追放されし者たちの話   作:J坊

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ゾンビに噛まれた場合

 西暦20××年。世界は終末を迎えようとしていた。

 自然発生か、軍事用に開発したものが流出したのか、それとも宇宙から飛来したのか。

 突如発生したゾンビウィルスが世界中に蔓延。

 感染した人間は皆、例外なくゾンビ化。パンデミックは止まることなく、人類は蹂躙されるしかなかった。

 そして、日本でも……

 

『えー、世界的なパンデミックの対策のため、今年度よりゾンビ税の導入を……』

『総理! 国会にゾンビがなだれ込みました‼』

『税ぃぃぃぃぃ‼』

 

 ……ってな感じに、物理的に解散させられてしまった。日本の秩序は崩壊したのであった。

 

 

 

 そして、とある高校。

 平穏な日常を謳歌していた若者たちの学び舎にも、ゾンビの魔の手が迫っていた。

 

「うわぁぁぁぁぁ! ゾンビだぁぁぁぁぁ‼」

「噛まれるな! 噛まれるとゾンビになるぞ‼」

「いやぁぁぁぁぁ‼」

 

 ゾンビの大群にバリケードを突破され、校内はたちまち大パニックに陥る。

 そんな中、少しでも被害を抑えようと2年B組の生徒、赤川勝(あかがわまさる)は、体育館まで生き残りの級友たちを先導していたのだが……

 

「きゃあ!」

「! 委員長あぶない‼」

 

 突如、死角からゾンビが現れ、クラス委員長の青木百花(あおきももか)ら数名の生徒に襲い掛かった。

 咄嗟に庇うも、ゾンビの力は凄まじく、いくつか手傷を負ってしまう。

 それでも、なんとか振り払い、避難先である体育館に辿り着いたのだが……

 

「おい、お前、その傷……‼」

「え? あ……‼」

 

 友人に指摘され、腕を見ると、噛まれたような傷がついていた。

 どうやら、先ほどのゾンビとの格闘戦でついてしまったようだ。

 当然そうなれば……

 

「おい! こいつ! 噛まれてるぞ‼」

「こ、殺して! 早く、殺して‼」

 

 館内はたちまちパニックに陥った。

 みんな殺気立ち、中には武器を向ける者もいる。

 そんな中、一人の生徒が間に割って入った。

 生徒会長の白銀駿哉(しろがねしゅんや)である。

 

「すまないが、赤川君。キミをここに置いておくわけにはいかない。申し訳ないが出て行ってもらえないだろうか?」

「そ、そんな!」

「本当にすまないと思っている。だが、これもみんなを護る為だ。理解してくれ」

 

 そう言って、頭を下げる白銀に勝はなにも言えなくなった。

 彼の言う通り、いつゾンビ化するか分からない人間を置いておくなど、自殺行為でしかない。

 勝は絶望しながらも、涙を堪え、「わかりました」と絞り出すように言うと、体育館から出ていった。

 出ていったのだが……

 

「待って! 赤川君!」

「!? 青木さん!? なんでここに!?」

 

 学校を後にしようとした勝の下に、百花が駆け寄ってきた。

 

「赤川君が出ていくのなら、私も出ていく!」

「なに言ってるんだよ!? 俺はいつゾンビになるか分からないんだぞ!?」

「だって、私の所為でそうなったんじゃない‼ 私を庇ったから、ゾンビに噛まれたのに……‼」

「あ、青木さん……」

「だから、私もいっしょにいる! あなたを一人にしたくないの‼」

 

 そう言って、涙ながらに訴える百花の姿に、勝はなにも言えなかった。

 自分はいずれゾンビになる。故に本来なら、すぐに自害すべきなのだ。

 しかし、その勇気はなく、ただ絶望したまま、一人で最後の時を迎える筈だった。

 だが、百花は危険を省みず、自信と一緒にいると言ってくれた。

 その言葉が、たまらなくうれしく、気づかないうちに涙を流していた。

 

「あ、青木さん……」

「ここは彼女の顔を立ててやってくれ」

「……はい」

「それと涙は拭いておけ」

「ありがとうございま……す?」

 

