旅は道連れ世は情け。   作:赤薔薇ミニネコ

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第四十六話 タイムリミット

 愛のある部屋(パンドラボックス)ではヘル=ゾルディックが対峙した生物についての話が進んでいた。

 

「対象の生物はキメラアントの女王蟻と特徴が一致します」

 

 ヘルの持つ膨大なデータとの照合。

 表情を曇らせたのはネテロで、暗黒大陸ならあり得る大きさと理解を示す。

 

「あやつが女王だとすれば厄介になるやもしれん。キメラアントは人間と同じ雑食性」

「……ってことは人間も餌の対象になるってことですよね?」

 

 ヘイトも未知の敵についての理解を深める。状況次第では逃げることも考えなければならない。

 ネテロが危惧したのはその生物が持つ特質である。

 

「――問題は食われた後じゃな。やつらは餌の特徴をもった子孫を産む」

「なるほど、それでキメラ=アント……カキン組にとっては辛いかも知れないですね」

 

 その話を黙って聞いていたミルキは驚きの表情をする。

 

「ヘイト、お前が他人の心配なんて珍しいな」

「ん、そうか? ヘルが襲われたように食物がなければ争いは起こるだろうからな」

 

 眉間に皺を寄せるミルキはヘイトの心情を考えるも、きっかけになるような出来事に心当たりはない。

 アイの成長と違和感と呼ぶにはあまりにも小さい変化。

 

「……まあ、そうか」

「――それに、カキン組に同期のハンター仲間が参加するみたいなんでな。上陸の場所次第では、ネテロさんの息子も被害にあう可能性があるわけでしょ?」

 

 ネテロは僅かに親の顔を見せるも、ビヨンドには暗黒大陸の功績があるため口出しするような事はしない。

 

「ビヨンドもあらゆる生物の対策は持っとるはず、心配はいらん。それよりも問題は女王蟻がヘルを狙ったことじゃな。……護衛の兵もいないとなると、巣を作り軍隊兵を産む可能性があるのォ」

「へー、巣ですか」

 

 ヘイトはアイの食べ残しの菓子に群がる蟻を思い出す。その全てが2mを超える蟻となれば想像するだけで気持ち悪い。

 それはネテロも同じで、その種がキメラアントだった場合には対策を視野に行動しなければならない。

 

「キメラアントは王を産むために軍隊を形成する。この大きさなら間違いなく巨大な蟻塚になるじゃろ、出口のゲートは埋もれてしまうかもしれんな。数は想像できんが、暗黒大陸での戦闘は覚悟せねばいかん」

「……巣からのスタートか、無多な戦闘は避けるべきですね」

 

 話し合いを終えた各々は残された時間で人間大陸でやり残したこと終わらせる。

 

「それじゃ、出発を早めますかね」

 

 ネテロはハンター協会へ、ミルキとヘルはゾルディック家に帰省し、ヘイトは流星街に向かう。

 

 

☆★☆★☆

 

 

 ネテロはハンター協会に足を踏み入れる。

 十二支んに“魂の力”を伝える、それがアイザック=ネテロが出来る最後の仕事である。

 

「元気にしとるかのォ?」

 

 暗黒大陸の対策で追われている十二支ん達の手が一斉に止まり視線がネテロに向けられる。

 そこには老いた会長時代の姿ではなく、全盛期に磨きをかけた半世紀前のアイザック=ネテロの姿があった。

 その姿を知らない十二支んには謎の筋肉爺くらいにしか映らない。

 

「関係者以外立ち入り禁止です、すぐに出ていきなさい!!」

 

 侵入に誰一人気付けない、この男は何者なのか。

 机の上にはハンター協会の機密情報、副会長のチードルは発言とは裏腹に焦りを感じていた。

 ただどこか懐かしさを感じる、それが十二支んの感じた第一印象だった。

 

 そんな中で一人だけ事態を冷静に把握している男がいた。

 

「――ヘイトは動くのか? アイザック=ネテロ」

 

 ジンが名を告げたのは事態を収めるための優しさであり、それを聞いた巳のゲルは信じられないような顔でネテロを見つめる。

 

