《完結》テイルズ オブ デスティニー〜七人目のソーディアンマスター〜   作:ねここねこねこ

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間話 ルーティとマリー

「ほらあんた達! さっさとご飯を食べなさい! こらニコル! ルンのご飯を勝手に食べないの!」

 

 クレスタの街の孤児院。そこには多くの少年少女と院長、そしてルーティが一緒に暮らしていた。

 グレバムを倒した報奨金を貰い、借金を返済することが出来たお陰で孤児院の経営も少しだけ良くなったとはいえ、まだまだお金が必要なことには変わりない。

 ルーティは子供達の面倒も見つつ、レンズハンターとしての仕事をしなくてはいけないと思っていた。

 

「ルーティお姉ちゃん〜! ダンが私のお人形さんを隠した〜!」

「ルーティお姉ちゃん〜! ソフィがぶったぁ〜!」

「ルーティお姉ちゃん〜! トイレ〜!」

「はいはいはい! 分かったわよ!」

 

 孤児の中で年長者のルーティは、院長を支えつつも子供達の支えとして毎日を忙しく過ごしていた。

 そこに一人の来訪者が現れる。

 

「ルーティお姉ちゃん〜! 誰か来たよ〜!」

「今度は何!? ……ってお客さん?」

 

 セインガルド王国領内とはいえ、外れの街(クレスタ)の孤児院に来訪者が来ることなどほとんどない。

 来たとしても知り合いの八百屋のおじさんなど近所の人間であった。

 そしてその場合、子供達はきちんと名前を言ってくれるので、今回は()()()()()()()()()()()()()ことは予測できた。

 

「えっと……誰?」

「私はセインガルド王の使いなのですが、ルーティ・カトレット様はいらっしゃいますでしょうか?」

「はい、私ですけど」

「実は陛下から依頼がありまして……」

 

 とりあえず話を詳しく聞くために、ダイニングへと案内する。孤児院に客間はないため、子供達を外で遊ばせればダイニングが一番話しやすい空間となるのだ。

 席についてもらい、お茶を入れてルーティも席に座る。

 

「それで、依頼って?」

「はい。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

「ん〜、要領を得ないわね。はっきり言って」

「これをファンダリア王国のある人に渡してほしいのです」

 

 そう言って小包を渡してくる男。見た目は完全にセインガルドの兵士なので、そこまで心配はしていないが、問題は()()()()()()()()()()()()()ということである。

 

「……誰に届ければいいの?」

「サイリルの”ダリス・ヴィンセント”という方に。渡せば後はそれで終わりです」

 

 そして別で袋を取り出しながら、「これは報酬と目的地までの路銀です」と言ってテーブルの上に置く。

 中身は確実に大金だと分かるほどの重量感がある音であることはルーティにはすぐに分かった。

 

「分かったわ。ただ一つ聞いてもいい? ()()()()()()?」

「リオン様もエドワード様も任務に出ておりまして……なるべく目立たずに腕の立つソーディアンマスターですと、この近くではルーティ様くらいしかいないというのが陛下のご判断です」

「……なるほどね。分かったわ」

 

 小包を受け取り、明日にでも出掛けると伝えると兵士は去っていった。

 ルーティが一息つくと、後ろから院長が話しかける。

 

「ルーティ、出掛けるのかい?」

「ええ。明日から数日ほど。そうだ、このお金(ガルド)を孤児院の資金にして」

「……いいのかい? 前回もあなたが一生懸命に稼いできた大金を頂いたばかりなのに」

「いいのよ。どうせそんなに貰っても使い道ないし。だったらチビ達のために使ってあげたいじゃない?」

「分かったわ。ありがとう、ルーティ。あなたは周りから”守銭奴”って呼ばれているけれど、本当はこんなに心優しい子なのにねぇ。

周りにもこの優しさを知ってもらえればいつでも嫁に行けるでしょうに──」

「──っていいのよ、私のことは! 今はチビ達がちゃんと育つ環境を作ってあげないと! ただでさえ孤児が増えてきているんだし」

 

