「おー!」
「生まれたねー!」
先ほどまで二人が嬉しそうに笑う。
深緑の卵から生まれてきたのは卵より少し小さいくらいのサイズの亀だった。
卵と同じ深緑の体をしていて動きはゆっくりとしている。
紫の卵から生まれてきたのは雪のような白の体毛を持つ狐だった。
狐は体の感覚を確かめるように数回伸びをすると、紫色の炎をふわりと宙に浮かべて自分の魔法を眺め始めた。
「おおー…卵から狐かぁ……予想外だった」
「モンスターだからその辺は関係ないのかもね」
二人が話していると亀はメイプルに、狐はサリーに近づいていく。
二人が恐る恐るモンスターを撫でてみると二匹は気持ちよさそうに目を細めた。
「そっちはどう?」
完成したと言っていたマルドクの爆撃機が気になってサリーは聞く。
「良好良好。問題なく起動したし問題なく動いてる」
そう言ってマルドクが指した先には
『(`・ω・́)ゝ』
と出ているスクリーンを背負った爆撃機がホバリングしていた。
「中々個性的ね…」
「アカデミー時代の血が騒いでな…」
若干目をそらしてマルドクは答える。
そんな会話をしていると卵と中身がなくなったマガジンが薄く輝き始めた。
その輝きは次第に強くなり、二つの卵はそれぞれ紫の指輪と緑の指輪に、マガジンはレンズのついたインカムへと変わった。
それぞれ手を伸ばしてそれらを拾う。
「アイテム名は……【絆の架け橋】。これを装備することで一部のモンスターとの共闘を可能にする…だって!…これはもう外せないかなぁ」
「こっちは【アドミラルコール】。視界の共有と命令したりできるらしい。こっちも必須だな」
お互いに入手したアイテムの最も重要な能力だけ説明して詳細を調べる。
【アドミラルコール】
装備している間、一部モンスターとの共闘が可能。
視界の共有やマーカーのセットができる。
共闘可能モンスターは一体。
モンスターは死亡時にドロップし、一日間のみ呼び出すことが出来ない。
ドロップしたモンスターはこのアイテムを持ったプレイヤーのみ拾える。
死亡時に消滅しないことにマルドクは安堵する。
ドロップするという事は2時間放置したら消えるがそれほど長く放置することはないため安心である。
「装備品枠は全然空いてるからな、早速つけるか」
インカムを左側に付けると視界に様々な情報が追加される。
爆撃機周辺のミニマップが表示されていることから探索も容易にこなせるだろう。
「よろしくな」
『ヨロ(`・ω・´)スク!』
プログラミングしたときに会話できるようにしたためコミュニケーションもとれる様にしている。ボイスではなく文字としてだが。
「とりあえずステータス確認しないと…」
自身のステータス表示の下に新しく表示されたもう一つのステータスをマルドクは確認する。
ノーネーム
Lv1
HP 20/20
MP 75/75
【STR 70】
【VIT 50】
【AGI 200】
【DEX 0】
【INT 0】
スキル
【爆撃】【探知無効】
「何これ…」
非常に極端なステータス構成にマルドクは驚く。
HPに至ってはプレイヤーの初期値を下回っている。
「ノーネームって事は名前を設定するのか…」
他の二人のモンスターを同じ様で慎重に名前を考える。
考え込んでいる間爆撃機が狐や亀を載せて飛んだりして遊んでいた
ちなみに爆撃機のスクリーンには
『⊂二二二( ^ω^)二⊃』
と出ていたらしい。
「よーし決めた」
「うん、私も!」
「俺も」
三人は名前を思いつくとそれぞれのモンスターの元へ近づく。
それぞれモンスター達に目線を合わせる。
「亀さんの名前はシロップ!むふふ…私と合わせてメイプルシロップだよ!」
意味もなく得意げになるメイプルだった。
亀は名前が気に入ったのかその体をまた擦り寄せてくる。
一人と一匹が楽しそうに戯れていた。
「じゃあ…
サリーが狐に尋ねるように言う。
狐は満足しているようで、ぴょんと跳び上がるとサリーの首元に巻きつくようにしがみついた。
サリーの首元はマフラーと狐でもこもこである。
「ゲイルだ。最強と呼ばれた戦闘機の名前をリスペクトして付けてみた。どうかな?」
『(*´ω`)b ok☆』
どうやらこちらも納得してくれたようだ。スクリーンに映る顔文字から喜んでいることが分かる。
和やかな雰囲気が流れていた中。
メイプルが急に叫んだ。
その目の前にはステータスの表示されている青い画面が浮かんでいる。
「あ、あれ!?も、もしかして…」
「ん?どうかした?」
サリーとマルドクが不思議に思って近づき、画面を覗き込む。
「えっ!?あっ、み、見ないで!」
「あ、そういう事ね」
二人が画面を見れたのはほんの五秒程だったが、メイプルの考えていることは理解できた。
メイプルが開いていたのはシロップのステータスで、特にその一点を凝視していたため、観察眼の鋭いサリーはメイプルの見られたくなかったものが分かった。
マルドクもなんとなくメイプルの反応で何を気にしているかなんとなくわかった。