「アイザ……えっ? どういうことよ、ジン!」

「十二支んとして、俺がやれるのもここまでってことだ」

 

 暗黒大陸の対策はチードルよりもジンが指揮をとっていた。

 風来坊のジンがここまで協力的だったのは、残された時間があまりにも無かったからだとチードルは気付く。

 

「彼と一緒に暗黒大陸に行くのね」

「ああ、俺はあいつの全てを本に纏める。――時間が許す限り、暗黒大陸のこともな」

 

 深刻そうな顔のジンとは別に、チードルは優しく微笑みを浮かべる。

 

「他にやり残したことはない?」

「――もし、ゴンという男が十二支んを頼ったら助けてやって欲しい。それくらいだな」

「ええ、分かったわ」

 

 チードルはネテロを見つめると声を荒げ問いただす。それを黙って見守るのは十二支ん。

 

「さて、あなたが前ネテロ会長だというのなら――」

 

 チードルは事を言う前に地に伏すことになる。

 ここに以前の慈悲深きアイザック=ネテロはいない。いるのは暗黒大陸の事だけを考える一人のトリプルハンター。

 

「判断が遅いのォ」

 

 重圧を感じるネテロの言霊。

 その禍々しいオーラはあの時と同じ。十二支んの脳裏に浮かぶのはハンター試験でヘイトが見せた異質なオーラである。

 

「お主らが目にしとるのは“死後の念”と呼ばれるもの、本当の名は“魂の力”という」

 

 ネテロが修得した黒いオーラは金剛術であり、ミルキと同じく一部ではあるが消えることなく体内を維持している。

 生死の狭間で思想が生み出した念の先にある力。その力の正体を聞いて十二支んは言葉を失う。

 驚くのも無理はなく、これまでに死後の念を扱う人間を誰も見たことがなかったのだ。

 

「この力は信念のみを考え、死の淵に立ち続けてようやく手に入る。少しでも迷いがあれば成功はせん、暗黒大陸を目指すなら覚悟は必要とだけ伝えに来た。後はおぬし等で考えればよい、これは決して命令ではない」

 

 その言葉は会長時代の命令のようである。

 暗黒大陸を目指す上での忠告を最後にネテロとジンは姿を消す。

 

 巳のゲルは心配そうにチードルを見つめる。

 

「逃げてもいいのよ? チードル、ここが私達のターニングポイントであることは間違いないわ」

「ゲル、その言葉を返すわ。今、脱退を願い出たいひとはテラデイン会長の元にいきなさい、責めはしないわ!」

 

 未知を前に引き返す者がいるはずはない。

 ここにいる全員が星を持つ一流のハンター、“死ぬのなら未知と共に”それがプロのハンターである。

 

 

 ☆★☆★☆

 

 

 ククルーマウンテンにあるミルキの実家。

 その帰りを待つように、ゾルディック家の屋敷には家族全員が揃っていた。

 一日一殺を座右の銘にしているゼノがいるように、家族全員が揃うのは年に数回もない。

 

「どうしたんだよ、親父」

 

 強制帰宅を強要されたキルアはシルバの雰囲気が違っていることに驚く。

 オーラを研ぎ澄ました殺し屋の顔に、キルアはこれから起こる事をなんとなくだが予想できた。

 

「お前も親になれば分かる」

 

 緊迫した空気の中でミルキとシルバが対峙をする。

 その後ろには、ゼノや一族の長老でもあるマハ=ゾルディックまでが待機している。

 ゾルディックに家族団欒なんてものはない。あったとしても仕事のやり取りくらいだろう。

 

 ミルキの横ではヘルが静かに立っている。シルバはそれらを後悔するような目で見つめる。

 

「ヘイトから話は聞いている。お前の成長とヘルの事もな」

「今さら俺を引き留める気か?」

「お前に家を継ぐ気があればそうするが……ミル、お前にはないだろ?」

「ないな、親父には悪いが才能を認めてくれたのはヘイトだけだったからな」

「返す言葉もない。これから行うのは親としてやれる最後の……いや、無能な親のわがままだ」

 

