳶子

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第1回 出会いは突然に!?ドキドキレンアイ学園生活!

✧ ✧ ✧

 

「これで究極魔法の完成なのですよ…!」

「………」

 

僕が固唾を飲んで見守る先には、校庭の中央に1人で立つ芥原さんがいた。彼女の持つピーちゃんからは、不思議な光に包まれている。

このコロシアイを終わらせられるかもしれない究極魔法が完成したから、見届けて欲しい。そう言われて僕は芥原さんの儀式のようなものを見守っていた。

 

「…じゃあ、行くですよ、宗形さん」

「……うん」

 

僕はゆっくりと頷いた。

芥原さんは今まで空を飛んだり不思議な魔法を使っていた。コロシアイを終わらせる魔法。そんなものが存在するのかはわからないけど、もしそれでこのコロシアイが終わるなら、それ以上のことはないだろう…。

 

「えーいっ!」

 

芥原さんの気合いの入った叫び声と同時に、辺りは眩い光に包まれていった………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

‪❥ ❥ ❥

 

 

‬「………さい」

 

「…き………さい」

 

 

「起きてください!」

 

「きゃあっ!?!?」

 

目を開けると、そこには2つの赤い瞳があった。

近すぎて目しか見えない…。

 

「あの………」

 

私がおずおずと声をかけると、その2つの目は遠ざかっていく。

瞳の持ち主は、腰までかかる艶やかな黒髪の女の子だった。

私と同じぐらいの年に見えるけど、びっくりするぐらいの美人さんだな…。

 

「おはよう。やっと目を覚ましたね」

 

その子はにっこりと笑ってそう言った。すごく大人っぽい、綺麗な笑みだ…。それより、自分が今どういう状況にいるのかが全く掴めていない。

どうやら自分は、暗い教室の中にいるみたいだった。

 

「ここは……?」

「ふむ、貴女も覚えてないんだね。ボクもここまで辿り着いた記憶がなくて、もしかしたら隣ですやすやと眠っている貴女が何か知ってるんじゃないかと思って起こしてみたんだけど…どうやら、ハズレみたいだ」

 

「そ、そうなんだ…。ところで君は、一体…?」

「ああ、自己紹介がまだだったね」

 

「ボクは笑至にえる。"超高校級の探偵助手"と巷では呼ばれてるよ」

 

 

「えにし、にえるさん…?」

「ああ。自分のことをボク、と言うのは染み付いたクセだけど、性別はれっきとした女。どうぞお好きに呼んでくれ。ところで、そういう貴女のことをボクは知らないんだけど」

 

「あっ、ごめん!わ、私は宗形こむぎです。超高校級の園芸部…って、呼ばれてるよ」

 

「宗形さんね。こういう謎の多い状況の時は隣人が最も頼りになると言うから…不束者だけど、よろしくお願いするよ」

「こ、こちらこそ!」

ぺこりとお辞儀をされて慌てて返す。丁寧な子だなあ…。

 

「貴女もボクもどうやら同じ状況のようだね。自分の名前や才能は覚えているけれど、どうしてここにいるかは思い出せない…」

「そうだね…とりあえず、ここがどこかわからないとちょっと怖いな… 」

「それじゃ、教室をまず探してから、他のところにも出てみようか。1人で外に出るのは危険だと思ったから、貴女が起きてからにしようと思ってたんだ」

「うん。すごいなあ、やっぱり探偵って、こういう状況でもうろたえないんだね…」

 

「ボクは探偵じゃないよ、あくまで助手。貴女のような人をサポートするのがボクの役目だから」

(うーん…私は別に、探偵じゃないんだけどなあ…?)

