悪魔召喚師の武偵生活   作:凧の糸

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 仲魔召喚の土台を作っていきます。


再生と黒い影

 

 

 

 

 

 昨日はこの部屋に泊まったアリアだったが、まだ寝ているみたいだ。

キンジは勿論今も寝ている。

 

 さあ、朝飯でも作るかな。

 

 

 

 

 

 

「おはよう、朝ご飯食うか?」「頂くわ、ありがとう。」

 

 とりあえず三人分作った朝飯をモキュモキュと食べるアリア。昨日の凶暴さが嘘みたいだ。

 

「サニーサイドアップね。中々美味しいじゃない、悪くないわ。」

 

「美味しかったら何よりだ。」

 

 

 

「それじゃあ、僕はもう行くから、キンジでも起こしといてよ。」

 

「ん、わかった。」軽くアリアと言葉を交わし、学校へ行こう。

 

 

 

 

_______________

 

 授業が終わった。僕が所属する探偵科は基本的に他の強襲科とかと比べると格段に地味ではある。事件のプロファイルとかやったりしてるけどこれが中々大変なものだ。最初の頃は何にも分からなくてあたふたしていたのが懐かしい。一年くらい経てばある程度慣れるのだ。

 

 今日はちょっとばかり用があるのでアームターミナルをリュックに入れ、秋葉原へ向かう。

 

 基本的に武偵高生の放課後は任務を受けたりするので一般の高校生と比べると任務にもよるが物騒ではある。任務を受けなかったり、暇なときにはこんな風に電車に揺られて街に繰り出す事だってある。

 

「まもなく〜秋葉原、秋葉原〜」

 

 着いたみたいだ。

 オタクの街として知られる秋葉原だが、武偵にとってはとても動きづらい町である。武偵封じの町なんて呼ばれていて、雑多な人混みと複雑な道は逃げ込まれたりするととんでもなく面倒なのだ。

 

 そんな町に何で僕が来ているかというと、悪魔召喚プログラムを直そうと思っているのだ。

 

 それは一週間程前に遡る。

 

 

 

 

 まだ春休みのある日、探偵科のクエストではお馴染みの猫探しをしているときだった。

 

 依頼では『三毛猫のみーちゃんを探して欲しい』とあり、二万円の報酬だったのでこれ幸いと受けたは良いが、見つけてもすばしっこくて捕まる気配がない。

 

「みーちゃん出ておいで、早く出ておいで〜」

 

 中々捕まらない猫に少し苛々とするが、猫探しなんてどれもそんなものだ。根気が何よりなのである。そう言い聞かせる。ガシャンガシャンとケージを鳴らしながら。

 

 

 

 「あー、こっちの路地かあ」少しずつだが追い詰めて行っている。この路地は少し入り組んでいる。迷わない様にしよう。

 

 

 「よし、この隅でようやく捕まえられるぞ。」

 次の路地は完全に袋小路。おまけに塀もかなりの高さだから伝って逃げられない。

 

 

 「よし!」と声を小さく気合を入れ、ちろりと覗き込むと、

 

 

 

 そこには三毛猫なんて居なかった。代わりにいたのは体表は夜の闇の様に真っ黒で、探していた三毛猫よりも大きな猫、というよりは寧ろ人型に近い。僕の記憶の中ではネコマタと呼ばれていた悪魔に少しばかり意匠が違うが、そっくりだった。

 

 

 何故悪魔がここに!?

 

 あのトウキョウで生きる為に身についた反射で身を隠したが、十六年ぶりの悪魔に思わず「あっ」と声が出てしまう。

 

 彼方の様子を伺うことは出来ないが、恐らく気付かれている。僕は全力でこの場からケージを乱暴に投げ捨てて走り出す。

 

 何故か?決まっている。ちょっとでも逃げ遅れようもんなら身体を爪で薙がれて胴体はお別れを経験する。

 

 後ろでゴゴゴと音がした後、バギギギギギギと吹っ飛んだケージがブロック塀にぶつかって粉々になった。

 

 

 「衝撃魔法(ザン)が使えるのかよ……」

 余計に足を止める事が出来なくなった。

 

 

 「クソっ、全然外に出れないッ!」

 

 さっきからずっと走っている。多少入り組んでいるとはいえ、直ぐにでもこの路地からは出られるはずなのだ。だが、どうしてか出ることは叶わない。

 

 まるで吸い寄せられる様に行き止まりへ来てしまった。

 

 「マズい!」

 

 チラッと後ろを向くとネコマタ?が迫っていた。

 

 とっさに懐の拳銃、CZ75から鉛玉を喰らわせてやる。

 

 バババババッと確かに銃撃した筈。だが、その真っ黒でのっぺりした表情からは表情を窺えないが、僕の事をマヌケな奴だと言わんばかりにカタカタと肩を震わせていた。

 

 背後の壁には銃撃の後。

 

「ドッペルゲンガー……か?」

 

 対象と何から何までまったく同じである悪魔。確かアイツらは物理反射じゃ無かったのか?

