旅は道連れ世は情け。   作:赤薔薇ミニネコ

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第二十四話 偽者

 到着した懸賞都市アントキバにてカードの力を考える。

 グリードアイランドが現実の世界で行われているのならカードの効果も念ということになる。

 

「現実なら指定カードの情報で気になるものが幾つかでてくるな」

 

 たとえば、NO.017大天使の息吹にNO.065魔女の若返り薬。効果だけなら重症すらも一瞬で治す力に若返りという逆行。

 

「ナニカ以外にもいる可能性はあるか……戦争にならなきゃいいが」

 

 道端で手に入れたカード化された石が答えを示す。

 

「このカード……まさか、あいつらが創ったものだったのか」

 

 カードの説明文の周りには念を強める神字の模様と複数の念色。相互協力型(ジョイントタイプ)で念の力を極限まで引き上げている。

 驚くべきは、その引き上げたられた念の力がアイにも匹敵するということ。

 

「グリードアイランドは人体実験の箱といったところか。人間のやることは同じだな」

 

 数年前、“復讐”という人間の感情を教えている時にジン=フリークスと一緒にいた人間。

 これと同じカードを使用していたのはシーラ=ヒルというハンター協会副会長だった女。

 答えを得る前に喰ってしまったが、不思議な力はこの世界で創られたもののようだ。

 

「技術を得てもゲームが続いているということは知らないのかもな」

 

 この世界の力はグリードアイランド以外にも利用されている。その全てが暗黒大陸を意識したもので、ハンター協会の縮図ともいえる。

 

「こっちも目的は暗黒大陸か。今はゲームを楽しむとするか」

 

 街に響く一つの爆発音。

 現場に集まる魂のないキャラクター達、これは懸賞都市アントキバのイベントだろうか。

 中心にいたのは腹を吹き飛ばされた男で指にはプレイヤーの証である指輪がはめられている。

 どうやらゲームイベントではないらしい。ゆっくりと消えていく男から貴重な情報を得る。

 

「へー、3分が基準ね」

 

 これまでに試した判定は指輪をはめた指の切り離しである。指輪が生命感知の役割をしていると思ったが違っていた。

 切り離してから10分以上が過ぎても死の判定はなかったのだ。このゲームの脱出条件を厳しくした結果なのだろう。

 

 爆発音から三分後のシステムによる強制排出。

 男の状態から見て即死であるのは間違いない。死の判定の確定情報が得られたのは大きい。

 こちらも魂の力を引き出すにはいろいろと条件がある。その過程で運営から死の判定を受けたらたまったものではない。

 生きているのにデータの全消失とか悲しすぎる。

 

「あれはボマーの仕業、プレイヤー狩りだ」

「爆弾まであるのか。初狩りとは随分と物騒なゲームなんですね」

「いや、このゲームにプレイヤーを死に至らしめる攻撃カードは存在しない。どうやら君は初心者プレイヤーのようだね」

 

 肩に触れ話しかけてきたのは眼鏡をかけている長身の男。大富豪バッテラから依頼された標的の一人。

 

「俺はゲンスルーだ、いい話があるんだがこないか? 向こうの広場で他の初心者プレイヤー達も集まり始めてる」

「犯人捜し……ではなさそうですね。初心者のみなさんは呑気でいいですね、広場ごと爆破される可能性を少しは考えないんですかね?」

「今までにボマーは個人被害しか報告がされていない。ボマーも慎重に相手を選んでると俺は見ているよ」

 

 情報提供からの勧誘は常套手段であるが、個人指導(チュートリアル)は後発組にとっては貴重な話である。

 10年もの歴史があれば、プレイヤー対策や小技特集くらいの分厚い攻略雑誌があってもおかしくはない。

 

 ゲンスルーが指差す広場には数名の座っているプレイヤーがいる。その初心者プレイヤー達と一緒に説明を受けることにする。

 

 「呪文(スペル)は全部で40種類、攻撃型、防御型、移動型、調査型がある」

 

 救いなのは複雑な属性等の要素はないことか。勧誘組の一人であるニッケスが力説を始める。

 

「カードを奪う呪文(スペル)、それを防ぐ呪文(スペル)があるんだ。その呪文(スペル)をオレ達が独占する……!!」

 

