死にたくないので素早さに極振りします   作:叢雲草薙

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メンテナンス回です。


やめてくれ運営、その調整は俺に効く

「あうぅ…」

新しく二層の町を拠点として活動を始めた三人だったが、楓は暗い顔で唸っていた。

「うーん…私もまさかイベントの二週間前にメンテが来るとは思わなかった。しかも…」

そう、三人はメンテナンスが終わると早速ログインしたのだが……そのメンテナンス内容を見て愕然としたのだ。

主に楓と斯波が。

メンテナンス内容は一部スキルの弱体化とフィールドモンスターのAI強化。

対象となるスキルの名称はゲームの仕様上明かされてはいないため所持している者しか分からない。

そしてさらに三つ変わったことがある。

それは。

 

防御力貫通攻撃スキルの実装と、それに伴い痛みの軽減。

スキルは一つの武器につき三種から五種あり威力もそこそこ確保出来るものだ。

もう一つは追尾スキル。

視界内に捉えていれば一定時間対象のプレイヤーを追いかけ続ける効果を持っておりこちらも一つの武器につき三種から五種ある。

そして最後に詠唱スキルの追加と一部スキルの詠唱化である。詠唱スキルは非常に強力な効果を持ってる反面、詠唱してから発動しなければ効果が激減するという非常に扱いに難しいスキルである。

 

「うぐぐ…」

「まあ…目立ち過ぎればよくあることかな」

理沙がドンマイドンマイと肩を叩く。

「それに、あそこにもっとダメージ受けてるのがいるから」

そう言って指さした先には

「アハハハハハハ」

乾いた笑いを広場に響かせながら地面にうずくまる不審者(マルドク)がいた。

「あいつの方はダメージがもっと深刻みたいだから」

二人に関係する調整は主に二つ。

しかし、理沙が言うには遠回しなのも考えれば三つ全てとのことだ。

 

まずスキル修正では楓の【悪食】が修正された。

【悪食】の修正後の能力は一日十回の回数制限が付き、吸収出来るMPが二倍になるというものだ。

常時発動は変わらないため十回攻撃を大盾で受けた後は、闇夜ノ写は唯の大盾になってしまう。吸収できるMPが二倍になっているためある程度の魔力タンクにはなるだろうが弱体化しているのは間違いない。

マルドクは【列車砲(ジャガーノート)】と【正面衝突】が大幅に修正された。

列車砲(ジャガーノート)】は通常弾以外一日に発射できる弾数の制限がされ、100cm級に至ってはほとんど一桁である。通常弾のみ無制限に使用できるが爆発しない上ダメージも榴弾の半分以下であるためかなり深刻な調整だといえるだろう。その代わり消費MPが大幅に減らされたが【永久機関】が斯波にはあるためあんまり意味はなかった。

【正面衝突】の方は敵との接触時に若干減速するようになった。この効果による減速は一度立ち止まるまで再加速できないという地味ではあるがかなり大きな修正であり、この修正によって斯波はプレイヤーを延々と轢き殺し続けることが出来なくなってしまった。

 

次に、AI強化はモンスターが回り込んで攻撃してくるようになったり、場合により逃走する様になるというものだ。

これは楓の再発防止だろうと理沙は楓に話した。どういう意味か分からないという様子の楓に理沙が詳しく説明する。

「だって…AIを強化すればメイプルの根本となる【絶対防御】が白兎っていう抜け道を使って取れなくなるでしょ?AIを強化した白兎が一時間も突進してこないだろうし…運営もあの取り方は予想外だったんじゃない?」

このメンテナンスで楓というイレギュラーの発生は防止されたが、理沙曰く流石に楓の今の性能を完全に殺してしまうピンポイントなメンテナンスは出来ないだろうとのことだった。

「例えば…【絶対防御】を消去するとか。そう言うのは無いと思う。多分だけど…上位プレイヤーの持ってる様な強力なスキルは幾つか弱体化を受けてると思う。その一つがメイプルの【悪食】だったっていうわけ」

「んー…まあ仕方ないとも思うよ。【悪食】すっごい強かったもん。でも…あの修正がなぁ…」

楓の言いたいことを察した理沙が続きを話していく。

「これでメイプルもダメージを受ける様になっちゃったもんね……あの調整はメイプル対策だろうなぁ」

「うぐぐぐぐ…」

メイプルの耐久性が明らかに常軌を逸していたため運営側も苦肉の策としてこの修正を実装せざるを得なかったのだ。

「まあ、貫通攻撃はよくあるスキルだし、今までが少な過ぎたかな」

そんな会話をしているとショックから立ち直った斯波が

「すまん、メイプル。これもゲームバランスの為なんだ…」

突然楓に謝罪した。

「え?どうして?私なにもされてないよ?」

「あー、そういう事ね」

「サリーは分かったか。実はAIの修正やったの俺なんだわ」

「え!そうだったの!」

「正確には運営から依頼されたって形だがな。あ、基本的にチェックと提案ぐらいだから俺自身そんなに知らん」

斯波がNWOの行動AIの強化をしたという事に楓は驚いて一瞬固まっていたが持ち直すと

「大丈夫だよ。そんな気はしてたし」

と、謝罪を受け入れた。

 

「で、もう一つの詠唱化だけど、これに関してはどう?」

理沙の質問に対して楓は

「【毒竜(ヒドラ)】が詠唱スキルになったかなー」

と返す。次に斯波が

「俺は【列車砲(ジャガーノート)】がやられた」

と答える。

「へー。私は【大海】かな。これに関しては一つだけ文句があるわ」

「奇遇だな、俺もだ」

「え?何が?」

「「詠唱が痛すぎる!」」

悲痛な叫びをあげる二人に楓は困惑する。

「だ、大丈夫だよ!ここはゲームなんだし!」

そんな楓のフォローに対し斯波は

「確実に悪ふざけなんだよなぁ…」

と呟くだけだった。

 

その後、三人は第二回イベントに向けて新たな装備やスキルを目当てに、フィールドに飛び出していった。

楓と斯波の弱点をカバーして、第二回イベントでも好成績を残すために。

今出来ることをするのである。

 

 

 




割と斯波に深刻な弱体化がなされました。
いいよね、詠唱。

シロップ枠の見た目は?

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