戦姫絶唱シンフォギア/戦鬼絶生を行く者   作:DOSOKEY_YUNG

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一話「再起」

「ノイズ!?どうして!?」

 

 

 

「碧!母さんと翠を連れて逃げるんだ!」

 

 

 

「二人を、頼む……!」

「父さん……!!」

 

 

「碧ィィィィィ!!」

「父さあぁぁぁんッ!!」

 

ノイズに襲われて、俺の目の前で父は炭になって崩れ落ちた。

 

 

 

 

「碧……! 碧……!」

「ダメ!家が、崩れて……!!」

 

父の思いを汲んで、母と妹と逃げようとした。

 

 

 

「ああっ!」

「兄さぁぁぁん!!」

 

その途中、燃え落ちる家から逃げようとして崩れる柱や壁に阻まれて、二人とはぐれた。

 

 

「母さんっ!翠ィ!!」

 

 

一人なんとか家から脱出した。

 

 

その頃には、ノイズは活動時間という奴を終わらせたのか辺りは自分を残して全て炭となっていた。

 

 

 

「父さん……母さん……翠……」

 

自分だけが、生き残ってしまった。

 

家族も、親友も、変えるべき場所も……何もかも。

 

 

何もかもが、あまりにもあっけなく消えてしまった。

 

 

 

 

 

「俺だけ、生きて……どうしろって……いうんだ……?」

 

もう、いい。

 

たった一人生きてても、どうしようもない。

 

俺も、このまま、終わったっていいだろう。

 

 

 

 

「俺の命だけ、残して……」

 

皆と同じように、ここで終わったって────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

────薄れ、砕けた筈の意識が戻って来た。

 

瞼が開けば、瞳にはあるはずのない天井が映る。

 

 

 

何故だ?俺は生きているのか?

 

 

その身を起こし、周囲を見渡し始めた碧の脳裏には真っ先にその疑問を脳裏に浮かべる。

 

ベッドまで用意されて、病院に運ばれたのかと思うがふと思い返す。

 

 

 

周辺地域の人間は記憶が正しいならば、自分以外は全滅したはずだ。

 

父も、母も、妹も──それどころか、近所の友人や良き人々も万遍なく炭となって死に、自分が最後の一人だった。

 

 

救助も来るか怪しい────そう思えば、ここは病院なのだろうか?

 

それすらも怪しくなってきて、思わず自分の身体を確かめる。

 

火傷していた上に重症だったと思えば、今の自分の身体は惨い物だろう。

 

 

 

 

 

 

「……分からんな」

 

碧がその身を確かめれば、ボロボロになった筈の服はなく、傷だらけと思う身体は包帯が巻かれて何もわからない。

 

包帯を外してもいいが、そうすれば後々何があるかわからない。

 

この下は見るも無残という可能性も考えられる以上、医術に関しては一かけらの知識もないためにそっとしておくことにした。

 

 

 

 

「そもそも、此処は……何処だ?」

 

その疑問を口にすれば、どこからか扉の音がする。

 

自動ドアなのか、とそんなつまらないことを思い浮かべながら碧が音の方向を向けば一人の老女が視線に入った。

 

 

 

「目が覚めた様子ね」

「……あんたは?」

 

思わず、碧は彼女の問いかけにそう返した。

 

冷たく思えるが、状況を思えば無理もないだろう。

 

何せ家族も友人も、隣人もたった少しの時間で全て亡くしたのだ。

 

 

むしろ、ここまで精神が冷え切っているように落ち着いている方が異様にも思えるだろう。

 

 

 

 

「ナスターシャ・セルゲイヴナ・トルスタヤ。此処の責任者をしているわ」

 

しかし彼女は、その態度もさも平然と受け入れる。

 

目の前で、ベッドに身を預けていた彼のことはある程度責任者として聞いている。

 

 

発見時に、まだ息が残っていたため応急処置をして連れてきたこと。

 

そして此処で本格的な処置をして、目が覚めるまで定期的に経過観察していたこと。

 

今しがた、彼が目覚めたであろうこと。

 

 

 

────最も、彼女にも、当事者である筈の碧ですらも聞かされていない事実は存在しているのだが。

 

 

 

 

 

「よくわからんが。俺は、助けられたことは確かってことでいいのか?」

「ええ、うちの職員がまだ息のある貴方を見つけてくれたわ」

 

その言葉を聞いて、碧は状況をそれなりに把握する。

 

ここは病院とは違う様で、偶然か必然か自分は職員とやらに発見された。

 

 

そう脳が処理をして、少し間が空いてから碧はナスターシャへとひとつ問いかけた。

 

 

「ひとつ聞かせて欲しい。 俺以外に、娘と母親の二人組を見なかったか?」

 

ナスターシャは、碧から投げかけられたその問いかけの意図を、彼が浮かべるその表情で察する。

 

どうやら、彼の目の前で姉か妹か。それと母親はノイズに襲われなかったのだろう。

 

何らかの原因で逸れ、そのまま彼一人だけが発見された。

 

 

 

彼の中で、母ともう一人は生きている可能性がある。

 

生きている可能性があるからこそ、安否を知りたかったのだろう。

 

家族なのだから当然ではあるが────ここで、取り繕っても真実はすぐに分かってしまうだろう。

 

 

「いえ……貴方以外のことは聞いていないわ」

「……そうか。 これで、俺一人か……」

 

だからこそナスターシャは、ただ素直に真実を伝える。

 

その返答を聞いた碧はせめて、母と妹が無事に逃げ出して欲しいと祈る他なかった。

 

 

 

 

残されたのは、自分一人。

 

"もう終わってもいいだろう"と、脳裏を負の感情が過る。

 

死んでも悲しむものは、もう誰一人としていない。

 

ならば、後を追う事のなにがいけないのだ?

 

 

(……ダメだ、ダメだダメだダメだ!)

 

(俺は、生かされたんだ!生きてくれと、助けられたんだ!)

 

 

 

(その思いを、裏切っていいのか!? 小此木碧ッ!)

 

 

「俺は貴方たちに……生かされた。本当に、ありがとう。」

 

だが、"それ"を選ぶほど心はそこまで弱り切っておらず、何より助けてくれた事への裏切りを碧は選ぶことができなかった。

 

 

 

「……まともに動けるかは怪しいが、礼はしたい」

 

碧は真っ直ぐ、ナスターシャの瞳を見つめて碧はそう静かに告げる。

 

じっとしてたら、それこそ自分がまた負の感情に飲まれてしまいそうだった。

 

 

「何か、手伝えることを。やれることを教えてくれ」

「貴方……」

 

だから碧は、助けられた身でありながら……否、助けられた身だからこそ責任者たる彼女にそう直談判する。

 

救われた命だから、拾われた命だから、生きる気力を持って、先に進もうとする。

 

 

 

「……じっとしてたら、それこそ狂いそうなんだ」

「それなら……そうね。 リハビリも兼ねて、少しずつ手伝って貰おうかしら」

 

その意思を汲んでか、ナスターシャは碧の選択を肯定した。

 

生きてこその命だと彼女も分かっている。

 

 

彼が何かすることで生きる活力を見出せるというならば、それを否定することもない。

 

責任者という立場であるからこそ、彼よりも長くを生きる身だからこそ、彼の意思を尊重した。

 

 

 

「ただし、今日と言う日は全て休んでもらうわ」

「……分かったよ」

 

 

それでも、次の日になるまではベッドの上で安静にしてもらうのも決めていたが。

 

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