 家族の間での殺しは御法度のゾルディック。

 何故にマハまでもが参加しているのか。それはヘイトから聞かされていた言葉が原因である。

 

“ミルキはもっても2年くらいです”

 

 ヘイトからの突然の余命宣告。

 魂が見える者からの非情な言葉に疑いの心はない。短期間で驚異的な成長をした代償はシルバも薄々気付いていた。

 救う可能性があるとすれば、長寿食ニトロ米と呼ばれる暗黒大陸の奇跡。残りの時間で自生する場所にたどり着けるかも分からない。

 

「ミル、暗黒大陸に行くなら親の本気を超えてみろ。これは稽古ではなく、死闘だ」

 

 何もしなければミルキはここにいる誰よりも先に死を迎える。

 家族に知られることなく、暗黒大陸という見知らぬ地で数年後には死ぬのだ。

 ならば愛情をもって自分達の手で見守りながら殺す。

 シルバとて、息子が先に旅立つのは許せない。殺せないほどの実力が身についているなら諦めがつく。

 

 シルバはイルミに視線を向ける。

 

「イルミ、これが最後だぞ?」

 

 最後という言葉の重さ。この場に蔓延る殺気にキルアも状況を理解する。

 イルミは静かに首を横に振るとキキョウの側に向かって歩き出す。

 

「ボクじゃ、ミルには勝てないよ。相性も最悪だしね」

 

 イルミの代わりに立ち上がったのはカルトだった。

 

「イルミ兄さんの代わりにボクが戦います!!」

 

 キルアは弟のカルトが立ち上がったことに驚く。

 シルバの本気の殺気よりも、ミルキの横に立つヘルの存在に畏怖したからだ。

 

 ヘルはミルキの部屋で何度か見たことのある人形。

 ミルキの念能力なのは理解できるが、纏っている禍々しいオーラがヘイトと同じ不気味さを持っている。

 

「キル、お前はどうするんだ?」

 

 シルバからの感情を遮断した言葉にキルアは頷き考える。

 イルミと同じく相性は最悪であり、電撃耐性を持つ相手に電撃攻撃をしなければいけない。効果が出るかも分からない状況。

 

「だからこそ……か、ゴンならきっとそうしたろうしな」

 

 キルアは友達との誓いを思い出す。

 経験できるならしておくべきだろう。今後、そのような場面に出くわす可能性だってあるのだ。

 それに念能力者の集団戦闘は何よりも経験になる。ハンター試験で見たミュヘル達のように――。

 

「親父――」

 

 かつて、ブタ君と呼んでしまった兄に、謝罪の意味も込めてキルアは立ち上がるが……。

 

「オレ1人でやらせてくれないか?」

 

 キルアの周りを沈黙させる勝手な決闘の申し出。

 相性最悪の敵にどこまでできるのか。それは成長を見てもらいたい弟ながらの兄に対する憧れでもあった。

 それにキルアの念能力である【神速(カンムル)】から行う【疾風迅雷(しっぷうじんらい)】は味方のいる集団戦では使えない。

 無意識化で行う攻撃のため、他の念に反応してしまう可能性があるのだ。

 

 ミルキは覚悟を決めたキルアをじっと見つめる。

 

「キル、ヘイトが褒めてたぞ」

「あっそ、顔に落書きしたことは絶対に許さないって言っといてよ」

 

 キルアは戦闘モードになると、より鮮明にミルキの脅威を感じとる。

 ゼノよりも強い二人を同時に相手が出来るのか、ヘイトではなくミルキに褒めてもらえるのか。

 それが今のキルアの願いだった。

 

「ミルキ様、私との結婚報告ではないんですね……」

 

 1人だけ状況を理解していなかった戦闘人形のヘル。

 家族が集まる場所に2人で行くともなれば結婚報告しかない。そう、人工知能を持つヘルは予想していた。

 ヘイトの言葉のように知能が真実とは限らない。ヘルは落ち込む感情をここまで感じたのは初めてだった。

 

「アイ様がプリンを食べられた時の気持ちが分かった気がします。これが落ち込むという感情なのでしょうか……?」

 