 ルーティが優しさを見せる相手は限られている。

 院長としてはその優しさを色んな人にも知ってもらえることで、今のルーティの評判も良くなるのではないかと考えているが、ルーティとしては恥ずかしさだけでなく、今後の仕事にも支障が出るのもあり、周りに知ってもらおうとは一切思っていなかった。

 そして、子供達に明日からルーティがまた数日間いなくなることを告げると、大泣きする子が続出するのであった。

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

 次の日の早朝。ルーティは身支度をして、孤児院を出る。

 サイリルへは、セインガルド王国とファンダリア王国の国境にあるジェノスという街を通って、ハイデルベルグ経由で南に向かうのが徒歩では最短である。

 

(一人旅も久々ね。マリーと出会ってからはずっと誰かと一緒だったからね)

 

 ルーティはマリーと出会ったときのこと、飛行竜でスタンと出会ったこと、神殿でスタンに助けてもらったこと、そこからハーメンツの村でリオン達と出会ったことなどを思い出しながら歩いていた。

 グレバムを倒すまでには色々な辛いこともあったが、仲間と旅をする楽しさをたくさん知ることが出来たのは、彼女にとってもとても貴重な体験だった。

 

(あいつ……元気でやっているかしら?)

 

 金髪のボサボサ頭の男を思い浮かべて、ルーティは思わず笑みをこぼした。

 いつも朝になっても起きてこない彼をルーティは毎朝起こしていた。

 初めは面倒で仕方がなかったのだが、旅が進むにつれてそれも一種の楽しみになっていたのはルーティ以外の誰も知らないことである。

 

 ジェノスで一泊し、ハイデルベルグで一泊する。

 ウッドロウには流石に気軽に挨拶には行けないので、チェルシーと宿の夕ご飯を一緒に食べるなどをして二度目のハイデルベルグを満喫する。

 後日その話を聞いてウッドロウが少し悲しい顔をしたのは、報告したチェルシーだけが知ることとなる。

 

 ジェノスでもハイデルベルグでもソーディアンチームでの旅で思い出すのはいつも彼のこと。

 ルーティにとっては全員を平等に思い出しているはずなのだが、アトワイトと話す内容も明らかに彼のことが多くなっていた。

 

『ルーティってばスタンのことばかり話しているわね』

「そ、そそそそんな事ないわよ! あんただってディムロスのことばっかり話してるじゃない!」

『はいはい。そうね。それよりももうすぐサイリルに着くわよ』

 

 お(しと)やかに笑うアトワイトにからかわれたことに気付き、少しむくれるルーティ。

 目の前にはサイリルの街が見えていた。

 

 

 

「こんにちはー! マリーいるー?」

 

 サイリルの街に到着したルーティは早速マリーの家のドアをノックする。

 届け先のダリスはマリーと一緒に暮らしているため、そこに行けば会えることは分かっていた。

 

「はいはい、どちら様……ってルーティ!?」

「へへ……ちょっと前ぶりね」

「どうしたんだ? もしかしてもう遊びに来てくれたのか?」

 

 マリーは嬉しそうな笑顔を見せてルーティを歓迎する。

 そして、席についたルーティは訪問しに来た理由をマリーに伝えた。

 

「えっとね、今日はダリスに届け物があって来たの。今はいない?」

「ああ、そうだったのか。ダリスなら外に出ているがもうすぐ帰ってくるぞ」

「あら、そうなの。それなら少し待たせてもらおうかしら」

 

 そう言うと、ルーティとマリーは思い出話に華を咲かせた。

 実際には別れてからそこまで時間は経っていないのだが、二人きりで話すということがなくなっていたので、マリーと話すルーティの顔はとても嬉しそうであった。

 一時間ほど話していると、玄関のドアが開く音が聞こえる。

 

