追放されし者たちの話   作:J坊

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どれも好きですがやっぱ2が一番かなぁ?
ただし4テメェはだめだ!


狩人の場合

「狩人、キミを追放する」

「あぁ、分かっている……」

 

 心の底から残念そうに勇者は追放を宣言した。

 対して狩人は反論もせず、ただ受け入れる。

 

「どうして……どうして、こうなってしまったんだ……」

「すまない、良かれと思ってやったら裏目に出た……」

 

 ――きっかけは些細なすれちがいだった。

 

 今日は12月24日、クリスマスイヴ。

 魔王軍の脅威に怯える民衆に、せめてクリスマスだけは平穏を与えたい。

 そう考えた、国王は兵士や冒険者、そして勇者パーティーに命じて、各地の幼稚園や保育園、孤児院にて、一斉サプライズパーティーを企画したのだが……

 

「子どもたちがサンタさんに会いたいって言ったんだ」

 

 それは純粋無垢な幼子の願いだった。

 会ってお礼を言いたいと可愛らしい理由からの願い。

 狩人はそれを叶えて上げたいと思った。

 

「そしたら、武闘家と賢者も協力してくれて、みんなでやることにしたんだ。サンタさん捕獲作戦を……‼」

「その結果がこれか……」

 

 そう言うサンタ役の勇者の姿は無惨の一言であった。

 首にはコルセット、頭はチリチリ焼け野原、身体に至っては9割を包帯で巻かれミイラ状態であった。

 見るも無惨である。大事なことなので2回言った。

 

「大体さぁ、どうやったら、俺がプレゼント用意していた合間に、孤児院への通路毒の沼にできんのよ?」

「頑張って……」

「その頑張りを魔王討伐に向けて欲しい」

 

 いや、普段も頑張ってくれているんだけどね?

 フォローしつつ、勇者は額に青筋を浮かべながら、当時の状況を語る。

 

 意気揚々かつ、子供たちにバレないよう慎重に、こっそり孤児院に来た勇者を待ち構えていた数多のトラップの数々。

 その中でも度肝を抜かされたのは第一の関門・毒の沼‼

 歩くごとにダメージを負いながらも、頑張って渡り切ったがしかし、玄関への階段を上ったとたんに、突然階段は45度の傾斜へと変形。そのまま、毒の沼に逆戻り。

 おまけに、5度目のチャレンジでようやく登りきるも、玄関には鍵がかかっており、そのカギは対岸の木下の植木鉢の下という。

 なんという容赦のなさ‼ 勇者じゃなかったら死んでた‼

 

「でね、ようやく中に入ったと思ったらさ……」

 

 そう言って、チラっと「それ」に視線を向ける。

 そこにあったのは、つぶらな瞳のカバかロバかトカゲなのか? はたまた極限までデフォルメしたドラゴンか?

 

「なにこれ?」

「ゆっくん」

 

 そう、それは国内で一番有名な勇者ランドのマスコット・ゆっくんだ。

 それならまだいい。

 だが、問題は彼にしこまれたギミックだ。

 なんとこのゆっくんゴーレム、口がパカッと開いたかと思えば、そこから鉄球を発射して来やがったのだ。

 天を任されし堂をも恐れぬデザイン‼ 見られたら最後消されかねない‼

 狭い廊下、それも、魔力及び手持ちの薬草・毒消しすべてを使い切り、毒の沼を渡り切って消耗していた勇者は、避けることもできず直撃、三度毒の沼に沈む羽目になった。

 

「おまけにさ、これ、火ぃも噴いたんよ」

「あぁ、懐に潜り込まれても大丈夫なように」

「屋内で使ってる時点で大丈夫じゃないよ⁉」

 

「火事になったらどうする!?」と激怒する勇者。

 何度も鉄球を叩き込まれても子供たちのために、頑張って前進し、ようやくクリアしたと緊張の糸が切れた瞬間、ファイアーブレスをもろに喰らってしまい、哀れ火だるまに。

 おかげで髪の毛チリッチリである。どうしてくれる(怒)

 

「それでね、ようやくそれもクリアしたと思ったらさ、他にも数々の罠が仕掛けられてたんだよ」

「いや~作ってるうちに楽しくなってね……」

「だから追放だっていってんだろーが。っていうか、お前、俺に恨みでもあんの?」

 

 あぁ、思い出したくない。思い出したくない。

 子供たちの下に向かうまでに、掛かった罠の数々のことなど。

 とらばさみに仕込み矢、落とし穴にスパイクボール。

 果ては電気ショックに、回転床・ワープ床に落とし穴。

 まさに地獄のフルコースであった。

 

「いや……俺はやめておこうっていったんだよ。でも賢者が『異世界の映画を見てインスピレーションが沸いた』とか言って……」

「ふっ、狩人の技術と武闘家の建築技術・そして、この賢者の叡智をふんだんに盛り込んだ合作だ。中々のものだっただろう?」

「お前も追放してやろうか?」

 

 ふふんと得意げに鼻を鳴らし、上から目線の賢者に勇者はキレそうになる。

 なんでお前、共犯の癖に反省してねーんだよ?