 そんな勝にハンカチを差し出したのは、自らを追い出した張本人・白銀であった。

 

「さて、これからだが、まずは安全地帯を探そう」

「いや、なんでいんの?」

 

 なんか、追い出した張本人シレっと合流してきた。こわい。

 

「いや、なんでって、追い出した以上、俺にも責任と言うものがあるからな。ゾンビになる前に一思いに介錯してやろうと思って」

「いや、別にいいですよ。放っておいてください。俺、どうせ、その辺の野良ゾンビになりますんで」

「一応、ノコギリと金属バットを用意したんだが……どっちがいい?」

「どっちもいやだよ!?」

 

 惨殺or撲殺など選びたくない。

 

「とにかくだ。俺は生徒会長である以上、あの場ではお前を追い出すのが最善だった思う」

「はぁ」

「が、それはそれとして、後味悪いので最後まで責任を持って見届けるのが人としての責務だと思う。だから、こうして来た」

「余計なお世話です。帰ってください」

 

 しかし、白銀は「そう言うな」と勝に言う。

 

「お前が心配なのはなにも、青木や俺だけじゃないんだからな」

「え? どういうこと?」

 

 すると、校舎の方から、生徒たちが駆け寄ってきた。

 

「水臭いぜ! 赤川! 俺たち、親友だろう! なにがあってもついていくぜ‼」

「く、黒山くん!?」

 

 クラス一の巨漢でスポーツマンの黒山。

 

「ぼ、僕だって! 友達だから! キミを一人にはさせないよ!」

「黄努川!」

 

 真面目で心優しい黄努川。

 

「くっくっく……! この私が興味深いモルモットを逃がすわけないでしょう?」

「桃島さん!」

 

 マッドサイエンティストで有名な桃島。

 

「生徒が苦しんでいるのに、救わずして教師が名乗れるか‼」

「五里田先生まで‼」

 

 担任の五里田先生まで来てくれた。

 いや、彼らだけではない。

 

「俺もいるぜ!」「ゾンビになるんだったら一緒になってやるよ!」「ふん! 別にアンタが心配で来た訳じゃないんだからね!」「おいもいるでゴワス‼」「僕も!」「私も!」「ワイも!」

「いや、多いよ!?」

 

 見れば、そこにはクラスメイト達が全員集合していた。

 

「いや、ゾンビに噛まれたって言ってるじゃん‼ こんなに来てどうすんのよ!?」

「これもお前の人望の賜物だ。よかったな」

「良くないよ!? 俺、ゾンビになっちゃうって言ってるでしょうが‼」

 

 気持ちはうれしい。だが、多すぎる。

 これでは、自分がゾンビになった場合に被害が拡大してしまう。

 どうすればいいか、頭を抱えていると、黒山が「ちょっといいか?」と尋ねてきた。

 

「な、なんだよ?」

「そういえば、ゾンビに噛まれて数時間経過しているが、その間、異常はないか?」

「え? いや、そう言えば……」

 

 噛まれてからしばらく経過しているが、一向にゾンビ化の症状は現れない。

 なんなら、ピンピンしている。

 

「なんともないな?」

「本当か? 本当におかしなところはないか? 異常に食欲が沸くとか、思考が定まらないとか?」

「いや全然? なんならご飯食ったし、睡眠も毎日8時間とってるよ?」

「他にはないのか? 例えば『ゾンビー!』と叫びたくなったり、

語尾が『ゾンビ』になったり、

笑い方が『ゾンビッビッビ‼』になったり」

「生徒会長、あんたゾンビをなんだと思ってるんですか?」

 

 って言うか、そんなゾンビいるわけないだろう。

 

「ふぅん……これはつまり、何らかの偶然か、彼の体内に抗体が出来ているのかもしれないねぇ……」

「桃島! それは本当か!?」

「詳しいことは調べてみないと分からないが、ゾンビ化までの時間はおおよそ5分。しかし、彼は2時間以上経過しても自我を保ち、肉体の腐敗も見られないから、間違いないだろう」

 

 その言葉にその場にいた全員が、驚愕した。

 なんと言うことだろう。人類救済の鍵がこんな身近に存在したとは。

 

