旅は道連れ世は情け。   作:赤薔薇ミニネコ

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第三話 狩る者と騙される者

 アイが取り憑いた理由を考える時がある。

 念空間にいたということは、既に他の人間との接触があったはずなのだ。

 しかし、当の本人は接触した人間を覚えておらず、問に関しては同じ事しか言わない。

 

『欲望!』

 

 では、アイの言う欲望とは何なのか。

 未知の生物を見て無意識に欲してしまったのか。アイの調べていた暗黒大陸にその答えがあるのかもしれない――。

 

「狩る者と狩られる者、それが次の試験の内容だ」

 

 第四次試験。

 刑務所所長のリッポーは参加者を見渡すと試験会場のゼビル島を前に簡単な説明をする。

 

「そして、残るハンター試験は第四次試験と最終試験のみ」

 

 リッポーのその言葉に参加者達も表情を強張らせる。

 ハンター試験が終わるということはゾルディック家の依頼も終わりを迎える。

 

「長くても、あと2つか」

 

 叔母のキキョウなら簡単に言い値をくれるだろうが、こちらも経営者としてしっかりと精査した金額にしなければならない。

 請求をいくらにしようか考えていると名前を呼ばれる。

 

「君が一番だ。クジを引きたまえ」

「あ、はい」

 

 トリックタワーの攻略順による恩恵。

 一番手ということもあり周囲の視線を多く集める。敵は多い方が面白そうなので気合いを込めて叫んでみる。

 

「キルアは99、キルアは99、こい、俺の宿敵99ッ!!」

 

 祈ってもこないものはこない。標的の番号を確かめるも53番と記憶にない。

 

「キルアなら正当防衛で終わらせられたのに……」

 

 第四次試験は番号プレートの争奪戦。

 試験の合格には計六点分の番号プレートを必要とし、期間内は持ち点を守らなければならない。

 

「自点と標的の番号プレートで計6点か」

 

 となると、キルアの番号プレートに価値はない。

 ただ、対象外の番号プレートも1点という仕組みで、条件次第では交渉もありえる。

 

 会場のゼビル島までは船での移動。

 参加者は番号プレートを隠し互いを警戒し合っている。隠さない数名は余程の自信家か。

 船に乗船していた女性はゼビル島に到着すると試験の最終説明を行う。

 

「それでは、これより滞在期限はちょうど一週間です。その間に6点分の番号プレートを集めて、この場所に戻って来てください」

「え、期間は?」

「はい、一週間です」

 

 どうやら聞き間違えではないらしい。

 第三次試験の期間は三日、第四次試験に至っては一週間。最終試験は一ヶ月のサバイバルとか全然ありえる。

 もはや番号プレートよりも食料の争奪戦だろう。

 虫とか食べたらお腹を壊す自信がある。ジャポンでの甘えに一つの決心をする。

 

「さて」

 

 第四次試験の開始。

 トリックタワーを脱出した順番で受験者は下船となる。最初の参加者以降は二分毎に順次開始となる。

 

「まずは身を隠せる場所を探すか」

 

 下船してから数分。気になるのは振り切っても追ってくる謎の視線。

 開始直後からあるので参加者の視線ではない。恐らくは試験の監視員あたりだろう。

 監視する理由は分かるが、バレるような人材をわざわざ使う理由が不明である。

 

「もしかして、ボーナスプレートでもあるのか? まあ、無視でいいけど」

 

 いくつか試したい事があるので様子を見る。

 身を隠すのによさそうな洞窟を発見し、中に入ると準備を始める。

 

「試験開始から約一時間か。そろそろ全員が下船したはずだな」

 

 さすがに監視者も【絶】をしてまで洞窟には入ってこないだろう。事前に洞窟の地形くらいは把握しているはず。

 監視者の視線が無いのを確認してから目を漆黒に染める。

 

「あいあい」

『アイ、番号プレートには追跡用の発信機が仕込まれている。その発信機を壊してから、参加者全員の番号プレートをこの場所に集めてくれるか?』

「発信機と番号プレートね、あいあい!」

 

 目の前には発信機の破壊された番号プレートがバラバラと出現する。アイはその番号プレートを不慣れな手つきで数えていく。

 

