ハンター協会の会議室に集うはハンター“
ネテロ会長が実力を認めた者達であり、それぞれに干支のコードネームが渡されている。
ネテロ会長に心酔する者達は、その名に合わせたキャラ変するなど涙ぐましい努力がみえる。
「これで全員じゃな」
ネテロ会長の言葉で十二支んの表情は引き締まる。
「ネテロ会長、ジンさんがまだ来ていませんよ?」
そう、口を挟むのは“
ただ返事のないネテロ会長の視線は、パリストンの表情すらも強張せる。
「またですか」
わざとらしく溜め息をするパリストンは十二支んを見渡す。
数年前からある一つの空席。その主に呆れる者や苛立つ者も中にはいるが、ネテロ会長の指示がなければ手出しは出来ない。
だだいつかは変化が起きる。それがたまたま今日だったのか、反応を見ていた“
「ネテロ会長、“
十二支んの視線はサイユウに向けられてる。
そのサイユウに対して、“
「たしかに十二支んとしては力不足かも→全員。でも、同じ仲間に不謹慎な発言では?→
「仲間? 笑わせるなよ、誰一人として思ってねーだろが、カス!」
「それはあなただけではなくて?→
「なんだと――ッ!?」
犬猿の仲とまではいかないが互いの立場は表明する。
ネテロ会長からの議題を前に、
始まれば最後、個性が強いもの同士の不満のぶつけ合いは終わらない。
それを見ていたパリストンは手をパンッと叩くと皆を静粛に導く。
「皆さん、落ち着きましょう!! 今回は会長からの招集なのですから」
尊敬するネテロ会長の前でも勝手に話し合いが進むのには理由がある。
それは、十二支んにとって“重要な会議”と“遊びの会議”があるからである。
“重要”な方でいえば有事や行事がある訳なのだが、仮に緊急性のあるものなら十二支んも何処かで情報を得ているはず。
“遊びの会議”しか経験したこのないサイユウは机を軽く叩く。
「ったく、ハンター試験は終わったばかりだろが。他に何があるんだよ」
サイユウが言うように行事ならば時期で決まっている。
十二支んは答えを得ているかのように沈黙し、ネテロ会長の反応を待つ。
「ジンのことなら大丈夫じゃ、問題はない。それとワシは近いうちに会長を辞めようかと思っておる。はっきりとした時期は決めておらんがな」
「――そうですか」
ほとんどの十二支んが“またか”と言いたげな表情になる。
そんな中で、副会長のパリストンだけが真剣に話を聞くも共感する者は誰一人としていない。
ネテロ会長のいたずらは思った以上に悪質で一流のハンター達を騙すのだから規模もでかい。
ある時は、血液を限界まで抜き衰弱した様子で「お主に会長を任せるかもしれん」とだけ伝え、後日招集し皆で争わるという遊びをしていた。
そんな事を続けているネテロを尊敬はしても信じる者はほとんどいない。
「条件だけは伝えておこうと思ってのォ。次期会長は選挙で決める事、ハンター全員による投票で投票率95%未満なら無効再選挙といったところかのォ。あとの細かいことはお主らで話し合ってくれ」
ネテロ会長の去った会議室で十二支んは議題を話し合う。
ネテロ会長が議題を出したのだから、嘘でも十二支んとして話し合うべきなのだろう。
「ジンがいないのだから、今は話し合う必要はなくて?→
ネテロ会長を一番近くで見ている者の意見を優先すべきと、チードルは副会長であるパリストンを頼るという選択肢を仕方なく選ぶ。
「おや、チードルさんにしてはめずらしいですね」
パリストンはわざとらしくため息をつきチードルを煽る。
「なにを言いたいの?→
「会長は“全員”とおっしゃいましたよ。そう、十二支ん全員の意味を考えれば分かるはずです」
話についていけていない“
「その十二支ん全員ってことはどういうことだよ。ジンはもういないってことか?」
「おや……チードルさんよりカンザイさんの方が理解してそうですね。そうです、ネテロ会長はジンさんが死んだ、そして会長を辞めるから後はよろしくと言ったのですよ?」
「――ッ!?」
パリストンの何かを知っている表情に苛立ちを押えられないチードルは思わず反論をする。
「いつものいたずらでは?→
チードルに同意する者は多い。しかし副会長であるパリストンは常に最悪を想定して動く。