「マリー、今帰ったぞ……って客人か?」

「ダリス! おかえり。ルーティがダリスに用があって来てくれたんだ」

「ルーティさんが?」

「お邪魔してるわよ。てかルーティでいいってば」

「ああ、ルーティ。いらっしゃい。用事ってなんだい?」

 

 ダリスに用事があるというルーティの話に思いつくことがなかったため、率直に聞いた。

 ルーティもすぐに終わらせようとダリスに小包を渡す。

 

「これをセインガルド王から?」

「そうみたいよ。私も中身は知らないけど」

 

 ダリスは早速小包を開けて、中身を開いてみる。

 そこには二通の手紙が入っていた。”ダリス・ヴィンセント様”と書いてある手紙を広げて読むダリス。

 そして、数分ほどで読み終えたあと、静かに笑うのであった。

 

「なに? 何が書いてあったの?」

「ふふふ。()も粋なことをするね。先にマリーが読むといい」

「私が?」

 

 そう言って、マリーに手紙を渡すダリス。少し(いぶか)しながらも手紙を読むマリーだったが、読み終わったあとダリスと同じように微笑む。

 

「だろ?」

「そうだね。()()()()というのがいいのかな? 私にとってはとても嬉しいことなんだが」

「なに!? 二人だけで世界を作らないでよ!」

 

 ルーティだけ仲間外れにされたと思い、中身を知ろうとするが、ダリスから渡されたのは()()()()()()()だった。

 そこには”ルーティ・カトレット様”と書いてあった。

 とりあえず手紙を開いて読み始めるルーティ。

 そこには予想だにしない内容が書いてあったのだった。

 

『ルーティ・カトレット様

 

今回の旅でマリーとなかなか話す時間が取れないと良く嘆いていましたね。お別れのときもそこまで時間が取れなかったと記憶しています。

そしてあなたの性格だと、すぐには自分から会いに行かないと思いましたので、強引ですがこのような手段を取らせていただきました。

私からのグレバム討伐を手伝ってもらったお礼だと思ってください。

よろしければ、親友との再会を楽しんでくださいませ。

 

エドワード・シュリンプ』

 

「な、何よこれ!?」

「エドワード君からの()()()()()というやつみたいだね。このサプライズをするために、わざわざセインガルド王の名前を使う許可を貰っていたそうだよ。

今回のグレバム討伐の報酬はこんな感じで仲間のために使っているようだ」

 

 エドワードはセインガルド王からの報酬を断っていたのだが、どうしても貰わないと周りに示しがつかないという状況になってしまったため、精一杯考えてこの方法を取っていた。

 初めはセインガルド王の名前を使うことは簡単に出来ないと思ってのダメ元での提案だったのだが、理由を知ったセインガルド王が二つ返事でOKを出したため実現したのである。

 エドワードや知人の名前を使った場合、ルーティが依頼を引き受けてはくれない可能性があったためセインガルド王の名前を出していた。

 

 そのことを知ったルーティは初めこそブツブツ言っていたが、なだめるようにマリーがボルシチを作ってくれたため、すぐに機嫌を戻して楽しく再会した一晩を過ごしたのであった。

 

 

「じゃあ、また来るわね」

「ああ、今度は私も会いに行くよ」

孤児院(うち)、来てもチビ達がうるさいわよ?」

「ルーティの育ったところを私も見てみたいんだ。……いいだろ?」

「…………好きにすればいいわよ。とりあえず、()()()!」

 

 次の日、マリーの家を出てクレスタの町に戻ったルーティ。

 エドワードとしてはささやかな恩返しをしたと思っているのかもしれないが、ルーティとしては嬉しいと思いつつも、騙されたという気持ちでいっぱいだった。

 そこは弟と同じく、素直になかなかなれない性格なのであろう。

 

(エドめ、次会ったら覚えておきなさいよ! ただじゃおかないんだから!)

 




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