死にたくないので素早さに極振りします   作:叢雲草薙

33 / 44
しばらくペット編でーす


この泉 深いっ!

「とりあえず、私たちは卵についてやっておくけど、そっちはどうするの?」

インベントリから卵を取り出したサリーがマルドクに質問する。

「とりあえず俺は組み立てるかな。どうやら組み立て終わると次の刊が届く仕様みたいだし」

「手伝わなくて大丈夫?」

心配したメイプルがマルドクに聞くが

「問題ない。というか外見とは裏腹に中身プラモデルだったし。第一巻に鑢とニッパーついてたから細かくやれるから安心だな」

ニッパーでランナーから取り外した部品を鑢で整えながらマルドクは答える。

「それよりも、卵の方に関して何か分かったことはあるか?」

マルドクの質問に対し二人は

「うーん、やっぱり暖めるんじゃない?」

「だとしたら人肌かなぁ」

そう言ってメイプルが鎧と大盾を外して、深緑の卵を優しく持ち上げて抱く。

 

「どんなのが生まれるんだろうな、俺のは最初から分かるから…」

誕生の時が待ち遠しくて仕方ないという風に笑顔で卵の表面を撫でる二人を見てマルドクは話しかける。

「大事なのは愛情だよ!愛情!」

「まぁ、確かに」

卵を撫でる二人と共にマルドクはこれからの探索の予定を立てる。

 

「まずはあの川に沿って探索しよう。それなら拠点にも戻ってこれるしね」

酷い濃霧で前もまともに見えない中で目印になるものが無ければすぐに迷ってしまうだろう。

ただでさえ奇襲の多いフィールドなのだから休息を取ることの出来る場所を失えば、いずれ集中力が切れて攻撃をまともに受けてしまうだろう。

メイプルにとってはどうということはない攻撃ではあるが、サリーとマルドクにとってはそうではないのだ。

HPの少ないサリーは一撃でやられてしまうかもしれない。

マルドクなら尚更そのリスクは高い。

回避にはかなりの集中力を使うためその疲労は計り知れない。

 

「おっけー!川沿いだね」

それから一時間程二人は卵を暖めたものの、結局今回は孵化することは無かった。

マルドクは最終巻が届いたものの非常に作成するのが難しい代物であったため一旦インベントリにしまって他の二人と一緒に探索に出かけることにした。

 

「よーし!メダルを探しに行こう!」

「「おー!」」

意気揚々と探索を開始した三人は川の上流を目指して歩いていく。

サリー曰く。

「こういうのは流れ始めてる場所に何かがあることが多いと思うんだ」

メイプルも確かにそうかもしれないと納得する。自分が何かを設置するなら何か意味のある場所にすると思ったからだ。

何かの始点や終点はそれにちょうどいい。

「流石に運営も変なところに置くわけ…ないよな」

若干不安を感じさせる発言をマルドクはしたが。

 

 

「何があるか楽しみだなぁ」

「絶対に何かある訳じゃないからそこだけ注意ね?あの運営だし」

「うん!分かった」

上流を目指しているため、次第にごつごつとした岩が増え始めて歩くことが困難な地形になっていく。

「で、結局こうなるんだな」

いつもの移動するときの体制になったマルドクがつぶやく。

「だってこっちの方が早いじゃない」

「安心して!敵が来たら教えるから!」

「そういう意味じゃないんだよなぁ…」

精神衛生上非常によろしくない移動方法に若干慣れ始めていることを恐ろしく思いつつサリーを抱え、メイプルを背負ったマルドクは上流に向かって移動し続ける。

 

そうやって進むこと30分。

拠点の位置が元々上流寄りだったこととマルドクのAGIの高さによって、三人の想定よりも早く辿り着くことが出来た。

そこにあったのは直径三メートル程の澄んだ泉だった。

綺麗な円形のそれは二人に神秘的な泉という第一印象を与えた。

濃霧も神秘的な雰囲気を作り出す一つの要素となっている。

 

「結構…深そう」

サリーが泉を覗き込んで呟く。

泉は大きさはそれほどでも無かったが深さはそこそこありそうに見える。

「潜ってみる?」

「やってみる価値はあると思う。【潜水】と【水泳】を持ってるプレイヤーは少ないと思うから…ここに来ても見逃してるかも」

「確かに、普通ならハズレと思うだろうな」

残念ながらメイプルとマルドクは潜ることが出来ないため、ここでサリーの帰りを待つことにした。

 

「いってらっしゃい!」

「うん、いってくる!」

サリーが泉に入り、一気に潜水していく。

光の届かない静かな水中を真下へ真下へ突き進んでいく。

 

しばらくしてサリーは銀色の杖をもって浮上してきた。

「結果は?」

「ハズレ。中にあったのは杖だけ」

「うー…そっかぁ……性能は?」

「ちょっと待ってね………【水魔法強化】と【火魔法強化】がついてるくらいかな」

「売却かな…誰も使えないし」

「まあ、そうだね。どうする?まだどこか探索する?」

「うーん…じゃあ拠点に戻りながらゆっくり近場を確認する感じで」

「オッケー、この規模の渓谷なら他にもギミックはありそうだな」

例の移動方法を帰りもしなくて済むことにマルドクは安堵する。

 

こうして、三人は注意深く拠点までの道程を行ったが結局何かを見つけることは出来なかった。

そして、そうこうしている内に拠点としていた裂け目の場所まで戻ってきたのであった。

 

「下流は明日にしておくか?流石にスキルでの疲労もあるだろうし」

「そうね、今日は卵の孵化に専念するわ」

「じゃあ俺も作成に専念するわ」

そうして、メイプル達は卵の孵化に、マルドクはB-2を完成させる工程に移るのであった。

 

「えっと、AIは学習型にして、ある程度スキルの知識もインプットしておこう…」

現在斯波はイァゴスティーニの最終巻にあったコアの作成をしていた。

「まさか行動AIまで弄れるとは…」

本来なら一緒についてきたテンプレートに少しだけ情報を追加するだけだったのだがこれを見た斯波は

「もう少し改造できるな…」

と判断し、爆撃機の魔改造を始めたのである。

「あとはこのシステムをインプットしてっと…よし、完成!」

他の二人の卵が割れ始めたタイミングで斯波の爆撃機も起動し始めた。

 

 

 

 

 




爆撃機は幅30cmぐらいです

マルドクの武器変形先は?

  • 大鎌
  • 大鋏
  • 大剣
  • アンカー
  • 斬馬刀

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。