 ぼくのかんがえたさいきょうのさくせんと、告げられたのは防御封じのハメ技。要はハメ組の歯車になって働けということ。

 構想は5年と大富豪バッテラも呆れるわけである。そんなだから“俺ら”みたいなのが呼ばれてしまうのだ。

 

「ボマーも大富豪バッテラが雇った暗殺者ってとこか」

 

 標的の拠点(アジト)を探すために潜入をする。

 勧誘された初心者プレイヤーは他の街を含め11名。そのメンバーと共にスタート地点であるシソの木から呪文(スペル)の【同行(アカンパニー)】でハメ組の拠点(アジト)に向かう。

 案内役はジスパーという男で拠点(アジト)の橋渡し役のコズフトロとの会話を終えると森の中を進んでいく。

 

 芋づる式にでてくる標的達。

 ジスパーからの攻略情報は呪文(スペル)カード40種のコンプリートで特別なカードを得られるということ。

 裏切りやゲスプレイ、なんでもありなのがPⅤP。それを分かっているのだろうか。

 

「SSランクであるNO.017大天使の息吹の入手方法まで教えてくれるとは……ミルキにSランクカード3枚くらいで情報を売りつけるか」

 

 ハメ組の拠点(アジト)でアフロ頭のコンターチから、さらに細かいグリードアイランドの仕組みの説明を受ける。

 

 攻撃呪文(スペル)の半径20mという範囲制限。

 その攻撃呪文(スペル)を防ぐ防御呪文(スペル)(バインダー)を開いていなければ持っていても意味がないこと。

 そして、渡された紙には40種の全ての呪文(スペル)情報が書かれている。

 

「この紙は一時間後に回収する。覚えきれなかった者は雑用の仕事にまわってもらうからな!」

 

 ここまできたら標的から情報を搾り取るだけである。10年以上のゲーム歴史も意外と浅いのかもしれない。

 

「コンターチさん、このゲームは指定カードと呪文(スペル)カード以外にも何か“特別”なカードはあるんですか?」

「いや、基本は指定カードと呪文(スペル)カードだけだ。それ以外に作戦を邪魔するカードは存在しない、大丈夫だ」

 

 グリードアイランドのカード情報はこれで全部ということ。これでミルキより圧倒的有利な立場になったのは間違いない。

 

 1時間が経過するとコンターチの審査が始まる。

 コンターチの呪文(スペル)に関する問題に答えるが不正解となる。

 

「違うな、やり直し」

 

 初心者組の合格できなかった唯一の存在を見てコンターチは小さくため息をつく。

 

「ヘイト、時間切れだ。お前には雑用にまわってもらう。ジスパー、こいつを教えてやれ」

「了解!」

 

 ジスパーに告げられたのは攻略とは一切無縁の資金稼ぎ。作戦が成功するまで雑用とまさに奴隷である。

 拠点から移動した先には岩場に囲まれているエリアが広がる。手本を見せるジスパーは生息する巨大なモンスター達を簡単に倒していく。

 

「よっと! ヘイト、こんな感じで目を狙えばこいつはすぐに倒せるぞ」

「おお、すごい簡単ですね!! つまりモンスターにはそれぞれ弱点があるということですね!」

「ああ、そうだ。ヘイトの仕事は食事配給の合間にモンスターを討伐することだ。フリーポケットが埋まったら街に戻って交換店(トレードショップ)での換金になる。作業の繰り返しにはなるが、これも立派な仕事だから頑張ってくれ。それと暇な時はこれでも読んでくれ、休憩時間に何もないのはつまらないだろ?」

 

 ジスパーが渡したのは一つの指定カードであるNO.023のアドリブブック。

 毎回、違った物語が楽しめるという本。

 

「ジスパーさん、自分は防御呪文を持ってないですよ?」

「ヘイト、それは気にしないで大丈夫だ。Bランクの指定カードは全部店で買えるのさ。同じ交換店(トレードショップ)で50回利用すれば買えるようになる。指定カードではあるが、そのカードに価値はないんだよ」

「交換店の裏ルートか、それは便利ですね」

「ここだけの話、目標は3ヶ月程で達成できると思う。指定ノルマさえ達成してくれれば残りの時間は好きにしてくれて構わない。これから3日に1度【交信(コンタクト)】でムーンデューから連絡が入るはずだ。食事の供給方法はその時に聞いてくれ」

「分かりました」

 

