《完結》テイルズ オブ デスティニー〜七人目のソーディアンマスター〜 作:ねここねこねこ
一週間の休暇を貰ったエドワードは、休みの前日の仕事が終わってから準備をして当日を迎えていた。
道具屋でアップルグミを大量に買い込み、少し高いがパナシーアボトルも買っている。
食料もきちんと用意して、不測の事態が起きても対処できるようにしていた。
「よし。これで大丈夫かな。地図も城から借りてきたし、まぁなんとかなるだろう」
細かい地図は城で管理していて販売はされていないため、きちんと許可を取って借りてきていた。
今回行くところはクレスタの街の南で、ダリルシェイドからは一日〜二日くらいで着く場所にある。
ダリルシェイドを出たエドワードは、油断することなく進んでいく。
(いつもは演習で外に行くことはあっても、今回は一人だからな。モンスターとの戦い方もだが、いつも以上に気を張っていくことにしよう)
とはいえ、出てくるモンスターはアウルやウルフなどといったエドワードからすると取るに足らないモンスターばかりである。
通常の二年目の新米兵士でも協力すれば問題なく倒せるモンスターなので、雑魚と言ってもいいくらいなのだ。
モンスターを倒したあとは、”レンズ”という欠片を体内から取り出すことも忘れない。
”レンズ”というのは、およそ千年前に地球に衝突した巨大彗星の核の欠片である。
特有の特殊エネルギーを含有しており、レンズから引き出したエネルギーは機械の原動力や医薬品など様々な形で利用されている。
エドワードは詳しいことは分かっていないが、”オベロン社”というレンズエネルギーを使って日常生活などに役立てている会社もあり、そこで買い取っているので小遣い稼ぎも兼ねて、忘れずに回収することにしている。
疲れたら休憩をして、また歩く。夜になったら深く寝入らないように気を張りつつ休むことで、モンスターからの夜襲にも即座に対応できるようにしていた。
そしてダリルシェイドを出てから一日半が経った。
「ここか……」
森の中をかき分けていった先に小さな洞窟を発見した。
森の場所は分かっており、洞窟までの行き方も夢の中で何回も見ていたため、エドワードは迷うことなく進むことが出来ていた。
しかし洞窟を見つけるまでは夢自体も半信半疑であり、むしろ何も無いことでがっかりするのではないかとも思っていた。
(ここに洞窟があるってことは、この先に助けを求める誰かが……いるのか……?)
洞窟を発見したことで、夢が正夢だったのだと期待を膨らませるが、まだ洞窟があっただけだと思い直して中に入るために周辺の様子を探ることにした。
いきなり中に入ってもいいのだが、何か罠があったり、大型動物やモンスターの巣だったりもするからである。
(周りには罠はなさそうだな。入り口も見てみたが、何かが出入りした形跡も特にはない)
少し不安を覚えるが、それ以上に好奇心が勝り、洞窟内に入ってみようと決心する。
中に入ると、全くの闇になっていたので松明に火を灯し、慎重に進んでいく。
(洞窟内も夢で見たとおりだな。だが油断しないように進もう)
いつもは少しユルい感じの性格をしているエドワードだが、それは周りに人がいて頼っているからであり、そういった状況でないときの彼はユルさを一切見せない真面目な少年なのである。
(確か……この辺だな)
洞窟を一時間ほど進み、少し広めの部屋に到着する。
夢の中ではここでいつも助けを呼ぶ声がしているが、周りを見ても助けを求めている声の主を見つけることが出来ないのである。
夢と同じようにエドワードは辺りを見回す。
「……声は聞こえないな。やはり夢は夢だったのか……?」
三十分ほど周りを捜索してみるが、何も発見できずに地面に腰を掛けるエドワード。
夢で見た森を発見して、夢で見た洞窟を発見して、洞窟内も夢で見たとおり。
(やっぱり夢かぁ。まぁ可能性として夢で終わるというのが、一番高かったけどさ)
残念な気持ちになってため息を吐くエドワード。
そこで気を抜いてしまったのが、彼の最大の不覚であった。
突然、エドワードは身体に衝撃を受けて三メートルほど吹き飛ばされる。
「な、なんだ!?」
きちんと訓練を積んできた彼は、咄嗟に受け身を取って体勢を立て直す。
目の前には熊のようなモンスターがよだれを垂らしながら立っていた。
(カ……カンバラーベア!? いや、しかし毛の色が違う。もしかして”亜種”か!?)
モンスターの中には他のモンスターを襲って、レンズごと体内に溜め込み元々の種類よりも強くなるケースがあった。
それが”亜種”と呼ばれて、一般的には見た目の色が赤くなる。
強さはレンズの溜め込み具合によって変わるが、大体三倍から十倍以上になるケースもあった。
【亜種を相手にする場合は最低十人以上で連携をして倒せ】
こういった訓示がされるほどに警戒をしなければならない相手なのである。
エドワードは咄嗟に腰に手をやり、剣を抜こうとするが、
(……しまった! 剣が無い!)