 

どうやら、どこかずれてる女の子みたいだ。

私たちは特に収穫もなく探索を終えて、教室をあとにした。

 

 

「ところで気になってたんだけど、その手に持ってる植木鉢は何の植物?」

教室を出たところで、笑至さんが私に尋ねた。

「この子ははなちゃん!かわいいでしょ?私が見つけた種から生えたんだけど、新種かもしれないんだ…!」

「新種…か」

 

「興味深いね」

彼女がすっと目を細めた。

…今のは笑ったのかな?常に笑顔が張り付いてるみたいだから、よくわからないけど…。

 

私たちが教室を出て廊下を歩いていると、突然近くにあったスピーカーからチャイム音がした。

 

「ピンポンパンポーン!オマエラ、全員今すぐ体育館に集合してくださーい!始業式を行います!」

 

「始業式……?」

「…どういうことかは分からないけど、今のままでは埒が明かないしね。行ってみるしかないだろう」

笑至さんの言葉に従って、私たちは体育館へと向かった…。

 

 

 

体育館のドアを開けると、そこには私たちのほかに同年代ぐらいの14人の男の子達と女の子達がいた。

談笑している子もいれば、静かに待っている子もいる。

 

「やっと全員揃ったね!」

 

体育館の中に入ると、壇上から甲高い声が聞こえてきた。見ると、変な犬のぬいぐるみのようなものが演台の上に立っていた。

 

「ぬ、ぬいぐるみがしゃべってる!?すげー!!」

私の横にいたピンク髪の男の子が興奮したように声を上げた。

 

「こら!ぬいぐるみじゃない、ボクはこの光清(こうせい)学園の学園長、モノケンだぞ!!」

ぬいぐるみ…モノケンは、怒ったように声を上げた。

 

「学園長…?ボクたちはその光清学園、という学園の生徒にでもなったのかな」

笑至さんが壇上で自慢げに腕組みをするモノケンに尋ねた。

「その通りだよ!オマエラ16人は、この光清学園の生徒なんだ!オマエラにはこれから、この学園で生活してもらうよ!」

 

「なんだって…!?」

「こんな学園の生徒になった覚えはないんだけどなあ…」

「ど、どういうことですか…?」

その場から一斉にどよめきが起こる。すると、モノケンが大きく手を叩いた。

「静粛に!しかも、これからオマエラにしてもらうのはただの学園生活じゃないよ」

 

「これからオマエラにしてもらうのは…レンアイ学園生活さ!」

 

その一言で、場は一瞬鎮まった。

「れ、レンアイ…?レンアイって、恋愛?」

「…冗談でしょ」

「え?どういうことだ?(゜▽゜)」

 

その沈黙の後、再び体育館は騒然となる。呆れたような顔をした人、不思議そうに首を傾げている人、やけにわくわくしたような顔の人。

…私自身も、まだ状況が飲み込めていない…。

 

「…てっきりコロシアイとか、そういう楽しそーなものがくると思ってたんだけどなぁ」

中でも冷静そうに見える白髪の女の子のつぶやきに、モノケンが反応する。

 

「コロシアイだなんてとんでもない!今この国は、少子化の危機に直面しているんだ、未来有望な生徒のキミ達を殺すなんてする訳ないじゃないか!」

「確かに少子化少子化って、最近よくテレビで言ってるよねえ…おねーさんもよく聞くよ」

灰色の髪の女の子が、うんうんと頷く。

 

「そうそう、今の若者はこの国の未来を担い、さらに次世代を育てていく大切な存在なんだよ。でもキミ達と言ったら、結婚率は下がる一方、現実には興味ないなんて言って画面の向こうの男のコ女のコにうつつを抜かして!まったく呆れるよ!」

「ウッ……心当たりしかない……」

モノケンが愚痴るように言うと、やけに前髪の長い男の子がそうつぶやき俯いた。

 

「後は理想の高いコも多いよね、高身長高学歴高収入のイケメンなんてそう簡単に現れませーん!少しは妥協するということを覚えてほしいよねー」

「そんな愚痴を言うために、わざわざ私達をここに集めた訳ではないんでしょう?」

綺麗なブロンドのロングヘアの女の子が、モノケンをじっと睨みつけている。

「そうだよ、僕は世界征服で忙しいんだ、こんな所にいる暇はない!」

それに同調するように、白髪の男の子もモノケンを責め立てる。世界征服ってどういうことなんだろう…?

