《完結》テイルズ オブ デスティニー〜七人目のソーディアンマスター〜   作:ねここねこねこ

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第三十四話

 ファンダリア王国ハイデルベルク城の地下牢に向かったエドワード、ハロルド。そしてウッドロウ。

 その一番奥の牢屋に閉じ込められていたのは、黒髪で胸くらいまでの長髪をした男であった。

 顔は美形で整っており、どの女性も振り向くであろう見た目を二年閉じ込められていても保っていた。

 

「貴殿がダリス・ヴィンセントだな?」

「……誰だ」

「私はファンダリア王国王位継承権第一位、ウッドロウ・ケルヴィンだ」

「ファンダリア王国の()()()が一体何の用だ?」

 

 王族と分かった途端、敵意を剥き出しにしてウッドロウを睨みつけるダリス。

 ウッドロウはそのプレッシャーを物ともせずに話を続ける。

 

「実はな、貴殿にここ(牢屋)を出てもらおうと思って参ったのだ」

「……反乱を起こしたリーダーの私を牢から出す……だと?」

「ああ、そうだ」

「……なぜだ?」

 

 ウッドロウは理由を聞くダリスに対し、反乱軍が今にも内乱を起こそうとしていること。

 それが神官のグレバムに唆されているため、それを止めてほしいということを簡潔に伝える。

 ダリスはその話を聞いて目を見開くが、少し黙ったあと「断る」とはっきりと伝える。

 

「貴殿は今のままでいいというのか? 我々ファンダリア王国の民が互いに傷つけ合い、殺し合う運命を受け入れるというのか?」

「……俺は王族に利用されるくらいなら死を選ぶ」

「なっ……!? そ、そこまで……」

 

 ウッドロウはここまで決意を固めているダリスを説得できる自信が無くなっていた。

 王族に謀反を起こすのはそれだけの覚悟があったのかと諦めかけていた。

 しかし、そこでエドワードが前に出た。

 

「あの……ダリスさん」

「何だお前は」

「俺はセインガルド王国客員剣士のエドワード・シュリンプといいます」

「……他国の人間がファンダリア王国のことに口を出すな」

「あなたは二年前の反乱をなぜ起こしたのですか……?」

「……そんなこと今は関係な──」

「──いいから教えて下さい。俺が聞きたいんです」

 

 ダリスの言葉を遮り、どうしても聞きたいと話すエドワードに対しため息をつく。

 数分の沈黙の後、ダリスが語りだした。

 

「私は……ファンダリアを新たな方向へ導きたかった……」

 

 一人の王が全てを握るのではなく、国民全員が政治に参加できる国。

 この国を真に発展させるためには人々の権利と、意識の向上が必要であること。

 それは()()()()において、とても進歩的であり、間違っている内容ではなかった。

 

「そう、だからこそ私はそのために()()()のリーダーとして立ったのだ。しかし、イザークはそれを断固として受け入れなかった……」

 

 歯噛みするようにダリスは語っていった。

 三人はその言葉を黙って聞いていた。そして話し終わるとエドワードが話し始める。

 

「……だとしたら、どうして武力で解決しようとしたのですか?」

「……」

「あなたはもう分かっているんですよね……ことを急ぎすぎていたことに」

 

 エドワードの言葉で、今の自分(ダリス)の考えに気付かれているということを悟った。

 そして諦めたかのように()()()()()を話し出す。

 

「……ああ、そうだ。二年前の私は理想の実現で頭がいっぱいになり、権利を主張するだけだったのだ。

それではイザークを説得出来るはずもない。彼にも多くの背負っている物がある。二年前の私は……そこまで考えが及ばなかった……」

「……だから結果的に動乱を引き起こしたということですか」

「全ては私の至らなさが原因だ…。この二年で私の考えは変わった……武力による闘争は……何も生み出しはしないのだ」

 

 エドワードは今のダリスの本心を聞いて安心した。

 これで何も分かっていなかったのであれば、説得しても無駄だと思ったのだが、ダリスは武力闘争による無意味さをきちんと理解していたのだ。

 ウッドロウがそのことを聞いて、ダリスに再び話し掛ける。

 

