《完結》テイルズ オブ デスティニー〜七人目のソーディアンマスター〜   作:ねここねこねこ

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第四話

「……お前は何者だ?」

 

 エドワードに話しかける黒髪の少年は明らかに警戒している。

 

「何者と言われても……俺はセインガルドの兵士ですけど」

「兵士がなぜ私服でうろうろしている?」

「今日は休みなので。それで同僚に用事があってここに来たら、この光景ですよ」

 

 エドワードは肩を竦めて少年の質問に答えるが、その仕草が少年のカンに触ったようで手に持った曲刀を向けてくる。

 

「……そうか。じゃあ一般兵がなぜその刀を持っているんだ?」

「なぜって……」

『エドワード、気を付けろ。……()()()()()()()()()()()()()()だ』

 

(え……マジかよ。じゃああの曲刀も喋る剣ってことか。ほとんどいない一人にすぐに会うってどんな偶然だよ)

 

「まぁいい。その刀を抜いてかかってこい。お前も相手してやる」

「え……嫌ですけど」

「……なんだと?」

 

 さらっと勝負を断るエドワードに対し、少年は眉間にシワを寄せる。

 そのやり取りを聞いていた時雨(しぐれ)は大笑いしていた。

 

『はっはっは! エド! お前、面白いよ! やばいな、お前のその空気の読まなさ具合!』

 

(だって今日休みじゃん。なんで知らない少年と戦わないといけないんだよ。しかも真剣って怪我するじゃん)

 

()()()、お前も自分のマスターに諦めるように伝えろよ。久々に会って話したいことはあったが、また次回に預けておこうぜ』

『……まったく。時雨(しぐれ)は相変わらずですね。坊っちゃん、今日のところは引いておきましょう』

「……ちっ」

 

 舌打ちをした少年は”シャル”と呼ばれた喋る曲刀を鞘にしまい、マントを翻して訓練場から去っていった。

 

(何なんだあいつは? 危ないやつだな)

 

 ちょっと生意気な少年を警戒しつつ、倒れている兵士たちの手当てをし始めるエドワード。

 フリックの手当てをしているときに、黒髪の少年について尋ねてみた。

 

「なぁフリック。あの少年は誰だったんだ?」

「……いてて。彼は少し前に王国客員剣士になった”リオン・マグナス様”だよ。兵士の何人かが陰口を言っていたらしくてな。腕を見てやると言って訓練場に乗り込んできたんだ」

 

(そ、そんな理由で……それってただのわがままな戦闘狂じゃんよ)

 

 エドワードは理由を聞いてドン引きする。新しい王国客員剣士には関わらない方がいいのかと思いながら、兵士全員の手当てをして家に帰る。

 多少のゴタゴタはあったものの、フリックにも帰還報告出来たので良しとすることにしていた。

 

「……というわけで、色々と説明してもらいたいわけなんだが」

『まぁ……そうなるよな』

 

 エドワードは夕ご飯を済ませた後、時雨(しぐれ)に対して質問をしようとしていた。

 時雨(しぐれ)もある程度は予測していたようで、質問に答えるつもりではある様子だった。

 

「まず、お前たちは何なんだ? なぜ剣や刀が話すことが出来るんだ?」

『そうだな……俺たちは”ソーディアン”という特殊な武器なんだ。詳しく話すとややこしくなるが、高密度のレンズを使って作られた剣なんだよ。

そこに人間の記憶や人格を投射することで”意思を持つ剣”として生まれたのが俺たちだ』

 

 そこからソーディアンが天地戦争時代に作られたこと。そして天地戦争後に封印されていたが、現代で続々と封印が解けていることなどを聞く。

 しかし時雨(しぐれ)は、ソーディアンとは歴史上六本を指すことも話す。

 

『"ディムロス”、”アトワイト”、”シャルティエ”、“クレメンテ”、“イクティノス”、“ベルセリオス”の六本が天地戦争時代に作られたソーディアンとして知られている』

「ん? 時雨(しぐれ)はソーディアンではないのか?」

『いや、間違いなくソーディアンだよ。さっきもシャルと話していただろ?』

「じゃあなんで──」

『……。悪いが……今はそれを話すことは出来ない』

 

 時雨(しぐれ)はエドワードが深く突っ込んでこようとしたときに話すのを拒否する。

 エドワードが気になってさらに聞いてくると思いきや、「そっか、それならいいや」と話を終わらせる。

 

『話さなくて……いいのか?』

「別にいいよ。時雨(しぐれ)が話したくないんだろ? だったら無理に話す必要なんてないし、聞くつもりもないからな。

それよりも時雨(しぐれ)のマスターになった時に出来るようになったことの確認をしたい」

 

 あまりにもあっさりとしていたので時雨(しぐれ)は少し困惑するが、微かに笑い、『ありがとう』と小さな声で礼を言った。

 それは間近にいるエドワードにも聞こえないほど小さな声だったが、時雨(しぐれ)は確かに救われていたのだ。

 

(エドワード……こいつがマスターになって良かったのかもしれないな。神様から貰った転生特典で、ソーディアンとして生まれ変わって良かったのかもしれない)

 

 心の中でもエドワードに感謝をしつつ、先ほどの内容について話していく。

 

『そうだな。まずは”固有特技”というものが使えるようになる』

「”固有特技”?」

『ああ。カンバラーベア・亜種との戦いで出した〈魔神剣〉がそうだな。他にもエドワードが強くなっていけば、俺の力も解放されて色々と使えるようになるぞ』

 

(ああいった技が使えるようになるのであればデカいな。俺はさらに強くなれるのかもしれない)

 

『次に”晶術”という術が使えるようになる』

「”晶術”?」

『ああ。ソーディアンは各々(おのおの)に属性を持っていてな。その属性に合わせた魔法みたいなものが使えると思えばいい。

さっき会ったシャルは地属性を得意としている。ちなみに俺は時・元素属性が得意だぞ』

「ふーん。そうなんだ」

 

 固有特技の時と違い、晶術にはあまり興味を示さないエドワード。

 のちに聞いた理由は「よく分からないから」とのことだった。

 

「それで他には何かないの?」

『それでって……まぁいいんだけどさ。あとはエドワードの剣術全般の技術力が大きく向上するくらいかな。

ま、こんなのオマケみたいなのうりょ──』

「えっ!! マジでか!! それが一番すごい能力じゃないか! なんでそれを初めに言ってくれないんだよ!

