旅は道連れ世は情け。   作:赤薔薇ミニネコ

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第三十一話 終わりと始まり

 ツェズゲラ組がこのゲームに留まる理由を指摘したのはビスケだった。

 

「ツェズゲラは嘘をついてるわね」

「だろうな。ツェズゲラ組のリストを調べて残りの協力者を探すか」

「へー、まだやる気はあるみたいね」

「あたりまえだろ、諦めるのはいつでもできるからな」

 

 ミルキとビスケは交換店(トレードショップ)でプレイヤーランキングの確認をする。

 

「ビスケ、番号(ナンバー)を言うからメモしてくれ」

「わかったわ」

 

 ミルキが調べたのはツェズゲラ、ボードム、ドッブル、バリーの所持している指定カード。

 所持していない指定ガードの炙り出しで、ツェズゲラ組がヘイトに対して行った行為と同じである。

 

「ミルキ、確認できたわよ。指定カードの不足は12枚ね」

「12枚か、SSランクの所持者から炙り出すのがはやそうだな。ビスケは他の街の交換店(トレードショップ)で下位プレイヤーからの確認を頼む」

「わかったわ」

 

 しかし、ビスケは他の街に行かずにミルキの元に戻ってくる。

 

「ミルキ、探す手間が省けたわよ。ちょっと外に来てちょうだい」

 

 ビスケに案内されたのは交流掲示板。それはヘイトが一坪の海岸線の募集に使っていたものだ。

 

「あいつ、隠す気ないな」

「ほんとね、ランキング1位で募集なんて随分と大胆な行動するわね。狙われるき満々じゃないのよ」

「NO.002の一坪の海岸線か、道標(ガイドポスト)で先回りはできそうだな」

 

 SSランク一坪の海岸線のイベント告知、ツェズゲラ組はイベントの発生条件を探ろうとするはず。

 しかし、ツェズゲラ組の4人はヘイトを警戒して動けない。なら、知られていない残りの仲間を使うはず――。

 

「残りの仲間は必ず動く。ミルキ、色々なパターンを想定して動いた方がよさそうね」

 

 ミルキとビスケは二手に分かれてヘイトとツェズゲラの監視を開始する。

 

 監視を始めてから1か月――。

 ミルキは望遠鏡を覗き(バインダー)を開く。

 

「ビスケ、ゴレイヌでビンゴだ」

 

 幻影旅団とヒソカ、そしてゴレイヌというプレイヤー。ミルキは十分な調査期間で最後の仲間はゴレイヌと確信する。

 それを証明するように幻影旅団とヒソカは場所を後にする。残ったのはゴレイヌとヘイトのみ。

 

『オッケー、予想通りね』

 

 ミルキは(バインダー)を閉じて移動を開始する。

 グリードアイランドの終焉は近い。ヘイトが99枚の指定カードを集め残されたのはNO.000支配者の祝福のみ。

 

 噂であり最後のイベントの1枚に望みをかける――。

 

“プレイヤーの方々にお知らせです。たった今、あるプレイヤーが99種の指定ポケットカードを集めました”

 

「きたか、最後のイベント。ビスケ、そっちはどうだ?」

『ツェズゲラ達は、シソの木とアントキバの丁度中央辺りの平原にいるわ』

 

 支配者の祝福の入手条件は10分後に開始されるクイズ100問。

 これからツェズゲラ達は安全な場所に動く、既にゴレイヌとの取引場所も想定済み。

 

『ツェズゲラを囲う形で他の3人が監視してる。あっ、ゴレイヌも合流したわッ!』

「よし、アントキバから向かう」

 

 ビスケとの合流を済ませるとミルキは作戦を開始する。

 相手は呪文(スペル)カードの対策をしている。ばれてしまえば移動呪文(スペル)カードによる鬼ごっこが始まるだろう。

 

 地を行くか、それとも空か。

 今は(バインダー)を使ったクイズが行われている。自ずとプレイヤー達の視線は地に向けられる。

 

“最後の問題です!! NO.000のカードのタイトルは?”

 

 ツェズゲラは最終問題のボタンを押す。

 問題が終わったことによるほんの一息、その一瞬の隙をミルキは見逃さなかった。

 

「遅いぜ、ツェズゲラ」

 

 上空からの奇襲、ミルキの殺気が相手を硬直させる。

 刹那による意識の刈り取り、(バインダー)を閉じるまえに地に伏すのは5人のプレイヤー。

 

 クイズに参加しなかった者が手に入れる支配者からの招待状。

 ミルキとビスケによってグリードアイランドの長い欲望劇は幕を下ろす――。

 

 

☆★☆★☆

 

 

 生い茂る森でアイは何かに惹かれるように道を進む。

 

「ここに何かあるのか?」

 

 アイが拾ったのは一つの黒いゴミ袋、清掃意欲でも芽生えたのだろうか。

 

「ヘイト、これ持ってて!」

 

 辺りには何もなく誰かが持ち込み捨てたのもか。アイは樹木に刺さった張り紙を剥がすとこちらに渡してくる。

 

「紙には何て書いてあるの?」

「うーん……子供の未来(ママヘルノ)? 恵まれない子供達の支援と救済、何かの広告か?」

 

 アイはゴミ袋を開くと新たな紙を渡してくる。

 

「これは?」

「貴様達も同じ運命だ。カタヅケンジャー」

 

 そこでハッと目が覚める。薄暗い部屋に時を刻む音が響く。

 

 ――誰かの魂の記憶、か。

 