「それであればなおのこと頼みたい……。グレバムは無意味に我らの国を乱そうとしているのだ。

それは私達(王国側)も貴殿ら()()()側にとっても、何も意味をなさないではないか」

「だが……今更王族になど……」

「いや、今は王族としてではなく、ファンダリア王国のいち国民として貴殿にお願いをしたい。

どうか……ファンダリアにこれ以上の無駄な血を流させないでくれ……」

 

 ウッドロウが頭を下げてダリスに頼む。

 これには一緒にいた兵士だけでなく、頼まれたダリス本人も驚きの顔をした。

 ハロルドは、後ろで微かに笑っていた。

 

「……そうか。賢王イザークの息子は、父を超える傑物だったか……お前が二年前に王であったなら……私は……」

「まだ遅くはない。グレバムの扇動を抑えたあとは存分に戦おうではないか。この国の歩む道を決めるために。

私は父とは違うやり方を取る。決して対話を拒まない」

「……そうか。分かった」

 

 ダリスは薄く笑い、反乱軍の説得をすると了承をする。

 その言葉を聞いたウッドロウは、ダリスを信じて地下牢から出すのであった。

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

「それにしてもエドワード殿には助けられたな。礼を言う。本当にありがとう」

「いえ、ウッドロウ殿下の気持ちが通じたからですよ。……それにこれからが本番です」

「……ああ、そうだな。グレバムの野望を打ち砕かないと意味がないからな」

 

 ダリスが牢を出て身を清めている間に、三人は応接室で座って待っていた。

 そしてエドワードが時雨(しぐれ)に話しかける。

 

「そういえばイクティノスから()()とやらが出たんだろ? そろそろ話してもいいんじゃないか?」

『ああ、そうだったな。……どこから話せば良いのかわからないから、今このときについてのことを話そう。

詳細は落ち着いてからいくらでも話す。

まず、()()()()()()()()()ということを前提に置いて聞いてくれ』

「み、未来が分かるだって!? な……!」

 

 いきなり信じがたい内容を話されてしまい、困惑するエドワード。

 時雨(しぐれ)もそう言われるのが分かっていたので、冷静に返事をする。

 

『詳細は落ち着いたときに話すって言ったろ? 今は時間が無いんだ』

「あ、ああ……わかった」

『とりあえずこれから起こる内容を話していくと、グレバムが反乱軍を率いてハイデルベルク城を攻めてくる。

そしてその時にイザークがグレバムに討たれ、イクティノスが奪われるのだ』

「な──」

「なんだと!?」

 

 驚くエドワードの声よりも更に大きな声で驚き立ち上がるウッドロウ。

 

『落ち着け。一応の歴史だとそうなっている。だが、今はそうならないように動いているんだ。

まず、()()()()()()()がいること。そして()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。この二つで今話した歴史になる可能性はだいぶ減る』

「ちょっと、あたしもいるわよ」

『あ、ああ。ハロルドもいれば万が一のときでもなんとかなる可能性が高いな。

そして、本当であればその後に今ここにいないスタン、リオン、ルーティ、マリーがハイデルベルク城から落ち延びたウッドロウと協力してハイデルベルク城の時計塔の最上階でグレバムを討つんだ』

 

 あまりの内容に対してハロルド以外の二人が絶句する。

 

「そ、それでその後はどうなるんだ?」

『あ、ああ……神の眼は取り戻せたが、後日また奪われてしまうことになるな』

「なんだって!? だ、誰に!?」

『それは──』

 

 時雨(しぐれ)が続きを話そうとしたところでダリスが客間に戻ってくる。

 服も着替え、スッキリした見た目は先程よりも更に男としての魅力を増していた。

 時雨(しぐれ)は『続きは反乱を鎮めたあとで話す』と言って黙ってしまった。

 

「待たせたな……って何かあったのか?」

「い、いや。大丈夫だ。じゃあこれから出発する。場所はサイリルの街でいいんだね?」

「ええ、そこに反乱軍が拠点としているということでした」

 

 ダリスの言葉にウッドロウが誤魔化し、エドワードが質問に答えることで話を逸らす。

 そして全員でサイリルの街を目指すのであった。

 




義勇軍と反乱軍はここでは同じ組織を指しているのですが、あえてその時々に応じて分けて書いています。

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