 そんなヘルを見てミルキは小さく呟く。

 

「別に報告なんていらないだろ」

 

 ヘルの目は大きく見開き、体に宿る黒いオーラが力強く輝く。

 

「報告がいらないということは、既に両親も認める嫁なのだから、報告の必要はないということ!? 二次元のゴミ女ではなく、ミルキ様が三次元の私を認めた!! つまり、私が正妻ですね!!」

 

 地獄から天国、類似した言葉がヘルの思考を埋め尽くしていく。

 熱を帯びた頭部からは煙が出始め、今にもオーバーヒートしそうである。

 

「プロポーズ、『別に報告なんていらないだろ』の音声は深層メモリーに永久保存しました。私はヘル=ゾルディック、キルア様はかわいい義弟、シルバ義父様にキキョウ義母様、なんて美しい響きなのかしら!! 私が優勝、大勝利ですッ!!!」

 

 ポンコツになった戦闘人形ヘルは、今にも巨大な狙撃銃で念弾の祝砲を上げそうである。

 キルアは突然できた義理の姉にドン引きする。なにせ、元を正せば念能力でミルキが創り出したものでしかない。

 

 そして、始まる【神速(カンムル)】と【異世界の彼女(オレノヨメ)】の戦い。キルアは電気のオーラを纏う。

 

「兄貴、いくぜ! カンムル――ッ!!」

 

 キルアは神速を使ったはずなのに、全くその場を動くことが出来なかった。

 

雷掌(イズツシ)

電光石火(でんこうせっか)

疾風迅雷(しっぷうじんらい)

 

 瞬時に露呈したのは経験の差だった。

 どれが正しい選択なのか。キルアの迷う理由は、先程まで感じていた禍々しいオーラが一瞬にして消え去ったからだ。

 

「――隠殺か!?」

 

 キルアが警戒したのは硬と隠を合わせた高等技術。

 刹那の一撃、天空闘技場でヒソカの受けた攻撃が脳裏を過る。

 神速状態なら反応することはできる、そうは思うものの足が動くことはない。

 

 不気味なまでに動くことのないミルキとヘルの重圧。

 これは【疾風迅雷(しっぷうじんらい)】封じなのか。ヘイトに一度見せてしまった念能力、ミルキが知っていても不思議ではない。

 迷ったキルアは神速の特権である先手を使う。ミルキではなく、ヘルに向けて上空から別の念能力である【落雷(ナルカミ)】を放つ。

 

 機械に類似するヘルなら電撃耐性はない、しかし――。

 

「ナルカ――ッ!?」

 

 キルアの落雷を受けたのはヘルではなくミルキだった。

 一瞬の入れ替わり、雷と同じ速さで人間が動けるはずはない。そう思いながらも謎の痛みが全身を走りキルアの思考の邪魔をした。

 

「なんだよ、これ……」

 

 キルアの口から大量の血が溢れ出す。

 呼吸ができないことに気付くと胸にポッカリと空いた穴を見てしまう。

 ヘルから放たれた殺意の無い無音の念弾。それはまさに警戒していた隠殺であった。

 

 念攻撃が効かなければ終わり。

 キルアはそんな当たり前のことを死でもって理解する。勝てない相手には手を出すな、何度も言い聞かされたことである。

 

 実に単純な戦い。ミルキはキキョウに視線を向ける。

 

「キルが死ぬ前にヘイトを呼んでよ」

「アイちゃんがいるから平気よ。ミルは気にしないで続けなさい」

「あっそ、次は親父か?」

 

 キルアの目に映るのは弟に興味を示さないミルキの冷たい目だった――。

 

 

☆★☆★☆

 

 

 ヨルビアン大陸のバルサ諸島南端に流れ着いた蟻の女王。

 正式名称はキメラ=アントであり、摂食交配という特殊な生態を持ち、捕食した餌の特徴を吸収し次世代へ繁栄させる。

 第一級隔離指定種に認定されている昆虫であり、本来は10cm程度の大きさのはずだが、この蟻の女王は2mを超えていた。

 

 ミネテ連邦ネオグリーンライフ自治国、通称NGL。

 機械文明に頼らない自然の中で生活をする。キメラアントの女王は軍隊蟻を産みNGLに襲い掛かる。

 

“より良い餌を探せ!!”