 

 

 もうどうしようもないーそう思ったときだった。

 

 

 すっとお札が飛んできて目の前の悪魔に張り付いたら、バヂヂヂチヂヂと閃光が瞬いた。

光が収まると悪魔は姿が随分様変わりしていた。

 

 探していたみーちゃんとドロリとした黒い泥。黒い泥は猫にくっ付いていたのが剥がれ落ちて、心なしか弱々しくなっている感じがした。

 

 何がなんだかさっぱり分からない。

 

「そこをどきなさい、邪魔よ」

 

そう聞こえて振り返ると、鳥型の折紙がバサバサと空を飛んでいた。

 

「もうどうなったんだよ……」

 突然の喋る折紙にもう驚く気力も失せてしまった。

 

 僕を無視して泥に近づいた鳥はズズズとあっという間に泥を吸い込んでしまった。

 

「なあ、この泥は一体何なんだよ、つかあんた誰なんだ?」

 

「いいわ、答えてあげる。私も聞きたいことがあるし。」

 

「私の名前は葛葉沙耶。そしてさっきの泥は私達もその全体を把握はしてない。」

 

「へ?なんか詳しそうだったけど?」

 

「一々口を挟まないで、泥の効力で分かったことは二つ、生物に取り憑いて何らかの異形又は妖怪の形を取ること、もう一つは取り憑いている間、暗がりでは一部の物理攻撃を無効化する事。これでいいかしら。」

 

「分かったけど、何でそんなのいるの?」

 

「これ以上の質問はないわ、それより貴方どうして魔法の事を知っていたのかしら?あの魔法(ザン)を知っている人間なんてそうそういないのだけれど。」

 

 ま、マズい。色々とマズい事になってきた。

 

「そ、それより見てたなら助けてくれても良かったのに、何で助けてくれなかったんだよ!」

 

 

「色々と泥の対処に時間がかかるの。それより、話を逸らさないで。」

 

 ずいずいと紙の鳥が寄ってくる。

 

「それじゃ、さいなら〜」

 

 全速力で走り出した。のはいいのだが……

 

 

 「……どうやったらこの路地から出れるの?」走ったらまたここに戻ってきた。

 

 「ああ、そういえば異界が出来てたんだった。はい、壊したから出られるわよ。」

 

「じゃあ僕は帰るんで、今度こそさようならー」

「もういいや、"ドルミナー"」

 

 相手を睡眠状態にする睡眠魔法(ドルミナー)を唱えたのが聞こえてももう遅い、どんどんと眠けが……zzz。

 

 

____________________

 

 

目が覚めると暗い部屋に居た。手を硬く縛られ、硬い椅子に固定されている。誘拐されたと気づくのにそう時間は掛からなかった。

 

「誘拐されたなんてしれたら大目玉を喰らいそうだ……」

教務科なら何かしら口実を付けてぶっ飛ばしてきそうだ、僕を。

 

 

「目は覚めたかしら、北原修一クン?」後ろから歩いてきたのは一人の女。

 

そういえばあの猫はどうなったのだろう?

「大丈夫、家に帰したよ」

ああ、良かった。ってオイオイ、心が読めるのか!

 

「ここじゃ、あんたの考えてる事は全部私に筒抜け。嘘なんてつけると思わないことね。」

 

「喋ったら、帰してくれるのか?」

 

「ええ、帰すわ。喋ったらだけど。」

 

「あんまり喋りたくないんだけど、あの、その、所謂契約みたいなのって出来ないんですか?」丁寧に交渉と行こう。

 

「少し待って。」そう言うと彼女は部屋を出た。

 

数分後。

彼女は一枚の紙を取り出し、僕にこう言った。

「この契約書にあんたの名前を書いて、血を垂らしなさい。」

本当にあったのか。驚くがこの状態では字なんて書けやしない。

 

「とっくに拘束は外してる。さっさと書いて」

とにかくこの状況では彼女を信じるほかない。

名前を書いて、プツリと針を刺した指の血を垂らす。

 

彼女も同じ様にするとピカリと一瞬だけ契約書が光った。

 

「これでいいわ。さあ、話して。」

 

まあ、悪魔事情に詳しそうだし、隠すこともないか。

 

「あのさ、君は前世を信じる?」

 

「一応、有ることは知っているわ。でも本当?嘘でないことは分かっているのだけれどとても信じられない。」

 

「前世で悪魔の事とか知ったよ。色々とあったから。」

 

「……それより稀にこういった異界が発生するの。発生したら連絡頂戴。」

 

「帰っていいか?」

 

「あ、そうだった。解除。」

彼女が言った瞬間、周りの部屋も椅子も彼女も全てが消えた。

 

 僕はあの路地にただ一人突っ立っていた。

 

 

 

 そんな経緯で危機感を覚えた僕はこの町(秋葉原)に来たのだ。

 

 かなりの危険物である悪魔召喚プログラム。とても僕なんかが直すのは難しい。専門の店を回る内、直して貰える事となった。

 

 

「中々、古い。」店主はそう呟いた。

 

「いつ頃直せそうですか?」

 

「……少し掛かる。一週間後に取りに来い、金は後でいい。」

 

「そうですか、では。」

 

 薄暗い店を出た。

 

 賑やかな喧騒と一点の雲もない空と打って変わって、未来は静粛にドス黒いモノを孕みながらひたりひたりと近づいていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





 今、真・女神転生1してるけどセラフつよい。

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