エドワードが吹き飛ばされた際に剣を落としてしまっており、剣はカンバラーベア・亜種の足元に落ちていたのであった。
(ちっ。なんとか剣を取り戻さないと話にならないぞ)
そんなことを考えているうちにカンバラーベア・亜種が叫びながら襲ってきた。
エドワードは突進してくるカンバラーベア・亜種に対して右に避けて、そのまま剣のところまでダッシュする。
剣を拾い上げて、鞘から抜いて構える。
「よし。剣があればこっちのもんだ」
カンバラーベア・亜種は避けられたことに怒り狂って、さらに激しさを増して襲いかかってくる。
突進を剣で受け流し、そのまま横薙ぎにカンバラーベア・亜種の腰を斬りつける。
(硬い……! 亜種になるとここまで防御力も増すのか!)
バックステップをして距離を取り、体勢を整えるエドワード。
しかし、今度はカンバラーベア・亜種はゆっくりと近づいてくる。
(俺の攻撃が通らないのが分かって、じわじわと
エドワードの前まできたカンバラーベア・亜種は右の前脚を上げて、振り下ろしてくる。
そのスピードに避けきれないと分かり、剣を使って再度受け流そうとする。
しかし、受け流されるのが分かっていたのか、カンバラーベア・亜種は途中で攻撃を止めて、左の前脚で横になぎ払いをしてきた。
エドワードはしゃがむことでギリギリ躱す。
(フ、フェイントだと……? モンスターのくせに頭を使ってくるのか!?)
それから数分の間、エドワードは攻撃を躱し続ける。
避けられない時は剣を使って受け流し、そのまま攻撃を加えたりもするがカンバラーベア・亜種の身体には一切傷が付かない。
そして、ついに限界がやってきた。激しい音とともに、エドワードが使っていた剣が根元から折れてしまったのだ。
(くそ! 剣が折られたか! 支給品の剣だと耐久性に問題があったか……?)
セインガルド王国の兵士には全員に武器が支給される。数打ちの剣ではあるが、そこそこ良い剣ではあった。
しかし、あくまで”そこそこ”なだけで、剣の腕が上がった兵士はお金を貯めてさらに良い剣を購入するという習慣があったのだ。
エドワードはまだ二年目のため、剣の腕前は良いがお金がなかったので支給品を愛用していたのだ。
(剣が折られたなら、勝ち目はないからもう逃げるしかないな……だが、逃げ切れるのか?)
このままだとジリ貧でやられてしまうのが目に見えている。
隙をついて逃げることを考えていたが…それが仇となってしまった。
「ぐおっ!!」
カンバラーベア・亜種はさらにスピードを増して攻撃してきたのだ。
急にスピードが上がったことでエドワードは反応しきれずに吹き飛ばされてしまう。
受け身も取れず壁に激突してしまい、痛みで起き上がることが出来ない。
(くそ……これでやられちまうのか……)
夢を確かめにきたのがきっかけで死んでしまうことになる自身に後悔しながらも、今も自分のために休みなしで働いている
今死んでしまったら彼にも後悔させてしまうと思い、諦めずに立ち上がろうとするが、体に力が入らない。
カンバラーベア・亜種はそんなエドワードを上から目線で眺めている様子だった。
(あの、野郎……め……!)
『……を……け!』
(なんか……幻聴までしてきたな……俺はここで死んでしまうのか……?)
壁にもたれかかりながら、心が折れかけていた。
カンバラーベア・亜種に対し怒りはあるが、起き上がることが出来ず、起き上がっても剣も無いため対抗する手段がないのだ。
誰でも諦めてしまうことは仕方がないといった状況である。
『俺を……け!』
(な、なんだ?……幻聴が……さっきよりもはっきり……と聞こえてきた……気が……する)
『俺を抜け! 早く! 声が聞こえているんだろう!』
「……俺って……誰……だよ」
『お前の右手のところにあるだろうが! 早くしろ! 死にたいのか!』
(み……右手……?)
意識も薄れてきた状況で、右手に視線を落としてみる。
そこには”剣の柄”のような形の石があった。
「こ、これ……か……?」
『そうだ! 俺を持て!』
エドワードは意識が朦朧をしながらも”剣の柄の形をした石”を持ち、剣を抜くような仕草をする。
石だから抜けるわけがないと思っていた”柄”はすんなりと抜けて、右薙ぎのような形で振り切る。
振り切ったあと、エドワードは意識が落ちていくのを感じた。
(くそ……もう……だめだ……)
視界が暗くなっていく中、余裕を持ってエドワードを眺めていたカンバラーベア・亜種の首がゆっくりと落ちていくのが見えていた。
だが考えることすらほとんどできなくなっていたエドワードは、目の前の出来事を何も認識出来ないまま気絶してしまった。
────その場には『良くやった!』と褒め称える謎の声だけが響いていた。
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