 

「で、ようやくそれをクリアしたのよ。我ながら頑張ったのよ。けどさ……」

 

 そう言って、再度、視線を「それ」に向ける。

 四方形にロープの張られた、漢同士の熱き戦いが繰り広げられる聖域。

 そう‼ プロレスのリングであった‼

 そこで待ち構えしは雪だるまのマスクを被った、筋骨隆々の大男……

 

「っていうか、武闘家だったわけだけど……」

 

 ……であるが、彼はリングイン早々に高らかに叫んだ‼

 

「勇者よ! 否! サンタさんよ‼ 貴様に子供たちにプレゼントを配る実力があるか試させてもらおう‼」

 

 同時にゴングが鳴り、試合開始。

 HP1の勇者は成すすべもなくラリアットで一発KO。

 そのまま、付け髭を取られ、正体を露にすることに……

 

「武闘家、なにか言いたいことは?」

「せめて、10秒は持たせて欲しかった‼」

「よし、お前も追放だ」

 

 反省の色ゼロの武闘家に三度ブチキレる。

 しかも、その際に変装を取られ、子供たちは幻想を打ち砕かれギャン泣き。

 サンタなど、この世にはいぬのだ‼

 そんな光景を見せつけられ、お通夜のムードである。

 

「まぁ、ここまでは我慢できる。俺が我慢すりゃいいことだから。けどな、お前らはやってはいけないことやった」

 

 そう言って、どうぐ袋をドンと置くと中からプレゼントを出したのだが……

 

「全部お釈迦になってんじゃん」

『……本当にすいませんでした』

 

 これは流石に不味いと思っていたのだろう。

 狩人は元より今までのふざけた態度を改め、賢者も武闘家も反省する。

 ……まぁ、あんだけトラップに引っかかれば、こうなるよね。

 

 当然、子供たちは絶望の淵に叩き落された。

 サンタはいないという事実を知った直後からの、今夜は聖夜だと言うのに、プレゼントなし。

 最早、空気は世界の終わりレベルに落ち込んでいた。

 

「どうすんのよ?」

『本当にすいません……』

 

 せめてもの救いは同じくサンタ役を頼まれた聖女の持ってきた分のプレゼントが無事だったことだろうか?

 だが、それも問題があった。

 

「って言うか聖女、どこから入った?」

「え、煙突です……」

「大丈夫だった?」

「あ、はい」

 

 そう言って、ミニスカ露出多めのサンタ服を着た聖女の背後――暖炉を見ると、そこには弾力性溢れるマットが敷かれていた。

 もっと言うなら、煙突の中には梯子がかかっており、さらに外から見ると分かるが、屋根に上るためのエスカレーターまで設置されていた。

 

「なにこの差?」

 

 俺のところはあの有名な映画のトラップ満載だったていうのに。

 いたせりつくせりじゃん。

 ホントになんなのこれ?

 

「まぁ、聖女は女性だからな。レディにあんな危険なことさせられん」

「俺にはいいのか?」

 

 とにもかくにも、クリスマスパーティーは台無しである。

 このことを王様に伝えたら、当り前の如く激おこ。

「首謀者の狩人を追放しろ‼」と慈悲も容赦もない宣告を告げられたのであった。

 

「……僕はいい。自業自得だからな。だが、子供たちは可哀そうだ……」

「どんな感情で、どの口で言ってんの?」

 

 そろそろ本格的にシバこうかな?

 そう考えていた、その時であった。

 

「⁉ この気配は!?」

「どうした聖女?」

 

 聖女が突如立ち上がると、監視用の魔法水晶から外の様子を伺う。

 外は満月。満点の星空。さらにチラホラと雪が降ってきた。

 まさに、ホワイトクリスマス。

 

 そんな星空をトナカイの引くそりに乗り、あの男がやってきた。

 

「さ、サンタクロースです‼」

『マジで!?』

 

 その場にいた全員が水晶玉を覗き込むと、赤い服に真っ白な御髭。

 プレゼントを背負ったサンタさんの姿があった。

 

「HOHOHO! メリークリスマス‼」

『本物だぁぁぁぁぁ!?』

 

 まさかのマジもののサンタさんの登場に、テンションはストップ高‼

 本物のクリスマスの奇跡である。

 サンタさんは、意気揚々とソリを降りると、プレゼントを待つ子供たちの下へと向かう。

 

 しかし、そこに立ちはだかるのは、毒の沼であった。

 

「しまった‼ まだ、トラップを解除してない‼」

「サンタさーん‼ 裏口に回って‼ そこにエスカレーターがあry」

 

 叫ぶ勇者たち。するとサンタさんはカメラ目線でちっちっちと指を振るやいなや。

 

「破ッ‼」

 

 気合い一閃。数多の修羅場を乗り越えたサンタさんの一撃により毒の沼は割れた。

 サンタさんはできた道を悠々と歩き、無事に孤児院の中へ入る。

 