「メイプル…亀よりもAGIが低いだなんて」
「うぐぅっ!!」
シロップは【AGI 15】メイプルは【AGI 0】である。
「亀とメイプル…」
「うさぎとかめみたいに言うなぁ!競争したら流石に勝てるよ!足の長さが違うもん!」
「じゃあ…やってみる?」
「えっ…………ち、ちょっと遠慮しておこうかなぁ〜。あははは……」
もし負けるようなことがあれば立ち直れないかもしれないのだ。
そんなことになれば防御極振りを捨てて【AGI】にステータスを振ってしまう。
メイプルはそんな気がしていた。
わざわざそんなことをする必要はないだろうと考えたのだ。
たたの逃げでしかないといえばそれまでである。
「ステータスは、育ての親にある程度似るのかな?メイプルとシロップは両方防御特化だし朧は敏捷が高いし」
「ゲイルのステータス見てみるか?」
「どれどれ…、うっわ何この極端な構成」
「紙どころか豆腐だぞ…それも絹レベル」
「私が盾で攻撃しただけでも死にそうだね…」
そんなメイプルのつぶやきに反応したのか爆撃機のスクリーンに
『Σ(゚口゚;)//』
と表示された。
「しないよ!」
一瞬で距離を離されたメイプルが抗議する。
「ステータスを見た感じ装備はつけられないけど…レベルは上げられそうかな?」
「そりゃ装備品付けたら悲惨なことになるぞ…」
「レベルを上げればステータスポイントが貰えるのかな?それとも、勝手にステータスが伸びるのかな?」
その辺りの情報は指輪の説明に載っていなかったため分からないのだ。
「とりあえずレベルを上げてみる?」
「俺は問題ないが」
「うーん……やられちゃったら嫌だし…」
サリーが首元から頭の上に移動した狐を触りながら言う。
「じゃあ私がモンスターを捕獲してくるっていうのはどう?」
「名案…かな?しばらくはそれでレベルを上げてみよう」
「【ベノムカプセル】で捕獲するなよー!」
『(。・ω・)ノ゙ 』
二人と一機に見送られたメイプルはシロップに待っててねと言って、頭を撫でてやると裂け目から出てモンスターの捕獲に向かった。
それから十分。
メイプルが両手に蝙蝠を持って戻ってきた。
麻痺しているのだろう、蝙蝠は身動きが取れないようだった。
メイプルはそれを地面に置く。
「えっと……シロップ!【喰らいつき】!」
「朧!【狐火】!」
「ゲイル!【爆撃】!」
シロップが蝙蝠の体を喰いちぎり、朧が紫色の炎で蝙蝠を焼き、爆撃機による爆弾の投下によって蝙蝠が吹き飛ぶ。
赤いエフェクトが裂け目の中を照らし、蝙蝠が光となって消えていった。
「あー…レベル上がってない」
「こっちもそう」
「同じく」
「多分…この子達はかなり強いモンスターの子どもなんだよ。だから必要経験値も多いんじゃないかな?」
「確かに、あの爆撃機の子供と考えたら…」
蝙蝠を倒せば、レベル1のプレイヤーなら確実にレベルが上がっているだろう。
「もっと必要かな?」
「お願いしていい?私は捕らえるスキルが無いから……」
「俺も付いていく」
「おっけー、適材適所ってやつだね!でも、私がいないうちに何かあった時はシロップを頼んだよ?」
「ゲイル、留守番頼むぞ」
『(*▼▼)ゞ』
「きっちり守り抜くよ!」
サリーの返事を聞いて、二人は再び外へと向かった。
二人が帰ってきたのは二十分後。
合計12匹の蝙蝠を抱えるように持って帰ってきた。
「なんて言うか、親鳥の気分」
「やってることは親鳥と変わらないしね」
「まぁペンギンとかと違って自分でやってるから…」
ドサドサと蝙蝠を地面に落とす。
それぞれ四匹ずつ倒させると三匹ともレベルが2に上がった。
ゲイル
Lv2
HP 30/30
MP 90/90
【STR 75】
【VIT 60】
【AGI 250】
【DEX 0】
【INT 0】
スキル
【爆撃】【探知無効】【体当たり】
「ステータスは勝手に上がるみたい」
「そうみたいだね。っていうか、伸び幅凄いね」
「50近く上がってるぞ…」
将来有望な二匹と一機の為にその後も二人が狩りに出ること数回。
しかし、近場にモンスターがあまりいなかったためにレベルは上がらなかった。
本当は0関係にしようかと思ったんですけど「疾風」を見つけてゲイルにしました。
結構お茶目な爆撃機です
マルドクの武器変形先は?
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大鎌
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大鋏
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大剣
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アンカー
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斬馬刀