 

「うぷぷぷ…それじゃあオマエラをここに集めた目的を教えてあげるよ」

モノケンがそう言うと、背後に大きなスクリーンが現れた。プレゼンテーションでも始めそうな勢いだ。

 

「オマエラをここに集めたのは、人間の心を豊かにする、実際の恋愛の楽しさ、ドキドキワクワクを身をもって実感してもらうためさ!

そこでオマエラには、今日から1ヶ月間、この学園で楽しいレンアイ生活を送ってもらうよ。そして1ヶ月後、素敵なパートナーを見つけていれば2人でめでたくこの学園から卒業できるよ!

ちなみに、もしパートナーを見つけられなかったら…この学園に、一生閉じ込められたままになるから気をつけてねー」

 

「一生…!?」

「そんな、おかしいでしょ!」

最後の言葉にあちらこちらから批判の声が飛び出す。

「えー、別にオマエラを殺したりする訳じゃないんだからまだマシだと思いなよー!」

モノケンな不満そうに声を上げた。

 

「…ま、そういう世界軸もあるけど」

「……?」

モノケンが小声でなにか付け足したけど、よく聞き取れなかった…。

 

「あ、パートナーはもちろん同性でも構わないよ!今はいろんな愛のカタチがあるからね、異性同士しか認めないなんて頭が固いよねー!

自分は無性愛者、って思ってる人もいるかもしれないけど、その時はできればそんな自分でも受け入れてくれるって人とパートナーを組んで欲しいな!まあもちろん、社会から隔絶されたこの学園で一生過ごすつもりならそれもいいと思うけどね」

 

「それじゃあオマエラ、始業式は以上、楽しい楽しいレンアイ生活をエンジョイしてくださーい!」

 

そう言うとモノケンは、忍者のように消えていなくなった。

 

 

 

どこか張り詰めていた場の空気が緩んだ。

疲れたようにその場に座り込む人、モノケンの行方を探してステージを探し回る人、さっさと体育館を出て行く人。

 

私は、その場に立ち尽くしていた。

いきなりこんなところに連れてこられて、恋愛をしろなんて言われても、恋愛経験もないのに一体どうしたらいいかなんてわからないよ…。

 

「宗形さん、大丈夫かい?」

途方に暮れていた私に、笑至さんが声をかけてくれた。

恋愛かあ…笑至さんはミステリアスな感じだけど、誰かを好きになることってあるのかな…?

 

「失礼だな。ボクも好意ぐらいの感情は持ってるよ」

「…え?今私、何も言ってな…」

「表情でだいたい言ってることはわかるよ。探偵"助手"だからね」

 

「あくまで、助手を強調するんだね…」

「当たり前、貴女にはこれから探偵として活躍してもらうんだよ。ボクがサポートするから」

「で、でもこの状況で探偵って必要なの?そもそも私、探偵なんてやったことないよ…?」

「以前謎は多いままだろう。探偵泣かせの異名を持つボクがサポートするんだから間違いないよ」

「そ、そっか…」

(すごい自信だなあ…)

 

「それじゃあ、探索に戻ろう。三人寄れば文殊の知恵、とも言う。仲間を見つけて知恵を結集すれば、なにかここから脱出する他の方法が見つかるかもしれない…ボクはこの学園で一生過ごすなんて真っ平御免だ。

それに、ここのメンバーのことも把握しないといけないし」

「…う、うん!」

彼女の勢いに押されて、思わず頷く。

 

笑至さんはまたすっと目を細めた。今度のはしっかり、笑ってるってわかった。

 

「…これだけの大掛かりなプロジェクトなのであれば、この中に黒幕や内通者がいるはずだしね。それもちょっと気になるところではあるな」

「?何か言った?」

笑至さんが小さい声で何かつぶやいたけど、聞き取れなかった。彼女は静かに首を横に振り、私の背中を押す。

 

「…さあ、行こうか、探偵さん」

私たちは、一歩前に踏み出した。

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