ペインとドレッドとの戦闘の後、予定通り二人から金を巻き上げてご満悦の斯波は楓達のいる地底湖へ向かった。するとそこには青を基調とした装備を付けている理沙の姿があった。
「いよっす。お、装備変わってるってことは…」
「その通り!私もユニーク装備を手に入れました~!」
斯波の質問に対して理沙は胸を張って答える。
(薄いなぁ…)
「いまアンタ変なこと考えたでしょ」
お世辞にも豊かとはいえない理沙の胸部を見て哀れみを感じていると理沙から攻めるような視線を斯波は受ける。
「いや、特に?」
ここで正直に「まな板って思ってました」とでも言おうものならゲーム内でも現実世界でもフルボッコにされる未来が待っているので斯波はごまかす。
「これで3人ともユニーク装備だねー」
「そうだな。普通に考えたらおかしいが」
「なんか話題そらされた気がするけど…。確かに、全員がボスの初回単独討伐こなしてるって考えると恐ろしいわね」
そんな感じで話をしていると理沙が
「それなら…二階層に向かう?…どうする?多分あそこもユニークシリーズがあると思うけど…」
二階層に上がるための条件が『ダンジョン』の突破である。恐らく単騎撃破で装備が手に入るだろう。
「行くのは賛成、装備は却下。流石にユニーク独占したらブーイングか来る」
「うーん…私も別にいいかなぁ…今の装備気に入ったし」
「サリーがいいなら、私もいいや。大盾も普通のを手に入れたしね」
三人は二階層へと続くダンジョンへと向かった。移動方法は地底湖に行った時と同じだ。
「やっぱりはやーい!」
「ちょっ、揺れてるんだけど!もうちょっとしっかり持ってくれない!?」
「やめろしがみつくな顔を近づけるな!」
相変わらず斯波の精神をゴリゴリと削り取る移動方法であった。
「到着!」
「よーし、早速中に入ろう!」
目の前には石造りの遺跡の入口がある。
情報通りならここが二階層に繋がるダンジョンだ。
楓を先頭にして道を歩く。闇夜ノ写を構えながら歩いているだけで防御面は万全だ。それに、
「俺に合わせたら多分死ぬ」
【毒竜の迷宮】での苦い思い出によって早すぎる攻略は下手したら死につながることを知った斯波はゆっくりと攻略することにした。
そうして歩いている内にモンスターにも遭遇する。
前から現れたのは少し大きめの猪だった。
「【ウィンドカッター】!」
理沙が先手をとって魔法を撃ち込む。しかしそれはHPバーを二割程削っただけだった。
「むぅ…結構威力減ってるなぁ。これは私も状態異常攻撃スキルを上げないとなぁ」
そんなことを言っていると、体勢を立て直した猪が突進してきた。それは勢いよく楓にぶつかろうとして。
大盾に飲み込まれた。
「ダイナミック自殺ってこのことを言うんだなぁ…」
道幅が狭いため猪の
そうして分かれ道を右へ左へと進み少しずつ少しずつ奥地へと進んでいく。
「おっ!別のが来たよ!」
曲がり角を曲がると目の前に現れたのは熊である。
熊も同じ様に飛び込んでくるかと楓は盾を構える。が、しかし。
熊がその太い腕をブンッと振ると、爪の形の白いエフェクトが飛んでくる。
それは楓が構えていた大盾に飲み込まれて消えたが楓を驚かせるには十分だった。
「び、びっくりした」
「まさか、遠距離攻撃があるなんてね。しかも距離を取りながら道を塞いでるし」
猪とは違って行動パターンが複雑な熊は猪よりも上位のモンスターなのだろう。
「私がやっ「【100cmカノン砲】
次は自分が、と意気込む理沙を無視して斯波は砲弾を熊に打ち込んで粒子へと変える。
「あ、ごめん」
理沙のやる気に水を差すようなことをしてしまった斯波は素直に謝罪する。
「現実で覚えてなさい」
どうやら謝罪は通用しなかったようだ。
その後、【蜃気楼】の実験を挟んだりしてボス部屋に到達することが出来た。
そして大扉を開けて中に入る。