 

 蟻の女王の一言でNGLは最初の犠牲国となってしまう。

 その“より良い餌”に選ばれたのは人間だった。生命エネルギーを強く宿す餌。極悪な環境で生きてきたキメラアントにとって、繁殖力、危険性のどれをとっても理想の餌であった。

 脆くて美味いその餌は、蟻の女王が王を産むまで捕食され続けることとなる。

 

「ザイカハル、工場が魔獣の群れに襲われてる!! すぐにジャイロに伝えろ!!」

 

 NGLの裏の顔である麻薬工場に襲い掛かるキメラアント。

 機械文明を捨てたはずのNGLにあるはずのない銃声が鳴り響く。連絡を受けたザイカハル達にも別部隊が襲い掛かる。

 

「やつら銃じゃ止まらねェ!! く……くるなあぁぁぁ!!」

 

 “ジャイロ、逃げろッ!!”

 

 薬莢が床に散らばる。硝煙の匂いに混じる血の匂い。ザイカハルの心の声は消えた。

 

「――何故、世界はオレを嫌う?」

 

 ジャイロは冷静だった。

 血は繋がらなくとも弟のような存在だった者の死。それを目にしても涙が流れることはない。

 

 これはNGLの王になった代償なのか。

 人間の生産能力、働くのに必要な食料というコスト。国家建国の全てを数字というものに置き換えてきた習慣のせいなのかもしれない。

 ザイカハルの死はジャイロの思考には被害としか認識されなかった。

 

「――何故、宇宙はオレに興味がない」

 

 宇宙の誰一人として存在を認める者がいない。子供の頃に宿した強い憎悪はジャイロの心を蝕むことになる。

 実の父を殺し、既に精神は人間ではなくなっていた。他人の心の声を聴きとれるようになったのもその頃からだった。

 

 【悪意の囁き】、それがジャイロの念能力である。

 言語の分かる生物の心を読み取る。その念能力1つで建国まで成し遂げたジャイロは念能力者で一番の成功者と言えるかもしれない。

 

「クソッ、ここで終わりか」

 

 ジャイロは【悪意の囁き】によりキメラアントの襲撃を事前に察知していた。だが、ジャイロが街から出ることはなかった。

 

「パリストンの野郎、悪意の囁きを知ってやがったな」

 

 ジャイロは己の失策を笑う。悪意をばら撒くはずが餌になる未来へと変わる。

 キメラアントは人間でいう軍隊そのもので、ジャイロは自分の国が終わっていくのを黙って見守る。

 心に湧き起こる怒りは目の前の生物ではなく、この世界を創った神に向けられていた。

 神の創った駒に悪意をばら撒く。目的だけでいえば達成はしていたのかもしれない。

 ジャイロにとって、目の前に迫る死は人間に戻る唯一のチャンスだったのかもしれない――。

 

 NGLが崩壊してから1か月後――、ジャイロは流星街に向けて歩き出す。

 餌として食われたはずのジャイロはキメラアントに転生していた。

 前世の記憶、これはキメラアントの特性なのだろうか。

 体内に流れるキメラアントの血。人間の頃にはない湧き上がる不思議な力を感じる。

 

「これでまた、悪意をばら撒ける」

 

 ジャイロの【悪意の囁き】によってキメラアントの部隊行動を全て読みとっていた。

 自分以外のキメラアントに念能力の深い知識がないのも救いだった。

 

「どいつもこいつも、女王、女王。うるせェんだよ!!」

 

 巣から抜け出したジャイロに【女王の忠義】という生態本能は存在しなかった。

 人間の頃に得た王という称号のせいか、ジャイロが精神支配されることはなかった。

 

「また1から出直しだな、優秀な駒を見つけなければ……」

 

 蟻となり、心体共に人間ではなくなったジャイロは再び悪意の王を目指す――。

 




読んでくれてありがとうございます。
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