そこは敵として十二支んの全員が信頼している。
「これは緊急性の高い議題ですよ。考えるべきはネテロ会長が辞める理由でしょうか。それとジンさんの事をどこで知ったのか、ということです」
疑問を抱く者も中にはいるが、しておいて損はない。
一番死にそうにない風来坊のジンの死、本当だとすれば話し合いが必要なのはたしか。他の十二支んが狙われている可能性もあるのだ。
しかし、ほとんどのメンバーはネテロ会長とジンのいたずらである可能性を捨てきれない。
「まずはあなたの意見を聞かせてほしいわね→
「そうですね、まずはジンさんの死をどこで知ったか、という疑問です。答えは簡単です、“殺した本人から聞いた”が一番納得できる理由でしょう。その人物と面識がある、ならそのような人物とどこで出会ったのか。会長が最近行動した中で一番可能性の高いのはハンター試験です。つまり、そこにその人物のいる可能性が高いということになります。皆さんも今年のハンター試験の合格者くらいは知っているでしょう?」
今年のハンター試験は合格者7名。試験の細かい内容までは知らないまでも、新人での合格者が多い年でプロハンター達の間でも話題になった。
そのため合格者の顔は誰もがはっきりと覚えている。
その中で十二支んであるジンを殺せるとなれば相当な腕の持ち主、ハンター試験を受ける前から念を習得している者であることは間違いない。
皆が真っ先に思い浮かべた新人ハンターは――。
「ヒソカ=モロウか?」
頷く者も多い戦闘狂の男、合格する前からハンター達の中では広く認知されている人物。可能性だけなら十分、しかしパリストンの考えは以外にも違っていた。
「その可能性も確かにあるでしょう。ですが、僕は違う人物が思い浮かびましたね。彼、ヘイト=オードブルです」
興味を示す“
「なぜ彼なのかしら。これと言って噂は聞かない人物よね?」
「皆さんも御存じでしょう、あの天空闘技場での話題。ヒソカ=モロウはある者に天空闘技場で瀕死の重傷を負わされました。その名はミルキ=ゾルディック」
「ええ、あの映像は有名ね。ゾルディック家の恐ろしさを知ったわ」
ゲルは珍しくパリストンに同意する。
ハンター達の情報網は広い、脅威になりそうな情報は瞬時に更新される。それはお互いを守るためではなく自分を守るため。
「驚くべきは彼がネテロ会長と同じ心源流ということ、暗殺術ではなくね。そのミルキ=ゾルディックと繋がりのある唯一の人物がヘイト=オードブル。不思議とこれは天空闘技場での目撃情報が多数あります」
「本命はヘイト=オードブルということね→
「ええ、ネテロ会長がその者を認めていたなら
ほんとかどうかも分からないパリストンの考察。だがハンターの勘が告げている、これから大きな動きが起こると――。
「まあ、信じる道を進むのがハンターですから」
十二支んのメンバーを疑いから確信に変えさせたのはパリストンだった。
笑顔であるはずのパリストンから感じたことのない、怒りのオーラが満ち溢れていたのだ。その感情は十二支んにも伝染する。
「怖いなあ、落ち着いてくださいよ」
他の十二支んは『お前がいうなッ!』と心の中でつっこみをする。
「もし、これが真実でもハンター十ヶ条があるじゃないですか。それともネテロ会長にハンター十ヶ条の改正をお願いしますか? ――後戻りはできませんけどね、彼はもうハンターなのですから」
相手が十ヶ条を守ると信じてそのままにするか、改正して仕掛けるか。
真実だった場合、十二支んが消されていっても証拠がなければ捕まえることはできない。
“ハンターたる者、同胞のハンターを標的にしてはならない”
本来ならそうなる前にハンター試験で見抜かなければならない。それができていないのがいまの現状である。
ハンター試験と十か条の改正は今後の議題になるだろう。
それはネテロ会長がいなくなった後になるのかは十二支んメンバー達にもわからない。
「さあ、本題である選挙の決め方を話し合いましょうか」
パリストンは意味のない議題を話し合う。
そして長い時間考えたが、ジンとヘイト=オードブルの繋がりだけが見えてこなかった。
読んでくれてありがとうございます。