追放されし者たちの話 作:J坊
「よく来たな勇者よ……決着の時は来た……!」
「あぁ……すべて終わりにしよう……!」
ゴーレムやスケルトンなど、数多の魔物を退けて辿り着いた魔王城の最奥にたどり着いた勇者の目の前には全身を漆黒の鎧に身を包んだ魔王の姿がいた。
周囲には誰もいない。側近の四天王の姿すらなかった。
「罠か?」と一瞬思うも、気配を感じない。
「配下の者はいない。私一人だ……」
「どういうことだ……?」
「貴様程度、私一人で十分だと言うことだ……‼」
勇者の疑問に答えると同時に魔王は魔剣を抜き、勇者に斬りかかる。
勇者も聖剣を抜くと、魔王に斬りかかった。
死闘は長時間続いた。魔力も尽き、互いの剣が折れてもなお、互いに戦うことを止めなかった。だが、決着は意外な形で着いた。
「!? な、お前は……!?」
「……どうやらバレてしまったようですね」
不意に兜が外れ、魔王の正体が明らかになる。
いや、正確には魔王ではない。その顔に見覚えがあった。
旅の中、何度も刃を交えた四天王の少女だった。
「なぜ、お前が!? 魔王はどうした……!?」
「……今は私が魔王です。先代の魔王は……我々が滅ぼしました」
最早抵抗する気力もなくなった魔王だった少女は経緯を語る。
魔王の領地は度重なる戦争で、疲弊しきっていた。これ以上、戦争が長引けば国は衰退し、民は苦しむことになる。
そう思い、彼女は内政に力を注ぐように魔王に進言したのだが……
「……あの愚王は『民などほっておけ』と、『人類を滅ぼすまで戦争は止めん』と抜かしたんですよ」
説得は続けたが、聞き入れず、逆に不興を買った少女から四天王の称号を剥奪。
その上、幽閉し、拷問にかけていたらしい。
しかし、彼女を助けたのは同僚の四天王たちだった。
彼女の国を思う考えに共感した彼らは魔王に反旗を翻した。だが……
「みんな……死んでしまい……私だけが残った……」
魔王自身は大したことはなかった。だが、魔王に与する兵たちの数は多く、一人、また一人と討ち取られていった。
だがそれでも奮闘し、最後の一人が魔王と刺し違え、自分だけが残ったらしい。
仲間の死を思い返し、嗚咽を堪えながら語る少女に勇者は何も言えなくなった。
「その後……私は、王国に和平の書状を送りました……けど……」
「あの国王はそれを受け入れなかったんだね……」
当然だ。
勇者の身内を人質にとるような王だ。長年の宿敵と和平を結ぶなどありえない。
ひょっとしたら、自身を再度魔王討伐に向かわせたのもそれが関係しているのだろう。
「ですので私は、私が出来ることを行いました……民を別の大陸へと逃がし、魔王となった私が討たれることですべてを終わらせようと……」
「……城内の魔物が人工的なものだったのはそう言うことか?」
「えぇ……そうです……そうすることが残った私の責務だから……」
これで話は終わりだと、少女は言い、トドメを刺すように促す。
だが、勇者はそれを拒否した。
「……魔王を倒し、母親を助けるのが僕の願いだ。だが、魔王はキミが倒したんだろう? なら、僕の役目は終わった……それにキミには残った民を率いなければならないんじゃないか?」
「……それは」
王を失い、指導者のいない魔族たち。
彼らをまとめ、率いる者が必要だろう。
「……だから約束してくれ、もう人間を脅かさないと。そうすれば、僕は真実を明かさない。もう、これ以上、戦争に振り回されるのは、御免だから……」
「……分かりました。そうおっしゃるなら」
思考の末、少女は提案を受け入れることにした。
だが、その瞬間――
「「!?」」
魔王城の至るところで爆発が起きた。
互いに支えあうようにして、なんとか城から脱出すると、周囲は王国の兵たちに囲まれていた。
そして、その中央には国王が下卑た笑みを浮かべ、こちらを見下ろしていた。
「ふん……勇者め、生きておったか。だが、貴様を始末すればワシの脅威となる者は全ていなくなる!」
――どうやら、既に真相を知っていたようだ。
迫る兵士をなんとか倒し、逃げる二人。
だが、体力も限界に近く、たちまち二人は囲まれてしまう。
「くっ……もう、戦う必要はないでしょう!? なんで、こんなことを!」
「知ったことを、魔王を討った勇者ともなればワシに匹敵する名声を手に入れることが出来る。そんなものが出てきたら邪魔なのでな。安心せい。貴様は魔王と相打ちになったと民にはいっておくからのぉ」
「そんな……」
「あとは大陸に逃げた魔族どもを滅ぼし、大陸を制圧すればワシは歴史に名を遺す、英雄となる! あぁそれと、貴様の母親は適当に性奴隷にでもしておくから、安心しろ。がっはっはっは!」
ゲラゲラ笑う国王を憎悪の籠めて睨みつける。
しかし、多勢に無勢。圧倒的な物量差に勝てるはずがない。
そうしているうちに、魔導士部隊が攻撃を開始。
雨あられと魔法が降り注ぐ。
「ここまでか――‼」
せめて、この少女だけは助けようと、わずかばかりの防御魔法を唱え、自分は盾になるべく少女を庇う。
その時だった。
「《
突如、無数ともいえる魔法が一瞬にしてかき消された。
「な、何事だ!?」
突然の異常事態に困惑する王国軍。
すると勇者の前に五つの人影が現れた。
「な、なに奴!?」
「キミたちは……!?」
そう、現れたのは――
「酵母の守護者! パン屋レッド‼」
「鉢植えの守護者! 花屋ピンク‼」
「学童の守護者! 文具屋ブルー‼」
「ノスタルジアの守護者! 駄菓子ブラック‼」
「安眠の守護者! 宿屋グリーン‼」
「「「「「全員合わせて! 職業戦隊・ジョブレンジャー‼」」」」」
ドゴォォォォォン! と予算も吹っ飛びそうな爆発と共に現れたカラフルな一団は、案の定勇者パーティーであった。
「……誰?」
「……馬鹿です」
少女に尋ねられた勇者は、そうとしか言えなかった。