初恋   作:右利きサウスポー

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彼女を除いた全てが見えなくなった。突然の出来事に驚き目を見開くクラスメイトたちや頬を(はた)かれ吹き飛ぶ親友(織斑一夏)はあっという間に視界から消え去った。

そして一つだけ残ったのは一人の少女。銀の髪を腰まで伸ばし、眼帯をつけた小さな女の子。彼女は一瞬こちらに目を向ける。

その赤い瞳に心を奪われる。透き通るような、見ている者を吸い込むような美しい赤色だった。この世のどんな美術品よりも美しく感じる。

 

鼓動が激しくなり、足元がおぼつかなくなる。この胸を登る高揚感。あぁきっと。きっとこれが初恋ってやつなんだろう。

 

今日、初めてこの学園に入学させられたことを嬉しく思った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

始まりは何の変哲もない高校受験当日だった。何の変哲もない高校受験ってなんだよ。

その日、いつものように幼い頃からの親友である織斑一夏と朝食を食べ、受験会場に向かっていたんだ。

そして暴走トラックが誰かを轢き殺そうとしたり通り魔が現れて同じクラスメイトの女の子が刺されそうになったりなんてことはなく、あーでもないこーでもない。やっぱり兄貴はプロシュートだろ。いやいやエルメェスだろと話しているうちに受験会場であるよく分からない建物に到着した。

 

2人で会場の複雑な道を半ば迷いつつ歩き回っていると目当ての藍悦学園受験会場という看板が置かれた部屋を見つけることが出来、何とか到着と扉を開けた。

そしてびっくり、なんと室内には白い鎧のようなものが鎮座していた。それは紛れもなくISと呼ばれる世界最高の兵器……いや、そんなこと口に出したら近所のお姉さん(束さん)にアイアンクローを食らわされるから言えないが、まぁ今流行りの女性しか乗れない……えーと、なんだっけ、マルチプラットフォーム? まぁそんな感じのあれだ。

 

白いISの向かうに立てられた仕切りのさらに奥から女性が疲れたようにISのコアに触れて起動するようにと指示が来た。しかし藍悦学園にISの学科か何かあっただろうか。なにぶん一夏が行くというそれに便乗して進路を決めたせいで進学先である藍悦学園のことについてはあまり詳しくない。せいぜい将来の職業に繋がるだかなんだかという程度だ。

 

ただアホの一夏は興奮気味にISを触りに行った。おいおい男が起動出来るわけないだろ。

……俺も触りたーい。

 

 

 

 

 

 

 

 

結論からいえばISは起動した。女性しか起動させることの出来ないISを男である俺と、一夏が起動させてしまったのだ。いやぁ、仕切りの奥からでてきた試験担当の方のあの驚きの顔は忘れることは出来ない。まぁ仕方ないだろう、ISを男が起動しているんだから。

 

いやもしかしたら2人でいっぺんに触ったせいで2人で抱き合うようにISを装着していたからかもしれないが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なんでアイツらはこうも面倒事ばかり起こすんだ……」

 

織斑千冬は頭を抱えていた。原因はもちろん千冬の弟とその親友のこと。2人が受験に向かうのを見送った1時間後、千冬に1本の電話がかかってきた。電話をかけてきたのは弟の一夏だった。今日の夕飯の献立でも聞きに来たのかとかるい気持ちで出たのが悪かった。

 

 

「どうした」

 

 

『千冬ねぇ……俺……俺……』

 

 

「何かあったのか?」

 

 

『IS起動させちまった……』

 

 

「は?」

 

 

その後すぐに聴取を受けるとの事で電話は切られ、確信に近い嫌な予感を胸に抱きつつ一夏の親友に電話をかけるが留守電。今度は親友である束に電話をかけるもこれも留守電。半ば崩れるように椅子に座る千冬。今日はなんて厄日だと頭を抱えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、織斑一夏とその親友であり腐れ縁の秋山結弦はIS学園へ入学することとなる。

その事実を彼らのもう1人の友人が耳にした時、さらにもう一波乱あるのだがそれはまた別の話。




何の変哲もない高校受験ってなんだよ。

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