ただの喋る刀って思っちゃうところだったじゃないか!」

『え……あ、う、うん』

 

 時雨(しぐれ)は、おまけみたいに付けてもらった能力を一番喜ばれてしまい複雑そうな声を出す。

 なぜなら技術なんてものは時間が経てばほとんどの人が上手くなるからだ。

 元人間なのに、人間の寿命については無頓着になっていた時雨(しぐれ)であった。

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

 それから休みも終わり、仕事に復帰したエドワードは訓練で負けなしの実力を発揮し、一般兵レベルでは相手にならないくらいの技術を身に付けていた。

 初めは時雨(しぐれ)を持ったときにしか向上しなかった剣術が逆に仇となり、木刀──時雨(しぐれ)と出会ってからは木剣ではなく、木刀を使うようにしていた──を使った訓練で自身の技術のギャップを埋められずに苦労した。

 しかし、才能もあり強くなるための努力も大好きなエドワードは、二週間ほどで時雨(しぐれ)を持ったときの技術を”素”の状態で得ることが出来た。

 しかも時雨(しぐれ)を持てばさらに技術が向上しており、都度ギャップを埋めるために訓練をするといった良い循環を生んでいた。

 

(まさか……ついでに貰った能力がここまでチート能力につながるとは。エドワードの才能と努力ありきだが、流石に俺も驚いたな)

 

 時雨(しぐれ)は、日々目に見えて強くなっていくエドワードを見て、驚きつつも嬉しそうにしていた。

 そして時雨(しぐれ)とエドワードが出会ってから、二ヶ月ほど経ったある日――

 

「ニコラス将軍、お呼びでしょうか?」

「おお、来たか。今日はお主に話があってな」

 

 七将軍長老であるニコラス・ルウェインに呼び出されたエドワード。

 何回か訓練で会ったことはあるが直接的な面識はなく、なぜ呼び出されたのかすら分かっていなかった。

 そこでニコラスより”セインガルド王国武術大会”の話を聞く。

 

「武術大会……ですか?」

「そうじゃ。毎年七将軍が推薦を出した兵士で誰が一番優秀かを競う大会でな。それに儂の推薦として出て欲しいのだよ」

「それは願ってもないことではありますが、なぜ私なのでしょうか?」

「ああ、以前君の上司からの強い勧めもあって、何回か君の模擬戦を見たことがあったのだよ。それで今回は君なら優勝出来るのではないかと思ってな」

 

 エドワードは納得した。模擬戦を見ているのであれば、あの中で最近負けなしの自分を推薦するのもなんとなく分かった。

 自身としてもさらに強い人と戦えるのであれば訓練になるし、願ったりなのである。

 

「かしこまりました。セインガルド王国武術大会への参加、謹んでお受けします」

「そうか! それなら良かった。日程はちょうど二週間後じゃから、それまで油断せずにしっかりと腕を磨いておけよ」

「はい。それでは失礼いたします」

 

 武術大会へ参加することが決まり、ワクワクしたまま部屋を出るエドワード。

 

 

 

(いつかは出てみたいと思っていたが、まさかこんな新人のときにチャンスを貰えるとは……)

 

 ”セインガルド王国武術大会”は兵士であれば推薦がもらえれば誰でも出場ができる大会である。

 しかしながら、七将軍の推薦を貰わなければならないため、その倍率は激しいことになっていたのだった。

 

『良かったな、エド!』

「ああ! これも時雨(しぐれ)と出会えたおかげだよ! せっかく出場するなら優勝出来るように頑張らないとな!」

「……優勝か。それは不可能な話だな」

 

 時雨(しぐれ)とエドワードが話しているときに、後ろから割って入ってくる声が聞こえる。

 エドワードが後ろを振り向くと、そこには黒髪の生意気少年(リオン・マグナス)がいた。

 

「……なぜですか?」

「決まっているだろう。僕も出場するからだよ。僕が出場する限り、他のやつの優勝はあり得ないからね」

 

 言いたいことだけを言って、そのまま去っていくリオン。

 エドワードはその後ろ姿を見て、疑問を持っていた。

 

「ん? 彼はなんでわざわざそんなことを言いに来たんだろ?」

『え……分からないのか?』

「うん」

『エドって意外と……まぁいい。多分だが同じソーディアンマスターを意識しての発言だと思うぞ』

「ああ……そういうことか。やっぱり彼って強いのかな?」

『相当ね。今のエドでも勝てるかどうか分からないレベルだぞ』

 

 時雨(しぐれ)の発言を聞いて、笑みを浮かべるエドワード。

 生意気だとは思っていても、強者と戦えるのは嬉しいので楽しみに思っているのだ。

 

 

 

 

 リオンに負けないように訓練に励みつつ、二週間後。

 ”セインガルド王国武術大会”が城内で開催されるのであった。

 




転生者は時雨くんでした!
そして、エド君は強者と戦うのは好きだけど、理不尽に戦うのは好きじゃないのです。
だから初めのリオンとの戦いも断りました。

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