死にたくないので素早さに極振りします   作:叢雲草薙

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下流探索、どうするかすごい悩みました…
エヴァンゲリオン見て閃く…


最大の敵は味方だった

結局三人は三日目を卵の孵化と二匹+一機との戯れで過ごしていた。

時間は夜の十時。もう一度探索に出るのは億劫な時間帯である。

 

「あー…どうするー……探索行くー?」

「今日はもういいかな……」

「探知の性能落ちてるからやめとく」

「私もそんな気分…」

 

三人はそれぞれのパートナーと触れ合いながら明日の予定を決めていく。

 

「明日は下流を探索して、降りてきた方と逆側に上がろう」

「そうだね……ん?上がる!?」

「あ、そういえば…」

「どうやって上がるんだろう…」

完全に後のことを考えていなかったせいでこの渓谷から脱出する手段がない事に今更気づく。

 

「ど、どどどどうしよう!?」

「…………どうしよう?」

メイプルがサリーに答えを求めるが、サリーもこれといった解決策が見つからなかった。

「とりあえず下流目指したら何かヒントがあると思うぞ。流石に運営も詰みは無いと思うし」

予想外のトラブルによって探索時間が大幅に伸びたことにメイプルは肩を落とす。

「まぁ、見つければいいから、安心して」

「とりあえず明日は早めに出発だな」

「四日目の内に上に出たいからね」

出発時間を早朝四時に決めて三人はローテーションを組んで休むことにした。

 

「おはよう」

「おはよう」

「グッドモーニング」

挨拶を交わして三人が探索に向かう。

イベントも四日目に入り、後半戦だ。

メダルを手に入れたプレイヤーも増えてきていることだろう。

奪い取り、奪い取られる戦いがあちこちで起こっているのだ。

メイプルやマルドクのような前回イベントで入賞したプレイヤーにとっては到底無視できない話だ。

戦闘になる覚悟を常にしておかなければならない。

 

「何かあった?」

「いや、今のところ何も」

「レーダーにも反応なし」

注意深く辺りを観察するもダンジョンらしきものも無く、魔法陣も見当たらない。

ゲイルのレーダーに探知されないなら本当に何もないのだろう。

そのまま下流へと向かうこと二時間半。

 

道中で数回の戦闘を挟み、モンスター達のレベルが1上がって興味深いスキルを覚えた。

スキル名は【休眠】と【覚醒】。

【休眠】は飼い主の指令で指輪の中で眠って安全に体力を回復させるスキル。

【覚醒】は飼い主の指令に応じて指輪から出てくるというスキルだ。

現在は二匹は指輪の中で眠っている。

ゲイルは探索目的で上空からマルドクたちを先導している。

霧が深くなり、見失ってしまいそうだが【アドミラルコール】のミニマップがあるため問題ない。

 

そうして、歩くことさらに三十分。

ついに川の終点に辿り着いた。

ここに辿り着く前から薄々感じていたことはあったが、ここにきてそれが確信に変わる。

 

「ここが霧の発生源だね」

「うん、間違いない」

「半径1m近くでも怪しいぞ…」

濃くなった濃霧は隣にいるメイプル達すら視認しづらくさせていた。

お互い見失わないように注意して移動していると、

 

ブワッと風が吹いて霧が吹き飛ばされていき目の前が露わになる。

そこには上流同様泉があり、その中心に一つの壺があった。

壺からは白い霧が休むことなく吹き出している。壺は泉の水を吸引して霧を出しているようだった。

 

「確実にギミックの予感…」

「今のうちにやっておく?」

「うーん、何かトラップがあるかもだしおとなしくしたがった方がいいかも…」

「了解。とりあえずあの壺を調べてみるか」

「それしかなさそうね…」

若干苦い表情をした二人はメイプルと一緒に泉に足を突っ込んだ。

すると、狙い澄ましたように風が止んで濃霧が一瞬にして辺りを覆い尽くす。

 

「チッ!やっぱりトラップか!おい!誰かいるか!?」

急に二人の姿が見えなくなったマルドクは声を上げる。しかし、反応は無かった。

「何かが起きている…」

嫌な予感がして周辺を警戒していると…

 

「うわっ!?くっ!ああっ!」

「うっ!うぁぁぁ!?」

サリー達の声が聞こえる。

金属同士がぶつかる音からどうやら戦闘中らしく、苦戦している様子が分かる。

「どっちだ?…」

ふと、嫌な可能性が頭をよぎるが声のもとへ行かない限りはどうしようもないため現れたのは真っ黒な穴に飛び込む。

 

視界に飛び込んできたのは体から赤いエフェクトを散らすメイプルとサリーの姿。

そして、

 

深紅の全身鎧に身を包み、赤い槍を構えた騎士だった。

 

「チッ!よりによって最悪の予想が的中しやがった!」

「「マルドク!」」

マルドクの姿に気が付いた二人は彼に寄りかかる。

「にしてもあの騎士も相当な化け物性能みたいだな…」

メイプルの圧倒的な防御力を超える火力とサリーの機動力を超える精密さは爆撃機に匹敵するだろう。

 

「とりあえず援護するから二人はそのまま前線で陽動を頼む!」

「「了解!」」

マルドクの声に応じて二人は騎士のもとへと向かっていく。紅い騎士と戦闘を繰り広げる二人を確認すると彼は詠唱をする。

 

「すべてを粉砕する破壊の化身 古き世界を駆け 我に刃向かうすべてを蹂躙し この世界を焦土へと変えん!【列車砲(ジャガーノート)】」

長文詠唱によって強化された列車砲が出現する。そのことを確認したマルドクは自身の持つ切り札のうち一つを切る。

 

「大地を焦土へ!【100cmロケット弾】発射(ファイア)!」

本来パーティーでは使用しないはずの切り札を。

 

列車砲の巨大な方針から筒のような物体が発射される。

それは過去に多くのプレイヤーを葬った一発。

ペインやドレッドですら容赦なくキルする強力な一発。

 

「生憎、俺は騙せないぞ偽物」

 

目の前で爆発が起こる。深紅の騎士のHPバーは一気に黒く染まり、爆発に巻き込まれた二人も消える。

 

「ゲイル、【爆撃】」

突然、マルドクが爆発した箇所とは全く別の方向に爆撃する。すると、

 

「あはっ。あはは、あはははははははっ!」

「ひひっ。ひひひひひひ!!」

狂った笑い声を上げる二人がそこにいた。

「残念ながら誤魔化せんよ、ゲイルがいる限り」

『o(`・ω´・+o) 』

 

そう、

最初からマルドクは二人が偽物であることに気付いていた。

黒い穴に飛び込んだ時にミニマップを彼は確認したのだがそこに映ったのは

 

()3体

 

見た目は誤魔化せてもマップは正直であった。

尤も、【蜃気楼】がマップすら誤魔化すのは少し予想外ではあったが。

 

「さーて、いっちょやりますかね」

 

異常な強さを誇るパーティーメンバーの姿を模した敵とマルドクは戦闘を始めるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




ミニマップSUGEE

マルドクの武器変形先は?

  • 大鎌
  • 大鋏
  • 大剣
  • アンカー
  • 斬馬刀

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