 移動呪文(スペル)を使いジスパーはこの場から消える。 

 各担当のパイプ役と情報収集、指定カードを集める初期メンバー、初心者組の呪文(スペル)カード収集と防御呪文(スペル)の保管組、そして雑用と、全ての歯車が綺麗に回りだす。

 ハメ組に集まっていく目的の呪文(スペル)カードと指定カード、この作業ともいえる攻略はあまりにも順調すぎた。

 

 そして、2ヶ月後――ハメ組に“時間切れ”が訪れる。

 

 初期メンバーであるゲンスルーの指輪から(バインダー)が出現する。

 “他のプレイヤーがあなたに対して【交信(コンタクト)】を使いしました”という機械音のメッセージ。

 

『ニッケスだ!』

「どうした、何かあったのか?」

『ゲンスルー、急いでリストを見ろ! ボマーに仲間がやられた!』

「――は?」

 

 ゲンスルーは【透視(フルラスコピー)】を(バインダー)にセットしプレイヤーリストを確認していく。

 白ではなく黒く表示されているメンバー達を見てゲンスルーの額には青筋が張る。

 怒りの原因は初期メンバーが7名も消えたこと。初期メンバーで残っているのはニッケスとジスパーのみ。

 

呪文(スペル)保管組は半分以上も減ってるじゃねぇーか! 残りも雑用と初心者連中のポンコツ共かよ!」

『くそっ、くそっ!!』

「ま、待て……まずは落ち着つこう、ニッケス」

『あいつはアントキバにいたんだ、間違いないボマーの野郎だ。初心者連中を勧誘した時に全部の話を聞かれていたんだ! そうとしか考えられない――ッ!!』

 

 ゲンスルーは(バインダー)のマイクを抑え怒りを露わにする。

 

「てめーのクソ考察なんて聞いてねェんだよ!! 俺がボマーだ!!」

 

 まずはゲーム資産を確かめるのが先、ゲンスルーは気持ちを抑えニッケスから情報を聞き出す。

 

「まずは確認が先だ。ニッケス、指定カードは無事なのか?」

 

 初期メンバーに分散されている指定カード。何か起きた時に被害を最小限に抑えるための危険(リスク)分散。

 

 ニッケスは予め答えを用意していたかのように返事をする。

 

『大丈夫だ、問題ない。指定カードはヘイトが全て持っている』

「はぁ?」

 

 その意味不明さにゲンスルーの眉間には皺がよる。

 初期メンバーのニッケスならまだしも、雑用係が指定カードを保管する理由がどこにもない。

 それよりも気になるのは偽者のボマーという存在――。

 

「ニッケス、お前はボマーを見たのか?」 

『ああ、ボマーは呪文(スペル)カードを使ってジスパーとヘイトで追い払った』

「そうか。一旦、状況を整理する時間をくれ……後でこちらから連絡をする」

 

 通信を終えたゲンスルーは指定カードの無事を確認できたことによって冷静さを取り戻す。

 

「――誰だ、嘘をついているやつは」

 

 ニッケスの見た者は嘘かボマーを利用した別人。

 雑用(ヘイト)とニッケス、ジスパーの3人が組んだ可能性も――だがゲンスルーはそれを否定する。

 ニッケスに欲は見せてないし、選ばれるなら雑用(ヘイト)ではなく初期メンバーの自分のはず。

 そもそもニッケスとジスパーは典型的な義理人情に厚いタイプで仲間を裏切る男達ではない。

 

「まさか操作系か。いや、操作系ならもっと生存者はいるはずだ」

 

 このゲームには多くの移動呪文(スペル)が存在する。雑魚達でも強者相手に呪文一つで簡単に逃げられるのだ。

 この状況がそもそも短期間で簡単にできるものではない。長年のゲーム知識の必要な計画性の高い犯行。

 

「生き残っている全員には爆弾がつけてある、疑わしいやつはまとめて殺せばいいだけだ。予定が少し狂ったが、指定カードを雑用(ヘイト)から奪う」

 

 ゲンスルーは気持ちの整理を終えるとニッケスと交信を再開させる。

 

「ニッケス、生き残った連中を拠点(アジト)に集めておいてくれ。これからの予定をそこで話し合おう」

『分かった』

 

 通信を終えるとゲンスルーは拳を強く握りしめる。

 

「真のボマーが誰か教えてやる!!」

 

 偽者と対峙するためゲンスルーは拠点に向かう。




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