中は天井の高い広い部屋で奥行きがあり、一番奥には大樹がそびえ立っている。
三人が部屋に入って少しすると背後で扉が閉まる音がする。
そして、
大樹がメキメキと音を立てて変形し、巨大な鹿になってゆく。
樹木が変形して出来た角には青々とした木の葉が茂り、赤く煌めく林檎が実っている。
樹木で出来た体を一度震わせると大地を踏みしめ二人を睨みつける。
「来るよ!」
「了解!」
「おっけー!」
鹿の足元に緑色の魔法陣が現れ輝き出す。
戦闘開始だ。
鹿が地面を踏み鳴らすと魔法陣が輝き、巨大な蔓が次々に地面を突き破り現れ、楓達に襲いかかる。
「よっ!と…」
「ははっ!遅いね!」
「UREYYYYYそんなねむっちまいそうなのろい動きで このマルドクが倒せるかァー!?ちょいとおれにかなうとでも思ったか!マヌケがァ~~~~!」
楓の大盾は正面からその蔓を受け止めて飲み込む。斯波と理沙は自慢の素早さで、唸りを上げて襲いかかる蔓を難なく躱す。
メインの火力は楓の新月とマルドクの列車砲。
楓がカウンターとばかりに毒で作られた竜を放つ。
それは蔓を飲み込み溶かし消し飛ばして鹿へと迫る。
しかし、毒竜は鹿の目の前で緑に輝く障壁に阻まれて消失した。
「えっ!?」
「多分、あの魔法陣だよ!攻撃が通ってないよ!」
鹿は再度蔓を伸ばして攻撃してくる。それ自体は三人にとっては問題で無いのが救いといったところだろう。
「貧弱貧弱ゥ!【15㎜機関銃】
機関銃で蔓を打ち抜いて斯波は破壊する。
しばらくそうして耐えていた二人だったが埒があかないと思った理沙が提案する。
「ちょっと観察に回るから、楓は防御を受け持ってくれる?」
「分かった!…【挑発】!」
蔓の向かう先が明らかに楓に偏る。その隙に理沙が実験に回る。
魔法で攻撃を重ね障壁を何度も出させているうちに、理沙はついにあることに気付いた。
「角の部分には攻撃が通るよ!…あと、障壁はあの林檎が維持してるっぽい!」
理沙が木の葉の中で煌めく林檎を指差す。障壁発動時には林檎がより赤く輝いていた。
「俺に任せろ!【100cmカノン砲】
斯波が砲撃によって鹿の木の葉全てを吹き飛ばす。
「【ウィンドカッター】!」
今度は障壁に阻まれることなく鹿に攻撃が通った。赤いダメージエフェクトが散る。
「よしっ!通った!」
「大技でいくよ!」
大盾に浮かんでいた結晶がパリンパリンと音を立てて割れると共に新月から巨大な紫の魔法陣が展開される。それはしばらくして光を増し、三つ首の毒竜となって鹿に襲いかかった。
鹿の体が溶けて赤いエフェクトが絶え間なく溢れる。間違いなく致命的ダメージだった。
しかし、鹿の足元の緑の魔法陣が一際輝きその傷を癒す。HPバーを二割まで回復すると毒の状態異常を取り除いて魔法陣はその役目を終え、薄れて消えていった。
「さっきのってまだ打てる!?」
「いけるけど、ちょっと時間かかる!」
相談するのを鹿が待ってくれる筈も無く、行動パターンの変わった鹿が風の刃とさらに太くなった蔓で攻撃してくる、が
「とどめだ!【10cm電磁加速砲】
圧倒的な威力と速度の鉄球を列車砲が打ち出す。それは鹿の頭に大きな風穴を開けて突き抜けた。
二割残っていたHPバーをすべて消し飛ばされた鹿は光となって爆散した。
「ええええええええっ⁉」
「すさまじい火力ね。私のいる意味って一体…」
ここからが本番、というところであっさりとボスを倒してしまった斯波のせいで二人にとってはなんとなく腑に落ちないダンジョン攻略となってしまった。理沙に至っては自身の存在意義に疑問を持ち始めるレベルである。
とにもかくにも、二人は二階層進出の権利を手にしたのだった。
某吸血鬼みたいなテンションだなぁ…
シロップ枠の見た目は?
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