「にじゅうに、にじゅうさん……にじゅうよん!」

『24枚、ちゃんと数えられたな』

 

 心の中からアイの成長をしっかりと感じ取る。

 数年前から熱心に100までの数字を教えた甲斐があった。風呂場教育の賜物である。

 

『アイ、それをリュックにしまってくれ』

「あいあい!」

 

 アイは指示通りに番号プレートをリュックに押し込んでいく。

 

『資格が欲しいキルアとギタラクルの二人は後で適当に渡せばいいだろ。アイ、とりあえず家に帰るか』

「あいあい、れっつごー!」

 

 ゼブル島からジャポンにある隠家に瞬間移動する。

 これで監視員が付いてくるなら、他の参加者を飛ばすかすればいい。

 

 

☆★☆★☆

 

 

 ギタラクルは番号プレートがあるはずの胸に手を当てる。

 

「何処で取られた……?」

 

 何時、記憶を辿るも答えは得られない。

 まだ試験が開始されてから一時間しか経っていない。他の視線はあったが接近を許した覚えもない。

 視界に入らず盗むなんて芸当はヒソカでも無理だ。

 

「初めから細工がされていた、と考えるのが普通か」

 

 ギタラクルは頭を切り替えると試験の問題点を考える。

 試験の期間は一週間。公平性を考えれば他の参加者も同じ状況なのだろう。

 

「番号プレート……失った標的を探すには時間がかかりすぎる」

 

 このような状況では見つけた者が隠したままにすることもある。そうした場合の一番の問題点。

 

 “番号プレートは人間と違って気配がない”

 

 脅しすら価値が無く、最悪の場合は正当な交渉も視野に入れなければならない。

 

「確認が先か、ここは慎重に動くべきだな」

 

 ギタラクルの予想通りなら、大自然の中でヒント無しに見つけるのは至難の業。

 試験官の言葉にヒントがないか、思い出しながら捜索を開始する。

 

「宝探し、面倒な試験だな」

 

 他の参加者も次第に状況を理解していく。誰しもが抱いていたやる気という感情は次第に焦りへと変化する。

 標的以外の価値のなかった番号プレートは宝のような価値に跳ね上がる。

 

「プレートを見つけなければ情報すら得られない。さすがに単独はきついか」

 

 ギタラクルはレーダーでヒソカの位置を確認し向かう。やはりヒソカの胸にも番号プレートはない。

 

「ヒソカ、プレートは見つかったか?」

「まったく、困ったものだね。これにはボクもお手上げだよ♠」

「ここは分かれて行動しよう。参加者の監視か捜索、どちらにする?」

「うーん、捜索は不向きだから監視にしておこうかな♠」

「それじゃ、三日後にまた連絡する」

 

 ヒソカとの約束の日。これまで数名の参加者と出会ったが特に進展はなかった。

 ギタラクルの違和感は心の中で大きくなっていた。試験官の言っていた“狩る者、狩られる者”とは何だったのか。

 番号プレートを見つけてからの争奪戦? 見つからなければ何の意味もない。明らかに試験の目的とずれている。

 

「この情況、念が使える者は既に使っているだろうな。まさか、それが目的か?」

 

 ギタラクルは念能力である【円】を使う程に追い詰められていた。

 しかし、その【円】も得意とはいえず範囲は狭い。三日目になっても番号プレートを1枚も見つけられていない。

 ただの運と呼べるこの試験で何が得られるというのか。この試験は不自然すぎる。通信機を使いヒソカに連絡をする。

 

「三日経ったけど、プレートを見つけた参加者はいるかい?」

『いや、今のところはいないね。それよりも……1人だけ見つけられない人物がいる♦』

「――ああ、そういうこと」

 

 身内だから平気と、勝手に思い込んでいた。これが戦場なら死と同義。

 ギタラクルは試験官の「一週間」という言葉を思い出す。注意すべきは試験官ではなく――。

 

『彼には驚かされてばかりだ♥』

「ヘイトが何かしたとなると……今までの苦労は無意味だね。きっと、これからも」

『つまらないなぁ、ちょっと遊んでくるよ。ヘイトから何かあったら、連絡よろしく♠』

 