 気まぐれな猫のようにアイが腹の上に乗っている。

 最近は念能力の研究に没頭していたせいか爆睡してしまったようだ。

 

「ヘイト、もうお昼だよ?」

「うーん、飯にするか」

 

 黒い人形(アイ)は味覚を得たらしく普通に食事を摂るようになった。好みは変わらないようだが、これが成長なのか進化なのかは分からない。

 

 原因は分かっている。

 アイが生み出した黒い人形、この念能力を自分でも利用できないかと考えてしまったせいだろう。

 

「うーんとね、ふんッ! ふんッ! て、やるの!」

「……なるほど、全然わからん」

 

 アイは喋り終えても身振り手振りを続けている。

 ジェスチャーが長いのは“ふんッ!”に膨大な情報量を詰め込みすぎたせいだろう。

 

「感覚だけでも掴めればいいんだが……」

 

 答えは自身の中にあるというのにもどかしい気持ちである。

 勝手に創られた念能力を使えるようにするというのは、案外と難しいものである――。

 

 

 グリードアイランドを終えてから二週間。

 年明け間近にようやく成功した黒い人形、それに喰った魂の一部を埋め込んだ。

 

「ただいま」

 

 炬燵で寛いでいると買出しに行っていた男が戻ってくる。アイは待ちわびたかのようにその男を出迎える。

 

「ジン、おかえり!!」

 

 アイは猫の餌をジンから奪うと外に出ていく。

 ジンを創り出してから数日、魂を埋め込んだ念能力は消えることなく生存している。

 

 姿も黒い人形ではなくジンそのものと言っていい。

 グリードアイランドで得た知識を使った黒い人形と魂の調和。これも一つの相互協力型(ジョイントタイプ)なのかもしれない。

 

 一つ違うとすれば死んだ魚のような目をしていることか。ジンはこちらの意思を汲み取るように状態を報告する。

 

「悪いとこはねェよ、普通に念能力も使えてる」

「そうですか」

 

 ヘイトはカゴの中にあったミカンをジンに渡す。

 互いに争った者ではあるが、今はジャポンの小さな一軒家で炬燵を囲っている。

 

「ジンさん、何かやりたいことありますか?」

「なにもねェよ」

 

 何故にジンの魂が選ばれたのか。それは単に黒い人形に耐えられたのがジンの魂だけだったのだ。

 

「そうですか」

 

 会話は変わらず反抗期の子供のよう。ジンが買ってきた新聞の一つ取り出し記事を読んでいく。

 

 “大富豪バッテラ氏、ついにグリードアイランドを攻略”

 

 グリードアイランドに長期滞在していたため、今は情報弱者となっている。

 

「ふーん、こんな島国でも記事はでるのか」

 

 一面にでかでかと書かれている記事の写真には知らない若い女性と並ぶバッテラ氏。他には踏破者であるミルキとビスケット=クルーガー。

 

「ぼったくり世界一のゲームなら当然か」

「否定はしねェよ。1本でも売れれば維持に必要な資金は得られる計算だったからな」

 

 ジンも新聞で表情を隠しながら情報集めに奔走している。

 情報弱者でいったらジンのほうが上だろう。何せ、数年間も愛憎の棺(アビスコフィン)の中に閉じ込められていたのだから。

 

「誰がクリアしたんだ?」

「プロハンターのビスケってやつとミルキだ。最後に強奪したらしくて、電脳サイトでめっちゃ叩かれてたな。まあ、書き込みの半分以上は俺だけど」

「……たしかビスケは心源流の使い手だったか。あいつらにしたら、ちょっとぬるかったかもな」

 

 静かなジャポンでのんびり過ごす。

 僅かに賑やかな正月休みは目的と仲間達のおかげだろう。残念なことがあるとすれば、四季ある風情も見納めになることか。

 

「ヘイト、聞いてもいいか?」

「どうぞ」

「お前に殺された記憶は残っている。オレは転生したのか?」

「転生とは違いますね。今は念獣、人だから念人になるのかな?」

 

 ジンにしてみれば理解のできない状況、理解する必要もないのだが。

 

「ヘイト、何しとるか!!」

 

 現れた訪問者にジンは驚きの表情を見せる。それは訪問者も同じで――。

 

会長(ジジイ)

「――おぬし生きとったのか!?」

「さあ、どうだろうな」

 

 ジンの目を見たネテロは状況を理解する。ネテロの表情から察するに見たくはなかった光景なのだろう。

 

「そんな顔すんなよ、会長(ジジイ)。残りの仲間があんただったとは、さすがに読めんかったわ」

「……話は後じゃな」

 

 鬼の形相をしたネテロが新聞を取り上げる。

 

「なにのんびりしとるか、はよ出発せいッ! 集合時間はとっくに過ぎとるぞ!!」

「集合時間?」

「ハンター試験はとうに始まっとるぞ!」

「え、ああ……ハンター試験288期の二次の試験官か」

 

 グリードアイランドを遊び過ぎたせいで失念していた。そんな焦った姿を目の輝きを取り戻したジンが見つめてくる。

 

「お前はハンターだったのか!?」

「そうですよ、去年なったばかりですけど」

「ハンター試験、懐かしいな。ヘイト、オレも会場に連れてってくれねェか?」

「いいですけど……試験内容を考えてなかったのでジンさんも一緒に考えてくださいよ」

「そんなもんはハンターの資質が分かりゃ何でもいいんだよ。適当で問題ねェよ」

 

 ネテロの険しい表情を尻目にジンと共にビーンズの元に飛ぶ。

 




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