「つまり、赤川の身体を調べれば、ゾンビウィルスを撲滅できるってことか!?」

「そうなるね」

「やったぁ! 僕たち助かるんだぁ‼」

「よかった! 本当に良かったぁ‼」

 

 希望が見えたことで、喜び合うクラスメイト達。

 その時だった。

 

「うわぁぁぁぁぁ!」

「助けてくれェェェェ!」

「!? なにごとだ!?」

「体育館からだ!」

 

 悲鳴が聞こえ、慌てて体育館に戻る一同。そこで見た者は……

 

「ゾーンビッビッビッビ! 貴様ら人間は、我らの僕になるゾンビー‼」

『ゾンビー‼』

「……」

 

 先ほど、生徒会長が言った特徴が丸ごと当て嵌まるような、ゾンビっぽい不審者の群れであった。

 いや、不審者のゾンビか? わけわからん。

 

「なにあれ?」

「あ、俺、見覚えあるぞ! たしか、赤川に噛みついたゾンビだ!」

「ふむぅ……どうやら、赤川君に噛みついた際に抗体が中途半端に作用し、突然変異したようだね」

「あれ、俺の所為!?」

 

 桃島の推測に、驚愕する赤川。

 あんなふざけた存在を自分が生み出したかと思うと、ちょっとショック。

 

「……さしずめ、ネオゾンビと言ったところか」

「せっかくゾンビ化を戻す方法を見つけたと思ったら、もう上位種が出てくるとは……」

「私たち、このまま彼らに支配されてしまうの!?」

「そんな訳ないから、みんな落ち着け!」

 

 あんなんに支配されたら、それこそ終末である。

 しかし、理性を持ったゾンビをこのまま、放置することはできまい。

 どうすればいいか、悩んでいると……

 

「大丈夫だよ! みんな‼」

「黄努川!?」

「こいつらそれほど、強くないよ!?」

「いや、なにやってんの!?」

 

 見れば黄努川の手により、ネオゾンビたちは鎮圧させられていた。

 今もネオゾンビにコブラツイストをキメてる最中である。

 

「ゾ、ゾンビィィィィィ‼」

「な、嘘でゾンビ! 我々、ネオゾンビが、人間如きに壊滅させられるなど!」

「ふむ、おそらく、変に理性を得た結果、逆に身体能力は下がってるようだね」

「ぞ、ゾンビィ!?」

「『マ、マジで!?』みたいに聞くな」

 

 だが桃島の推論も当たっていたようで、既にネオゾンビたちは逃げに走っていた。

 

「くっ、ふざけるなゾンビ! 俺たちはこれから、この腐った世界を立て直すゾンビ! こんなところで終わる訳にはいかないゾンビ!」

「腐った死体がなに言ってんだ?」

「うるさいゾンビ! まずは貴様から血祭りに上げてやるゾンビ!」

 

 そう言って、リーダー格のネオゾンビは両腕をグルグル振り回しながら赤川に襲い掛かってきた。

 

「いや、攻撃方法!」

 

 当然そんな攻撃が通用する訳もなく、返り討ち。

 赤川に瞬殺された後に、黄努川にサソリ固めをキメられることになった。

 他のゾンビたちも五里田先生の無数にぶん投げたさすまたにより御用となった。

 

 ――こうして、ネオゾンビによる騒動は幕を閉じた。

 その後、政府の生き残りに助けられた赤川たちは研究施設において、ワクチンを開発してもらうことになった。

 

 人類の復興は、近いのかもしれない。

 

 

 

 

 




◆登場人物◆
 赤川勝:主人公。偶然にもゾンビウィルスの抗体を持っていた為、感染せず、逆に人類を救うことになった。
 青木百花:ヒロイン。スリーサイズは86/54/88の委員長
 白銀駿哉:生徒会長。割と話の分かる御仁。将来の総理大臣
 黒山君:驚き要員
 黄努川君:アクション担当
 桃島さん:マッドサイエンティスト。スリーサイズは84/55/86
 五里田先生:必殺技はゲートオブさすまた

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