「うそでしょ!?」

 

 まさかの光景に驚きを隠せない勇者。

 しかし、本当の奇跡はここからだった。

 

 次に現れたのはゆっくんゴーレムが砲身をサンタさんに向け、鉄球を発射。

 狭い通路と言う逃げ場のない場所で、無慈悲な攻撃が炸裂する。

 

「サンタさーーーーーん‼」

 

 絶叫する子供たち。

 しかし、サンタさんは避けることなく前進。

 当然、鉄球が直撃するが。

 

「中々の威力だ」

 

 あろうことか、鉄球はサンタさんの強靭な肉体を傷つけることなく、逆に粉々に砕け散った。

 さらに、一個鉄球を片手で受け止めると、それも握力だけで粉々に粉砕。

 まるでジンジャーマンクッキーのようである。

 

「うそぉ!?」

 

 仰天する勇者。

 それに対して賢者が「そう言えば聞いたことがある‼」と解説を始める。

 

「サンタさんの纏う赤い服は聖夜老人装(サンタクロース)と呼ばれる装備で、並大抵の攻撃では傷一つつけられないと‼」

『そうなの!?』

 

 まさかの衝撃の事実に唖然とする一同。

 その証拠とばかりに、ゆっくんの火炎放射すら平然と正面から受け止めたにも関わらず、火傷一つ負ってない。

 聖夜老人装(サンタクロース)は一兆度の炎にも耐えられるのだ。

 

 さらに襲い来るトラップの数々を難なくクリアしていくサンタさん。

 弓矢を軽やかに躱し、落とし穴をジャンプで回避、電流すらもものともしない。

 そして、最後に立ちはだかる武闘家の下へたどり着いた。

 

「いや、普通にお通しして差し上げなさい!」

 

 そんな勇者のツッコミをスルーしスノーマンの覆面をした武闘家は構える。

 

「一手死合うてもらいたい」

「よかろう」

 

 瞬間、二人の鉄拳が、互いの魂を込めた一撃が交差する。

 しばしの静寂を経て、先に動いたのはサンタさんであった。

 彼は少しよろけるも、辛うじて立ち上がり、呟いた。

 

「いい腕だ。精進すると良い」

 

 直後、武闘家は「この勝負に悔いなし‼」と仰向けに倒れた。

 そのまま、満足げな笑みを浮かべ、意識を失う。

 敗北者の称賛を背に受け、サンタさんは子供たちの下へとたどり着く。

 

「やぁ‼ よい子のみんな‼ プレゼントを持ってきたよ‼」

「いや、よくそのテンションに切り替えられるな⁉」

 

 サンタさんの切り替えっぷりに驚きの声を上げる勇者。

 ……ともかく、孤児院の子供たちへのプレゼントは、無事届いた。

 クリスマスパーティーも仕切り直しである。

 

 まぁ、狩人の追放は取り消さないけどね。

 

 子供たちがプレゼントや料理に目を輝かせてる中、サンタさんは勇者にプレゼントを渡す。

 

「はい、これは勇者君にだ」

「え? 俺にもあるんですか⁉」

「もちろんだとも。サンタさんは良い子にプレゼントを配るのが仕事だからね」

「さ、サンタさん……」

 

 感動のあまり、涙が出てきた。

 流石はサンタさん。そこに痺れる。あこがれる。

 勇者はいそいそとプレゼントを開けると、中に入っていたのは……

 

「……なんすか? これ?」

「魔王の首だよ☆」

「いや、グロすぎるわ‼」

 






【登場人物】
・勇者 レベル99
 平和のために今日も戦う勇者様。本日のトラップのせいで、全治半年の重傷を負うも、なんとか復活。その後も世界のために戦うぞ。
 頑張れ! 超がんばれ‼

・狩人 レベル99
 諸悪の権化。子供たちの願いを叶えるために、サンタさん捕獲作戦を実行。しかし、異世界の映画を見たせいで、インスピレーションを刺激され、結果、ヤベェトラップハウスに魔改造してしまう。
 罰として2か月間の追放処分を受ける。
「いや、追放って期限付きなの!?」とは勇者談。

・賢者 レベル99
 勇者パーティーのブレイン。同じく異世界映画でインスピレーションを刺激され、孤児院を魔改造。
 半年後、退院した勇者にドロップキックを叩き込まれる。

・武闘家 レベル99
 勇者パーティーのアタッカー。サンタさん捕獲作戦を聞き、アドレナリン出まくった結果、やらかしたw
 来年のサンタさんへのリベンジマッチに向けて、日々修行中。

・聖女 レベル99 B94/W62/H94
 勇者パーティーの紅一点。やたら際どいサンタ衣装を着せられた。
 地味に孤児院の少年の癖を歪ませた戦犯。

・サンタさん レベル12億2千5百万
 最早、語る必要のない聖人にして益荒男。
 ここに来る途中、魔王を討ち取った男の中の男。
 一兆度の炎にも耐えられる。

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