 通信を切るとギタラクルは土に潜り睡眠の準備を始める。

 ゾルディック家でもミルキしか知らないヘイトの念能力。それが何にせよ、何も出来ずに試験開始の1時間で殺された事実は変わらない。

 

「親父には止められてたけど、ミルに聞いておくべきだったな」

 

 ヒソカも感情の整理くらいはしたいのだろう。ヘイトを知る者としては、待つ以外の道はないと悟る。

 

 

☆★☆★☆

 

 

 第四次試験終了まで残り三十分。

 ミルキに格闘ゲームで負け続けて数時間ぶりの一勝に思わずガッツポーズがでる。

 

「試験が終わったらそっちに行くから、キキョウさんによろしく言っといて」

『おい、勝ち逃げとかずるいぞ! もう一戦やっ――』

 

 ミルキとの通信チャットを終了する。軽くシャワーを浴びてから番号プレートの入ったリュックを背負う。

 まずはギタラクルとキルアに番号プレートを返さなければいけない。ゲームに熱中しすぎて二人を探している時間はない。

 

『アイ、キルアのとこまで飛ばしてくれ』

「あいあい、いてきまーす!」

 

 アイの能力によりキルアの目の前に瞬間移動する。

 突然の出来事にキルアは尻もちをつき、それをじっくりと見つめた後に仕事用のサングラスを取る。

 

「お、奇遇だなキルア。元気だったか?」

「毎回、ビックリさせるな! なんでアロハシャツなんだよ、お前……」

 

 和ませたつもりが辺りは殺伐としており緊張感に包まれている。キルアを中心に複数の参加者達が戦闘の構えをとっている。

 

「キルア、こいつらは誰だ?」

「まっ、ヘイト、待ってくれッ!!」

 

 本気で焦るキルアを見たのは何時ぶりだろうか。

 あと一歩でも踏み込んでいたら、周りの参加者達をボロ雑巾のように絞ってやったのに。

 

「誰も近づくな、こいつは俺の従兄だ」

 

 キルアの自称仲間はゴン、クラピカ、レオリオ、ハンゾー、ポドロというらしい。6人での共同戦線で最終日に他の参加者から番号プレートを奪う予定だったらしい。

 

「キルアの守備範囲は変わらず広大だな。ハゲと爺さんまで……ハーレムじゃん!」

「殺すぞ、てめーッ!」

「冗談はさて置き、キルアに番号プレートを渡しに来ただけだよ。他の5人も仲間なら返す。残り時間も少ないから、各自標的と番号を教えてくれ」

 

 リュックからジャラジャラと番号プレートを地面に広げる。それを見たキルアは驚きの声をあげる。

 

「お前が全部持ってたのかよ! 探してた俺達がバカみてーじゃん!」

「……いや、気付いたらリュックに全部入ってたんだよ。今度お前の大好きなお菓子買ってやるから許せよ、な? 金のない俺からの驕りはレアだからさ、よかったな!」

「ガキ扱いすんじゃねーよ!」

 

 キルアの頭を撫でていたら手ではじかれる。

 キルア以外のメンバーは納得していないようだが、時間もなかったためにしぶしぶと受け取る。

 

「他にも渡す人いるからまた後でな。わがままなキルアをよろしく頼むよ、イキりたい年頃だからさ」

 

 まかせてよ! と元気な声が森に響く。睨んでくるメンバーが多い中でゴンだけは手を振ってくれた。

 

「良い友達を見つけたようで何よりだ」

 

 再びアイと切り替わるとギタラクルの元に向かう。船前で待機していたギタラクルの近くにはヒソカもいた。

 

「ヘイト、ヒソカが拗ねて大変だったよ」

「あ、はい……プレートを渡しますので番号を教えてください」

「僕は301番と371番ね。ヒソカは44番と384番だったかな」

「ヒソカさん、44番は無いので他の3枚でどうぞ!」

 

 リュックから番号プレートを取り出すとヒソカは無言でそれを受け取る。それと同時に、アナウンスは流れ第四次試験は終了する。

 

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